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それは私/僕/俺/あたしの夢に現れた。

”落ち着かされた”日には必ず見た。


上瞼と下瞼をこじ開ける感覚で目が覚めた。

視界の裡に、また佇むものがいた。

いつものように、こちらを覗いているのだろう。

冷たい床の上で転がるこちらを見ているのだろう。

これを見るのは今日で何度目なのだろうか。


何を求めているのか。

何を求めているのか。

何を求めているのか。


これ以上何を望むというのか。

夜の帳が頬を刺し、意識が消えると共に床《とこ》へと安寧を求めて落ちていく。

望むものは家族であったし、博愛でもあり、学ぶ事でもあった。

しかし現状は、彼らの言う神など存在しないのではないかと、不安を感じていた。

神に近づくとされ、飲まされた液体は胃にはりついて取れない。

それが積み重なり、腹の中でふくらんでいく錯覚を覚えていた。

---

■ こいつを飲まされてから何日経っただろう。

いつも通り、この娘も毎日自分の体から肉が腐り落ちる妄想に苦しんでいた。

娘とは言うが、正直こいつに関しては性別も分からない。未成熟のまま生まれた例だ。

誰も言葉を教えていないくせに、やたらと知能が発達していたそいつは、

メモに書かれたアルファベットを、そいつは地肌を晒しながらも丁寧に読んでいた。

裸だろうが、不気味すぎて誰も興奮しやしない。性別もわかんないしな。

こいつらの頭についてる口さえ自由に制御できればいい。


金を搾り取った先は彼らが望む新世界だ。

もっとも、新世界への脱出口はこいつらの腹の中ではあるが。

あとはこいつらが、罪の意識すら持ち得なかったら楽だったんだがな。

---


またあの「何か」が視界に写った。

その時、自分の口から自然に声が吐き出された。

「あなたは神様ですか?」

神様はうなずいた。

神様はほんとうにいたのだ。

ずっとここでたえぬいてきたのを、神様はみてくださっていたのだ。


神様が壁にゆびをあてる。

ひとつずつなにかを書いていく。


ばらばらになったなにかを傾けたりしてみる。

右にかたむければN。ひだりにかたむければE。これはアルファベットだ。

「ね、う、ろ」

「ま、ん、さー」


「すすめ」

ネウ・ロマンサーはいった。

「たべろ」

ネウ・ロマンサーはいった。

― "あたし"だけの神様。

「じゃ、あいだとって」

「あたしはかみのつかい エヌ・オー

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自称神様の使い『エヌ・オー』

合成の過程で体が未成熟のまま形成されてしまったため性別は不祥。

その分脳に栄養が行ったため頭脳明晰であるが、引き取られた宗教団体ではその頭の良さが罪の意識を生み、苦難の末薬物の投与で脳が携わる全ての能力が著しく低下している。

また、薬の過剰投与のため、片目が青く、視力がなくなってしまった。

信者を新世界へと誘うための手伝いをしていたが、不用意に職員までも勝手に食べてしまうため、今は地下に幽閉されている。そのうち海に捨てる予定らしい。

定期的に食事は与えており、しかし精神に影響が及ぶのではないかと懸念されていたが、本人の青い目の中は幻覚でいっぱいのため、今日も楽しく一日を過ごしていると依然勘違いしており、現状問題なしとされている。


現役時代、きってちゃんには烈火の如く嫌われていた。

きってちゃんにとって可愛いのは自分一人で十分だからである。

ちなみに、黒が夏毛、白が冬毛であるものの、自律神経がもはやバラバラのために一定間隔で2色が切り替わったりマーブル模様になったりする。

妄想の果てに手にした神様、「NEUROMANCER(ネウ・ロマンサー)」を崇拝している。



[高画質版]

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