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満ち満ちた夜のこと


「ん…っ、…はぁっはぁっ…!!んぐぅ…も、もぅ…げんっ、か、い……ぷはぁっ…!!」

 都内某所にそびえ立つ高層マンションの一室、一人で暮らすには十分すぎるほど広い間取りの部屋に、湿り気と香ばしい汗の香りを伺わせる女性の声。隣人に聞こえるほどではないものの、物がそこまで多くないリビングには少し反響してしまうくらいには熱のこもった声色をしている。

「こ、これで…おわり…!」

 最後の一息と言わんばかりに振り絞った声は、脂肪のびっしりと付いた胸から肉で埋まった首を通り放出される。20代の女性にしては太くこもった声。痩せていた頃は今よりも多少は高く、アイドルらしかったであろうそれは、玄関を開く物音と男の声でかき消えた。

「ただいま…千雪?」

 いつもであればリビングから玄関までのたった数mであっても運動と称して重い身体を動かすために出迎えに来てくれる彼女が今日はいない。

 金曜の夜。スーツを左腕に掛けつつくたびれたワイシャツが彼の一週間の激務を訴えている。革靴を玄関の端に脱ぎ揃え、二人暮らしに適した玄関に靴下で一歩踏み出し、ドアのカギを閉める。

「あっ、おかえりなさい。プロデューサーさん」

 施錠と共にリビングの扉が開く。それから数秒の時差をもって蒸れに蒸れたであろう汗の匂いが部屋の壁を沿ってむんわりと流れ出る。決して臭いわけではない。それなりの値段がするシャンプーと柔軟剤の匂い、それらが汗本来の臭いを中和させて、どちらかというと学生時代の体育後に同級生の女子から漂っていたような、男性にとってはドキッとする匂いだ。

 開ききったドアの向こうに、その先にあるリビングを隠すように大きな表面積・体積を有した彼女がいた。明らかに日本製ではないスポーツウェアに、100cmを確実に超えた爆乳を包み、アンダーバストにその端を食い込ませた彼女。びっしりと二段に渡りこびりついた皮下脂肪がお腹の存在感を増幅させ、その膨らんだ腹部から勢いをそのままにどっぷりと構えた大きな尻の山へボディラインが流れている桑山千雪が、出遅れながらも彼を迎える。

「お、よかった。ただいま、千雪」

 玄関を開けた際には見えなかった彼女の姿を、その目に確かめ彼は安堵する。かつてはI字型に伸び、大きく成長した胸と尻に挟まれているにもかかわらずくびれを刻んでいた彼女の腹部は、旦那である彼の目から見ても全く面影はない。への字型に潰れ、かつへそを境に形成された鏡餅のような腹にダラダラと汗が流れている。その汗の出所は肉に埋まった段と段の間や、今や日の目を浴びることのない脇、そしてたっぷりと脂肪を蓄えて丸くなった顔周り。ハンドタオルでは到底吸いきれない量の汗を身に纏った千雪は、息も絶え絶えに彼をリビングに迎え入れた。

「ん?今日もボールフィットファンタジーでトレーニングしてたのか?」

「やっぱり分かっちゃいます?実はついさっきまで熱中してしまっていて…」

 大型液晶テレビに向き合う形で配置された2人かけのソファに、スポンジ素材で作られた軽めかつ両手で持つ大きさのボールが転がって、尻の形に沈み込んだ位置に落ち着いている。昨年国内で販売が開始されて、健康需要から即家電量販店やゲームショップから売り切れ続出の異例の大ヒットを記録した「ボールフィットファンタジー」。動画配信者が1ヶ月間毎日このゲームを使って運動した結果、マイナス15㎏を叩き出した為、ネット上でもその名を知らないものはいない。

 そんなゲームをようやくの思いで手に入れた千雪は、この頃2日に1回、調子が良ければ毎日のペースでプレイし、怠けきった身体に刺激を与えていた。

「良いことだと思うぞ。俺は何かにひたむきに取り組む千雪を尊敬する。千雪が健康でいてくれるならこれより嬉しいことはないかな」

「そ、そうですか…?じゃあ明日も頑張っちゃおうかな…なんて。ふふっ」

 たるみきった上にパンパンに脂肪が詰まった二の腕を気にしていた千雪は、念入りに設定した二の腕重点メニューのトレーニングに熱中していた事を申し訳なく思っていた。だが少しでも身体を動かした事を誉めてくれた彼の言葉に心も暖まる。ポンポンっと頭を撫でられ、一気に気分を良くした彼女は、テレビを地上波放送に戻しボールを片付けるためにプロデューサーに背を向けて歩み出す。

 彼女自身からは決して確かめられない背中は、その何重も蓄えられた肉段を旦那の目に映し揺れ動いていた。

「よしっ、じゃあ千雪。片付け終わったら…これ!一緒に夕飯にしようか!」

 ふぅふぅと息を漏らしながら片付けをする千雪に声をかけ、彼は普段二人で食事を摂るテーブルに大きくMと書かれた紙袋を3つ置く。それまで彼女に見えないように腕を後ろに回して隠していたそれは、ビニール袋から取り出され、出来立ての熱気を放っていた。

「えっ…?いいんですか、それ食べても…」

 紙袋に印刷されたMから千雪はその中身を察する。体重が150㎏を超えた頃から、どうしても満腹にならない強靭な胃袋と食欲を警戒してジャンクフードを控えていた彼女にとっては、久しく嗅ぐことのなかった食べ物の誘惑。片付けを終えると千雪は重い身体を必死に動かして彼の方へと歩み寄った。

「いいよ、最近運動頑張ってただろ?先月の健康診断も体重はまた少し…アレだったけど、特に検査に引っ掛からなかったみたいだし、ご褒美だよ。開けてごらん?」

 常に右肩上がりに増加し続ける体重に反して、その他の数値は全て健康そのものという奇跡の体型を維持している千雪にとっては、食べ物の類いでこれ以上ないご褒美、といっても過言ではない。

 雑貨屋を退職しアイドル業に専念、その後多忙によるストレスからか激太りが一部メディアで報じられたタイミングで「一般男性との結婚」という名目でプロデューサーと籍を入れた千雪は、止まらぬ増量を考慮して外に働きに出ることは選ばず、かつて激太りが報じられた際にもファンでいてくれた一定数の人たちの為に、自身の動画配信チャンネルを設立し、その広告収入で結婚生活の生計を立てていた。

「わぁ!ポテトにハンバーガー、ミルクシェイクも…私、夢でも見ているみたいです…!」

 カロリーの爆弾が千雪の視界に広がる。アイドル時代は仕事柄思う存分食べるなんてことはしなかったが、今日だけは特に、愛するプロデューサーの前だけで満たされるまで食べる事を厭う理由はなかった。

「早く食べましょ、私、口の中で涎がじゅわぁってなってきちゃいました…!」

 満面の笑みを浮かべて席に着く千雪。その姿は日本人で他にいないほど大きな身体をしていたが、微笑む表情と舞い上がった様子はさながら誕生日プレゼントにおもちゃを買ってもらった子どものよう。

「わかったわかった!千雪が喜んでくれて俺も嬉しいよ。それじゃ…」

「「いただきます!」」

 二人で揃って手を合わせ、食事の合図をする。成人男性としては細身の部類に入るプロデューサーの手は、ほどよい骨の浮き出具合で、ゴツゴツしすぎずかといって貧弱でもない様子。一方で成人女性の何倍もの体重を一身に纏った千雪の手はまさにクリームパンやソーセージという表現がぴったりなほど、指の一本一本は肉に包まれパンパンに、そして手の甲までもが脂肪にコーティングされ、赤子の手のようにムチムチっとした握りがいのありそうな手をしている。

「わぁ…ふふっ、あむっ…ん~!久しぶりに食べると、モックのポテト、やっぱり美味しい……♥️はむっ、んぐっ、ふぅ…、お口の中に、たくふぁん…ちゅめこみたく…んふぅ…なりまふぅ…♥️」

 ホームパーティーでもするかのように、大皿に山盛りにされたそれを千雪は太い指先で一つずつ頬張っていく。初めのうちは一本を口に運ぶと味わう様子で咀嚼し、ゆっくり飲み込んでは満面の笑みを浮かべていたが、次第にそのペースは加速。数分もしないうちに両手でかきこむようにポテトを掴んでは、頬肉で埋まりつつある口にそれを詰め込み始めた。元より膨らんで丸かった顔の輪郭が、ジャンクの詰め込みでもはやパンパンの域を超えそうなほど膨らんでいる。

「はぐっ…んふぅ…ごっくん…ぷはっ…♥️もっとゆっくり食べようと思ったのになぁ…手が、止まらなくなっちゃって…。早くしないとプロデューサーさんの分も私が食べちゃうかも…あむっ、ほぐっ…ふぅふぅ…でふ♥️」

「いいよ、俺の事は。今日は最近頑張ってる千雪の為にご褒美を用意したんだから。それに。俺は千雪が笑ってるのを見るだけで元気100倍、なんてな!」

 ポテトを摘まむ指を何とか落ち着かせながら、食事を用意してくれた彼の事を気遣う。だが彼はどちらかというと「自分も一緒に食べる」というよりは「彼女が食べるところを見ながら、時折自分も摘まむ」といった様子で、自分の事を気遣う必要はないと千雪に告げた。

「本当、ですか…?じゃあ、お言葉に甘えて…♥️あむっ、きょうは、んぐぅ…おなかいっぱいにぃ…はむっほむっ、なるまでぇ…たべちゃいまふね…♥️はぐっ、むふぅ…んぐっ、ごっくん♥️」

 前のめりになる形で、大人びた成人女性の雰囲気を損ない兼ねない勢いでポテトを口に掻き込む。もう入らないという限界まで詰め込むと、数回の咀嚼をもってジャガイモと油の塊が喉を通り、皮下脂肪に包まれた彼女の胃袋へと落ちていく。普段は自制して食べ過ぎないようにしているため、長らく感じることのなかった胃袋に食べ物がたまっていく感覚に、彼女は底知れぬ興奮を覚えていた。

「はい、千雪。ハンバーガー。あーんして」

「んぐっふぅ…ごっくん…プロデューサーさん…。わたひ、なんだか…プロデューサーさんに餌付けされているブタさんみたいですね…♥️あーむっ、ほふぅほふぅ、ん~♥️お肉の肉汁がじゅわぁって…♥️蕩けちゃいそうです…♥️」

 垂れ目で穏やかな印象を受ける普段の千雪以上に、今の千雪の目はとろんと垂れ、どこか食べ物とそれを頬張る自身に陶酔しているよう。プロデューサーは紙袋から取り出したビッグサイズの包み紙を剥がし、パティが4段重ねになったハンバーガーを、両手にフライドポテトを持つ彼女の前に差し出した。

 交際関係以上にある男女にのみ許された特権「あーん」。彼は食に夢中になっている彼女の口元にハンバーガーを持っていき、大きな口で噛みつくよう促す。はぐっ、という食らいつく音を立てて、肉段を備えたハンバーガーの4分の1が千雪の口から胃袋へと流し込まれる。

「ふぅふぅ…♥️じゅぼぼぼぼ…!ぷはぁ…♥️甘いミルクシェイクがポテトとハンバーガーの塩味を打ち消して…私、またまだ食べられそう…♥️」

「急がなくていいからな。明日は俺も仕事ないから、時間はたっぷりあるし」

 砂糖が大量に使われたミルクシェイクを細いストロー越しに吸い込み飲む。それまで食べてきたしょっぱい味を中和するほど強烈な甘味。間違いなく太るだろうが、既に大量の贅肉を纏っている千雪にとっては些細な事のようにしか感じられない。味覚をリセットさせて彼女は再びポテトを掴み始めた。

「あむっ、もぐっ…♥️むふぅ…こんなに、食べたら…はむっあむっ、もっとぉ…ふとっちゃう、かも…♥️はむっむふっ、ふぅ…でもぉ…たべたくなって…ふぅふぅ、あむっんぐっ、はむっ、とまらないんでふぅ…♥️」

 激しく興奮している千雪を目前に、口回りを油で汚しかつ時折お腹を撫で回すような素ぶりを見せる千雪にプロデューサーは胸の高鳴りを感じていた。


§§§


 机上にはほとんど欠片程度しか残されていない大皿とくしゃくしゃに丸められたハンバーガーの包み紙が2つ。Lサイズのミルクシェイクが入っていた容器はキッチンにふたが開けられて鎮座。大の大人が5,6人集まって食べるような量の、主にポテトの山をほぼ1人で完食した彼女は、皮下脂肪の内側から押し出すように膨らんだ自身の腹部を撫で、満足げな表情を肉と脂汗のついた顔に浮かべている。

「…ふぅ、げぷっ…プ、プロデューサーさん」

「んっ…どうした…千雪?」

 所要時間約20分でそれだけの量を平らげた千雪と対照的に自身は大して食べていないにも関わらず、完全燃焼したかのような錯覚に陥っている彼は、妻の苦しそうだがそれ以上に幸福感に満ちた呼び声に反応する。

「おなか…ぶふっ…パンパンになっちゃいました…♥️…触って、みます…?」

「え、あっ、おう…。少しだけ、な」

 自身の膨張した腹部を撫で回しながら、抑えきれないげっぷをし、まるで触ってほしいと言う含みをもった言い方で千雪は旦那を呼び寄せた。運動して汗をかいた上に今度は大食いで脂汗を体表に浮かべた千雪のにおい。先ほどまでは体育の後の女子の匂いだったが、今度はそこに若干酸っぱい匂いが混ざり、どことなく吸い付きたくなるような…特異な匂いへと変わっていた。

 プロデューサーはテーブルの向かいの席を立ち上がり、千雪の方へと回り込む。それまでテーブルに隠れてほぼ全貌が見えなかった千雪の腹部は、普段がブヨっとした皮下脂肪とセルライトのシンフォニーで形作られた二段腹をしているのにもかかわらず、この時ばかりは段を失いかけたパンパンに張った様子の巨腹へと変貌していた。一体何㎏のジャンクを詰め込んだのだろう。彼自身が持ち帰ってきた時の袋の重さを思いだし、それがほぼ全て彼女の胃袋へと流し込まれたことを想像すると、彼の内側で何かゾワゾワするものが沸いてきた。

「はふぅ…み、見てください、プロデューサーさん…私のお腹…すっごく、重たくて…ふぅ…パンパンっ♥️」

「うっ…そ、そうだな…!すごい…」

 恍惚の表情とソーセージのように膨らんだ指で汗の浮かんだ自身の腹部をねっとりと撫でてはうっとりとした表情で満足している千雪に、彼は圧倒される。

「さ、触るぞ…」

「はい…♥️げふっ…優しく、お願いしますね…」

ぽにゅ。

 角張った男性の指が丸く膨らんだ女性の腹部に接し、数cmだけ沈み込む。皮下脂肪の層は柔らかく、一方で胃袋で押し出された事により固いお腹。愛する人のだらしない腹部の感触にこれ以上ない興奮が彼の中で渦巻く。

「お、俺…風呂入ってくるよ…!」

 顔を赤らめて足早に千雪のもとから去ってはシャワールームへと彼は駆け込んでいく。若干下半身を庇ったかのような素振りに、千雪は妻として当然ながら、彼の身に起こった変化を察し、小さな声で告げた。

「ふふっ、私もちょっとだけ休んだら…すぐに、行きますね♥️」


§§§


 ざばんと身を沈めると共に溢れ出す浴槽のお湯。髪を両手でかきあげては悶々とした眼差しをシャワールームの天井に向ける。

「俺、意気地無し、だよな…」

 彼女の贅肉と食べ物で膨らんだ腹部を見ただけで興奮を外面的にも隠しきれなくなっている自分が、まるで思春期真っ盛りの男子中学生のように思え、情けなくなる。籍をいれてから1年は経ったが、未だに彼女と身体の関係をもったのは数えるほど。いや、入籍日の1回を除けば、いつも自分の方から恥ずかしくなって、いつの間にか千雪から性的な意味で距離を取っていた。

「どうしようもないくらい、好き…なんだけどな…」

 ボソッとまた声を漏らす。宙に浮かんだ彼の声はシャワールーム特有の反響をもって彼の耳に戻ってくる。好き。千雪の事が好きだ。彼女をスカウトしてアイドルとプロデューサーという関係になった時から、心の奥底では千雪の事を一人の女性として見ていた。やがて彼女が一部メディアに取り上げられて、激太りなどと世間の好奇の視線に晒されるようになって以降、より彼女を守らねばと思った。

 だが、その頃の男気のある彼の姿は今やひっそり影を潜めている。意気地無し。結婚して以降、自分から彼女を誘ったことのない彼にとって、お似合いの言葉だった。

「…そんなこと、ないですよ」

 ガラリと浴室の扉が開く。モザイクガラスになっているため普段なら人影に気づいていたものが、傷心のあまり彼女の接近に気づかなかった。

 衣服を脱ぎ、全身をさらけ出した彼女。食後で未だに膨らんではいるが消化によって普段の二段腹に戻りつつある腹と、その上にブラがなければ谷間も形成されない反面、大きく実っている巨乳。それに備わる大きなピンクの輪。大きく膨らんだ腹部によって下半身の恥部は覆い隠され、そこに見えるのはたっぷりと脂肪を蓄えたパンパンの太ももからふくらはぎの一連の流れ。湯気越しで鮮明な姿とまではいかないが、久しぶりに見た彼女の裸体に、圧巻の迫力を感じつつもなぜそこにいるのかという驚きが彼を襲う。

「プロデューサーさん、いつもありがとうございます。…今日はお背中、流しますね」

 ニコッと微笑み、千雪は若干切れた息で浴室に踏み込み、手に白いボディソープを取る。ネチョっとした粘性のある液体が千雪の手に馴染んでは次第に泡立ち、モコモコの泡が手を覆う。

「だけど、俺…」

 浴槽から立ち上がるもすぐに目を背ける彼に「いいから」と手を差しのべ、彼女は旦那を湯船から上がらせる。

「はい、万歳してくださいね…」

 太い指の一本一本が彼の背中を伝い、脇、脇腹、腰回りへと流れていく。優しさの籠った手、この暖かい手を彼は愛しているのだと思い出した。

「…あまり、溜め込まないでいいんですよ。私、いつでも…“あなた”の事、待ってますから」

 彼の身体に付いた泡を千雪がシャワーで洗い流していく。シャワーの音が浴室に響いているのに、なぜか彼女の声は鮮明に聞こえた。

「千雪…今夜、いい…かな?」

「はいっ…!嬉しいな…プロデューサーさんからそう言ってもらえて…ふふっ」

 彼は振り返り彼女と目を見合わせて言った。目の前に広がるのは彼女だけの特別な躯体。全身が弾力に溢れたその見た目にムラムラを感じつつも、今度は真摯に思いを伝えた。

「ところで…プロデューサーさん?」

「ん、どうした…?」

「良ければなんですが…」

「いいよ、言ってごらん」

「…私の身体も、洗って頂けないかなぁって…思っちゃったり…」

「…!!ああ、そうだな!背中とか、届かないもんな…!ふぅ…じゃあ…」

 一連のやり取りで今度は彼が背中を洗う番に。千雪の背中は150㎏オーバーに相応しいほど、肩から乳、脇腹、腰に至るまでに数段の厚い肉の層が作られている。その一段一段にボディソープを絡ませた手を入れていく。肉と肉に挟まれる感覚。深い段では指が全て埋まるほど深い谷になっており、圧迫感に包まれる。

 触る場所全てが柔らかく、沈み込んだ指が跳ね返ってくる。次第に洗う手は外気に触れることがほとんどない脇の下や内腿へと向かう。

「あっ…♥️んぐぅ…♥️くる、しい…♥️」

 脇を洗おうと千雪に腕を上げてもらうと、自らのパンパンに脂肪が詰まり膨らんだ二の腕の重さに苦悶の表情を浮かべ、吐息を漏らす。その声を耳にしながら、彼はなぜか他の部位よりも柔らかさが段違いに増している脇、内腿、そして尻を揉み洗っていった―


§§§


 夜11時を超えた頃、一室の明かりは敢えて彼の手によって消されていた。彼女がシャワーを終え、風呂から上がってくるのをただソワソワしながら待つ。彼の心拍は普段より激しく脈打ち、この後の展開をシミュレートする。ベッドメイクを終え、千雪と並んで寝られるように買ったキングサイズのベッドが真価を発揮する時がきたのだ。

「お、お待たせしました…」

 寝室の扉がゆっくりと開く。廊下の明かりに照らされた彼女のシルエットは普段よりも大きく、柔らかいものに見える。黒のレースによって整えられたブラジャーは海外製。大きすぎると言ってもいい胸をこれでもかと食い込ませた紐はぎっちりと胸を締め付け、ぶにゅとした肉をはみ出させている。増量の結果でこうなっているのだから、また数ヶ月しないうちに新調しなければならないだろう。

 そこから視線を下に動かしていくと、全裸のように見えたがよく目を凝らすとブラジャーに合わせた黒の下着と共にストッキングとガーターベルトが着用されていた。どこで知ったのか、彼がストッキングとガーターベルトに食い込む肉感を気に入っているということを知っていた千雪は、この時のためにそれを用意し実際に着てくれたのだ。

「…どう、です?…私、似合ってますか…?」

 大きな身体に似合わず、困り眉をしモジモジとする千雪。旦那である男にとってはその仕草すらも尊いものだった。

「も、もちろん…!」

「そ、そうですか、良かった…お腹を持ち上げるのが大変で…着ても似合わないかもなって心配になっちゃいました…」

 ガーターベルトをエプロンのように垂れた腹肉の下に巻き着用していたことを明かした千雪に、彼は内心興奮を覚える。

 それから少しの沈黙が訪れると、ボーッと立っているだけの時間はすぐさま終わり、互いに言葉を発するまでもなく、目配せの後にベッドに腰を下ろした。ミシミシと悲鳴を上げるスプリング。合計すると200㎏は優に超えるカップルの愛の重みを必死に支える。千雪には、旦那の姿がとても勇ましくこの身を預けてもいい存在に映っていた。

「脱がせて…ください…」

 口元をパンパンに膨らんだ手で隠しながら、目線を彼から外して告げる。ベッドに座った千雪の贅肉は主に腹を中心に凝縮され、へそに深い谷を形成する。ゴソッ…というシーツの擦れる音と共に、彼の存在が近づき、背中に埋もれたブラジャーのホックに指がかけられた。

「んっ…♥️あんまり…見ないでくださいね…」

 ブラを脱ぐと同時にボロンと重量に負けて溢れる両乳。先ほど一緒にシャワーを浴びたというのに、今度はあまり見てほしくないという。裸体を隠す湯気はここにはない。あるのはいずれ目が慣れて、無いものになるであろう暗がりのみ。今にも床に落ちてしまいそうな大きな胸には、陥没した乳首が隠されていた。

「あっ…♥️プロデューサーさん…私…♥️」

 ごろんとベッドに横たわる巨体。脂肪が余すところなく付いた超肥満体を目の前に、彼は恐る恐る胸と腹を揉んでいく。手から伝わる圧倒的弾力と快感。それに反応して彼の“本能”も硬くなっていく。

ぶにゅ…♥️どぷっ…ミシミシッ…

ぶにゅ…♥️ぺちんっ…ぼむんっぼむんっ…♥️

 片手に収まらないサイズの片乳は一揉みして撫で回すとこの度に埋もれた乳首がピクッと徐々に反応し立ち上がってくる。ドーナツよりも厚く高密度に蓄えられた脂肪の山による腹肉は、二段腹のうち下の段の方がひんやり冷たく、かつ柔らかい。へそ下が少しばかり割れ始め、更に太るとお腹がお尻のようになりそうなほどだらしなく蓄えられた皮下脂肪は、痛くないように優しく叩くだけでも波打ち、また揉んで放せば揺れている。

「はぁ…♥️はぁ…♥️プロデューサーさん…♥️もっと…もっと一緒に…」

 肉という肉を揉みしだかれ熱くなっていく千雪の奥。やがて理性を抑えるのが難しくなる頃には、彼と彼女の愛は最高潮に達していた。

「ちゆ、き…うぶっ!!ちょ、ちぶっ、き…!ぷはっ!」

 肉を揉みほぐす彼を千雪はブヨブヨの皮下脂肪を纏わせたその極太の腕で抱き寄せる。それまで手だけが接していた二人の肌が一瞬にして密着する。胸と胸の間にプロデューサーの顔は埋もれ、ボディソープと汗の香りをダイレクトに嗅ぐ。両腕を背中に回しても、彼のほどよく筋肉が付いただけの腕は、ウエストを贅肉によって膨張させた千雪の腹に通用せず、脇腹止まりで背中には回りきらない。更には下着越しに硬くなっていた彼のソレは、今や千雪のもっとも柔らかい肉の部位、内腿に挟まれ、突然の事でその快感を認識できずにいた。

ぼにゅ♥️ぶにゅぶにゅ♥️

ミチミチ…♥️どぷっ♥️ぼむんっぼむんっ…♥️

 動けば動くほど肉が身体に触れ、彼の全身を快感が伝う。二人の間に流れる液体は、千雪の汗か彼の汗か、それともシャワーで付いた水を拭き取り損ねたのか、それとも…

「ちゆ、き…千雪…」

「…目が、合っちゃいましたね…♥️」

 彼が胸から顔を上げると、不意に二人の目が合う。暗やみの中でも麗しく柔らかな瞳。トロンと垂れ目にはうっすらと興奮と喜びの涙が浮かんでいた。

ちゅ…んっ…♥️ぷはぁ…♥️

んちゅ…ふぅ…♥️

 何度となくかわす口づけ。絶頂を過ぎ二人の間にぶちまけられた愛は、乾くことを知らない。


§§§


「んっ…んん~…あれ、もう…朝…」

 カーテンの隙間から漏れ出す朝日に瞼を開けさせられる。昨夜の営みは彼の記憶にも鮮明に残っているが、恥じることは何もない。ベッドを見回し彼女の姿を探る。

「おはようございます…“あなた”」

 シーツの上に広がる腹肉に一瞬目を奪われそうになりつつも、頬を赤らめた妻の姿にすぐさま焦点が合う。営みの後、朦朧とした意識の中で身につけた下着。雪のように白い肌とのコントラストが朝日に照らされてよく映える。着ぐるみのように膨らんだ巨躯。千雪自身はもちろんのこと、その贅肉の全てが今の彼には愛おしい。

「おはよう、千雪」

「あの…私、汗臭く、ないですか…?」

 彼女が横たわるシーツの部分はよく見ると濡れた跡が伺える。昨夜互いの体温を頼りに抱き合って寝た為だろうか。いずれにしても千雪だけの汗ではないのは確かだ。

「うーん、俺も汗かいちゃったからな…わからん!」

「ふふっ、お揃い、ですね。シャワー、入りませんか?」

 拒否する理由はない。1人で起き上がるのに苦労するであろう千雪に、彼は手を差しのべる。暖かくプニプニとした手。この手を守り続けられるならば、他に何もいらないと彼は思った。


 彼女が立ち上がると、お互いの体格の違いを改めて互いに認識し合う。かつて激太りが報じられた際に夢に見た幸せ。アイドルとプロデューサーではない、夫婦の愛の形。他の家庭とは異なるそれは、千雪と彼だけの愛の形だった。

 千雪のペースに合わせてゆっくりとシャワールームへ向かう。一本踏み出すだけで波打つ贅肉。再び彼の手で揉み洗ってもらわねば。

 ここから先は二人だけの秘密。だが明らかな事実は二つあった。一つは昨晩の爆食いの結果として、200㎏の大台を超えたことがこの後体重計に乗りエラーが表示されて判明するということ。二つ目は二人がこの日を境に夜、同じ時、同じ暖かみを共有するようになったということだった。



―――――――――――――――――――

桑山千雪

23歳 163.0cm  47.2kg  BMI:17.68

B:89.2 / W:58.4 / H:92.8

26歳 163.6cm  201.7kg BMI:75.36

B:182.9 / W:192.7 / H:191.2


Fin.


202210_桑山千雪SS_縦書PDF版



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