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 「ーつまり私はメインの研究の副産物的に神が実在することを証明したわけだ。わかった?」

私は彼の突拍子もない話を呆然と聞いていた。彼は私が理解していないと思ったのか

「簡単に言うと、世界に存在したすべての人間、動物、物質にはシリアルナンバーのようなものがついている。膨大でもナンバーで管理しやすいわけだ。なぜ管理しやすくしているのかというと管理するもの、すなわち神がいるからなんだ。まあ神のことはどうでもいい。別に友達じゃないし目的が違うから今後も私と関わることはないだろう。それで話を戻すとたとえば君のナンバーをアルファベットと数字に変換すると… ーなぜ変換するのかというと私がコントロールしやすくするためだが。それはFpd7150923578だ。そのコーヒーカップはP1040287Yfak。この研究室にある国から貸与されたパソコンはvB13n7167n43だ。たとえば君にコーヒーカップのナンバーを、コーヒーカップに君のナンバーを書き込むと2つの存在は入れ替わる。片方は知性で片方は物質だが…。体験した方が早いだろう。今から君のシリアルナンバーを別の体に書き換えてみる、つまり君の意識を別人の体に移す。

彼はパソコンに何かを打ち込んだ。私の意識は暗転した。


 冷たい空気を嗅いだ。肌寒い。さっきまでうららかな春の研究室にいたはずの私はなぜか広い宮殿のような部屋にいた。時刻は昼なのに夕方のように薄暗い。石造りの柱と柱の間にバルコニーがあり外に湖と冠雪した山々が見える。


私は若くハンサムな金髪で裸の男性に見下ろされていた。男性は私の頬に手を当てながら何かを優しく囁き腰を振っていた。不意に体の中心に激しい快感が湧き起こり思わず声を上げると女のような声が出た。私が横を向くと壁の姿見に男性の下にいる髪が長い白人女性が映っていた。その女性は私であるようだ。驚いた表情で手を上げたり下げたりしている。その行動は私がした行動だった。


どうやら私は今白人女性としてこの名も知らぬ男性とどことも知れぬ場所で番っているようだ。私は彼の言葉を思い出した。「たとえば君にコーヒーカップのナンバーを、コーヒーカップに君のナンバーを書き込むと2つの存在は入れ替わるー」

私は突然女性に生まれ変わり普通では生涯体験することのできない異性の快感を味わった。思わず日本語で「ちょっと待って」のようなことを言うと雄のcコネクタを私の雌のポートに接続し書き込みを行っている白人男性は訝しげな表情で私にはわからない言語を言った。


 お次の瞬間私は研究室にいた。目の前の彼は

「わかったかい?ある人間のナンバーを別の人間のナンバーに書き換えることで別人にすることができる。肉体というゲーム機は変わらないが差し込むソフトで色々なゲームをすることができるようなものだ。別のサンプルは」

言いつつパソコンに何か打ち込み画面を私に向ける。


「ニューヨークのスラムでうずくまるアルコール中毒の黒人老ホームレスのナンバーをモナコの大富豪の若く美しい白人妻の体に書き込む」

画面の中ではそうなっていた。


「フィリピンの田舎で焚き火で炊飯する素朴な少女に連続強姦殺人犯のシリアルナンバーを上書きする」

画面の中ではそうなっていた。


「ハリウッドの撮影スタジオでゾンビ映画に出演中のアクション女優に鳩のシリアルナンバーを与える」

画面の中ではそうなっていた。


「韓国のスタジアムでコンサート中の美女グループ全員にトカゲのシリアルナンバーに変える」

画面の中ではそうなっていた。


「ヨーロッパの王族の姫に自動販売機のシリアルナンバーをコピーする」

画面の中ではそうなっていた。


「日本の女子高校生と彼女に好意を抱く同級生男子のシリアルナンバーを交換する」

画面の中ではそうなっていた。


「学会で論文を発表中のリケジョを白痴のデータに書き変える」

画面の中ではそうなっていた。


「そのままにするのも元に戻すのも自由自在だ。私の嗜好として私が行けない遠くの場所で変化を起こすのを好む。どこかで変化と混乱が発生しているが私の人間としての肉体的な限界からその場所に実際に行くことはできない、そのもどかしさ、そして知らない個性がそこでどのような混乱を巻き起こすか予測すること、しかし決して行動を正確には予測できないことに興奮を感じる。他人の個性や思考は千差万別だからね。私は神のように万能なのではなく人間であることで制約がある方が燃えるんだ」

「世界の人間すべてのナンバーを私のナンバーに変えてみようか。100億人の異なる体がすべて私になる」


私は疑問を口にした。

「神自身にもシリアルナンバーが付与されているのかい?」

「おそらく神のナンバーもある。しかし私がそれを知る方法はまだない。今はもっと上位の神だけがおそらく知っている」


 私たちを創造した神々すらもっと上位の神々に自由に存在を入れ替えられていたのか。そういう無限構造の中で自分の矮小さを思ったとき私は寒気を感じ震えた。

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