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 初夏の夜。


 気温は昼ほど高くはないが、日中アスファルトにため込まれた熱気が、まだ辺りに充満している。今時分、この間までであれば、ジョギングやウォーキングに精を出す人の姿もちらほらと見られたのだが、街灯に照らされた道には人の気配はまったくない。


 そんな人影のない闇の中を、俺は駆け足で通り抜けていく。額から噴き出した汗が目に入りそうになり、慌てて腕で拭った。


「くそっ! 腹が痛ぇ……。もう我慢できんっ!!」


 体育会系の部活で有名な大学、K大学に俺──、瀬上豪(せがみごう)は野球部のコーチとして所属している。昨シーズンは念願のリーグ優勝を成し遂げ、もちろん今シーズンも優勝候補の一角として注目を浴びている。練習は、土曜日曜問わず部員たちが学校に泊まりこまんばかりの熱心さだ。俺もその熱気にあてられ、ついつい筋力トレーニングやバッティング練習に熱が入ってしまい、いつもヘトヘトになってしまう。

 今日もいつも通り定食屋で軽く食事を済ませると、夜の九時頃から走り始め、もう少しで家に着くはずだった。だが、突然猛烈なまでの便意に俺は襲われてしまった。確実に、家まではもたない。しかし運よく、目の前に公園が見えた。


 あそこは確か……? いや、今は一刻を争う事態だ。仕方がない。少し気にはかかるが、あそこでするしかない。そう決心した俺は、公園のトイレへと駆け込んだ。個室の扉はすべて開け放たれていて、誰も使用していないようだった。これは好都合だ。

 俺は急いで個室に入って扉を閉めるとズボンとケツワレを勢いよくずり下ろし、洋式便器の上に跨って、用を足し始めた。その最中、俺はこのトイレについての噂を、頭の中で思い出していた。



***


 このトイレには、昔からK大生に伝わる、オカルトめいた噂話がある。並んだ個室内で二人同時にオナニーをしたら、その二人の身体が入れ替わるというものだ。だが、今は隣の個室は空いているし、公園のトイレでオナニーをするほど、俺はオナニー中毒ではない。それに俺は今、それどころじゃないんだ。俺は便座に座って、胸の前で手を合わせると目を閉じた。


(早くこの苦しみから、俺を開放してくれ──)


 俺は心の中で祈りながら、下腹部に力を入れた。すると、ブブッという音が聞こえ、肛門が開いて悩みの種が出てきた。それは勢いよく俺の尻の穴から飛び出し、便器の中へ落ちていった。どうやら願いが通じたようだ。助かった。

 ホッと一息吐いて、尻をトイレットペーパーで拭いていると、床にうっすらとラクガキのようなものが描かれているのが目に入った。


「なんだ、こりゃ? 落書きか?」


 何気なくそう呟きながら、ケツワレに足を通したときだった。唐突にチンポが疼き出し、ムクムクと勃起をし始めたのだ。そして、そのままケツワレの中に収まりきらなくなった亀頭が、そこから顔を出して先走りを垂れ流しだした。


「おいおい、冗談じゃないぞ!? なんで、こんなときに勃っちまうんだ!!ここで勃起するのだけは、ヤバいんだ!」


 慌てて股間を手で押さえると、今度は触れてもいないのに乳首まで敏感になってきて、ポロシャツ越しでもわかるくらいツンッと尖ってしまった。それだけではない。まるで全身が大勢に舐められているかのように、ゾワゾワとした感覚に襲われ始めたのだ。


「もしかして、これが噂の……? んふぅっ……、んぁあっ♥♥」


 俺は咄嵯に手を口に当てて声を抑えたが、身体は正直に反応してしまう。このままじゃあ、ザーメンをぶっ放してしまう。どうにかして、射精しないように試みたが、身体が言うことを聞いてくれない。それどころか、逆に快感が増していく一方だ。


「ダメだって! どうなってんだよ。もう、出ちまいそうだよぉ……! 頼むから止まってくれぇ!!」


 俺は口ではそう懇願しながら、チンポを激しくしごいていた。右手はリズミカルに動きながら竿を刺激し、左手では無意識にスマホを弄ってオナニーのおかずを探している。スマホの画面には、かつてハメ撮りした俺の元彼女のあられもない姿が広がっている。

 K大学の野球部マネージャーで、魅力たっぷりの彼女。胸は大きくて、マンコの具合も最高だった。考えたくもないのに、頭の中には勝手に彼女に対しての劣情が湧き上がってくる。もう止まらない。それならば、気持ちを切り替えるしかない。幸いにも、隣の個室には誰も入っていないのだ。もし噂が本当だったとしても、今ならばイッても大丈夫なはずだ。


「ハアッ、ハァッ……、イキそ……♥」


 公園のトイレでのオナニーだというのに、普段の自慰行為とは比べ物にならないほどの興奮を覚えてしまっている。いや、公園のトイレだからこそ興奮してしまうのだろうか? とにかく、もう限界だ……。あと少し刺激を与えれば、イケそうな気がする。


 だがそのとき、誰かがトイレに入って来る気配を感じた。しかも、その足音は徐々にこちらへと近付いてきている。隣の個室が音を立てて閉まると、カチャカチャと焦ったようにベルトを外しているような音が聞こえてきた。まさか、コイツもここでする気なのか……? いや、そんなはずはない。いくらなんでも、こんなところで偶然、俺と同じタイミングでオナニーはしないだろう。きっと、用を足すだけに違いない。俺はそう自分に言い聞かせた。


 しかし、すぐさま隣から荒い息遣いが聞こえてきて、俺は耳を疑った。隣の個室に入ってきた男も、今まさにオナニーを始めようとしているのだ。くぐもった低い呻き声と、ヌチヌチという湿った卑猥な水音が、壁を隔てて耳に入ってくる。


「嘘だろ? マジかよ……」


 俺は呆然と呟いた。今すぐオナニーを止めないと、大変なことになってしまう気がする。恐ろしい。だが、相変わらず身体は言うことを聞いてくれない。むしろ、隣の男が必死でしごいている様子を感じ取ったことで、さらに興奮が高まってしまった。俺の手の動きは隣の男のオナニーに触発されて、どんどん速くなっていく。気が付くと、床に描かれていたラクガキが光りだしていた。


 円状のそれは、まるで魔法陣のように見えた。そこから突然、黒い煙のようなものが立ち上り、俺の身体へと纏わりついてきた。そしてそれはやがて、全身へと広がっていった。


「ヒッ、ヒィィ!! あ゛っ……! お゛あぁ……っ♥」


 煙が口の中に無遠慮に入ってくる。息苦しいとかいうレベルじゃない。喉の奥まで侵入され、呼吸ができない。それなのに、不思議と嫌だと思えない。それどころか、だんだんと気持ち良くなってきた。舌を絡めて濃厚なキスをしているような、脳味噌を直接犯されているかのような快感に、思考が麻痺していく。全身は熱を帯びて、汗も噴き出している。チンポからは我慢汁がダラダラと溢れ出して、便座の上があっという間に水浸しになってしまった。


「イクッ! イグゥウウッ!! あへぇえっ……、ああ゛あぁぁッ~~~♥♥♥」


 盛大に喘ぎながら、俺はチンポの先から大量のザーメンを吐き出した。ビュルルッと勢いよく飛び出した精液が、便器の中の水を跳ね上がらせて底に沈んでいく。俺はガクガクと腰を揺らしながら、何度も何度も絶頂を迎えた。隣からも同様に、水の中に何かが勢いよく落ちる音と、太い喘ぎ声が聞こえてくる。きっと隣の男も、射精してしまったに違いない。力の抜けた俺は、扉にもたれかかりながらズルズルと床に座り込んだ。




 目の前が暗い。いや、今俺は目を瞑っているのだ。慌てて目を覚ました俺は、眼下に広がる自分の姿を見て、悲鳴を上げた。


「な、なんだよ、この体はぁ?!」


 初めて聞く情けない声が、俺の口から発せられる。意識を失う前はポロシャツとジャージのズボンに身を包んでいたはずが、今はスーツ姿になっていた。おまけに捲れたワイシャツの隙間からのぞいた腹は、小山のように膨らんでいる。股間を確認すると、出っ張った腹で隠れていたチンポは、萎えきって亀頭の先端まですべて皮に包まれていた。自分の身体じゃない。本当に噂通り、肉体が入れ替わってしまった。


 焦った俺は、ダサい柄のトランクスを履いただけで、ズボンを引きずりながらトイレの個室から飛び出した。同時に隣の個室の扉が開いて、人影が姿を現した。


「う、うあ゛っ……、俺っ?!」


 今の俺より二十センチ近くは背が高く、威圧感たっぷりの巨体。ポロシャツを着た上からでも分かるくらい筋肉質で、厳つい顔つきの男。髪は短く刈り揃えられていて、眉毛は太く、意志の強そうな大きな瞳は鋭い光を放っている。そんな【俺】の姿をした男は、俺自身もしたことのないようなデレっとした表情を浮かべながら、口を開いた。


「おいおい、ズボンも履かないでどうしたんだ、お兄さん? 酔っ払ってんのか? お酒はほどほどにしないとダメだぞ」


 目の前の【俺】が大きな掌で、もっこりと膨らんだチンポを揉みながら、ニヤリと笑った。


「ふ、ふざけんな! 誰だか知らんが、俺の身体を今すぐ元に戻せっ!!」


 俺は男に殴りかかったが簡単に手首を捻られ、そのまま鏡の前へと引きずられていった。横に大きく広がった鏡には、三十数年毎日目にし続けてきた、【瀬上豪】の姿が映っている。にもかかわらずその前にいるのは俺ではない。俺の真正面に映っていたのは、ボサボサの髪に特徴のない平凡な顔のオッサンだった。


「嫌だ、そ……、そんな……」


 学生時代の体育の授業以来、いっさい運動などしたことないとでも言うようにメタボリックな腹回り。全身はいかにもだるそうで、その瞳からは覇気など微塵も感じられない。しかしなぜか、俺はそんな情けない中年親父の姿に激しいまでの劣情を覚えていた。色褪せたトランクスは大きなテントを張り、その先端は暗い染みを作り始めている。気が狂いそうだった。これはきっと夢なんだ。こんなことありえない。こんな惨めな姿になって、変態みたいにチンポをおっ勃てるなんてあるわけがない!


 とにかくこの場所から逃げ出したい。そう思って、トイレの入り口へと駆け出した。しかし首根っこを男に掴まれた俺は、その状態で彼の入っていた個室に放り込まれた。男も狭い個室内に入ってくると、後ろ手に鍵をかけて逃げ道を塞がれた。


「落ち着けよ、お兄さん。ここは公共の場なんだぞ? 静かにしないとな」



 男はズボンとケツワレを脱ぎ捨てると、ギンギンになっているデカマラを晒し、俺の顎を掴んで無理やり口を開かせると、そこにその硬い肉棒を突っ込んできた。


「もごぉ……っ?!」


 必死に抵抗するが、体格で勝てるはずもない。万力で締め付けられたようにガッチリと両手で頭を掴まれると、喉の奥までチンポが襲い掛かってきた。ランニングで汗をかいて蒸れまくった、イカ臭い匂いが鼻腔いっぱいに広がり、涙が込み上げてくる。だがそれでも、男は容赦しない。野太い声で吐息を漏らしながら、彼は激しく腰を振り始めた。


「ほらほらッ! お兄さん、ガチムチ野球部コーチの俺のチンポ、しゃぶれて嬉しいだろ? ほらぁ? どうなんだ、オラァ!!」


「おぐぅ……っ! んぐっ、ぐぼぉおおおっ!!!」


 喉奥を突かれるたびに嗚咽が漏れるが、そんなことはお構いなしに責められ、これまでに感じたことのない恐怖で身がすくみそうになる。だが、おかしなことにその一方で、俺は喜悦を感じ始めていた。これまで付き合ってきた彼女にも、フェラなんてされたことがない。ましてや、男のチンポをしゃぶったことなどあるはずもない。なのに、初めての気がしない。熱を持った硬いチンポ、しかもガチムチ野球部コーチのチンポを口の中で感じるたび、身体が疼いて仕方がない。もっと欲しい、もっともっと……。


「おっ、お゛ぉ……っ♥ すげぇ、イイ゛ッ♥ イクぞぉぉぉ!! 全部飲めよ! グオォオオオッ♥♥♥」


──ドプッ!! ドプドプドプゥッ、ドピュルルルーーッ!!!


 熱い奔流が喉の奥へと叩きつけられ、俺は思わずむせそうになった。しかし、それを許さないとばかりに男が頭を押さえつけてくる。逆らうこともできず、俺はゴクンゴクンと喉を鳴らして、先ほどまでの自分の肉体から放たれた精液を飲み干した。生臭く粘っこい液体が、食道を通って胃に落ちていくのを感じると、なぜかまた昂って、包茎チンポが硬くなってしまう。


「あぁ、最高だったよ、お兄さん。ほら、次はこっちで楽しませてくれ♥」


「あぁ……、あぁぁ……」


 俺は無意識のうちに、自ら尻をかつての自分の姿をした男に向かって差し出していた。巨大な肉棒を受け入れるため、指をケツ穴に入れて解そうとして、そこがねっとりと濡れていることに気が付いた。これは、ローションの感触だ。きっと肉体が入れ替わる前に、こうなることを想定したこの男が、前もって準備しておいたに違いない。ダメだ、こいつのチンポを受け入れてはいけない! 頭の中では警鐘が鳴っていたが、もう遅かった。


「じゃ、遠慮なく味わわせてもらうぞ、お兄さん!」


「い、嫌だあぁああぁっ、入ってくるなーーー!!」


 メリメリと肛門を押し広げながら、俺の中に圧倒的な質量が侵入してくる。痛みは不思議と感じなかった。熱い塊が腸壁を擦り上げる快感に、俺は背筋を伸ばして仰け反った。全身に電流が走ったかのように痺れて、身体がビクビクと痙攣する。


「へっへっへ、いい締まり具合だぜ。あんたのケツマンコは! どんだけ、ケツ穴弄ってんだよ。とんでもねえ、ド変態だな!」


「ち、違うっ! 俺はケツなんか弄ってないッ! 弄ったのは、あ゛っ♥ お、お前だろぉ?!」


 俺の反論など聞く耳を持たず、男は股間を激しく俺の尻へと打ち付けてきた。丸太のような太い腕でガッチリと上半身をホールドされ、顔面を便器の蓋に押さえ付けられる。奥を突かれるたびに、俺のチンポが便座に当たって擦れ、我慢汁がダラダラと溢れ出す。自分の身体に犯されているというのに気持ち良くて堪らない。


 気付けば俺は、かつての自分のチンポを受け入れるように腰を落とし、ケツ穴を締め付けてチンポを貪っていた。


「あぁ、すげえっ! このケツ、洒落にならないくらいの名器だな! 俺のチンポに絡みついてきやがる! くっくっく……、完全にチンポ狂いのデブ親父になったみたいですね、瀬上豪さん♥」


 【俺】の姿をした男の口調が、突然変わった。俺の名前も知っている。こいつは、俺のことを事前に下調べして、計画的に俺の身体を乗っ取ったのだ。男は焦らすようにピストン運動を緩めると、脂肪で醜く弛んだ、俺の胸と腹を撫で回してきた。


「うひぃっ♥ や、やめっ♥」


「う~ん、やっぱり贅肉たっぷりで、柔らかくて良い手触りだぁ。汗臭い匂いがプンプン漂ってきて、すっごく興奮しちゃう♥ 身体が入れ替わったことを実感して、何発でもイケそうだぁ♥♥ ふひっ、あぁ……、本当に素晴らしいですよぉ。それにこのガチムチの身体も、僕の理想の肉体にぴったりだ。あぁ、あぁ、あ゛ぁ……っ♥♥」


 男は俺の乳首を摘まみ上げ、乱暴に胸を揉む。それだけじゃない。俺の首筋を舐め、腋の下を嗅ぎ、荒い鼻息を吹きかけてくる。まるで匂いフェチのように熱い吐息を漏らしながら、俺の肉体を堪能しているかのようだ。


「この厳つい顔にたくましい体。ずっと僕は待ってたんですよぉ、あの定食屋であなたみたいなガタイの良い人が来るのをねぇ♥ このトイレにあなたが来たのも偶然じゃないんですよ。あの定食屋であなたがトイレに行っている間に、コップの中に下剤を混ぜたんです。でもまさか、こんな簡単に事に及べるとは思いませんでしたけどねぇ♥」


「てめぇっ! ふざけるな……、うっ!」


 反抗的な態度を見せると、男は再び激しい腰使いで俺を攻めてきた。内臓を抉られそうなほどの勢いに、俺は口を閉じることも出来ず、涎を垂らしながら喘ぐしかなかった。


「オラッ! あんたも感じてんだろ?! お得意のケツマンコ締めろよ! こんなんじゃイケねぇだろ?」


 男が、俺のチンポをギュッと握った。敏感な亀頭に指が食い込み、痛みが走る。だが同時に、肛門の括約筋にも力が入り、腸壁が中のチンコを強く締め付けた。男は苦悶の声を漏らしながらも腰を動かすことを止めない。


「あああぁっ♥ やめっ……、やめてくれぇ! やべろぉおおぉ!!」


 獣のように吠えながら、男がラストスパートをかけてくる。ガツンガツンと何度も奥を突かれるたびに頭が真っ白になる。なのに俺の体はチンポが欲しくて欲しくて、自然とケツを突き出してしまう。男のチンポで尻の穴を掘られるのが気持ち良くて堪らない。もっと突いてくれ、早く俺の中でイってくれと叫びたくなる。同時に、イけば今よりもさらに状況が悪化することが目に見えているから、何とか我慢しようとしてしまう。だがそんな俺の思いを無視して、男は思い切り腰を打ち付けてきた。


「や、やめてぇ……、俺の身体、返してくれぇ……っ!!」


 俺は弱弱しいかすれ声で、彼に訴えかけた。肉体を交換され、ガタイも小さくなった影響か、気も弱くなってしまったように感じる。こんな情けない声しか出せない自分が悔しくて、涙が止まらなかった。


「ハハハ……泣かないでくれよ、瀬上さん。大丈夫だって、すぐにあんたの心はその不細工なデブ野郎の身体に馴染むからな。でも、あんたもバカだな。そのまま個室に閉じこもっていれば、身体は元に戻っていたっていうのに……。あの噂話、最後までは知らなかったんだな」


 男は俺をゆっくりと犯し続けながら、噂話の続きを語ってきた。肉体が入れ替わっても、何もせずにいれば、三十分ほどで元の身体に戻るということ。入れ替わったあとに再び、交換後の身体で二人ともが射精してしまうと、二度と元の身体に戻れなくなるということ。今回も、男だけが【俺】の身体で射精しても、俺がこの身体で射精しなければ、いずれ元に戻るはずだということ。


「俺はもう、イッちまったからな。あとはあんたがその身体でザーメンを発射した瞬間、俺は晴れて永遠に【瀬上豪】になれる。あぁ、楽しみだなぁ。早くそのだらしない顔でイクところを見せてくれよ、お兄さん。ほら、ほらほらほらほらぁっ♥」


「あぁ、あぁあああぁあっ!! チンポ抜いてくれぇっ! 嫌だっ! こんなデブのおっさんになんてなりたくねぇ! 頼むぅ! いぎぃいっ、チンポ擦れて気持ちいい♥ ダメだ! イキたくない! あぁあああぁっ!!」


 必死に抵抗するが、抵抗すればするほど、逆に快楽を感じてしまう。俺の意思とは裏腹に、ケツ穴がチンポを味わおうと勝手に収縮して、キュッと締め付ける。この身体は、雄のチンポをどうしようもなく求め、悦んでいるのだ。


「おぉっ、すごいぞっ! 締まるっ! さすが、マッチョ野郎の雄チンポが大好きな【僕】の肉体だぁ。そんなに締め付けたら、すぐ出ちまうじゃないか。ほら、出すぞ! 出すぞっ!! しっかり受け止めるんだぞ! ぐおおおっ♥♥♥」


「ひぃいっ! や、止めてくれえぇっ! 出さないでくれえぇっ!! 出されたら、俺は、俺はぁ……」


──ドピュルルルーーーーーーーッ!!! ドクッ、ドクン……、ドプドプン……ッ!!


 ケツの中でひときわ肉棒が硬くなるのを感じた瞬間、煮え滾るような熱い液体が腸内に注ぎ込まれた。ガチムチ野球部コーチのザーメンはまるでマグマのように熱く、ドロリとしていて、勢いよく俺の中を満たしていく。かつて【俺】のモノだった肉体の遺伝子が、侵入してくる。おっさんの脳味噌で思考するようになった俺の心が、おっさんの思考で染められていく。あぁ……、俺が、俺じゃなくなっていく──。


「あぁ……、あぁぁ……、あぁあ゛ぁぁあぁあぁあぁぁぁ……」


 絶望感に打ちひしがれる俺に、追い打ちをかけるように、男が短小包茎になった俺のチンポを激しくしごいた。我慢汁と混ざって泡立った精液が、便座に飛び散る。【俺】に犯されるのが、嬉しくて堪らない。【俺】がこんなデブ親父になった俺に興奮して、ケツの中に大量に種付けしてくれたことが幸せで仕方がない。



 もうダメだった。俺の頭の中を辛うじて支えていた理性は崩壊し、完全にかつての自分自身の肉体の虜になってしまった。


「イク♥ イッちゃうよぉ、瀬上さん♥♥♥ あひぃいいぃ♥♥♥ 出るううううううっ♥♥♥♥♥」


──ビュルルルルルルーーーーーーーッ!!! ビュッ、ビューッ、ビュクビュクッ!!


 とうとう俺は、【俺】の手でイカされてしまい、便器の中に向かって盛大に射精してしまった。次の瞬間、魔法陣が再び光り、俺たち二人の口から白い煙が吐き出された。俺の口から出た煙が男の口の中へ、男の口から出た煙が俺の口の中へ、互いに交換するように吸い込まれていく。


「「あぁ……、あぁ……、ア゛ァァ……♥」」


 セックスの快感など遥かに凌駕するほどの圧倒的な幸福感が、俺たち二人を包んでいく。俺たちは射精したばかりだというのに、再びチンポを硬くして床一面にビュルビュルとザーメンを撒き散らした。




「んっ、んむっ、むちゅ……♥」


 僕はかつての自分の姿をした男とキスをしていた。舌を絡め合い、唾液を交換し合う濃厚なディープキスだ。強引にされているわけではない。むしろ、こちらから進んで唇を重ね合わせた。そして互いの汗ばんだ肌を密着させ、チンポを擦り合わせる。


「ふぅ……、瀬上さん、最高ですよ! 僕の包茎チンポと、あなたのズル剥けチンポが擦れて……あぁん、あぁ、あぁっ♥」


「俺もだ! 俺も、気持ち良いぞぉ! この身体、このチンポ、この金玉! すべてが俺の求めてたモノだっ、お兄さん!! こんなエロい身体貰えて、本当に最高だぁ♥」


 僕の頭の中は完全に、おっさんの思考によって汚染されていた。もう僕は、現役野球部コーチなんかじゃない。ただのデブで中年のサラリーマンだ。しかも、目の前にいるかつての【俺】みたいな、ガチムチボディーのむくつけき雄に発情する変態ホモ野郎だ。


「他人の身体を乗っ取っての雄セックス、脳汁がドバドバ出て頭がおかしくなりそうだぜっ♥♥ このムキムキの筋肉に、ヒゲ面の親父顔! たまらねぇ! あぁっ! イきそッ♥ また、イクぞ! お兄さんも一緒にイこうっ! ほらっ、ほらっ♥♥」


「はいっ! イクっ! 瀬上さん、僕もイクイクイク~~っ♥♥♥♥♥」


──ドピュッドピュドピュッ!!! ビクビクビュルルルゥウウッーーー!!!


 僕と彼は再び絶頂に達し、互いの身体はザーメンまみれになってしまった。射精しても射精しても、チンポが萎えることはない。それどころか、ますます性欲が増していく気がしてならない。


「はぁ、はぁっ……、はぁ~……♥♥♥」


 男の胸に頭を預けて呼吸を整えていると、彼が僕の髪を撫でながら口を開いた。


「お兄さん、あんたもずっとその身体でいるのは嫌だろ? 俺にこの身体くれたお礼に、野球部のメンバーをここに連れてきてやるよ。それで、またあんたも俺みたいなガチムチ野郎に戻って、ガチムチ同士でセックスしようぜ!」


 その彼の言葉に、僕の胸は高鳴った。元の自分の身体も愛おしいが、あの若い雄たちの中には、【俺】よりもデカい身体のやつらが大勢いたはずだ。そんな奴らの肉体を奪ってやりたい。どうしようもないくらい男好きになってしまった僕は、そんな欲望を抑えることができなかった。


「ほ、本当ですか?! 頼むっ、お願いしますっ!!」



***


 数日後、俺はかつての自分の部屋で、かつての自分の姿をした男とベッドの上でまぐわっていた。今の俺は元の身体──、瀬上豪だったときよりもさらに一回り近く身体が大きくなり、チンポもデカい。最高だ。毛深くて、汗っかきで、雄臭い。いかにもキャッチャーらしいどっしりとした下半身に、脂肪がやや多めの上半身。そして、むせ返るような雄のフェロモンを漂わせるゴリラ顔。坊主頭と口髭が、ますます雄らしさを演出している。そんな今の自分の肉体が、大好きで堪らない。無理やり奪った他人の肉体は、最高に魅力的に感じられちまう。


「豪さん、最高っすよ、この身体は! でも、今度は豪さんみたいなおっさんの肉体にまたなってみたいっす。既婚子持ちのノンケ親父になって、めちゃくちゃ暑苦しい雄セックスしてみてぇ!」


「おお、いいじゃないか! じゃあ、次は監督をあのトイレにおびき寄せて、身体を入れ替えればいい。元プロ野球選手だし、顔も体もタイプだったんだよな。へへっ、監督とのセックス楽しみだなぁ♥」


 満面の笑みを浮かべた俺たちは、分厚い筋肉に覆われたたくましい身体を絡ませ合い、何度も熱いキスを交わした。もはや、互いに自分のモノではないチンポから、自分のモノではない遺伝子のザーメンを、幾度も幾度もビュウビュウとぶち撒ける。

 そうして俺たち二人は、これからも他人の肉体を奪い続けるであろう未来を、頭の中で思い描くのだった──。


(了)

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黒竜Leo

欲望まみれに次々と交換し続けて、色んなオスの体で性欲を発散してるのは、とても誘惑な誘いです!