子宮ポットという末路 (Pixiv Fanbox)

夏の猛暑、冬の厳寒。

人の心を動かしやすい季節は、ドキュメンタリー番組が作りやすい。過酷な環境に痛めつけられる様子を安全圏から眺めるのが、人間の本能的な趣味なのだ。

秋に投獄されて、季節が一周しようとしている。日付を見ることが許されない生活だから、ひどい暑さだけが夏の訪れを教えてくれる。あまりに残酷に。

今日は番組の取材が入り、囚人達は朝からカメラの前で草むしりをさせられる。衣服は一時的に全て没収され、私たちは全裸で屈み、惨めな格好で草をむしる様子を晒される。

ある世界的な映像配信企業の独占コンテンツになるらしい。近頃落ち目の売上を戻すために、有料の過激コンテンツ制作に手を出したという訳だ。太陽が照りつける中、一枚の布を纏うことすら許されないのも、その映像作家の指示によるもので、いとも簡単に、私たちは芸術のために浪費されてしまう。

「こちら、刑務所の裏庭に生えているのは、”媚薬草”と呼ばれる特殊な植物です！

なんでも、所内で研究している媚薬の原料となる植物の失敗作で、繁殖力が強く、ここまで広がってしまったようなんです！」

「見てください！全裸で屈み、性器を地面に擦りつけそうなほど近づけて、懸命に草をむしる彼女達を！こんなことが許されるのでしょうか！？」

レポーターが適当に捲し立てる。

今日の草むしりは、ただ羞恥に耐えるだけでは済まない。媚薬草は葉の部分に生えた細かな毛から、媚薬成分を分泌しており、全裸で屈むことで、どんなに注意していても性器に直接触れてしまう。しかし、クリトリスや小陰唇を媚薬草が撫でても、決して絶頂してはいけない。草むしり中に絶頂して粗相をすれば、普段より大きな違反点数が科せられてしまう。

「オおォン！！？」

遠くで絶頂の声と、潮を吹く音が聞こえる。

限界スレスレで耐えている性器が疼いて、自分も全てを捨ててイきたくなる。唇を噛んで、必死に草をむしる。手に擦り傷がついて、媚薬が身体に染み込んでいく。

昨日の夜、風呂場（女囚洗浄室）で看守達たちが噂をしていた。今日の草むしりで違反点数が溜まり、２種に堕ちる囚人がいるはずだと。それが私にならないように、必死で耐え抜かなければ...

（２種囚人：女囚の中でも傷物や価値の低下を判断された者の格付け、主に死を厭わない過酷な実験や動物の精液採取などに子宮を使用される。刑務所では１種から２種への移行を「人間を辞めた」と称する。）

ここで、どんな目に遭っても、もう一度舞台に戻りたい。アイドルとしてやり残したことが沢山ある。お腹の番号のせいで、水着はもう着れないけど...

限界まで媚薬草に擦れて、赤く腫れたクリトリスが歩くのに支障をきたす頃、９時間にも渡る草むしりが終わった。私たちが整列して所内に戻っていく中、一人の女の子が、カメラを持った人達と一緒に別の場所に連行されていくのを見た。違反点数が溜まっってしまったのだ・・・

　　　　　　　　　◇

女囚たちに、新しく２種となる子の末路を見せるのは、恐怖支配の一環である。

「これより、囚人番号7の格付けを２種囚人へと移行する。以後、お前は人間ではない。衣服の着用および言葉の発声は緊急時を含み一切認めない。あと２ヶ月で刑期満了の予定であったが、２種への移行に伴い、期限を取り消すものとする。」

自由まで後少しのところで、全てを失った彼女は、大粒の涙を落として絶望していた。

「これより7番は媚薬草用の子宮ポットとして使用する。最後に人間を辞めるお前に、これからのことを教えてやろう。

この媚薬草は今日むしっていた物とは違う、強力な媚薬の原料となる新種の植物だ。これを子宮に植え付けて根が定着すれば、どのような技術を持ってしても、二度と取り除けない。子宮内壁から滲む愛液を栄養として与える肉花瓶として、お前は一生を捧げるのだ。」

涙ぐむ女の子には悲しむ時間も与えられず、研究員達に拘束されて大きな植物ポットに埋め込まれた。首には声帯制御のための首輪を付けられる。呼吸や絶叫は可能だが、人間の言葉を発しようとすると喉に痛みが走る仕組みだ。

彼女はやがて言葉を忘れ、人間ではなくなっていく。

１ヶ月もすれば、やわらかな花瓶が完成するだろう。

私は目の前の光景に、震える足を押さえながら、自分の檻へと戻った。

涙ぐむ女囚たちが鼻を啜る音が、今日はいつもより、廊下に響いていた。

（数日後...）

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