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地下一階 湯~とぴあ大浴場。

各国の風呂を再現した多国籍風呂というのがコンセプトで、かなり広々としたフロアだ。

中でもフィンランドのゾーンは冬の夜をイメージした面白い内装になっており、フィンランド名物のサウナ小屋を模したものがドンと建てられていた。

朝からサウナに来たのは考え事がしたかったからだ。

このホテルに来てから、おかしな体験ばかりしている。筋骨隆々の男性たち、しかも家庭を持っているような「しっかりとした男性たち」の痴態を何度も、何度も、何度も遭遇、目撃してきた。

そもそも、何故こうも屈強な男性ばかりが宿泊しているのだろうか。ただ廊下を歩いているだけで、肉厚で、骨太で、雄の臭いが立ち昇るような男性ばかりとすれ違う。

自分もそれなりに鍛えてはいるが、ここに来て出会った大山さん達とはまったく比べ物にならない。ボディビルダー、アスリート、軍人や警官のような規格外な体格ばかりだ。

一朝一夕で出来上がる体ではない。立派な職業に就いている人も大勢いた。誰一人……初対面からあんな痴態を晒すような変態的な人には思えなかった。

もしかして、ここの泉質が特別だとか?

もしここの温泉が媚薬のような効果を示すものだとして、自分にはそこまで効果がない理由は一体なぜだろうか。

体型……セクシャリティの問題? 耐性があるとか? 筋肉量に比例して効果が出る……そんなものあるだろうか。

それに、仮に媚薬効果があったとして、このホテルに男性しか泊まっていない理由は……?

何かを推察するにも、とにもかくにも情報が足りていない。

結局サウナでジリジリと焼かれながら、悶々と堂々巡りをするしかなかった。

そんなふうに唸っていると木製のドアが開くのが見えた。大きな足音が二つ。

「お、悪くねえ温度だな、しかしどういうのがフィンランド式なんだ」

「俺はもうちょっと熱くてもいいんだがなぁ、ふぅ」

やはり屈強な体格をした二人組の宿泊客だ。さっと視線を投げた印象では二人ともどこか似た雰囲気だ。真っ直ぐ太い眉に、体を覆う力強い体毛、短く刈った頭髪は粗野でありながら落ち着いた印象もする。かなり共通点が多い。

その二人はまっすぐこちらに歩き……どっかりと腰をつけた。自分を挟んで。ぴたりと並んで。


身動きがとれない。困惑した。そこそこ広い部屋なのになぜわざわざこんな座り方をするのだろうか。

今にも肌と肌がくっつきそうだ。右にずれても左にずれても、逞しい腕に体がぶつかってしまう。

席を立って退いたほうがいいのだろうか、そう思い始めていた瞬間、左側からぬっと大きな手が肩にかかってきた。

「朝っぱらから一人でサウナとは、兄ちゃんもナカナカわかっている男だな、なァ?」

「えっ、あの……ど、どうも」

反射的に左を向いて相槌を打つと、今度は右側から背中に手を回された。

「いやぁしかし豪勢なホテルだなあ、風呂入ってるだけで飽きやしねえ、なァ?」

「えっ、あの……、ハァ……そうで、すね」

左右からそれぞれ語りかけられたのだから、邪魔だとは思っていないのだろう。しかし、初対面の同性にこんなことをするだろうか。そんなふうに狼狽えていると、自分に触れた状態で会話を始めてしまった。

また妙なことになってきてしまった。……しかし、今回はさすがに初対面どころのはなしではない。偶然に合わせただけなのだから、コレ以上は何も起こりようがないだろう。

「――たまの休みだってのに、兄貴と旅行なんてなあ……ろくなもんじゃねえと思ったんだが、なかなかどうして悪くねえ」

「そりゃあ俺のセリフだ。ホテルに感謝しろよ」

二人の距離感や呼び方から察するに、どうやら二人は兄弟らしい。確かにこの体つき、体毛、そして声。どれもよく似ている。

「元気イッパイびんびんプラン7泊8日。こりゃあいいリフレッシュになるな」

「ああ、帰る頃にはすっかりびんびんだろうなァ」

「男として毎日疲れてたもんが、たっぷり補充される、そんな感じだな」

まるで聞かせるような声量で、右と左で会話が続く。

薬湯が筋肉に染みるんだよな。俺の体型にも丁度いいベッドだ。毎朝元気に目が覚める。飯も精がつくもんが多くて食いすぎちまうな。ガッツリ汗流したあとにすぐ風呂に入れるのがたまんなく気持ちいいよな。

二人はホテルを褒めるような会話を続けている。だが、どうにも様子がおかしい、と感じてしまうのは考えすぎだろうか。

逞しく低い声で、下半身がつい反応してしまうような一言が挟み続けられている。トン、トンと上機嫌に肩を指で叩かれ、背中を撫でられながらそんな会話がずっと続く。

落ち着け。静まれ。妙な気を起こすな。

目をぐっと閉じても、耳をふさぐことはできない。二人の会話をそれぞれの鼓膜で味わいながらも、必死で自分の下半身に語りかける。


長時間入っていると、汗がとめどなく溢れてくるようになった。

左右の兄弟もきっとそうなのだろう。まるでミストサウナだ。男の汗がすごい密度でここに集まっている。どんどん強くなる。男臭い。足臭い。それだけではない。イカ臭い。――いや、まさか。なんとか勃起は我慢しているはずだ。だのに、濃厚な男の臭いが鼻をついている。

目を見開いた。

タオルで隠したチンポは、ギリギリ半勃ちで収まっていた。

だが………やはりこの臭いはチンポから湧き上がる雄汁の臭いに間違いなかった。


「ン――おぉお……」

「フゥ……どうした兄ちゃんよ」

右と左、二つの巨大な一物が、ブランブランと揺れていた。

目を閉じている間に、髭面巨体の角刈り兄弟は揃ってガチガチに勃起していた。

「いいホテルだよなぁ、ここはホントによ」

「ああ、毎朝毎朝元気で元気でしょうがねえや」

「兄ちゃんのも元気になってきたじゃねえか、そう恥ずかしがるなよ」

「そうそう、同じ男だろ、なあ」

まるで『そう』であるのが当然のように、勃起を見せびらかすのが当然のように、二人は揃って腰を僅かに突き出してきた。

「イイもんだなあ、裸の付き合いってのは」

「思いっきり汗と汁を垂れ流してリフレッシュできる、やっぱりサウナは男の文化だな」

「どうだ兄ちゃん、俺のチンポはなぁ、これでもう二人もガキこさえてんだ」

「そうは言うがよ、嫁に逃げられちまったら世話ねえよな、な?」

「ン、だよ、生意気言いやがって」

「いい歳して生意気もねえだろ。そういうトコだぜそういうトコ、俺みたいに優しくなれよ」

「そのデカブツで優しく、か? 独りよがりもいいとこなんじゃねえか?」

「馬鹿言え、ただチンポ入れるってのにもよ、ゆーーっくり慣らすとかってテクニックってのが大事なんだよ。そういう気遣いだよな、なあ兄ちゃん」

兄弟の他愛もない会話、というには下品すぎる会話だ。

どうしたって下半身に目がいってしまう。そうしてチラリと目をやると、そのタイミングで二人のチンポはヒクヒクと上下しよりガチガチで凶悪な一本竿に変わっていく。

右を見れば右のが。顔を髭で覆った厳つい男がチンポを喜ばす。

左を見れば左のが。威厳のある髭を蓄えた大男がチンポを喜ばす。

「どうだ?」

目をやったタイミングで、どこか嬉しげに右の男が尋ねた。背中に回された手がグッと力む。

「ど、どうって……その」

口ごもっていると、左の男が肩に掛けた手を引き寄せてきた。

「おいおい、そんなやり方があるか、ちゃーんと勝負しろよ」

「あの、いったいなにを」

「どっちだ」

二人が声を揃えた。

「どっちのチンポが勝ってる」

「え、どっち、と言われましても……」

それは色々な意味で返答に困る質問だった。

見る限り、二人のものは瓜二つだ。

兄弟といえどここまで似るものなのかと驚くほどに、そっくりなのだ。

「俺のはなぁ、傘がブリッ!と張っててこいつのよりもガッチガチに硬えんだ」

「女はなぁ、この血管がたまらねえって言うんだ、中でズリズリ擦れるってよぉ その点兄貴はどうだよ、なぁ」


兄弟はそれぞれそう主張しながら、より大きく強く男らしく見せるためか腰をふる。

「よ、よく似ていて、ふたりともご立派だと思います」

「ンーー兄ちゃん、いいヤツだなあ」

「ご立派、そうか、ご立派かぁ」

「はい、真っ直ぐピンとたってて、力強くて、とても逞しいモノだと……」

「ン――! に、兄ちゃんッ、言葉がう、うまいなッ」

「な、なんだ、そんなに、かっ、そんなにか俺たちのはッ!」

「はい……あの、ツヤツヤしていてとても太い尿道が通っていて、勢いよく出そうで」

「あ、あっ、そ、そうだ、そうだぞ、すげえでるぞッ」

「ハァ、ハァ、ほ、他には、どうだッ」

気がつけば、立場は逆転していた。

二人の言葉を聞くばかりだったはずだったのに、二人が言葉を求めてよだれを垂らすように聞き返してくる。いや、実際によだれは垂れている。バキバキに勃起したチンポから、汗より大量の汁がダラダラとすごい勢いで。


「臭いがすごい……ですね。とても強くて粘っこい臭いが……」

「あぁッ、そ、そこまで褒めるのか! そんな、嫁に嫌われたトコまで……!」

「うぅーッ、うぉッ、こ、コレが男の臭いってもんだもんなあ、そうだよなあ」

「触ってもいないのにこんないよく跳ねるなんて、あの、さすが鍛えているから……というか……」

「あ、ああ、だろう、どうだこの腹筋ッ、う、オォッ! たまんねえッ!」

「この足腰があってこそのチンポだからなッ、きょ、教師ってのは体力仕事だからなッ!」

「あの」

「な、なんだァ――!」

「どうした……ハァ、ハァッ!」

「も、もしかして、出しちゃいそう、なんです、か?」

「う、オォ! な、なんでわか、ちまったんだ……!」

「はぁ、はぁ、なんだなんだもう出ちまうのかよ兄貴、俺はまだまだ保つぜ……ほ、ほんとだ、ぜ……ぁぁッ!」

「ば、バカいえぇ……男の種付けってのはなぁ、長さよりもよぉ、回数だろうが! 俺は何発でもイケるんだぜ」

「お、俺だって、今すぐイッても、何発でも、い、いけるぜッ、の、望むところだってんだッ、アァァッ!!」

二人の顔は見事に赤くなり、ゴリラのように理性の欠けた姿だった。手でしごくこともせず、ただ声を聞いただけで絶頂を迎えようとしているのだ。見られて、褒められ、揺れただけでイク。

思わず言葉がでた。

「手、手も使わずにイクなんて、あの……ちょっと変態的ですね」

「!? な、そ、それも褒め言葉ッ、なのかァ兄ちゃん!? あぁぁ……ヤベ、ん、ぐ、くそっ、それ効く、今の効くゥッ! 変態って、お、おぉぉ……!イクっ、出るぞ、出るぞ、手も使わずに、へ、変態的にッ……濃いのが出るッ!!」

「へ、変態、変態なくらいに男らしいって、意味かッ、あ、あ、変態、変態ッくそっ、俺もっ、出るっ、漏れちまうッ、ヤベ、ああぁ……変態ッヘンタイチンポッ、漏れる、漏れるッ!!」

まったく意図せず、兄弟揃って弱点を突いてしまったようだった。

二人はまるで同時に、手も触れず、誇るように、でもどことか情けなく、言葉責めだけで雄汁を噴き出した。


「ン、ヌッ、アァァアア……ッ!! イク、イクゥッ、兄ちゃん、ど、どうだぁぁ、この勢いッ、この、オォォオ出る出るッ出てるぞ、出てるぞォ、ど、どうだぁ変態的かァァァ、見えてるかァァァイクイグイグイグゥゥウッッ!!」

「漏れ、漏れるゥ、ヘンタイイキキメてるぞォ! 俺の方見ろぉ、おれの、俺のほうだッ、俺の方っ、あああ、両目でじっくり、俺の射精俺のヘンタイイキ全部見てくれぇッッ!! ああぁぁあイクイグイグイグゥゥウッッ!!」

要望通り、二人の射精姿はどちらもじっくり見ることが出来た。

それだけ二人の射精は勢い強く、そして長かった。


「いやぁすっきりしたな、朝っぱらから元気一発って感じだッ」

「サウナでは一本抜かないとだなぁ、うーんいい風呂だぜ」

「兄ちゃん、楽しかったぜ。最高だった、ああ、俺達の部屋番号……教えておくな」

「しかしタフだな兄ちゃん、まだ入ってるのか。今度コツ教えてくれ、な」

それから数分後。

射精で呆けていた顔が嘘のように、二人はシャキッと爽やかに笑って立ち上がった。

さーて水風呂にでも入るか。そんな言葉を残して、逞しい肩が二つ並んでサウナの外に出ていく。勃起はまだ半分ほど力を残しており、一歩進むごとにブランブランと激しく揺れている。追いかけようにも、引き留めようにも、頭は茹だっていて力が入らなかった。

考えがまとまらない。また起きてしまった。そして味わってしまった。

――このホテルはいったい……。

結論の出ない問答をしていると、サウナの窓越しに二人が見えた。まるで汗でも拭うかのように、肉棒にこびりついた精液をぬぐって髭の生えた口に入れるのが見えた。


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