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これまでやってない事をしようと思い立ったので、今後何らかの形で頒布しようと思ってる作品に掲載予定のSSを公開してみます。 いずれブラッシュアップ予定なので、表現とか誤字・脱字あるかと思いますがお気になさらず。 採用するかは分かりませんが「こういう表現・シチュがあればなお良い!」みたいなのがあればコメントでいただけると有難いです。 無数に偏在する世界は繋がっている。その繋がりの多くは神秘的、或いは超科学的なものであり普通は干渉する事が不可能である。そんな常に流動し、変化し続ける繋がり。その繋がりをここでは「道」と称するが、その道の一つに大きな動きがあった。 時空の流れの中を、機械の残骸が虚しく運び去られていく。これは時空の流れや遡行者を監視する、いわゆるタイムパトロールが保有する機体のなれの果てであった。つい数分前まではその役目を果たそうと懸命であったが、彼らを遥かに上回る存在に破壊されてしまった。もっとも、その存在からするとタイムパトロールがいたことにすら気付いていないだろう。 やがて道全体が地鳴りのような音と共に揺らぎ始めた。そして果ての無いように見える空間の奥から、超巨大な肌色の物体が猛然と姿を現した。この空間内において大きさや質量という概念は些細なものであるが、この巨塊は何も無い筈の空間を激しく揺らがせるには充分であった。 「はぁぁ……お腹空いたわぁ……」 巨塊の正体はゴリライバー、癒月ちょこ。幌頼舞町の住人でありそれに違わぬ巨体と食欲、そして性欲の持ち主であった。半ば無限に近い道の空間であっても、ともすれば窮屈に見える巨大な身体。全長にして17億km、全幅は16億km、体重は20穣トン。筋肉の一つが惑星ほどの大きさがあり、大陸のような大胸筋に跨る乳房の迫力など言葉で表せないだろう。またふたなりなので股間に巨大な逸物をぶら下げているが、下着に収められた状態でもその大きさは木星の4倍はあるだろうかという巨大さであった。超特大もっこりである。 どの数値も推測の域を出ないが、途方もなく巨大である事だけは間違いなかった。最も普段からこの大きさのではない。ゴリライバーは万能ではあるが、仮にも住まいがある幌頼舞町を破壊するのは色々と面倒なので、一切関係ない場所で力を開放して巨大化するのが基本なのだ。先ほどのタイムパトロールのパトロール機体も、この巨大すぎるちょこの身体に接触して粉砕されてしまったのだ。 そんな彼女が何故この道にいるのか。その理由は豪快な腹の音が証明していた。 グゴゴゴゴゴゴゴゴォッッッ……!!! 空間全体を震わせるほどの爆音が轟き渡る。ちょこは「食事」へと繰り出す為にこの道を通っているのであった。原典も相当な大食いであるが、ゴリライバーとしてのちょこは輪をかけて凄まじい。通常時でも数百㎏の食事を平らげ、巨大化した状態であれば街や地形ですらも食らい潰してしまうこともザラであった。ぺんぺん草どころか痕跡すらも残らないというから恐ろしい。しかし、今の彼女はあるものに飢えていた。 「うぅ~っ……!魔力が足りなぁ~~~い!!」 ちょこは悪魔なので魔力の補給に飢えているのだ。決して生存に不可欠という訳ではないのだが、幌頼舞町ではなかなか得難いものであった。知り合いの特濃精液も栄養としては抜群であったが、如何せん魔力というのは特別過ぎた。 「なぁんで近場に魔力が摂れる場所無いのよぉ!」 実のところ相当な数のファンタジー世界や次元が存在していたが、それらの殆どはちょこを始めとする魔力を好むゴリライバー達に軒並み食い潰されてしまっていた。もっとも彼女らにとって食事でしかないので、いくら世界が消滅しようが知ったことではないのだが。この道に入り込み体感では1時間ほど、現実の時間にして数光年が経過した頃、ちょこの感覚に魔力の反応があった。 「あっ!やっと見つけたわ~!」 移動を止めて魔力の源に繋がる枝分かれに近付くちょこ。このように1本の道は幾つもの世界に繋がる分岐しており、実に多様な世界へと繋がっている。それらはSFチックであったり、剣と魔法のファンタジーな世界であったり……。今回ちょこに目を付けられてしまったのは、勇者と魔王が主役に位置付けられたファンタジーの世界。 「流石にこれだと窮屈だから小さくなってっ、と……!んんんぅっ……!」 ギュムッギュヂッ、メリメリッ……!ミヂミヂミヂッ……! 全身に力を込めて身体を縮めていくちょこ。莫大な量の筋肉が異音と共に凝縮され、押し込められていく。先ほどまでの太陽並みの巨大さでは到着した瞬間に特異点を発生させ、超重力により全てを破却する可能性があるので当然のことであった。こうして身長1,000m、体重2,000万トンに小さくなったちょこは空間の隧道を通り、食事会場へと向かうのであった。 双界エクリプタリアは二重の世界である。人類や亜人を中心とした文化圏を築く地表と、魔王を頂点とする魔族が支配する地下世界とに隔たれている。惑星のコアとそれに近い地底、それを包む厚い地層。これこそが、相反すれども決して切り離せない関係の上に成り立つ双界と呼ばれる所以であった。 地表と地底、お互いが求めるものを奪い合う争いはもう千年以上は続いているだろうか。その争いも最近になり、長年の均衡が崩れ始めた。強大な魔王への集権と広大な地底世界の掌握が進み、一枚岩になり始めたのが要因であるだろうか。勇者ですら種族間の諍いや利権に囚われている地表は後手に回っており、地底の前哨基地が幾つも築かれるまでに至っていた。もちろん地表もその対策をするべく策を練り団結しようとするが、会議は踊るばかりで遅々として進展はない。それは最も地底に対して力を入れて対抗する王国『聖都』の王が声を上げても、意味をなさない程であったという。そんな中、ある高名な予言者が一つの予言をぶち上げた。 『彼方より現れし巨影、万象を潰滅し無に帰さんとす』 それはまるで、何か巨大な存在が現れ世界を滅ぼそうとしているかのような内容であり、市井の人々は恐怖するばかりであった。一方で力ある者は一笑に付すか、訝しむばかりでまともに取り合おうとしなかった。それは予言をした数日後に、彼の予言者が失踪した後でも変わりなかったという。 予言がされて数週間、徐々に落ち着きを取り戻し始めたかに思われた地表であったが、聖都の中枢にある情報が持ち込まれた。地表勢力の勢力圏下に無い辺境を調査する部隊より、異常が報告されたのだ。曰く「巨大な何かが地下で動いている」と。断続的にビリビリと揺れる震動は、自然現象とは思えないという考えからであった。地層は分厚く、透視の魔法や魔道具で以てしても地底の様子は窺い知れない。調査隊は辺境にある地層の割れ目より降下し、地底に下る旨を進言した。これは命を投げ打つのと同然であったが、聖都王は許した。彼にはあの予言以降、胸騒ぎがあったのだ。何か自分たちの与り知らぬところで途轍もなく、手に負えない何かが起きているのではないかと……。 地底世界の最果て『オーバーランド』。惑星のコアに最も近く濃密な魔力に溢れているが、数百度にもなる焦熱と資源の乏しさにより屈強な魔族すらも近寄りがたい地域でもある。険しい岩山や深い谷に覆われていたのだが、今となっては何もない更地となってしまっていた。岩山は何かがぶつかったかのように崩れ落ち、地表には巨大な窪みが幾つも残されている。それは足跡であったり、何かを押し付けたような半球の窪みであったり。そんな荒れ地に大きな影が差し掛かる。身長にして2,000mにも至ろうかという巨体を持つ影は、地底にある最高峰の山並みに大きかった。 「良いわねぇ~、この全身で魔力を浴びる感じ……堪らん~っ!」 巨影の正体は、勿論ちょこであった。次元の道からこの地底世界に降り立った彼女は、早くもこの地に溢れる魔力を堪能していた。ゴリライバーである彼女にとって超高温の地熱などは問題にならず、マグマですらも丁度いい湯船程度でしか無いのだ。 そんなちょこがいる辺境は、今や生命が見る影も無くなっていた。彼女の魔力吸収はいわゆるドレイン系の能力であり、全身から魔力を吸い上げている。魔力を含む地底特有の希少な鉱石や結晶群からは、その神秘的な輝きが消え失せただ珍しいだけの岩塊と化してしまっていた。このドレインが抱える最大の問題は、その規模と威力であった。ゴリライバーは不滅ではあるが、生命であるため代謝は行っている。しかしそのエネルギー消費量はギガワット級という凄まじい規模だ。故にオーバーランドに少数ながら生息していた魔族は、軒並みその生命ごとちょこに吸い上げられ死滅してしまっているのだ。しかしその規模も彼女にとっては大したことが無いので、気付かれぬまま亡骸の殆どは踏み潰されてミクロン単位にまで圧縮されるか、瓦礫や地割れに飲み込まれる他なかった。 「それにしても何も無いわねぇ」 ズズゥンッッ……!!グシャァッッ……! 大地を踏みしめる巨大な足は岩盤をへし割り、激しく隆起させる。質量にして5,000万トンにも達するちょこの巨体を支えるには、心許ないようにすら感じさせる。ふと立ち止まった彼女は耳をピコピコと動かす。頭部の巨大な角が、新たに豊富な魔力源を感知したのである。 「あっちの方に行けば何かありそう……散歩がてら行ってみますかぁ~!」 ちょっとした楽しみを見出したちょこは山のような巨体を揺らしながら歩み始める。巨大な足跡とクレーターを生み出しながら、魔王が構える首都へと向かうのであった。 魔王城のある地底都市『グランパレス』は、地表と遜色ないほどに栄えている。地下世界の発展の象徴とも言うべき場所であり、あらゆる戦力と資源が集まる場所でもあった。そんなグランパレスの宮殿内にある議場には慌ただしく上級魔族達が集い始めていた。彼らは現実世界における72柱の悪魔のような立ち位置であり、極めて強力な能力を有する者達であった。そんな上級魔族達は一様に議場に投影された映像に釘付けとなっていた。そこには山のように巨大な悪魔が映し出されていたからだ。 彼らの動揺を尻目に一人の魔族が演台の前に立つ。上品な漆黒のローブに身を包みフードを深く被った彼―――ここではラクダに似た頭部を有するのでグシオンと称し、他の上級魔族達もソロモン72柱の名をあてて呼称しよう―――魔族の中でも深い知識や先見性を有する彼は、本来であればこういった騒々しい場に顔を出す正確では無い。そんなグシオンだが、今回ばかりは重い腰を上げざるを得なかったようだ。 《諸君、落ち着いて聞いて欲しい》 集った魔族達に呼びかける声はよく通る。 《我々魔族の領土である地底世界に、正体不明の超巨大悪魔が現れた。推定でも、我々の記憶にある『造山ゴーレム』を遥かに上回る大きさだ》 造山ゴーレムとは嘗て存在した史上最も巨大なゴーレムであり、全高は2,000mにも達した。その亡骸は文字通りの山として数千年もの間地底世界の希少な資源として在り続けた。そのゴーレムより巨大であるとは……俄にざわつく場内に、更に言葉が続く。 《既に偵察部隊を派遣したが、既に連絡は途絶している。監査局によれば彼奴は常時強力なドレインを行っているようで、軽装機動を重んじる偵察部隊では耐えられなかったようだ。我々はこれから防衛のため、迎撃態勢を取らねばならない。各自、速やかに持ち場に戻るように。以上である》 言い終わるや否や、グシオンは踵を返して足早に去っていく。その姿を見送ると魔族達もそれぞれの配置へと戻っていく。そんな中、一際目立つ大柄な魔族がその場に残っていた。 彼はザガン。牡牛に似た頭部に筋骨隆々の身体を持ち、巨大な戦斧を携えた勇猛果敢な上級魔族だ。彼の目的はただ一つ、グシオンの言っていた未知の敵への興味だった。 自身が地底世界の全てを敵に回したとも露知らず、ちょこは上機嫌で歩き続けていた。ドレインを繰り返しては万物から魔力を吸い上げている為、ちょこ自身の魔力量は膨れ上がっていた。最もその魔力も肉体の成長に変換され続けている為か、今では身長4,000mを超えていた。ちょこが歩を進める度に地震が起こり、地底都市の建物は崩れ去り、地盤は沈下していく。彼女より後ろの地形はほぼ全てが倒壊し、破壊し、踏みしだかれ、見るも無残な有様となっていた。 「お~……?」 そんな彼女の足元にこれまでとは異なる構造物が現れた。これこそが嘗ての造山ゴーレムの亡骸であり、現在の魔力結晶の鉱山である。 「良い感じのおやつ見つけたぁ!」 無邪気な子供のようなリアクションでちょこは地面へと座り込んだ。 ズッドォォォォォォォォォォォォォォッッッッッッッ!!!!!! 分厚い大殿筋と脂肪に包まれた、幅2,500mの超巨大な尻が落着するとマグニチュード7.0相当の地震が周囲を襲った。岩盤が数㎞に渡って隆起し、地核から溢れた溶岩があちこちから噴出する。素肌を晒しているちょこだが、火傷する様子はまるで無い。恒星に湯船のように浸かるゴリライバーなので当然と言えばその通りなのだが。そんな惨状を引き起こしながらも、ちょこは目の前の魔力源に夢中のようで……。 「どれどれ~?」 巨大な手が岩山を掴み、僅かな力が加えられるとバゴンッ!と400mはあろうかという巨大な岩塊を毟り取った。断面には魔力の技術では採掘しきれなかったのか、魔力結晶が多く残されていようであった。彼らにとってはあくまで希少な道具ぼ作成や取引に用いられる物であったが、ちょこにとってはお菓子のようなものである。 「あ~ん」 ゴリンッボギュッ!ボリボリボリ…… 鉱物を飴玉のように噛み砕くちょこ。遍く世界に存在するどのプレス機よりも強力な彼女の咀嚼で、結晶は岩塊ごと粉々にされていく。そして比類ないほどに強烈な酸性の唾液や消化液によりドロドロに融かされていく。 「う~ん、まぁ悪くないわね」 そう言いながら更に毟り取っては口へと運んでいく。超巨大な筋肉女悪魔が岩塊を貪り食う姿は、異常さという点で言えば究極のレベルであった。やがて岩山は半分ほどの高さにまで小さくなってしまった。

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