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王国から二十里ほどの渓谷の奥底にあるダンジョンにはある謎があった。 そのダンジョンには屈強な人獣型の魔物が多く巣食うそうなのだが、出会う敵出会う敵全て雄しかいないのだという。目につかない場所に巣が作られていてそこに雌の魔物や子供がいるというわけでもなく、本当にそのダンジョンや周辺には雄しかいないのだ。しかしそれでもそのダンジョンには古くから魔物が絶えず生息し、探索者を襲っているのだという。 ここにある冒険者が訪れた。王国の中流貴族の出であるが、剣の腕がたつことから暇つぶしにギルドで依頼を受けている彼は、この謎の噂を聞きただ好奇心でここに来たのだ。彼を襲う魔物はどれも強力な魔力を持つ雄の魔物で、雌の魔物の影もない。その要因を突き止めんと下層に降りた瞬間、初めて、例外にあたる存在に出会う。樽のような見た目の醜悪な虫型の魔物が床の石畳を割り、真下から現れたのだ。落とし穴の要領で彼を自らの口腔という宙へ浮かし、抵抗の術を奪ったワームはそのまま彼を一のみにしてしまった。 冒険者は突然の出来事に叫び、暴れ、脱出を試みたものの、この虫の口は堅く閉ざされ、隙間一つも開けることが出来なかった。焦燥に駆られる彼は、まるで一つの繭のようになった虫の体内が、温い液体で満たされ始めるのに気づいた。まさか消化されてしまうのでは、と絶望し、決死の表情で四肢を伸ばし、この繭を破ろうと藻掻いた。結局その抵抗は全て無駄に終わったのだが、そのうちにあることに気がついた。消化液と思われたこの液が、自分の装備を溶かし始めていること、だが自分の身体自体はいつまで経っても溶けるような感覚がないことに。そしてその液体が、自分のことをまるで愛撫するかのように、全身にまとわりつき、じわじわと体内に染み込み始めていることに。あまりに奇妙な出来事に、当然ながら強い危機感を覚えたのだが、身体がうまく動かせない。そのまま、長い長い愛撫を、受け入れる他なかった。 どれくらい経っただろうか。ふと、彼は自分の身体が自分の支配下に戻ってきていることを認知した。早くこの忌々しい虫の外へ出なければ!そう思った彼は、手を思い切り頭上へ伸ばす。するとあれだけ堅く閉ざされていた虫の口が、ぐぽっと音を立てあっけなく開いたのだ。だがそんなことを意にも介さず、彼は、待ち望んだ外へと向かう。冷たい外気に、手が触れ、鼻が触れ、顔が触れ、胸が触れ、腹が触れ、寝ぼけていた皮膚感覚が刺激に晒され、彼は思わず口を開いた。 「ぶもおおおおおおおおおおおっ!!!!!!!」 一鳴きして、彼は暫く、その違和感に気付けずに呆けていたが、直ちにその異常と絶望を察知し、混乱に飲まれた。 「ぶもっ!?ぶおぉお!!ブモォーーーー!!!」 ダンジョンの床に生えるワームから産まれるように這い出た彼は、人間の面影を一切残さずに牛の魔物、ミノタウロスに成り果てていた。異形の頭部、岩石のような筋肉、厚い獣毛。かつて流麗な剣技を奮っていた、麗しき貴族の血は、荒々しい獣の血に滅ぼされていた。 自分の喉が震え、牛の声が鳴り、牛の声が聞こえる。 何度何度繰り返してもこの事実が覆ることはない、それでも信じるわけには行かずに、牛の本能行動を繰り返す。むちむちと揺れる豊満な肉体は、人間の比でない程の体温を抱え、荒々しい呼吸と共に生き生きと脈動している。鳴けば鳴くだけ、この熱の奔流に理性が晒され、どうしようもない現実をただ自覚させられてしまう。 このダンジョンは巨大な魔力溜まりの直上に存在していた。そこに住み着いているワームは濃縮した魔力をその身に蓄えている。ワームは人間の持つマナを好物としてい、体内に取り込んだ人間に魔力液を与え、置換する形でマナを吸い食事をする。高濃度の魔力を注がれた人間は人の姿を保っていられる訳もなく、魔物の形に変容し安定する。この地に蔓延る雄の魔物はこのワームによって造り変えられたものであり、男の冒険者しか訪れなかったから雄しかいなかったのだ。そもそも繁殖の仕組みが異なっている、というのが噂の正体だった。 ミノタウロスは上半身を外気に晒し、相変わらず力任せに叫び続けている。まるで産声をあげるように。そんな彼をよそに、ワームが彼を完全に吐き出そうと、その下半身を口内の内壁で押し上げる。ワームにとってはマナを食い尽くした魔物など用済みだからだ。彼はなんとなく、反射的に、吐き出されまいと体に力を入れた。完全に産み落とされたら人間としての重大な何かが失われてしまうと感じたのだ。その読み自体は正しかった。 ワームの吐き出しと地中へ戻ろうとする動きにより、必死の抵抗むなしく、牛人のその金棒のような脚がズポンと地下から引き抜かれた。途端、鳴くだけで満たされていた牛の、雄の、魔物の本能がゴボゴボと吹き上がり始めた。今までそれが無かったのは、ワームの中に残っていた自分の人間のマナ残滓がそれを引き止めていたからだ。じゅぐじゅぐ形成す本能は、彼に走馬灯を見る隙すら与えないまま、獣欲の指令を下した。 ワームの体液に濡れヌラリと輝く牛の剛鉄と、魔力のマグマを秘める鉄砲丸が獣特有の刺激臭を放ち自己主張を始める。ミノタウロスはギンギンに熱り立つそれを4本指の蹄の手でむんずと掴んでは、躊躇いなくシゴキだした。 「ブモッ、ブオォ、ンモォオ、ンモッ」 人間の時とは比にならない自慰の感度を体感し、金玉と脳に残っていたかばかりの理性はさっさと性欲の奴隷に成り下がった。シゴキながら太い脚で立ち上がり、自分の雄臭さを誇示するように仰け反り、叫びを上げる。 「ブモオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!」 何の抵抗もなく、さも当然かのように魔物は絶頂を迎えた。粘性の高い精液が濁音を鳴らしながら熱鉄の頂上から間欠泉のように吹き上げた。体に残っていたマナ滓はこれで綺麗サッパリと消え失せた。 牛は、まるで日常に戻るかのようにダンジョンへと消えていった。己の獣欲に従い、熱持つ欲望を鎮めるために。

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