不思議なミストサウナ (Pixiv Fanbox)
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曇りガラスをガラリと開けると、独特の匂いがフワリと鼻をくすぐった。銭湯の匂いだ。そのほのかな香りに導かれるように、戸倉聡(とくらさとし)は一歩、また一歩と風呂場に足を踏み入れた。
湯気で視界は悪く、湿度が高い。乳白色の靄がかかった湯船には、数人が浸かっている。今日の仕事を終えてひと息つく者、明日に備えてゆっくりと英気を養う者。彼らの顔は皆一様に、ほぐれて緩みきっていた。
久しぶりに訪れた銭湯に心が躍ったものの辺りを見回して、彼は肩を落とした。年嵩の客が多い。薄くなった白髪頭を後ろに撫でつけ、硬く絞ったタオルをその上に乗せて、気持ち良さそうに目を細めたお年寄りがあちこちに。
「はぁ……、今日はハズレか……」
大きなため息を吐くと、聡はサウナへと向かった。大学生風の団体や子連れの父親なんかもいるが、肉付きが足りなかったり、その逆で中年太りがすぎたりといった人ばかりで、あまり食指が動かない。仕方なく彼は、やや重量感のある扉を引いて、お目当てのサウナに足を踏み入れた。
むわっとする熱気に、自然と顔がしかめっ面になってしまう。空気を吸い込むと、鼻の粘膜がほんの少し、ひりつくように痛んだ。彼がこの銭湯に足を運んだ理由の一つに、このサウナがあった。高温に耐えるだけのものでなく、霧状の水蒸気に包まれながら汗をかくこのミストサウナの満足感は、他の銭湯ではなかなか味わえない。しかも、それは不思議な力を持っていて──。
(おっ……)
室内には客は一人しかいなかった。ボーっとした顔で、ニュースを垂れ流すテレビに目を向けている。顎髭を生やしたリーゼントヘアの中年男だ。眉が太く、鼻は大きい。頬骨が張っており、薄い唇をしたその厳つい顔は野性的で男らしかった。
だがそれ以上に聡が興味を引かれたのは、その肉体だ。鍛え抜かれた大胸筋は分厚く盛り上がり、腕や足は丸太のように太く、肩はガッシリとしてたくましい。眉間や上腕二頭筋に浮かんだ太い血管、全身に生えた濃い体毛がなんとも艶めかしい。股間はタオルで隠していないものの、恥ずかしさは多少なりともあるのか、そのごつごつとした大きな掌で覆うようにして隠している。
(ハズレかと思ったけど、今日はラッキーデーだったかな♥)
彼の豊満な肉体と、眼下に広がる自分の体を見比べる。今の身体もそこそこ【筋肉質なモノを選んだ】ので、そこまで見劣りはしないとは思う。ただ、この身体にも飽きてきていたので、次は彼のようなマッチョな男になりたい。あんな立派な胸板に割れた腹筋……、いいなぁ。そう思っていた矢先だった。
妄想に耽りながらしばらく目を奪われていると、彼の瞳がテレビから聡の顔へと向いた。
「なんだよ、兄ちゃん。なんか用か?」
「い、いえ」
ぶっきらぼうに言い放たれた言葉に、聡はドキリと胸を高鳴らせた。その口から吐き出された声も、体格に見合った低く色っぽいものだったからだ。
「……ったく、なんなんだよ。ジロジロ見やがって……。気持ち悪ぃ野郎だな!」
迷惑そうな表情で悪態をついてくる彼に、聡は「すみません」と返しながら、対角線上の位置に腰を下ろした。目線はすぐに外したが、彼はまだ自分のことを見ているだろうか? そんな些細なことを考えるだけで、ゾクゾクとした高揚感が全身に広がっていく。タオルで隠したその下では、皮を被ったチンポが軽く首をもたげ始めていた。
(あ……♥ ダメだ、落ち着け……。あとちょっと……、もう少しであの身体が僕のモノに……♥)
サウナの熱と興奮でクラクラする頭でそんなことを考えていると、プシューっという噴射音が響いて、室内全体に密度の濃い霧が広がった。
「うっ……、ゲホッ……!」
その霧を吸い込んだ瞬間、咳き込んでしまう。男も同じようにむせ返っている。そのまま聡は床に手をついて咳き込みながら、脳裏に浮かんだ光景に思わずニヤけてしまった。それはこのミストサウナで、これまでに交換してきた客の姿だった。そして訪れたのは──
(あっ♥ きたっ♥♥)
全身が蕩けていくような、異様な快感。痺れるような心地好さに、思わず体の力が抜ける。何度体験しても、この感覚は気持ち良すぎて癖になる。床に横たわり、海老反りになりながら爪先をピンと伸ばして、全身でその感覚を味わう。
「ん゛っ♥♥ んあっ♥」
ビクビクと痙攣しながら辺りを窺うと、同じように床に突っ伏している男が視界に入った。鼻息荒くハァハァと呼吸を繰り返しながら、紅潮した顔には恍惚の表情を浮かべている。何が起こっているのかわからない──。そんな疑問が表情に浮かんでいた。
「おあぁ゛っ♥♥ なん、なんなんだこれ……っ! お、俺ぇ……♥♥♥」
やがて彼が、雄叫びのような声を上げて身を震わせた。床と男の腹筋の間で圧迫されたチンポがビクンビクンと暴れ回り、その亀頭からビュルッと白濁液を噴き出させている。どうやら彼は、その表情を快楽に歪め、そのまま意識を手放したようだった。
(すごくエロイ……♥)
そんな光景を目にして、聡の興奮は最高潮に達していた。体中の血が滾り、チンポがドクンドクンと脈打っている。情けない姿で横たわる男の肉体から、目が離せない。あのデカい体が、苦痛に歪んだ厳めしい顔が、快感で亀頭の先端から熱い精液を吐き出したあのイチモツが、これから自分のモノになる。
「いぎぃ♥♥♥」
睾丸の中の熱いモノが、外に出ようと準備している。人並み以上の大きさを誇る竿。その表面に浮き出た血管に血が巡る感覚に、聡は両手で頭を掻きむしった。尻の穴がキュンキュンと疼き、腹の中で何かが暴れ回っているかのような苦しさと快楽に悶絶し、それでももっと味わいたくて夢中で腰を振る。
「あ゛っ♥ あ゛ぁあ゛♥♥ ぎぼぢいい♥♥ お゛ぉおおっ♥♥♥」
腹の中で蠢いていた何かが、喉を通じて外に飛び出した。嬌声が止められない。腰をヘコヘコと動かし、その何かが狭い出口から顔を出すのに合わせて、熱く煮えたような精液が僕のチンポから撒き散らされる。サウナ室内には情けない叫び声が響き渡ったが、そんなのはどうでもいい。ビクビクと全身の筋肉が脈打ち、腰は勝手に動き続けている。男の口からモワリとした白い霧状のモヤが溢れ出したのを目にした瞬間、聡も同じように白い煙を吐き出して意識を手放した。
***
「ん……、むうぅ……」
低い呻き声を上げながら、阿久津慎吾はゆっくりと目を開いた。上体を起こすために濡れた地面に手をつくと、その節くれだったごつい指が否応なしに視界に入り、歓喜で身震いせずにいられなかった。
「おお……!」
思わず声を漏らすと、室内に反響した色っぽく太い声が耳に入ってきた。そして、今回もこのミストサウナによる肉体交換が成功したのだと実感する。サウナ内には鏡が無いため、顔は確認できないが、見下ろした先に映る盛り上がった胸板と割れた腹筋が、慎吾の情欲を刺激する。股間のイチモツは屹立して脈打ち、亀頭の先から白濁液を垂らして止むことがない。ズル剥けのデカマラをぶるんと震わせ、慎吾は口の端を歪めて笑った。
「すごいや……」
揉み心地のいい大胸筋をグニュリと掴むと、それに反応するようにデカマラがビクッと跳ねる。先走りで濡れそぼった亀頭を掌で包むように握ってやると、慎吾は熱い吐息を漏らしながら体を震わせた。
「あぁ……♥ チンポやば……♥♥」
乳首をコリコリと弄り、我慢汁で濡れた竿全体をクチュクチュと音を立てながら擦り上げる。ザラついた太い指がカリ首に食い込み、時折裏スジを引っ掻くようにして刺激を与えると、鈴口からはビュッと透明な汁が迸る。他者によって奪われた肉体は、もっと弄ってくれと言わんばかりに慎吾の身体を内側から疼かせ、さらなる快楽へと急き立てる。
「お゛っ♥ イグっ♥♥ いっぐぅうっ♥♥」
一瞬全身を硬直させると爪先を丸め、大きな嬌声を上げながら、慎吾は床に向けて白濁液を撒き散らした。ビュウビュウと射精が止まらない。ドクンドクンと脈打ち、痙攣するデカマラに呼応するように腰を大きく揺すりながら、慎吾は恍惚の表情を浮かべていた。
「これが、【俺】の新しいカラダ……♥」
陶酔したような表情で、慎吾は呟いた。全身を巡る、今までとは比べものにならないほど快感に、脳髄まで蕩けてしまいそうだ。これまでに手に入れてきた肉体も、性欲に塗れていなかったと言えば嘘になるが、この身体は本当に最高だった。
鼻の下を伸ばしながら下品な笑いを浮かべると、慎吾は再びチンポを弄り始めた。全身が性感帯になったかのような刺激に身を震わせながらも、一心不乱に手を動かしていく。新しい自分を手に入れたことをたっぷりとアピールするように、床に横たわったかつての自分を目の前にしてその速度を速めていく。デカいチンポ、デカい体、デカいキンタマ。撃っても撃っても、玉の中にザーメンが充填されていくのを感じる。
「お゛ぉおお♥♥♥ イクっ♥♥ またイっちまうっ♥♥♥」
雄々しい顔を快感に歪め、雄叫びを上げながら慎吾はザーメンを撒き散らした。何度も吐き出されたそれは床一面に白い水溜りを作り、鼻腔をつく匂いを放っている。その雄臭い光景が、さらに慎吾の興奮を高めていった。こんなに濃い精液を放ち続ける肉体が、自分のモノになったというだけで、自然と笑みが溢れてしまう。
「う……♥ あ……」
やがてひとしきり射精を終えたのか、慎吾は満足げな笑みを浮かべると、石でできた椅子の上に腰を下ろした。股間にぶら下がる玉袋がヒクヒクと蠢き、再び中身を作り出そうとしているのがわかる。
改めて全身を眺め回すと、彼は不敵な笑みを浮かべて舌なめずりをした。浅黒く日焼けした体。太い首、隆起した筋肉、長い腕と脚。先ほどまでのスポーツマンタイプの細身の肉体とは真逆の、現場仕事で鍛え上げた、たくましい肉体美。サウナでかいた健康的な汗と、肉体を奪われたことで垂れ流された恐怖による汗が混じり合って、なんとも言えない臭気を放っている。毛深い腋をグイッと上げて鼻を鳴らすと、酸っぱいような刺激臭を感じて、チンポが再びヒクリと鎌首をもたげた。
「あぁ、くせぇ……♥ たまんねぇなぁ、オイ……♥」
じっとりと濡れた腋毛に舌を這わせて汗を舐め取っていると、床に俯せになっていた聡が微かな悲鳴を上げながら、意識を取り戻した。彼は目を開けて周囲を見回したあと、目の前にいるのが【阿久津慎吾】だと認識した途端、驚きに目を見開いた。
「なっ……、俺がもう一人いる?! ど、どうなってんだよ……!?」
自身の肉体を見下ろしてさらにパニックを起こしかけた聡に対し、慎吾は目を細めると、彼の両腋を掴んでぐいっと引き寄せた。
「よう、兄ちゃん♥ なぁに変な声出してやがんだ?」
「て、テメエ、俺の振りしてんじゃねぇぞ! いったいなんだよ、その喋り方……!」
「あぁ? テメエこそふざけんなよ。見ればわかんだろ? 俺はなぁ……、【阿久津慎吾】だよ。くっくっく……♥」
戸惑いの声を上げる聡を見下ろしながら、慎吾は心底楽しそうな笑みを浮かべた。その表情を目にした瞬間、聡の背筋がゾクリと震える。だがそれも一瞬のことで、すぐに恐怖よりも怒りが上回ったのか、彼は怒りの形相で慎吾に殴りかかった。だが──
「ったく、危ねえじゃねぇか兄ちゃんよぉ」
その手はあっさりと掴み止められて捻り上げられ、聡は悲鳴を上げて床の上に倒れ込んだ。体格差がかなりあるのだから、当然である。
そんな聡を見下ろしながら、慎吾は嗜虐的な笑みをその顔に浮かべると、ドカリと椅子に腰を下ろした。
「ぷ……、だっはっは! いやぁ、からかってすみません、阿久津さん。その様子だと、あなたはこのミストサウナの仕組みをご存知無いようですね?」
「……サウナの仕組みだぁ? なに言ってんだテメェ! いいから、早く俺の身体を元に戻せッ!」
「まったくもう……、せっかちだなぁ。慌てなくても大丈夫ですよ。このサウナでは一時間に一回濃いミストが発生して、それを浴びた人たちの肉体が入れ替わるんです。だから、また一時間後に僕たち二人が同時にミストを浴びれば、元の身体に戻りますよ」
「な、なんだよそれ……。意味わかんねぇよ……!」
困惑したような声を上げる聡に、慎吾は微笑を浮かべてゆっくりと手を伸ばした。そして彼の二の腕を掴むと、グイッと自分のほうへと引き寄せる。
「ちょ、何すんだよ! おい……!」
突然のことに動揺する聡を無視しながら、慎吾は熱い吐息を漏らしながら顔を近づけていく。
「ねぇ、阿久津さん。僕の身体はどうですか? さっきまでのあなたの肉体が、目の前にあるんですよ……♥」
「な……、は……?」
慎吾に問いかけられた言葉に、聡は面食らったような表情を浮かべた。何を言っているんだコイツは? なんで、そんなことを俺に聞くんだ? そんな疑問が頭の中を駆け巡っていくうちにも、彼の視界いっぱいに【阿久津慎吾】の顔が広がる。全身から噴き出す、あまりにも男臭い汗の匂い。サウナに入る前に体を洗わなかったせいで獣臭さすら漂ってくるような体臭に、聡は顔をしかめた。だが次の瞬間には、その彼の口が自分のそれに重ねられていて──
*
「んむ゛ぅっ♥♥」
口内にヌメッとした感覚が走り抜けると同時に、俺は目を見開いて硬直した。男とキスをしてるのか?! しかもその相手は、さっきまでの俺の姿をした男で──
「んちゅ……♥」
うっとりとした表情の【阿久津慎吾】の顔を目にした瞬間、俺の中で何かが弾けた。この異常な事態に対する恐怖感も、嫌悪感も何もかもが頭の中から吹き飛んでしまうほどの興奮を覚え、俺は無意識のうちに自らの舌を、目の前の相手の口の中へと差し入れていた。全身を貫くような快感とともに頭が真っ白になり、今まで感じたことのない多幸感が脳天を突き抜ける。
「あふっ……、あ゙ぁ……♥♥」
学生時代から強者として生きてきたこの俺が、こんなにも簡単に組み伏せられて、自分よりもごつい男になすすべなく唇を奪われている。しかも、その相手はかつての自分の姿をした男だ。その事実を自覚するたびに、俺のチンポはビキビキと硬度を増していき、鈴口からは先走りが溢れ出していった。
「んむちゅっ♥♥ はむっ♥ んん゛ん~~~っ♥♥」
互いに舌を動かして唾液を交換し合いながら、俺たち二人は夢中になってディープキスを貪った。雄臭い体臭が、俺の舌にまとわりつく生臭い唾の匂いが、俺の脳みそを快楽で麻痺させていく。
こんな体験は初めてだった。これまでに数えきれないほどの女たちとセックスしてきたが、その誰とのキスよりも濃厚で、官能的で、それでいて異性からは味わえないフェロモンたっぷりの汗臭い香りに安心感すら覚えてしまう。俺の脳内ではもはや、ただ目の前にいる【たくましい雄】に犯されたいという願望だけが支配し始めていた。
「阿久津さん、どうですか? そろそろ、僕とセックスしてきたくなったんじゃないですか? あなたは今、これまでに何度もガチムチ野郎に抱かれてきた僕の脳みそを使ってるんです。この身体が、さぞ魅力的に映ってるでしょう……? 一時間後にはどうせ、お互い元の身体に戻って、その身体は僕のモノに戻るんです。チンポでケツの穴が広がるのは僕の身体。あなたの身体は綺麗なままなんですから、男同士のセックス試してみませんか? この機会を逃したら、二度と体験できませんよ……♥」
耳元で囁くようにそう告げられた瞬間、頭の中で何かが音を立てて崩れた気がした。これまでの自分であれば、こんな誘いに乗ることは決してなかっただろう。男と男のセックスだぞ? 俺はホモじゃねえし、掘られるなんてまっぴらだ。そう考え、拒絶していたに違いない。だが、今の俺にはこの誘いを断ることなど考えられなかった。なぜならば──、目の前にぶら下がったチンポが、うまそうでうまそうでたまらねえからだッ!!
俺は【阿久津慎吾】のチンポを咥えると、ジュポジュポと音を立ててしゃぶり上げ、激しく刺激し始めた。同時に大きく膨らんだキンタマを揉みほぐして、一心不乱に奉仕する。これまでに何度も行ってきた【戸倉聡】のフェラチオの光景が、脳裏にフラッシュバックして自然と体が動いた。
「んっ♥ ふっ……♥♥ 上手いじゃねえか、聡っ……♥♥」
汗臭さと蒸れた匂いに鼻腔を犯されながら、俺は夢中で男の──、かつての自分のモノを貪った。唾液でヌルついた竿を何度も何度も往復し、裏スジを舐め上げるようにして亀頭へ。そのたびに口に広がる濃厚な雄の味に、頭の中が蕩けてしまいそうなほど興奮する。
「あー……、いいぜぇ聡♥ その調子だ」
恍惚の表情を浮かべて【阿久津慎吾】が低く唸り声を上げる。その言葉に興奮を煽られながら、俺はさらに激しく手を動かし続けた。
(あぁ、クソッ! なんでだよ……!)
心の中で悪態を吐きながらも、俺の舌は男の亀頭から裏筋をネットリと舐め上げていた。いつの間にか俺も勃起してしまっていたようで、チンポの先から先走り汁が溢れ出していくのを感じる。苦くてしょっぱくて、くそまずいチンポなのに、こんなにも美味いと思っちまうなんて……! 俺は夢中になってチンポをしゃぶり続けた。そして──、とうとう我慢できなくなった俺は、男に覆い被さって、そそり立った相手のチンポを自分のケツ穴の中に招き入れてしまった。
──ズッ、ズッ、ヌッチュゥ……、ジュププププゥッ
「ふぬお゛ぉおおぉぉお♥♥♥」
野太い雄叫びを上げながら、俺は盛大にケツアクメをキメた。チンポが穴の中に飲み込まれていくイヤらしい水音が耳に届いて、アへ顔に磨きがかかる。ケツなんて使ったことはないはずなのに、まるで何年も使い込んできたかのように、すんなりと野郎の巨大な肉棒を根元まで咥え込んじまった。
「んお゛っ♥ おいおい、随分と積極的じゃねぇか。くっ……、聡ィ……♥♥」
【阿久津慎吾】の囁きに促されるように、俺はゆっくりと腰を動かし始めた。最初は恐る恐るという感じだったその動きは、段々と激しさを増していき、気がつけば俺は自ら腰を振り乱して男のチンポで、己のケツ穴を耕していた。グポグポと情けなくも淫猥な音をアナルから響かせながら、喘ぎ声が口から溢れ出して止まらない。
「お゛っ♥♥♥ お゛ぉっ、チンポいいっ♥♥ チンポッ♥」
俺……、男のチンポをケツ穴に突っ込まれて感じちまってる……。
俺は、変態ホモ野郎に成り下がっちまった。情けなくて、恥ずかしくて、涙が出そうだ。でも、もっと気持ち良くなりたい。俺の頭が変になっていく。中途半端に勃起したチンポが、右へ左へ暴れまわりながら、透明な汁を振りまいている。
もっともっと乱暴に犯されたい──、そんな欲望で頭の中がいっぱいだった。余裕の笑みを浮かべた【阿久津慎吾】に尻を掘られていると、まるで自分が淫乱なメス犬になったかのような錯覚すら覚える。汗を飛び散らせ、鼻水や涎を垂らしながら必死で快楽を貪る俺の姿は、ヤツの目にはさぞかし滑稽に映っていることだろう。
だが、今の俺にとっては、そんなことはどうでもよかった。デカいチンポでケツをほじられ、口元がビチャビチャに涎まみれになるまでする男とのキスが、この世で一番気持ちいいんだ。もっとだ! もっとケツを犯してくれ!!
そう叫ぶ代わりに、俺は【阿久津慎吾】のチンポをきつくケツで締めつけながら、舌を突き出して口づけを求めた。それに応えるように、男もまた俺の唇にしゃぶりついて舌を絡めてくる。そしてそのまま、俺たちは互いの唾液を交換し合いながら、淫らに舌を絡め合い続けた。
(あぁ……、やべぇ……、俺もうイキそうだ……!)
気が遠くなりそうなオーガズムの予感に、俺は思わず身震いした。同時に、俺のケツ穴に深々と突き刺さっていた【阿久津慎吾】のチンポが激しく脈打った。
「ぬお゛ぉおおぉっ、イグっ♥♥ 子持ちの……! ガチムチ親父のデカマラで……、イクッ!! イクイクイックぅゔゔうぅうぅぅっ♥♥」
──ブビュルルルルルルッ!! ドプッ!! ビュククッ!! ビューッビューーーッ!!!
男が空気を震わせるような唸り声を上げ、熱い精液が大量に俺のケツ穴に注ぎ込まれる。その感覚に、俺は全身を痙攣させながら盛大に果ててしまった。あまりの快感に意識を失いそうになるが、それでも最後の一滴まで搾り取るかのように、俺はケツをキュウッと締め付けて【阿久津慎吾】のチンポを離さなかった。
(あぁ……♥ すげえ……、男とのセックスってこんなに気持ちいいのかよ……♥♥)
男の──、しかもさっきまでは俺の股間にぶら下がっていたチンポ。その先から発射されたザーメンをぶち込まれたというのに、腹の底から湧き上がってくる幸福感と達成感で頭がいっぱいになっていく。
長い射精がようやく終わりを迎えるころには、俺の全身は汗とザーメンまみれだった。ケツからは、入りきらなかった【阿久津慎吾】のねっとりと濃ゆい精液が逆流している。もはや愛する人とも言える男の姿を、恍惚とした笑みを浮かべて見下ろしながら──、【僕】は何度も射精を繰り返した。
*
僕の口元から、セクシーなよがり声が絶え絶えに溢れ出す。【戸倉聡】の肉体だったころは、ヤられるばかりだったというのに、今や犯す側になっている。久しく味わっていなかったケツ穴を蹂躙する行為に、僕は全身をゾクゾクと震わせた。ガチガチに硬くなったチンポで、男のケツマンコを犯しているという事実だけで、イッてしまいそうなくらい興奮してしまう。
「お゛っ♥♥♥ お゛ぉっ♥♥ ふぬ゛ううぅっ、最高だっ!! 締まりがっ、良すぎてッ……、チンポが止まらんんッ♥♥」
肉体を奪われた男が、必死になって僕に向かって尻を振る姿は見ていて滑稽で無様で──、そして堪らなく興奮した。
かつては数々の女と散々セックスしてきた男が、こんなにも淫らな姿を【俺】に晒しているだなんて……! 新しい俺のチンポが、乱暴に擦れる。反り返って硬くなったチンポが、男の腸内を引っ搔いて刺激していく。男のケツの穴にチンポをブチ込むのが、こんなにも気持ちよかったなんて、久しく忘れちまっていた。今までの俺の人生から消えていた感情と感覚が、このケツを犯していると蘇ってくる。
「あ゛っ♥♥ あ゛ぁっ♥♥♥」
下の口で【阿久津慎吾】のチンポを根元まで咥え込んだ男が、苦しそうな声で喘ぐ。その声が、胸の奥に沸々と黒い欲望を湧き上がらせる。もっと犯したい! コイツを俺のモノにしたい!!
「お゛っ♥♥ イグっ♥♥ 初めてのホモ交尾で、俺イッちまうッ♥♥♥」
俺はかつての自分の肉体を抱きすくめると、相手の尻の奥深くまでチンポをずっぽりとハメ込んだ。瞬間、ヤツの腸壁が俺のチンポをきつく締めつける。熱を持った分厚い肉壁に極限まで急所を強く覆われれば、もう我慢できるはずがない。
「ぬお゛ぉおおぉっ、イグっ♥♥ 子持ちの……! ガチムチ親父のデカマラで……、イクッ!! イクイクイックぅゔゔうぅうぅぅっ♥♥」
──ブビュルルルルルルッ!! ドプッ!! ビュククッ!! ビューッビューーーッ!!!
野郎のケツの奥にぶち込んだチンポが爆ぜる。大量のザーメンを男の中にぶちまけ、口の端から涎を垂らしながら俺は笑った。
(ああ……♥ 【俺】ノンケなのに、男のケツマンコに中出ししちまってる……。妻子持ちの肉体で、男とヤるのたまらねぇよ……♥♥♥)
それから、一時間の制限時間いっぱいまで、俺は【戸倉聡】の肉体を犯し続けた。
こっちは犯してる立場だっていうのに、目の前にいる相手は今しがたまでの自分の姿をしているものだから、犯されているって気分も味わえて一挙両得ってもんだ。きっと男っぷりが良くなった俺の顔は、だらしなく緩んでいるだろう。なんてったって【戸倉聡】の姿をした男もまた、何発も中出しされまくったケツからゴポゴポとザーメンを垂れ流しながら、下品な顔で笑っているんだからな。もはや、俺に骨の髄までメロメロだっていうのが、ひしひしと伝わってくる。
「はぁ……♥ 最高だったぜ、聡。久しぶりに味わったが、やっぱり男のマンコは格別だな♥」
精液塗れになった全身をタオルで拭うと、俺は「よしっ」と膝を叩いて立ち上がり、サウナの扉に手を掛けた。
「えっ……?! ちょ、ちょっと待って! 一時間が経ったら、身体を元に戻すって約束だったでしょう?」
「んん? そうだったか? 悪いな、覚えてねえんだ……、許してくれや♥ この身体をよ、もっと楽しみたいんだよ。元の持ち主のお前ならわかんだろ? このチンポで他の野郎どものケツを掘りまくりてぇ、愛する嫁のマンコにチンポハメてぇって気持ちがよぉ♥♥」
わざとらしい笑みをニイッと浮かべながらそう言ってやると、【戸倉聡】は顔を青ざめさせた。絶望した顔──、たまらねぇぜ♥ 萎えたチンポがたちまちフル勃起しそうになるのを抑えながら、俺は扉を開いてサウナをあとにした。
***
「そ、そんな……」
【阿久津慎吾】の姿をした男が、サウナから出て行ってしまった。追いかけようにも、さんざん尻穴を掘られたせいで、腰が抜けたようになって立つこともできない。時計の針を見ると、あれから一時間経った時刻を刺そうとしている。ミストが発生してしまう──。だが、元に戻りたいと思っていた相手はもういない。この不思議なサウナの効力が周知のことであれば、よっぽどのことがない限り新しい客は入ってこないだろう。このまま、この肉体で過ごしていくしかないのか? そんな暗澹たる思いでいたときだった。
「おぉ、空いてるぞ!」
「ラッキーじゃねえか。お前らも入ってこいよ!」
絶望的な考えを打ち消すかのように、扉のほうから威勢のいい太い声が聞こえた。顔を上げれば、そこには屈強な数人の男たちが立っていた。近くに体育大学があったはずだが、そこの生徒たちだろうか。全員が筋肉に覆われたたくましい肉体をしている。顔もみな精悍で、いかにもスポーツマンという印象だ。
(助かった……♥ あの人たちのうちのどれかの身体が僕のモノに……♥)
全員が以前の【俺】に負けず劣らず雄臭くて魅力的で、これならどの肉体になっても文句はない。
──時間だ。
プシューっという噴射音が響いて、室内全体に密度の濃い霧が広がっていく。互いに顔を見合わせながら、戸惑った表情を浮かべる若者たちが、口から白いモヤを吐き出しながら射精している。狼狽する彼らの姿を見ていると、嗜虐心がフツフツと湧いてきた。これから、あの男たちの中のどの肉体と入れ替わるのだろうか? そう胸を躍らせながら、僕もまた同じようにモヤを吐くと、濃く煮詰まったようなザーメンをビュウビュウと撒き散らした。
(了)
以下、差分イラストです