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俺のすべてを変えたのはあの広告だ。


放課後の体育教官室で運動会のお遊戯に使う曲を探していた時だった。

動画をタップすると広告動画が再生され始めた。俺はいつものようにスキップの表示をタップしようとしたのだが、なぜだかその気にならない。

その気にならないどころか、俺はその広告に釘付けになった。

カラフルな砂嵐とランダムな電子音、広告としては変だ。

気づいた時には指先一つ動かせなくなっていた。

脳のすべての機能が停止し、この映像を受け取る視覚と聴覚のみが鋭敏になっていく。

砂嵐、電子音、チカチカと爛々と光る。


異常な事態が起きていたのかもしれないが、全く不快感はなかった。

それどころかノイズにしか思えなかった動画が俺の脳の中でクリアになり、感情と感動を使命と運命を隅々にクリアにして、額が熱い、何が一番大事なのか気付いたのだ。


これは天啓だ。

脳の中にイメージとして、大きく文字が現れる。

ペニス。

ペニスだ。


体が動くと気付いた時には外はすっかり暗くなり、俺のペニスははち切れんばかりに勃起していた。

明日から俺の使命を果たす日が始まるのだ。



「今日の保健の授業は先生の体を教材にするからな」

男子生徒のみになった教室で、ついに自慢のペニスを生徒たちに披露する。

この一ヶ月の間、今日という日のために俺はあらゆる方法でペニスを鍛錬してきた。


「どうだ、先生のはお父さんのチンポよりもペニスだろう、お父さんのチンポサイズを知らない生徒は今夜確認して連絡ノートに書いて提出しなさい」

生徒たちに見られると途端に誇らしさと、脳に光と音が広がっていく。

「ペニス……ペニスペニス……チンポでなくペニス、究極・最強・最善のペニス……」

へそを超えて男の塔が目覚めていく。

これこそ広告なのだ。男としての広告、男を誇示する男の象徴でありすべて。

男として生まれた俺はペニスとして、世界に存在を誇示しなくてはならない。

ペニスの生き様はペニスを大きくすることでしか達成できない。


呆けてはいられない。

「こ、こほォ!こうして先っぽの亀頭をぉ、磨くとっ!ペニス全体が天を衝けと命じるッッ!ほっ、ほっ、ほっ、どんどんこれででかくなるん、だ、ぞっ!!」

広告として自身のペニスの次に愛する生徒たちが、立派なペニスになるための術を伝えてなくてはならないのだ。

そして、ペニスとして生きる幸福を今のうちに気付かせるのだ。

「どうだッ!これだッ!全力全開!さぁ!みんな音読だ!」

授業が始まる時、俺は生徒たちに指導していた。

先生のチンポはでかい

先生はペニスすぎる

合図とともに音読するのだ、と。

あまりの素晴らしいペニスぶりに呆気にとられていた生徒たちも一人、二人と音読を開始する。

俺の指導が、ペニス広告が生徒たちに波及していく。

ペニスを称賛している。

「お、おぉぉおおおぉぉぉぉぉおおおぉぉぉぉおおおお!?」

遺伝子拡散液が、出る、でるでるでるでる、出ちまってる!

ペニスとしての最大の役目である遺伝子拡散用液が、脳の中のキラキラを凝縮させ教室内へと放たれる。

毎日大量に放出し、遺伝子貯蔵庫に叱咤をかけ、そして全て飲み干し循環させてきた濃厚特別汁だ。

教室内が自身の種汁によって満たされていく。

そして床にぶちまけられた遺伝子拡散液は、やがて気化し空間を孕ませ、次世代のペニスたちを生むのだ。


ペニスに血液が集中し付属品となった体が最早不要に思えた。

永遠とも思える射精を終え、俺は自身の遺伝子の海へ倒れ落ちた。


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