王子への手紙 -聖騎士オスリック発情聖印- (Pixiv Fanbox)
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教会での日々は如何でございましょうか。
神父は私の幼少の頃の友であり、信じられる男であります。まさかお辛い日々などお過ごしではないかと思いますが、もしなにかお困りであれば、どうぞ神父になんなりとお申し付けくださいませ。
王城内の日々に比べ、食事の用意や寝起きの支度、その他雑務など日々やるべきことに追われ、さぞかしご不便なこと多きことでしょう。
そんな中、他の教会の子供たちに混じり、むしろ率先して働いていると聞きました。
このオスリックは感涙致しました。
なんとご立派なことでしょうか、亡き御母上もきっとお喜びです。貴方様のお人柄と才覚があれば、きっと同年代のご友人もおできになったことでしょう。
……そのような御方がどうして祖国を追われなければならぬのか……。我が力及ばず、まこと悔いる気持ちばかりであります。
しかし、神は意味なき試練は決してお与えにならぬということです。
王子。
貴陛下が歩まれるこの道は、必ずやいつの日か報われることを、私は確信いたしております。
このオスリック、微力ながらお手伝いを申し上げる覚悟でおります。
日々邁進いたしているギルドでの仕事も、ようやく大きな案件を斡旋していただけるようになりました。
武具や人々を集め、いつか聖王都へと凱旋し、必ずや――――
手紙を書いていた手を止め、騎士オスリックは神妙な面持ちを浮かべていた。蝋燭明かりに手紙を透かし、自らが書き上げた文章をジロジロとにらみつける。
「………うむ」
そうして顔に笑みを浮かべて、蜂蜜色の短い頭髪をボリボリと掻いた。
「……いやぁこれはまた失敗だ。王子という言葉は使わぬほうがよいのであったな……! ううむ、また書き直しか、コレで六度目。なんともはや、先日討伐した野党たちよりよほど手強いものだな、手紙を書くというものは、ハッハッハ……!! ぬぅ……」
笑って、困って、また笑って、紙をくしゃりと小さく丸めて、騎士は見事なコントロールでゴミをくずかごへ放り投げた。
「さて……と」
手紙を書き始めた頃に灯した蝋燭は随分短くなり、月は高く登っている。
しかし騎士はへこたれることなく、苦手な執筆作業を再開した。
「しかし、王子は王子……ううむ……他になんとお呼びしたものか……難しいものだ」
彼は困ったような笑みを浮かべて、大真面目な顔で真っ白な紙に向き合った。
その姿に恐ろしさなど微塵もない。まさか彼が、祖国では大罪人として指名手配されていることなど、知らぬものには想像もできぬ姿だ。
――元聖騎士オスリック。
血まみれの聖騎士。
騎士の名を騙る大悪党。
王冠を砕いた者。
国を裏切り、王子を殺し、どこぞに隠れて次なる獲物を探す、人の姿をした鬼畜。
……などと噂されている男。
これらはみな、彼自身が撒いたフェイク情報だ。
すべては敬愛する王子……己が殺したことになっている祖国の第二王子のためだ。
暗殺されかけた彼を教会に匿い、いつの日かあるべき場所へとお導きするため。オスリックは先王も、親類も、そして騎士の誓いにも背を向けた。
その王子のためにギルドで慣れぬクエストをこなし、金銭を蓄え、いつか祖国へ戻らんとする。
その道程はまだ半ば。
いや、はるか遠いものだった。
「ぬぅう、この羽根ペン。掛けられた魔術により、軽やかに言葉が奔るという話であったのだが、ぬぅぅ……吾輩はよほど魔力というものと相性が悪いらしい」
オスリックは太くゴツゴツとした指先で残念そうに羽根ペンを回した。
露天商の口車にのって購入した羽根ペンは、少しでも魔術に明るい人間であればなんのまじないも、加護も呪術も掛けられていないものとわかるものだ。
そもそも、人並みに人を疑う心があれば、こんなものは購入しない。
しかしオスリックは少しも疑うことなく己の『特異体質』なのだと嘆いた。
「しかしこれで諦めがつく、やはり吾輩はもっと質素倹約に努め、王子をお迎えする日を少しでも早くするべきであるな」
国に帰るためには、なにはともあれ金が必要だ。
信頼に足る護衛。
教会への寄付。
門番への賄賂。
そして何より、第一王子との関係修復。
教義と騎士の教え以外はとことん無教養なオスリックであっても、言葉を尽くせば解決する事態でないことは重々理解していた。そのためには、いわゆる金が必要なのだ、と。
「諦めぬぞ! この体に流れる血の一滴まで、王子のためになればこそ、だ!」
オスリックは力強く拳を握りしめた。その手の中で音もなく羽根ペンが折れた。
「ぬぁあああこれで三本目だ!!」
夜の宿に、押し殺した野太い悲鳴が響いた。
それからまた執筆を再開したオスリックだったが、その進みは以前よりさらに遅いものになっていた。
集中力切れ、ではない。
そもそも、羽根ペンを折るような失態も、彼の馬鹿力ばかりが問題ではなかった。
「…………むぅぅ……ッ」
ただ座って手紙を書いているだけの騎士は、よく見れば全身汗だくだった。息は荒く、筋肉は強張り、顔はわずかに赤面している。
「ぬっぅうう……ま、まだ前回の発作からそう時間は経っていないと、思ったのだが……むぅぅぅ……」
オスリックはたまらぬといった顔で、几帳面に着込んでいた鎧の留め金を外した。自らを縛り付けていたかのような鎧が外れ、中から白く筋肉と、短い体毛、そして薄っすらと発光する『紋』が現れた。
「ぬぅ……たらまんな、まったく、困った、ものだ……なっ……」
股間の上。
陰毛が生い茂る筈の場所で、魔力の塊が輝いている。
「むぅ……さらに、強く……っ……ぐぅううッ!」
その怪しい光が強まると、オスリックの屈強な肉体が仰け反った。
タイトなスーツに包まれた体から湯気のように汗が昇る。
匂い立つそれが自らの鼻に入ると、男の酸っぱい香りに混じって、甘く痺れるような匂いが混じっていた。今日も。
「ぬぅぅう……」
手紙の執筆に集中していたおかげで収まっていたものが、意識した途端一気に表に出る。
興奮、情欲、発情。
様々な言葉で言い表せるその症状は、たった一つのシンプルな結論に至る。
つまるところ、オスリックはたまらなく、勃起していた。
「むぅう……王子、吾輩は耐えて見せます……ぞぉぉ……」
これは、彼が異常な好色なのではない。
これは、彼が魔術に掛けられたからでもない。
彼を苦しめているのは、聖騎士の誓いの副作用だった。
王国の騎士たちが皆肉体に刻んだ誓い。
禁欲、忠誠、正義を守ることで、彼らに類稀なる力を与える国を挙げての大魔法陣である。
その一端が、彼の股間部分を苛んでいた。
「吾輩の……こ、ココが……どれほど、苦しもうと――すべては……すべてはッ……ぬぅぅ♥」
オスリック自身は、今でも正義と忠誠を護っている。
だが、今の彼は国を裏切った逆賊でもある。真実はともかく、少なくても人々の中ではそうなっている。
そのありえない状況が契約に歪みをもたらし、本来ならば消える筈の聖印が逆の効力を発揮しているのだ。
「ぬぅぅ……ふぅぅ………、チンポ……がッ、ああぁ!!!! ち、チンポなどと、口にするとは、な、なんとはしたないことだ、チンポ、チンポ、チンポ、などとッ……♥」
即ち、欲情と退廃の加速だ。
オスリックは自分の肉棒を握りしめ、いやらしい腰の動きでそれをブルンブルンと震わせた。
「むぅぅう……♥」
その光景に戸惑いを覚えると、それ以上の快感の興奮が込み上げる。
聖印が、聖騎士を、邪なる者へと変えようとしている。
一日働いた汗臭さや、逞しき肉体に興奮するような、濁った興奮で頭がパンクしそうだ。
「あぁ……はぁぁ……♥」
ふと……オスリックは握りしめていた羽根ペンを思い出した。それを見つめる目が、とろんとした情けない形に変わる。
ああ、吾輩の、吾輩のこのデカチンポを……これで……これで……ひと撫でしたら、どれほど気持ちいいだろうか。
ああ、そんなことはしてはならない。
そのような、道具で快楽を求めるなど、聖騎士にあるまじき行いだ。
欲情、禁欲、そして興奮。
すべてが脳内で同時に発生し、ぶつかり合い、弾け、そして唯一だけが残った。
「は……はひっ……」
腕が下半身へと伸びる。
「ぬぉぉおお、おぉぉぉお♥♥」
オスリックは柔らかな羽毛で、自らの勃起の裏筋を撫でた。
「こ、このような刺激ぃいぃぃ♥ わ、吾輩初めて、初めて味わってしまうぅううふうぅうう……あふぅぅ、なんだこのムズムズはぁぁあ……はひぃぃい……チンポがぁぁあ♥♥」
オスリックは下半身をバタバタと激しく情けなく慌ただしく動かし、全身で悲鳴を上げた。
聖印がより激しく光る。
「あぁぁ……♥ このような行い、許されない、許されない……が、とまらないぃぃい♥♥」
オスリックの雄々しい体が、僅かな羽根と、少しの聖印に支配される。
彼が従順な騎士であればあるほど、その輝きは強くなる。
「ハァァ……はぁぁ……王子、吾輩は、断じて……断じて国を……人々を、貴方様を裏切ったわけではありませぬぅう……ただ、ただチンポが、チンポがどうしようもなくぅう♥」
自らの命よりも大切なものに釈明をしながら、オスリックは興奮と快感で涙を浮かべた。
「吾輩は、絶対に……絶対に、こんなものには負けませぬぅう♥♥」
オスリックは力強く宣言した。チンポを激しくいじめながら。
先端から涙のようにダラダラと先走りが溢れる。
睾丸が激しく精を作る。
全身から汗が弾ける。
だが、こんな有様であっても、オスリックの言葉はあながち虚言や妄想ではなかった。
実際、教会や魔道士ギルドに頼めば、この聖印の除去……或いは低減は難しい話ではない。聖印は呪いではなく、誓いにより刻まれたものだからだ。
だが、オスリックはそうしなかった。
自らがいやらしい姿を晒すこと、毎夜の如く乱れること、そういった己のプライドが傷つけられることよりも……情報の漏洩や、力の弱体化を嫌ったのだ。
たとえ毎晩、体が疼いたとしても……。
王子のために、耐える。ただ黙して、この興奮と淫猥の渦に耐える。
それがオスリックの今の「誓い」だ。
「そ、そうだ、我が名はオスリック……ッ、誓いをたてたる騎士の中の……騎士なりぃぃいッ♥」
そう吠えると、オスリックはガッチリと腕を組んだ。
耐える。耐え抜く。欲望に負けることはない。
「!? はぁぁ……ぬぅぅう昨日よりも、一昨日よりも、激しく……あぁああ吾輩の全身が……くるぅう、狂うぅぅうッ♥」
だが、射精寸前までいじめられた肉棒は、既に手遅れなほど勃起していた。それは、自らの誇らしさと屈辱を味わうだけで、極上の快楽を得てしまうほどに。
「ハァ……ハァ……チンポ……チンポ……ぉぉ♥♥」
いやらしい言葉がほとんど無意識に口から出溢れる。
頭がそれ一色に支配される。
チンポ、チンポに負けてはならない。
どんなにチンポが気持ちよくても、チンポがグチュグチュ先走りを立てていても、いやらしく腰を振りたくとも、ケツの奥が疼いても。
負けぬ。騎士は負けぬ。負けぬのだ。
「おぉッ、おぉぉ♥ な、なぜ、何故だ、吾輩は耐えようと……ただ耐えようとしているだけ、でッぬぉぉお♥♥」
だが、そうして力強く騎士としての誇りを見せつけた瞬間にこそ、最大の「波」がオスリックの全身を貫いた。
「むぅう♥ な、なぜだッ我輩は――逞しく、雄々しく、騎士らしく耐えようとしたのだぞぉお♥ 我がチンポよ、何故何故だぁぁ、我が騎士チンポォォオ♥ 騎士チンポよぉぉおお♥」
射精。射精。
射精してしまう。
オスリックは自らを裏切る自らの勃起チンポを睨みつけた。
その太さ、長さ、そして匂い。
芳しいその雄を嗅いだ瞬間、オスリックの全身が痙攣した。
「おぉぉお♥♥ 騎士――チンポぉぉおッッッ♥♥」
それは激しい騎士の雄叫びより、なお激しい雄汁の噴出だった。
聖騎士の敗北と誓いは射精となって、オスリックの黄金の頭髪に、髭に、そして全身に飛び散った。
「あぁ……手紙を……ハァ……ハァ、王子……王子……」
射精から数分。
正気を取り戻したオスリックは、両手を丹念に何度も何度も洗うと改めて中断していた執筆に戻った。
背中を丸め、息を荒げ、少しばかり腰を浮かせて小さな椅子に腰掛けた。
王子……どうかお体にだけはお気をつけください。
もしも厄介な魔法に掛かったら、すぐに神父にお申し付けを。
どうか王子は、苦しみや誘惑から逃れられますように。
このオスリック、それだけを願っております。