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「これが、お前が言ってた珍しいっていう酒か~」


 筋肉隆々の、たくましい男性を模したかのようなガラス瓶。アカデミー賞の受賞者に贈られるオスカー像に似ている、と言えば伝わるだろうか。ごつい掌で握り締められたその瓶が軽く揺さぶられると、ハワイアンブルーの液体がその中でチャプンと小気味よい音を奏でて、波を立てた。


「ふ~ん……、カクテルっぽいけど違うんだろ? なんか、子供の頃に食ったかき氷を思い出す色だな」


「かき氷? ……あぁ、ブルーハワイですね」


「そうそう、そんな名前の! あれは美味かったよな~。大人になってから、あのイチゴやらなんやらのシロップは色が違うだけで、味は全部一緒だって知ったときは、信じられなかったよ」


 懐かしさを共有したせいか、矢島厳(やじまげん)は顎髭の生えたその厳つい顔の目尻に、小さな皺を作った。そして手に持った酒入りの瓶を、しばらくあらゆる角度から眺め回すと、テーブルの上へそっと置いた。


「で、この酒の名前は、なんて言うんだ?」


「『ボディースワップ』です。醸造家の人が言うには、飲んだらびっくりして近くにいる人と身体が入れ替わっちゃうくらい美味い、だそうですよ」


「うおー! なんかファンタジーっぽくて面白そうだな」


 まるで子供のように目をキラキラと輝かせた厳は、どうぞ開けてくれと言わんばかりに両手を差し出してくる。野球のグラブを彷彿とさせるデカい掌。皮膚は分厚く、指も太い。手だけではなく、腕も肩も太く、鍛えられた筋肉で膨れ上がっている。その身体は誰がどう見ても格闘家かプロレスラーにしか見えない。スラックスで隠れているものの、上半身同様、下半身も相当引き締まっているだろう。身長も一八六センチと高く、『ボディースワップ』のガラス瓶に負けず劣らずのゴツイ体の彼は、その精悍な顔立ちによく似合う男臭い笑顔を浮かべた。


 お前なんかと入れ替わりたくねえよ、だなんて言われなくてよかった──と頭の中で手塚弘之(てづかひろゆき)はひとりごちた。厳のガタイに比べれば、弘之の体など痩せっぽちで貧弱に見えるからだ。


「おい、何笑ってんだよ?」


「いえ別に……。じゃあ開けますよ」


 弘之は微笑んだまま酒瓶のキャップシールを剥がすと、蓋を捻って口を開けた。プシュッという炭酸の抜けるような音が、厳と弘之の耳に心地よく届き、室内にねっとりと漂っていた男二人のむさくるしい匂いを一瞬のうちに拭い去ってくれる。


「いい……匂いだな」


 顔を上気させた厳が鼻腔を膨らますようにして、『ボディースワップ』の匂いを吸い込むと、弘之もつられて同じ行動をとった。燻されたハーブのような、それでいてどこか甘みを感じるような。それでいて、酒精の香りが脳をぐらりと酔わせるような、そんな不思議な香りだ。


「はい、厳さん。どうぞ」


 弘之は厳の目の前に『ボディースワップ』を注いだグラスを置くと、自分のグラスにも注いだ。


「おぅ、乾杯」


「かんぱい!」


 そうして二人は同時にグラスを傾けて、『ボディースワップ』を喉へと流し込んだ。



***


「く~~っ!美味いな、これ! 何杯でも飲めそうだぞ」


「ですね!」


 炭酸飲料を口にしたときのような、独特のシュワシュワとした感触が口の中を支配すれば、濃厚な甘味と強いアルコールの香りが鼻から抜けていく。『ボディースワップ』を一気に飲み干した二人は、まるでスポーツをした後のような爽快感を共有して、満足そうに笑った。清々しいほどの笑みを顔に刻んだ厳が、プハーッと、豪快に息を吐いた。その顔はすでに何杯も酒をかっ食らったかのように、耳まで真っ赤に染まっている。


「あぁ~、まだ夕方なうえに、一杯しか飲んでないってのに身体が熱くなってきちまった。アルコール度数いくつだっけ……、高いのか?」


「どうでしょう。日本語で表示されてないからなぁ……」


 そう口にしながら弘之は『ボディースワップ』の瓶を手に取り、成分表を確認する振りをした。そこには商品名以外は、弘之がでたらめに書いたものが記入されてあるだけで、成分など一つも記載されていない。ううんとか、えーととか悩んだような演技を彼がしているうちに、厳は腰を掛けていたベンチ型の椅子をベッド代わりにして大鼾をかきはじめた。


「厳さん、そこで寝たら風邪ひきますよ」


 弘之は酒瓶をそっとテーブルの端に置き、アルコールによる眠りに身を委ねようとしている厳の肩を叩いた。


「ん~……。なんかふわふわするな、これ……」


「もう一杯飲みます? それとも水でも持ってきましょうか?」


 起きたばかりの彼は横たわる前よりもさらに顔を赤く染めて、眠たそうな目を擦った。


「……いや、いい。それより、俺なんか吐きそう……。でもなんか、それ以上にチンポが勃っちまってる……。あ、なんだ? これ……。身体が……熱いぃぃッ♥♥」


 不意に口元を押さえた厳は、ごつごつとした指の隙間から鮮やかな水色の液体を吐き出した。びちゃびちゃと音を立てて床に溜まりを作ったそれは、弘之が『ボディースワップ』に混ぜた薬のせいだった。


──【人格排泄薬】


 摂取した人間の人格を、ゼリー状に固めて体内から排出させる薬だ。


「うげぇぇ……、な、なんだこれ? 吐く……のが止められん……。んあぁぁぁ、チンポが……、チンポ気持ちいぃ……♥♥♥」


 顔面を紅潮させた厳は床に四つん這いになり、ズボンの中でチンポをビクビクと痙攣させて射精しながら、何ヵ月も溜めたものを吐き出すかのように、口から『ゼリーへと形を変えた人格』を排泄し続けた。


「う……、あ……」


 とうとう彼は体を支えきれなくなり、ドスンと床に横倒しになった。瞳の色を失ったまま白目を剥き、時折思い出したかのように身体を震わせながら、小さく声を漏らすばかり。そんな彼の哀れな姿に弘之は笑みを浮かべると、床に散らばった厳の人格を手で掬った。バケツ一杯分ほどあろうかという、ゼリーの塊。ぷるぷるとした感触。人肌のような温度。表面がぷるんとしているそれの温もりは、なんとも形容しがたい気持ちよさだった。


「あぁぁ♥ 厳さんの人格ゼリー、あったかくて気持ちいい~♥」


 弘之は厳の人格を味見するように、ゼリーの塊を舌でねっとりと舐め上げたあと、それを掌でぐちゃぐちゃに潰して顔面に擦り付け、全身に塗りたくった。薄い胸板が、平べったい腹が、ハワイアンブルーの厳の人格ゼリーでテラテラと光る。恍惚とした表情を浮かべると、彼は厳の肉体にすり寄り、衣服を剥ぎ取り始めた。万歳をさせて真っ白なタンクトップを上に引き上げると、あらわになった厳の腋からムッとするような濃い雄臭が漂う。


「はぁぁ♥ 厳さんの汗、いい臭い……」


 弘之は顔を腋に近づけると、まるで犬のように鼻をすんすんと鳴らして匂いを嗅ぎながら舌を出し、それをベロリと舐めたあと、分厚い胸板の上でちょこんと膨らんだ乳首を甘噛みする。歯を立てて噛んでみても、厳は口の端から涎を垂らすだけで、何の反応も返さない。キスマークの痕が付くほど首筋や胸や腹にきつく吸い付いたあと、弘之は厳の精液にまみれたジョックストラップを脱がせて床に放り投げた。


「僕も……♥」


 自身も素肌を晒した彼は、すっかり勃起したチンポを厳の肉付きのいい尻に擦り付けると、ぷっくりと盛り上がったピンク色のアナルにキスをして舌を突き入れる。そうしてしばらく厳のアナルを舐め回した弘之は顔を上げると、おもむろに鞄から取り出した油性マジックで彼の太ももにラクガキをし始めた。


「チンポ入り口……っと。そうそう、この犯罪級にでっかいおチンポにも罰を与えないとね♥」


 弾力のある陰茎に文字を書き足し終えると、弘之は厳の股間にコックリングを嵌めてやった。ギュッと締め付けられた肉棒と睾丸は、その瞬間から開放してくれと言わんばかりに張り詰め、切なそうにドクンドクンと脈打っている。


「厳さんと身体を入れ替えたあとにいっぱい射精したいから、そのときまで厳さんには我慢して欲しいんだ。ごめんね、厳さん♥」


 一瞬申し訳なさそうな表情を見せた弘之だったが、それも束の間。彼は厳のチンポに再び顔を近づけると「失礼しま~す♥」と妙に間延びした声で呟き、いきり立ったそれをむしゃぶるように頬張った。


「んふ~、じゅるる……。厳さんのチンポくっさ~……♥」


 初夏に入り、熱がこもるようになった股間。窮屈な布で長時間覆われていた竿は蒸され、鼻の奥をつんと刺激するほどの臭気を立ち込めさせている。弘之は尿道に舌を入れたりといろいろ試してはみたものの、コックリングで締め上げられたチンポの先からはしょっぱい我慢汁がほんのりと出る程度だ。人格は失われているものの肉体は快感に打ち震えているようで、厳の顔面は熟れた桃のように紅く染まっている。


「そろそろ、かな♥」


 弘之はたっぷりと子種の詰まった厳の陰嚢を舌で舐り終えると、そのまま顔を下にスライドさせ、『なにものも入れるつもりはないぞ』と拒むように閉じられた肛門へ舌を這わせた。そのままべろべろと激しく舐め回したあと、ひくついたアナルに指を入れクチュクチュと音を立てて解す。そして唾液でテラテラと光るそこに、指をぐりぐりと突き入れて腸液が出るまで弄りたおすと、自身のチンポを取り出した。


「んっ……はぁぁ♥ もう我慢できない♥ 厳さんの毛だらけの汚いお尻の穴で、童貞卒業させてもらいま~す♥」


 気味の悪い笑みを顔に貼り付かせた弘之は、厳の太ももを押さえつけながら、彼の尻穴の中にチンポを押し入れた。もはや肉便器と呼んでもいいくらいに広がったそこは、やや抵抗の意思を示したあと、諦めたように弘之の肉棒を受け入れた。ズプッ、ジュブリッという淫猥な水音を漏らし、亀頭からカリ首までが収まりきると、まるで熟れきった果実のように赤々とした粘膜が吸い付いてくる。


「あ~……♥ あったかいいぃ♥♥ 厳さんのおマンコ、超気持ちいいですよぉ~♥♥」


 意識のない厳の耳元に熱い息を吐きかけると、弘之はゆっくりと腰を振り始めた。自分よりも一回りも二回りも大きな体つきの厳を、まるでオナホールのように扱っているという背徳感で、ますますチンポが硬くなってしまう。

 両の手でがっしりと彼の腰を鷲掴みにすると、弘之は下から突き上げるようにしてガンガン腰を動かした。ぐちょぐちょと溢れ出る生温かい腸液が、ローションのようにチンポを包み込んでくれる感覚がたまらない。もはや彼の為だけに誂えられた肉穴と化した厳の肛門の吸い付きは、弘之の理性をドロドロに溶かしていった。


「イク! イッちゃうよぉ♥ 厳さん、僕の精子いっぱい飲んで♥♥」


 チンポが震え、その先から真っ白な欲望がほとばしる。一発、二発、三発……。精液を腸の奥に出して犯すたびに、油性のマジックで厳の太ももに線を加える。厳とは違い、前もって精力増強剤を飲んでいた弘之の睾丸の内部では、ザーメンが急ピッチで造られてはパンパンに膨れ上がっていて、体を動かすたびにゆさゆさと玉袋が揺れている。


「ああ、厳さん♥ その顔、その体、エロイあなたの全身がもうすぐ僕のモノになるんだ……♥ 熱い、最高ですよ、厳さんのおマンコ♥ イクッ、厳さんの中でまたイッちゃいますっ♥♥」


「お……ごぉ……。んが……」


 厳の喉奥から返答のごとく呻き声が上がると、弘之はさながら妊娠でもさせるかのように腰を深く突き入れ、彼の中に大量のザーメンを注ぎ込んだ。ドクンドクンという脈動とともに吐き出された精液は、彼の腸内に染み込んでいき、その身体を内側から犯していく。そうして最後の一滴まで亀頭の先から精液を搾り出すと、弘之は『ボディースワップ』の瓶を手に取って、その中身全部を呷った。


「ん、んぐっ! はぁ、はぁ……♥」


 ゴキュゴキュと喉を鳴らして飲み込んだそれは、彼の喉を焼きながら胃の腑へと落ちていった。飲み干した瞬間から身体の中が熱く火照り、身体がむず痒いような感覚が続く。その甘美に酔いしれた彼は満足そうに口元を緩めると、再びチンポに血液が集まっていくのを感じながら、ずるりと厳のアナルからチンポを引き抜いた。


「あ……ん♥」


 ズポンッ!という音とともにチンポを抜き取り、ぽっかりと開いたままになった厳の尻穴の奥からドロリとしたザーメンが排泄されるのを虚ろな目で追っていると、先ほどの厳と同じように弘之にも猛烈な吐き気が襲い掛かる。


(いよいよだ。これで僕は──)


 弘之は厳の肉体に抱きつくと、両手でがっちりと彼の顔面を押さえ込んで唇を重ね、自らの嘔吐物を彼の喉奥へと流し込んだ。見えなくても弘之には分かる。連結した二人の口の間を、ハワイアンブルーの液体が伝っていくのを。意識はないものの、呼吸の苦しくなった厳の肉体は掌をワキワキと動かしながら、鼻を忙しなく鳴らして酸素を取り込みつつ、弘之の口から流し込まれる嘔吐物を勢いよく嚥下していく。どこか絶望したような厳の表情に満足した弘之は満足げに微笑むと、彼の分厚い胸板に覆い被さったまま意識を失った。




「ん……」


 尻の穴がジンジンと熱を持って疼くような奇妙な感覚に襲われながら、厳は目を覚ました。いつの間にか夜も更けてしまったようで、街灯が真っ暗な室内を淡く照らしている。


「僕……、何してたんだっけ?」


 大の字に横たわった身体を起こすと、尻の穴からドロリとしたザーメンが零れ落ちた。その感触に一瞬ギョッとした厳だったが、すぐに自分が弘之に犯されていたことを思い出して頭を掻いた。


「あぁ、そうか。僕は、いや【俺】は【矢島厳】になれたんだな♥」


 そう呟いた薄い唇から酒精の臭いがプンと漂い、同時に「ガハハ!」という大きな笑い声が部屋の中に響いた。尻の穴から溢れ出す弘之のザーメンをぐちゅぐちゅと掻き出しながら立ち上がると、厳は精液まみれになった手で、眼下に広がったデカい胸を揉みしだく。ごつい指から零れそうなほどの双丘は、強く力を込めれば餅のように形を変えて指先を包み込んだ。


「はあぁ……、エッロ♥ こんなでっかい雄っぱい、エロ過ぎるよ……♥」


 歓喜の表情で指を巧みに動かしていると、ふと部屋の壁に掛かった鏡が目に入った。そこに全身が映る。つい先ほどまでとはまるで違う、新しい彼の姿が──。

 厳の胸の奥で心臓がドクンと高鳴った。それは全身を奪われたことによる【矢島厳】の肉体の嘆きからか、それとも新しい主人を得たことに対する満足感からか。全身はベットリと精液まみれ。精悍な顔は泥酔したように紅潮していて、なによりも尻穴の奥の、これまで弄られたこともない場所を刺激されたことで、快楽の波がドクンドクンとそこから昇ってきているのが分かる。


「んおお゛っ!!」


 その感覚をもっと味わいたくて、彼は鏡に映る自分の目を見つめながら指を尻穴に突っ込んだ。太い指を中で動かした瞬間、ゴリッと前立腺を刺激してしまった厳は、野太い雄叫びをあげながら白目を剥き、全身を激しく痙攣させて絶頂を迎えた。その快感たるや凄まじく、彼はそのまま床に倒れ込みそうになったがなんとか踏ん張り、白濁まみれの鏡に映る自分のだらしないアヘ顔を見つめ続けた。


「あぁ……♥ こんな【俺】の顔、初めて見る……♥」


 人格は【手塚弘之】のままだが、【矢島厳】の脳内で走馬灯のように彼の記憶が流れ始める。そのたびに自分の人格が、彼の肉体に馴染んでいくのを感じる。太い幹のような手足、鎧でも身に着けているかのごとき分厚い胸や腹。睨みつければその相手をみな委縮させてしまいそうな、厳つく男らしい顔。鏡の中のその表情は、他人の記憶を我が物にしたことによる倒錯的な快楽によって歪み切っている。口の端からは犬のようにだらしなく舌が覗き、その目はとろんとして焦点が合っておらず虚ろだ。


 もっとこの肉体を自分のモノにしたい。そう考えた彼は、弘之のバッグから乳首ピアスを開ける道具を取り出すと、ニードルをライターで炙って消毒し、自分の乳首を貫通させた。


「んい゛っ……♥」


 鋭い痛みが乳首から全身に走り、反射的に肛門を締め付ける。【矢島厳】の肉体を、自分好みのモノへと変えているのだという支配感。そして、乳首に開いたピアス用の穴からジワリと流れ出す血液が、その行為への背徳感をさらに煽る。


「あ……♥ はぁ……♥」


 鏡の前で穴の開いた乳首にピアスを通しながら、彼は勃起したチンポからだらだらと我慢汁を垂れ流した。


 ようやく乳首にピアスを装着し終えた彼は、目の前の自分に向かってニヤリと笑った。仕事や私生活に対して常に真面目で、ストイックな厳。そんな彼の、ひたむきに鍛え上げて盛り上がった胸の先端で、銀色のピアスがいやらしい光を放っている。それを見ていると、肉体を己のモノにしたいという欲が、より強くなっていく。

 ごくりと喉を鳴らした彼は、髭剃りを手にして、密林のような陰毛に刃を当てた。ジョリジョリッと剃っていき、その下から現れたツルツルの肌の感触は、ますます自分が【矢島厳】になったのだということを実感させてくれた。


「あ~……♥ 俺、パイパンになっちまったよ……♥」


 厳はそう呟くと、そのツルツルの股間を撫で回して悦に入った。むっちりとした全身には、体毛が鬱蒼と生え揃っているというのに、『そこ』だけが精通もしていない小学生のようだ。そのギャップがさらに彼の胸を躍らせ、【矢島厳】のチンポから透明な汁が零れた。

 しばらくの間、鏡とにらめっこをして満足したあと、彼が部屋をぐるりと見渡すと、視界に散らばった【矢島厳】の人格ゼリーが目に入った。弘之によってバラバラにされていたはずのそれは、自己修復能力でもあるのか、大きな塊となって床の上に転がっている。


 厳は無心でそれらの人格ゼリーを手に取ると、ぶりゅりゅと大きな音をさせながら、その中へと勃起した男根を押し入れた。


「お゛っ♥」


 入れ替わった直後で敏感になっているチンポを、生暖かなゼリーに包まれた厳は、脳天からつま先までを電流のような痺れが突き抜けていく感覚に身体を震わせた。まるで上質なオナホの中に突っ込んでいるのかと想起させるような、柔らかく包み込んでくるゼリーの感触。身体を強張らせて感覚を味わう厳は、少しの間オナホと化した【矢島厳】の人格ゼリーの奥にチンポを擦りつけていたが、やがてゆっくりと腰を動かし始めた。


「ん゛っ♥ お゛っ♥ あ゛ぁぁッ♥♥」


 完全に理性を失った獣のような声を上げながら、厳は腰を振り続ける。上下するたびに、コックリングによって締め付けられた巨大な玉袋の中で、精子がグツグツと煮え滾っているのを感じる。濃いザーメンをゼリーの中にたっぷりと注ぎ込んでやりたいと思う反面、まだまだこの快感を味わっていたいという思いに板挟みになりながらも、厳はそれでも一心不乱に腰を振り続ける。


「んお゛っ♥ お゛っ♥ チンポやべっ♥♥ イクッ! 出ちまうッ、俺のザー汁♥ 厳さんのゼリーの中でイ゛グッ♥♥♥」


 そう叫んだ瞬間、厳の睾丸がキュ~っと収縮し、チンポの中を大量のザーメンが流れていった。亀頭の先からは、ドブリュリュッとゼリーの中に濃厚な精液が吐き出される。ゼリーの中にぶちまけられた精子は、泡立ちながらゼリー全体へと広がっていく。


「あへ……♥ すげぇ、気持ちいい……」


 【矢島厳】だった人格ゼリーの中にドクンドクンと脈打ちながらザーメンを流し込むという背徳的な行為に酔いしれた厳は、恍惚とした表情でそう呟いた。人格ゼリーが、元の肉体に戻ろうと尿道の途中まで侵入してくるものの、すでに彼の肉体には【手塚弘之】の人格が宿っているため、その願いは叶わない。その惨めな姿が、ますます厳の脳内で多幸感を生み出させる。この肉体はもう【俺】のモノだという、サディスティックな満足感。


「あぁ……、最高だ♥ この身体、このチンポ♥♥ これこそ俺が求めていた肉体だ……」


 厳はアヘ顔になって吐息を漏らすと、人格ゼリーの中に挿入されたままのチンポを激しく動かし始めた。グチャグチャという粘着質な音が部屋に響き渡り、彼の口からは絶えず喘ぎ声が漏れ出す。腰を動かすたびに、巨大な玉袋の中で精子が暴れまわっているのを感じる。ついさっきまでは他人のモノだった精子が──、【矢島厳】の遺伝子が自分の一部になったのだ。その背徳感に、厳は脳髄が蕩けそうになるほどの快感を覚えた。


「あ゛っ♥ あ゛ぁッ♥♥ イクッ! またイグッ!! 厳さんの中に、厳さんの濃厚精子ぶちまけちゃううぅっ♥♥」


 涙目になりながら舌を突き出した彼の睾丸から生み出された大量のザーメンは、再び凄まじいスピードで尿道を駆け巡り、どぷりどぷりとゼリーの中に撒き散らされた。




「う~ん……」


 ベッドに横たわっていた弘之は、ゆらりと身体を起こした。まだ酒が抜け切っていないのか、ズキズキと頭が痛む。確か酒を一杯飲んだだけなのに、気分が悪くなって吐いてしまったような……。口内で広がる酸っぱいような胃液の味に、弘之は顔をしかめた。


「おわ……。俺、いつの間に服、脱いじまったんだ……?」


 そこで初めて弘之は、自分が全裸であることに気付いた。酒を飲んで記憶を失う状態になったことなど、これまでの人生でほとんどないというのに。しかもチンポがギンギンに勃起しているではないか。いったいなぜ自分がこんな状態になっているのか見当もつかず、彼は慌てて周囲を見回した。すると、ベッドのすぐ隣に鏡があるのが目に入る。そこに映った自分の顔を見た瞬間、弘之は思わず驚きの声を漏らした。


「はあっ?! な、なんで俺が手塚になってるんだ!?」


「おっ、やっと起きたか手塚。お前吐いたあとに寝ちまったから、心配してたんだぞ」


 弘之が素っ裸のまま鏡の前で狼狽えていると、背後からドスの利いた声が聞こえてきた。どこか聞き覚えのある声色。その声の方を振り返った弘之は、凍りついた。自分に瓜二つな男が、そこに立っているではないか。


「え、俺? 誰だお前?! なんで俺の姿をして……。なにが、どうなって……」


「おいおい手塚ァ、お前、まーだ酔ってるのか? しょうがないやつだなあ……♥」


 ベッドの前に膝まづくと、厳は弘之の顔を見上げながら、彼の硬く反り返った肉棒を口に含んだ。ザラザラとした舌の感触に、弘之の腰が震える。


「お、おい、やめろぉ! 俺の顔でチンポ舐めるなんて……、ハアァン……♥」


 混乱した弘之が制止するが、厳はそれに耳を貸さずに喉奥まで彼のチンポを飲み込んだ。ジュボジュボと音を立てながら頭を前後に動かし、丹念に奉仕する。視線はかち合ったまま。厳のうっとりと蕩けたような瞳に、弘之の顔も釣られて蕩けそうになる。こんな無防備な自分の顔、見たことがない。これではまるで、【俺】が男のチンポが好きな変態ホモ野郎みたいではないか。なのに、そんな恍惚とした顔を見ていると、もっとこの感覚を長く味わっていたいという欲求に駆られてしまう。

 ケツの穴には太い指を突っ込まれ、グニグニと中を掻き回されているというのに、弘之はそれに抵抗するどころか、もっと弄って欲しいとさえ思い始めていた。


「んっ、んぶっ……♥」


 フェラチオを続ける厳の口からは、涎がダラダラと滴り落ちる。そのうち弘之のチンポが限界を迎えそうになったのを感じたのか、厳は尿道に舌を突っ込みながら激しく顔を前後させた。その瞬間、弘之の腰がガクガクと震え、大量のザーメンが厳の喉奥に放たれた。


──ダメだ。射精してはいけないっ!!


 そう脳内で警鐘が鳴り響くが、腰が勝手に動いてしまって止まらない。まるで妻に種付けするかのように大量の子種を吐き出した弘之のチンポは、萎えるどころか男性の口腔内でさらに硬さを増していった。


「ごきゅ……♥ んむぅ゛っ♥♥」


 ゴクゴクと喉を鳴らしてザーメンを飲み干していく厳。やがて射精が終わったのか、彼の口からチュポンと音を立てて、小さく痙攣を続ける肉棒が引き抜かれた。


「はあっ、はあっ……」


「ふぅ……。ごちそうさまでした♥」


 口の端から垂れた精液を拭いながらそう呟く厳に、弘之は顔を真っ赤にしながら叫んだ。


「お前、手塚か?! な、なんで俺のチンポなんかしゃぶってんだよ! お前ホモだったのか?!」


「ヌハハ。なーに言ってやがんだ、手塚はお前だろ? それに、俺は正真正銘ノンケだよ。嫁さんに子供も三人いて、四人目もそろそろ生まれるしな……。な~んて、すみませんでした、厳さん。厳さんのこの身体が、あんまりにも魅力的だったもんですから……♥ つい、ねぇ……?」


「つい……だと?」


 なにを言っているんだ、こいつは。弘之がそう思った瞬間、彼の脳内に【手塚弘之】の記憶が流れ込んできた。それは、彼が【矢島厳】の肉体と入れ替わる前の出来事だ。彼はその記憶をゆっくりと読み取っていったが、驚愕のあまり思わず大声を上げてしまった。


「なっ?!! お、お前! 男のくせしやがって、俺のことが好きだったのかよ?!」


「あちゃー、バレちゃいました? まあ僕の脳みそ使ってるから、そりゃ分かっちゃいますよね。この身体、めちゃくちゃ僕好みの理想的なマッチョだったんですよね。今の厳さんなら分かるでしょ、僕がこの身体に夢中になっちゃう理由が」


 ニッコリと笑いながら【矢島厳】の顔をした男が、タンクトップの中に左手を挿し入れて自分の雄っぱいを揉み始めた。右手の人差し指と中指を使って乳首を挟み込み、コリコリと刺激して甘い吐息を漏らす。その痴態に釘付けになる弘之の視線に気づいた彼は、勢いよくタンクトップを脱ぎ捨てた。ブルンと震えながら露わになった重量感のある胸板。その上で小指ほどに肥大した乳首には、丸いピアスが鈍く光っている。


「それ……ピアスか? おまっ、お……、俺の乳首に穴開けたのか?! 勝手にィ?!!」


 慌てふためく弘之の様を見ていると、加虐心をくすぐられて仕方がない。厳は舌なめずりをすると、履いていたスラックスもずり下ろしていった。晒される太ももとチンポの裏側のラクガキ。そして尻の中でブルブルと震え続けるローターの快感に、彼の興奮がさらに煽られる。


「てめっ……、チン毛がねえじゃねーか! おまけに、わけわかんねえラクガキまでしやがって……。それになんだそりゃ、ケツにもなんか入れてやがんのかッ?!」


 顔を真っ赤にした弘之が、厳の尻に繋がったコードを引っ張ると、ヌポッと音を立ててピンク色のローターが抜け落ちた。微かな呻き声を上げた厳の尻穴がポッカリと拡がり、パクパクと口を開閉しながら、腸液と弘之の精子とが混ざり合った汁を滴らせる。彼はそんな淫乱な穴に心を奪われている弘之に見せつけるように、床に固定された極太のディルドに向けて、ゆっくりと腰を下ろしていった。その先端が近づくにつれ、彼の肛門がヒクヒクと物欲しそうに蠢いているのが、弘之の目にも映った。


「ぐぅ! 痛ぇ……♥ けどキツキツマンコに初めてのディルド突っ込むの、たまらんっ……♥♥」


 筋肉で硬く締まった初心な尻の穴をメリメリと広げながら、極太のチンポを模したそれを体内に受け入れると、【矢島厳】はアヘ顔を晒した。そして、その状態で腰をゆっくりと上下させ始める。


「人格はお互いそのままですけど、ん゛っ……、記憶は二人分あるから成りきるのは簡単だ……よ。誰にも気づかれねえって。僕は【矢島厳】として……、厳さんは【手塚弘之】として生きていこお゛っぜ♥ ぐおぉっ♥♥ んあ゛ぁ~ッ♥」


 先端からピュルっと透明の汁が溢れ出させる男の象徴はぶるんぶるんと揺れ動き、その持ち主である厳はだらしのない喘ぎ声を上げる。それを見ているうちに、弘之はまた自分のチンポがムクムクと勃起していくのを感じる。


「なんで俺が、お前として生きていかなくちゃならんのだ! さっき飲んだ酒のせいで身体が入れ替わったんなら、もう一回飲み直して元の身体に……」


 弘之は一縷の望みにかけようとしたが、厳の言葉によって、すぐにその思いは打ち消された。


「残念だが、んお゛っ……、あの酒は全部飲んじまったぞ。だから諦めろって、ヌフッ♥」


「ふ、ふざけんなっ! それにお前、俺の身体でそんなみっともない顔晒すな! この変態ホモ野郎!」


 そんな罵声を浴びせることで、どうにか正気を保っていた弘之だが、もはやその口調に力はない。これまで四十年以上目にしてきて、見飽きたくらいのチンポ。なのにそのチンポが──、黒光りしたイチモツが、鬱蒼と茂った陰毛に覆われて隆々とそびえている様を見ていると、頭がクラクラとしてくる。かつての自分が漂わせていたとは到底思えないような、加齢臭交じりの雄臭い体臭。妻や娘たちに『パパ、くさい』と嫌がられてきた、その鼻を突くようなむさ苦しい臭いが愛おしい……。


 気が付けば彼は、ディルドオナニーに耽っていた厳を押し倒し、彼の硬く反り返った肉棒を己のアナルに当てがっていた。チンポが欲しい。全身がそう叫んでいる。次から次へと産み出され続ける精子のせいで陰嚢はパンパンに膨れ上がり、すでに金玉は破裂寸前だ。


「へへっ♥ お前もその気になっちまったのか~? 【僕】の性癖をたっぷり込めたザーメンを、人格ゼリーの中に混ぜ込んでやったもんなあ。入れ替わった身体でこんなエロいチンポ見ちまったら、もうノンケだろうがホモだろうが我慢できんよな♥ それじゃあ、お望み通りイクぞぉ、手塚ァ♥♥」


 ニヤリと口角を上げた厳は、弘之の尻たぶを両手で割り開きながら硬くなったチンポを一気に根元まで挿入した。腸壁を抉り取るかのような激しい挿入に、弘之は陶酔しきった顔を晒しながら雄叫びを上げる。


「う゛お゛ぉ!! キタぁぁっ♥」


 自分のケツの穴が、ズボズボと音を立てて男のチンポを飲み込んでいく。そのあまりにも背徳的な行為に、弘之の脳髄は蕩けそうになった。この感覚だ……、俺が欲しかったのはこの快感だ! そう確信した彼は、さらに激しく腰を動かし始めた。どこかマンネリを感じていた妻とのセックスでは得られなかった、野性的で乱暴な突き上げ。それに呼応するかのように厳も腰を振り、彼の肉棒が弘之の前立腺を刺激する。


「お゛っ♥ ぐぬぅっ! ケツ穴、熱くて……、蕩けちまうぅッ♥♥♥」


 まるで脳みその中にチンポを突き立てられ、直接掻き混ぜられるかのような快感。神経が焼き切れてしまうのではないかと錯覚するほどのオーガズムを得てもなお、弘之は動きを止めることができなかった。チンポが気持ちいい。腰が止まらない。もっとだ。もっともっとめちゃくちゃにして欲しい。


「う゛お゛ぉ!! あ゛っ、あ゛~♥♥♥」


 獣のような喘ぎ声を上げながら、弘之はさらに激しく尻を打ち付けた。金玉の中はグツグツと煮え滾り、精子の生産工場と化した睾丸は早く射精させろと命令してくる。そんな彼に負けじと、厳も腰の速度をさらに早めた。


「お゛っ♥ おぉっ♥ イクぞぉ、手塚ッ! イっちまう♥♥」


「あぁっ!! ダメだ……。こんなの我慢できん……、あ゛ぁぁあぁ♥♥」


 二人は同時に限界を迎えた。弘之のチンポからは大量の精液が次から次へと放たれ、厳の上半身が真っ白になるほど大量のザーメンが撒き散らされる。そして彼の全身の筋肉という筋肉がビクンビクンと痙攣し、ケツの中がギュウゥッと締まり上がった。


「んあ゛っ♥♥ 熱いッ♥♥ 手塚のおマンコが……、俺のザーメン搾り取ってるぅ~♥♥」


──ビュクビュクッ♥ ドプッドプッドプンッ♥♥



***


 音が聞こえてきそうなほどの勢いで放たれた厳の精液が──、彼の睾丸で産み出された精子たちが、弘之の雄マンコの中へと注ぎ込まれていく。その感覚に酔いしれながら、弘之はアヘ顔を浮かべて尻を上下に動かし続けた。


「お゛~♥♥ おほっ♥ あへぇ……♥」


 チンポ、チンポ、チンポが気持ちいい……♥ いままでの人生の中で、これほどまでに感じたことはあっただろうか? 俺はいま幸せだ。誰かを満たすのではなく、誰かによって満たされる幸福感……。その味を知ってしまったら、もう後戻りなんてできない。


 弘之はうっとりと舌を突き出した状態で、身体を震わせる。チンポからは、壊れた蛇口のようにドプドプとザーメンが流れ出て止まらない。肉体を入れ替えての性行為が、こんなにも気持ちいいだなんて。頭の片隅では、いまだ男同士のセックスに嫌悪感を感じてはいたが、その感覚は徐々に薄れつつあった。


「お゛っ……♥ まだ出るぞぉ♥♥」


 弘之のケツの中で厳のチンポがビクビクッと跳ね、さらに大量の精液が注ぎ込まれる。足腰がガクガクと震えるほどの快楽に身を委ねながら、彼は自分の人格が、完全に【手塚弘之】という男の肉体に染まってしまったことを実感していた。【矢島厳の人格】がどれだけ否定しようとも、【手塚弘之の肉体】がそれを許してくれない。男のチンポの味を知っている尻の穴が、厳の巨根を咥え込んでキュウキュウと締め付ける。


──厳さんともっとヤりたい。厳さんと一緒にもっと気持ちよくなりたい。厳さんともっと……。


 尻の穴の形が、かつての自分のチンポの形へ作り変えられていくのを感じながら、弘之は途切れそうになる意識の中でそう願うのだった。


(了)

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Comments

黒竜Leo

お疲れ様です! 人格が侵された流れが楽しかったです! 人格ジェリーが復元できそうだから、もし分けて赤の他人に与えて、自分を主張して争う他人のやり取りも面白そうだと思いますね。

ムチユキ

コメントありがとうございます! 人格ゼリーを分けるのは面白そうですね! 好きな人の身体から人格ゼリーを取り出して、その人の身体に自分の人格ゼリーを半分与えるのも楽しそうです 🤤