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ベアセス:ガ=インの森。……報告にあったのは痺れや幻覚作用の花粉を撒き散らす植物、それに人体を飲み込むほど巨大な植物系魔物、か。

この成功率の低さからして、厄介な仕事になるのは間違いねえな。

ちょうど出れる野郎は――こんだけか。

……どいつもこいつも腕は良いが、植物系の魔物を相手にさせるのは向いてねえな。

………。


おっし! 最近腕も鈍ってることだ、久々に俺が出るとするか。

ちょうど試したい「アレ」も使えることだしな。



エルフが管理する平和な森……とまでは言わないが、ガ=インの森はどこにでもある静かな森に違いなかった。

小動物が多数。魔物は小型ばかり。空気中の花粉はさすがに多いが、予めギルドで飲んでいた『魔除けのヴェール酒』が効いている。

……強いて文句をつけるならば、この蒸し暑さくらいだろうか。


「ふぅ……くっそ、汗臭え、青臭え、おまけに酒臭えっと……一人できて正解だったな」

ベアセスは毛がみっしりと生えた男臭い腕で、額に浮かんだ汗を拭った。口髭からは昼だというのに酒の匂いがしている。我ながらそれがなおのこと暑苦しい。


勿論ベアセスは伊達や酔狂で酔っているわけでも、ましてや中毒者というわけでもない。ベアセスはギルドマスターとして、そして酒場の店主として、西方東方問わずあらゆる冒険者を、そして酒を取り扱っている。

任務に適した薬酒の活用は、彼の持つスキルの一つといっていいのだ。

報告書の内容からして幻覚作用や麻痺が予想されたので、予めそれらから身を守る酒を飲んでおいた。効能は出ている。だが、だからこそ想定外の事が起きていた。


「まさかここまで呑気な森だとはな、うっぷ、ちょっとばかり飲みすぎたぜ」

予想される困難のため、いつもより酒量を多めにしたのが仇となっていた。

木々やキノコから発せられる花粉や胞子はたいした量ではなく、これならば対策なくともベアセスほどの体格の男ならば平気だっただろう。

そのうえ戦闘すら一度も起きていない。そもそも魔物がいないのだ。大の男を一人飲み込めるほどの植物など、影も形もありはしない。


「あー……クソ、溜まっちまうぜ」

体の中の酒が過剰にベアセスを強化しているのを感じる。この滾る力のぶつけ先がない。

極めつけはこの熱気である。体内の酒ばかりが残り、ひたすらに暑く鬱陶しかった。


「……しかし、方角も距離もわかったもんじゃねえな」

ベアセスは空を見上げて独りごちた。

頭上にあるはずの太陽は枝葉に覆われほとんど見えず、昼だというのに薄暗い。だだっ広いのにまるで密室だ。植物の発する濃厚な匂いが閉じ込められている。息をするだけで汗ばむ温度で、一歩進むごとに体がぬかるんだ大地に沈む。歴戦の冒険者であるベアセスですら息が上がっていた。


目当てである『インシデア草』は実が淡い緑の光を放ち、暗い森では虫を引き寄せ受粉を促す性質を持っているという。


「どこだ~、お~~い」

しかし、行けども行けども、どの木々にも光など見えない。

それどころか、魔力や瘴気もずいぶん少ない。

平和だ。いや、平和すぎる。

この森はもっと……踏破不能とまでは言わないが、魔物も動物もいたはずだ。


警戒はしていた。

しかしそれ以上にうんざりしていた。

久しぶりの戦いに血を沸かせていたというのに、何時まで経っても何も起きない。

これではますます鈍ってしまう。

そんな事を考え始めたときだった。ベアセスは視界の隅に、かすかな光を見た。


「あれは……」


森の奥深く、その光はあった。

緑と黄色の中間のような淡い光が、ぽつり……ぽつりと明滅している。

鬱蒼とした木々に隠れた大樹の根本だ、太陽光が指しているわけではない。あきらかに植物それ自体が光っている。

インシデアだ。


「………」

呆気ない。

なにかある。

この程度の依頼で、これまでの冒険者がてこずってきたわけがない。


ベアセスは周囲を見渡した。息を止め、拳を握る。

花粉か、魔物か、それとも他のなにかか。近くにいるかもしれない。いや、狙っているかも知れない。


梢が風に吹かれ、枝がガサガサと音を立てる。

ベアセスは警戒を怠らず、一歩……前に出た。






(………)

何が起きた。


一瞬で視界が暗くなり、体が浮遊感に包まれた。そして……そして、どうなった。

ベアセスは止めていた息を吸い込もうとした。そして気がついた。

「ガ……グガァ……!!」

呼吸ができない。

自分は今、水の中にいる。

いやそれも違う。

水ではない。

熟成された蜂蜜酒のような、甘い芳香と突き刺すような酸味。

そんな液体の中にいる。


(警戒は怠ってなかった筈だ、横も、上も……後ろも……まさか!)

ベアセスは『上』を見上げた。空が見えない。どころの話ではない。

そこは今まさに、ベアセスを閉じ込めようと花弁が塞がろうとしていた。


下だ。


異様な湿気。

ぬかるんだ大地。

そして少なすぎる魔物。

ベアセスはもう会っていたのだ。冒険者達を貶めていた敵に。


(俺は……魔物の上を歩いてやがったのか!?)


地面が湿っていたのではない。植物達は大地の奥深くで育っていたのだ。


食精植物ユーボス。

緩慢な動きの蔓で人間を捕らえ、袋状の体内に取り込み、花弁の蓋で閉じ込め、酸性の体液で溶かす。

子供でも知っている有名な植物型の魔物だ。


……そう、有名だ。こんな、地面に隠れて冒険者を襲うなどという生態、ギルドマスターであるベアセスですら聞いたことがなかった。


(クソッ、這い上がれ俺ッ)

ベアセスは現状を把握すると、目の前の壁に手をかけた。無駄なことはすぐにわかった。壁面……植物の体内はぬるぬると掴みどころがなく、ベアセスの握力を持ってしても指に引っかかりもしない。


(ガ……うぐぁ……………と、溶けちまうッ! ……このままじゃ…………!!)

そもそも力が入らない。

体と意識がふわふわと浮き上がるように定まらない。

装備が溶ける。体に纏った布がボロボロに崩れて消えていく。


溶ける……。……いや違う、体は正常だ。ただ意識が、脳が痺れる。溶けているのは――


(俺が、………『俺』が溶ける……ぅッ……!)


溶解されて死ぬことや、窒息死を恐れる必要はない。だからこそ恐ろしかった。

この魔物は食精植物ユーボス。人間を閉じ込め、抵抗力を奪い、彼らから魔力精力体力を吸い尽くすのが目的だ。そうして繁殖するのがこの魔物なのだ。

溶かしているのは、冒険者ベアセスとしての俺なのだ。


(く……あぁぁぁ……そんなザマに、なってたまるか、たまるかよぉぉお……)


全身の力を振り絞る。しかし自慢の拳や投げ技はなにも通用しない。

くらくらする。

顔がとろける。

街一番、いや国一番の酒豪であるこのベアセスが、だらしなく酔い潰れた親父のように首が座っていない。


(俺がぁ、この俺がぁぁ……酒にぶち込まれたみてぇに……っ、熱いぃ……体が奥から……熱いぃぃ……。ど、どど、どうにか、なっちまうぅう………)

この蜂蜜酒のような体液が、肌から口から鼻からケツから、全身に染み込んでくる。自慢の拳が緩む。鍛え抜かれたガタイに蔓が絡みつく。男の中の男といった巨根に性器のような植物が吸い付いてくる。

(あ、ぐぅ……ユーボスッ……そうだ、コイツは、ほおっておくとぉ……一生分の種汁を吸い尽く……すぅう……ッそんな、俺の一生分……だとぉ、ど、どんだけの量が……ッ、俺の、デカいタマと竿……一生分……いっしょううう……っ)


既に思考が歪み始めていることなど、ベアセスも植物も知りはしない。

植物はただ、己に刻み込まれた生きる術と食事をしているだけなのだ。


(うっ、おぅ……おぉぉう……ッッ♥)


植物はもっとも食べやすい形にベアセスを変えていく。

四肢を縛り、股を開き、竿にびっちりと絡みつく。

そんな屈辱的な姿にされても、ベアセスはとろけた顔がやめられない。


(ど、どぉすりゃ……いいんだぁぁぁぁ……♥)


解決策など浮かぶわけがない。

既にマトモに物を考えることすら困難になっていた。


(ぬひぃぃいい♥……いつのまに……こんな、ガッチガチにぃ……絡みつきやがってぇ……こんな、植物ごときが……この俺にぃい……ぬぅぅ♥♥)


それは、傍から見ればなんとも滑稽、無様で、そして皮肉な姿だった。

ギルドマスターであるベアセスが、植物相手に腰を振っている。

酒場の店主であるベアセスが、酒のようなものに漬け込まれている。


(ぬひぃぃ……♥ 俺の胸に、な、なな、なにしやがるつもりだぁぁっぁ……はぐぅぅう♥)

胸板に絡みつく蔓がベアセスの乳首を柔らかく、しかし鋭く刺激する。


(チンポに……あぁぁ絡んできやがるぅぅう♥♥)


蕾のような植物の一本が、ベアセスの亀頭と雄竿をヌルヌルと飲み込もうとする。


既にいつでも精液を飲み込める姿になっている。


完全に束縛は終わり、ベアセスは既にまな板の上の魚だ。


(ふぎぃぃぃいい♥ やべえ気持ちいい、乳首もチンポもきもちぃぃい♥♥)


だというのに、ベアセスはただ喘いでいるばかりだ。

与えられる刺激に対する反応。ただそれだけしかできない。

本能だ。

植物がこうするのも本能ならば、快感を与えられた雄がこうなるのも本能だ。

ベアセスというベテランの冒険者が、次第にただの雄に貶されていく。


(あぁぁ、チンポが、チンポから出る、出しちゃいけねえ……はず……なのにぃぃい♥♥ 竿がきもちぃぃぃぃ♥ くそぉぉおきもちぃぃい♥)

知性が失われつつある頭に、射精の快感が押し寄せる。

射精。

イキたい。

出したい。

それに対抗するように本来ならば射精を止める命令がくだされるはずだった。魔物に搾り取られて精液を吐き出すなど、男として、冒険者として、本来あってはならないことだ。


(な、なんで、なんで出しちゃいけねえんだっけぇ、わ、わかんねえ、きもちぃぃ、わかんねぇえ、ああぁぁ出る、デそう、出しちまいそうぅぅぅだぁぁああ♥)


だが、射精を止める命令はほんの少しも脳から湧いてこなかった。


これが植物の目的だ。

知性を奪い、快楽を与え、射精をするだけの存在へと変える。

植物の一部となるまで、繰り返し繰り返し。

歴戦の冒険者であっても、既にその運命には抗えない。


(ぁぁぁ出るぅうう♥ チンポからどくどくでちまウゥゥう♥♥♥)

そしてベアセスはあっけなく射精した。


植物にベアセスの溜め込んだ種汁が一気に注ぎ込まれる。

その量も勢いも見事なもので、雄であっても雌であっても眼を見張るようなものだ。


(ぬあぁぁあ……イッたばっかりだってのにぃぃい……ぬおぉぉおお♥♥)


しかし植物は喜びもしなければ、驚きもしない。ただただ上質な獲物を逃すまいと、より拘束を強めただけだった。






それからベアセスは二度目、三度目と射精をさせられ完全に正気を失いつつあった。


既に自分がどこでなにをしているかもわかっていない。

射精ができるか、できないか。

その程度のことしか考えられないほど、植物の体内に組み込まれていた。


(そんな、何発も、デねえ、でねえよぉお)

ゆえにこの拒絶も、ベアセスの怒りや誇りからくるものではなかった。


ただただ、本当に射精ができないから。その拒絶でしかなかった。

これ以上は気持ちよくなれない、射精などできない。肉体には限界がある。紛れもない事実だった。


事実、だった。


(な…………なんだ………)


蔓が搾り取る力を抜いた。

開放された。そんなわけはなかった。

今まで種汁を吐き出す股間に集中していた蔓が、今度はベアセスの尻に集まっている。


(!!?)

それはなんの用意も遠慮もなく、ベアセスの逞しい尻穴へと入ってきた。


(は………ひっ!?)


何が起きた。

ベアセスが理解するより早く、蔓が奥にズルリズルリと潜り込んでくる。


細いものが一つ。

二つ。更に増える。ベアセスの屈強な尻穴を進んでいく。

それは一定まで進むと、コブのようなものに成長を始めた。

栓……とは少し違う。棘……とも違う。

ベアセスの体を優しく押し広げ、そして突き上げる形状へと変わった。そして――



(ふ……がぁぁぁあッッ♥ ケツがぁぁあぬはぁぁケツ、俺のケツが、な、なんだぁぁきもちぃぃぃいいだとぉぉおおッッ♥♥)

広がる。押される。尻が植物に満たされる。

それと同時に、体内にも植物の溶解液のようなものが流れ込んでくる。


溶ける。溶ける。

外から内から、ベアセスという男が溶かされる。

体が再び熱くなる。


(あ……出る、出せる……♥)

そして唐突に、再び精液が込み上げてきた。

精力剤などという生易しいものではない。強制的な発情と改造。異常なものを注がれている。

しかし、それを異常だ、恐ろしい、おぞましいと感じる知性はいまのベアセスにはなかった。


(また、いける、もっと、きもちよぐぅうぅ♥)


ギルドマスターベアセスは顔に喜悦に歪めさせまるで誇るかのように腰を振った。

再び固くなった竿が上下に揺れる。

そこから先走りが溢れ、植物たちに吸い込まれいく。


それを認識した植物たちが、再びベアセスのチンポに集まる。


(あ、あ、でる、また出る、まだ出る、いつまでもッおぉぉぉお♥♥)

ベアセスは抵抗することもなく、再び植物たちに自分の精液を捧げ始めた。




――ベアセス失踪から一週間。


救援はやってきた。

彼が旅立つ際、万が一を考えて飲んでいたものが役に立った。


『魔除けのヴェール酒』

それ自体に含まれる抗魔力は結局役に立たなかったが、だからこそ体内に残った薬の効能が、ベアセスの『活力』と『体力』を漲らせ、結果……地面から異常に発せられる力が発見され、この森に住まう魔物の異様な生態が明るみになった。


引き上げられたベアセスは暫くの間放心していたが、そこはベテランの冒険者、回復魔法の治療を受けただけで正気を取り戻し、フラフラとした足取りのまま自分の手でインシデアを入手した。


依頼は達成した。

ベアセスの目下の悩みは、敏感になってしまった乳首と尻。そして……ギルドに対し箝口令を敷くべきか、広く知らせて警戒を促すか、という答えの出せない二択を抱えてしまったことだった。


ベアセス

習得:植物知識(少)

習得:体力上昇

習得:乳首感度(中)

習得:尻穴感度(中)



ベアセス森f

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