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今より遥か昔。まだ騎士による戦が主流だった頃。 姫騎士と呼ばれる女性騎士が王座に就く国があった。 他国への侵略を繰り返し、制圧した国の軍事力を取り込んでさらに勢力を拡大する帝国。 それに抗うため諸国が寄り集まって結成された連合国家。 その二つの強大な軍事力に挟まれていながら、それでもなお中立を貫く国。 どちらにも属することなく、どちらにも攻められることのない。小国でありながらその国は、帝国からも連合からも一目置かれる武力を有していた。 それはひとえに国家元首である姫騎士が、世界を見渡しても並ぶ者なき武勇を誇る勇者だからである。 『さあ本日もやって参りました。女王ロクサーヌ妃主催、国内最強「女」騎士を決定する大会が!』 『なんと今回は主催である女王陛下御自らがいらしております。我々国民にとりましても、非常に親しみやすく接してくださる女王陛下ですが、よもや本当にいらしてくださるとは思いもよりませんでした……』 【そうかしこまる必要はなくてよ。元姫騎士だとか元国内最強だとか言われてはいても、私もまた一人の人間であることに変わりはないのだもの】 その国で今、一大イベントが行われようとしていた。 それは先代姫騎士であり現女王ロクサーヌ・ド・コルニアックが一昨年から開催していた、姫騎士を除く全女騎士から選別された中で最強を決定するという大会である。 この国で最強の騎士は男女の隔てなく姫騎士であり、そのせいかこの国では戦争は男のものだという認識が薄い。 その上乏しい国力で中立を貫くこの国において、攻められやすい弱点は少しでも減らしたい。そのため男女の区別なく戦の心得があるのだ。 他国においては庇護の対象である女性もこの国では立派な戦力のひとつであり、腕のいい一部の女性はそのまま騎士団に編入されることもある。これはそうして編入されてきた女性騎士たちのための大会なのである。 こうして大会を開くことで騎士たちの競争意識を高め、更なる戦意高揚につなげる。それがこの大会の狙いなのだ。 この大会のため集められた数千もの観客たち。コロシアムに集められた多くの観客に向けて、拡声器を手にした進行役が語り掛ける。 『さて、ルールに関しましては今更申し上げるまでもないとしまして……』 【ああ、そのことなんだけど……少しこれを借りるわね】 【ここにお集まりいただいた観客の皆様方……おはようございます。ロクサーヌ・ド・コルニアックですわ。私めが開催を決定しました大会、楽しんでいただけたなら何よりですが、しかし……】 だがその横にいた女王がその拡声器を横取り、割り込んで話を始めた。 女王自身の登場に、沸き立っていた会場もしんと静まり返る。女王が話をするのを邪魔することは、姫騎士以外の何人たりともしてはならないのだ。 【私は思うのです。最強の騎士を決する大会であるのなら、より実戦に則したものでなくてはならないのではないかと。ただ模擬戦用の武器をとって戦うというだけではない、より実戦的な要素が必要なのではないかと】 【よって!今大会に参加した選手全員のインターバルをはく奪します!】 この宣言に、女王を前にした観客たちも動揺を隠しきれなかった。 試合終了後の休憩。それは次の試合に向けたコンディションを整えるために必要なものであると同時に、次の自分の試合までの時間を潰すためのものでもある。それを失くすというのはそれこそ、試合と関係が無い時にも戦い続ける必要がある。 【といっても待機時間そのものが無くなるというわけではありません。無くすのはそう……トイレの時間です】 その言葉に会場が再びざわめきだす。女王の真意が読めず、観客と……そして大会を開催する側にも動揺が広がる。 【皆さんもご存じかとは思いますが、実戦の場においては休みなどありません。用を足そうにも、そんなことをしている間に襲撃を受けることも数多い……戦の場において、排泄とは明確な隙であるのです】 【であればこうした訓練の場において、その隙を減らすべく励むことは騎士として当然あるべき姿……私はそう思ってなりません】 【そしてまた女王として、大切な騎士たちが一人でも多く生き残れるよう計らうのは義務であると思っています。珍妙に聞こえるかもしれませんが、こうした大会の中でそれを耐える力を高め……試合のみならず実戦でも武勇を振るう、強き騎士になってほしいと願ってやみません】 その後明かされた女王の真意。それは女王自身の経験値と、その真剣な語り口によって瞬く間に観客たちと開催側に受け入れられていく。 かつて戦場で無敵を誇った元姫騎士が語る、実戦の心構え。それに異を唱えることができる存在など、今のこの国には一人しかいないだろう。 誰より戦を知る存在から語られる戦の心得。それは響きこそ珍妙であるし、とても変態的かつ厳しいものでもある。 しかしそれが女王として騎士を想ってのことであるなら、誰もそれに意見などできはしない。する必要もない。 かくて国内最強女騎士決定戦は、異例のルールに基づいて開催されるのだった。 国内最強女騎士決定戦「天馬杯」開催要項 1つ 参加する騎士は全員が女性であること 1つ 参加する騎士は全員が死力を尽くし戦うこと 1つ 参加する騎士に与えられる武具は全員が同じものであること(ただし体格に合わせたサイズ違いはある) 1つ 試合を決する方法は二つ。戦闘不能になるか、降参するか。 1つ 試合場に入るまで対戦相手への手出しを禁ず。違反した場合、今大会の敗北と以降の参加を禁ずることとなる。 今大会からの追加要項 1つ 参加する騎士全員の排尿を禁ず 1つ 試合終了後、必ずグラスに注がれた水を飲むこと 1つ 飲む水の量は試合回数に応じて増加する 1つ 通常の敗北条件に加え、試合中の失禁、放尿も敗北となる。 ______________ 「とんでもないことになりましたわね……」 女王の宣誓を聞き終えた16人の選手たちは、揃ってそれぞれの控室に向かって歩いていた。 その途中、派手な金髪をなびかせる一人の騎士が口を開く。 彼女は現姫騎士であるフローラ姫直属の部隊に所属する事実上のナンバー2であり、彼女にあこがれて騎士団に入隊した若手である。 髪型までをも真似する徹底した心酔ぶりだが、その実力は確かなもの。最強と呼ばれるフローラの剣技を、真似とはいえかなりのレベルで再現できるほどの技量を持つ強豪である。 外見もまたフローラとよく似ており、一回りほど大人びてはいるもののそれが逆に本物とは違った魅力を醸している。 「まあトイレ禁止っても、確かにおっしゃる通り戦場じゃあそうそうできるもんじゃないからねえ。男と違って、立ったまましようっても難しいし」 そんな彼女に応えるのは、身の丈6尺を超える大柄の女性騎士。 彼女もまた姫騎士直属部隊の所属であり、その体躯から繰り出される大剣の一撃で敵を薙ぎ払うのを得意としている。 男性顔負けの途轍もない怪力と筋肉質の体格をしてはいるが、意外にも顔立ちはかなり整っている。姉御と呼ぶにふさわしい豪快な性格と併せ、部隊のムードメーカーとして貢献していた。 そんな2人が、今回の大会で追加されたルールについて話をする。姫騎士直属の部隊として戦ってきた彼女たちは当然、ある程度女王の人となりも知っている。 だからこそ今回のルールには少し思うところがあるようだ。 「言い分は確かにわかるのです。ただ……」 「……まあ、あんたの言わんとしてることはわかるよ。だけどそこから先は言わないことだねえ」 2人の心中を、一つの疑念がよぎる。 姫という王家に連なる者の直属騎士として戦ってきたが故の、王家とある程度近い位置にいたがゆえ、不本意ながら耳にすることがあったひとつの噂。 現女王ロクサーヌ妃の持つ、表沙汰にはできない嗜好のこと。 彼女の持つ、極度の尿性愛嗜好を。 今回大会のルール変更が、よもやそれに起因するものなのではないかと。 より実戦に基づいたものにする、というのは建前に過ぎず、本音はそこにあるのではないかと。 疑念はありつつも、ひとまず2人は控室に戻って試合の時を待つ。疑わしいところがあろうと無かろうと、女王の命で始まった大会を中断することなどできないのだから。 フランソワーズ・リュシー・シャントゥール 身長 163センチ 体重 教えると思いますか? メイン武器 細剣 会話をしていた2人の内の小さいほう。とはいえ163センチはある。 彼女はこの国においてもかなり名家の生まれであり、生まれた時から剣の手ほどきを受けて育っている。 さすがに姫騎士ほどの密度ではないものの、その訓練はかなり過酷なものであるという。名家という人を導く存在でもあるため、政治や統治学においても明るくなくてはならない。 彼女もまたその使命に従い、家の名を背負って日々を学びに費やしていたのだが…… ある日出会った1人の少女に人生を変えさせられた。 名家の子息、息女集めて開かれた王家主催のパーティー。その余興として子どもたちが主体の武術大会が開催される運びとなった。 軍事国家であるこの国の名家ということでどの家の子もそれなりに武の心得があったものの、それでもほとんどが彼女の足元にも及ばない技量しか持っていなかった。 ただ一人を除いては。 王家から参加していた当時5歳のフローラ姫。当然ながら最年少の彼女に、王家ということもあり多少遠慮しながら戦っていたのだがそれが間違いだった。 年齢差も体格差もまるで通じないほど圧倒的な技量差。わずか5歳の少女に彼女は全力を出させられ、その挙句に惨敗を喫したのだ。 当時彼女は11歳。まだ幼いながらも自分の歩んできた人生にそれなりの自負があった。 だがフローラはそのさらに上を行く途方もない努力と才能をそこで見せつけてきたのだ。そしてフランソワーズはそんな彼女に、自分より遥か年下の少女に、憧れた。 それから彼女はフローラの真似をするようになった。真似をして、少しでも姫に近づけるようにと。 その努力は実り、いま彼女は姫の右腕として活躍している。 なお、フローラを思い浮かべて致したことは一度や二度でh ジゼル プロフィール 身長 187センチ 体重 秘密だよ! メイン武器 特注の大剣(重量60キロ) 会話をしていた2人の内の大きいほう。ミドルネームもラストネームも存在しないが、それは彼女が他国からやってきた亡命者であるため。 元々彼女は連合傘下国内で定食屋を営んでいたのだが、ある時定食屋の食料が戦争用に徴収されそうになってしまう。 その際徴収に来た兵士をうっかりひねり殺してしまい、追われる身となった彼女はこの国に流れ着いた。 本人曰く「大事なウチの商品に手を出したバカがいてさ、放り投げたらそのままポックリ逝っちまったんだよ。兵士の癖に鍛え方が足んないねえ」とのこと。 入国の際には当然ながらかなり厳しい入国審査が為されたものの、うっかりミスを除けば叩いて出る埃もないため普通に国民として受け入れられた。 その後彼女は拾われた恩を返すべく、護国のための力として働くことを決意。その豪快なパワーで敵を吹き飛ばす女傑として名を轟かせることとなる。 当然ながら連合の兵士はあまり好きではなく、連合の斥候が発見された際には真っ先に抹殺しに行く怖さもある。 ________________ 【一回戦 ジゼル対新進気鋭の女騎士】 ついに始まった国内最強女騎士決定戦「天馬杯」 姫騎士直属の精鋭騎士団「天馬聖騎士団」の名を冠する大会の、最初の試合が幕を開けた。 戦端を開くのは豪快なる女傑、怪力無双のジゼル。対するは騎士としての戦歴こそ浅いものの、しかし訓練での成績は非常に優秀な新進気鋭の女騎士だった。 2人とも共通の装備、額から上を覆う軽装のヘルムと胸から腹部をカバーする鎧を身に纏い、下半身は個人の選択で股当てとグリーヴが装備できる。 ジゼルは持ち前の頑丈さを当てにしてか防具は強制着用の上半身のものだけだが、相手の方はフル装備。武器はお互いに刃引きした片手剣であり、条件的には五分と言える。 しかし傍から見た戦力差は圧巻の一言だった。187センチのジゼルに対し、その相手は頭ひとつ分も小さく見える。 「あの天馬聖騎士団のジゼルさんと手合わせできるなんて……感激です!よろしくお願いします!」 「……ああ!よろしくね!」 (……大丈夫かねえ。またうっかり……なんてならなきゃいいけど) そのあまりの体格差と、優秀とは言うが実戦経験が少ない対戦相手であることに不安を抱くジゼル。 自身が負けることなどは露ほども思っておらず、純粋に相手をいたわるがゆえの不安ではあるのだが。 ともかく試合は開始を告げ、対戦相手が俊敏な蹴り脚でジゼルとの距離を詰めてくる。 「おっ?おおっ!?」 優しさ、いたわり。言葉は違えどそれらは言うなれば「油断」に類するものである。 相手を傷つけすぎてしまうかもしれない、というのは相手を弱者と断じているということに他ならないのだから。 その油断がゆえか出遅れたジゼルは想像以上に素早い動きに対応できず、至近距離への接近を許してしまう。 体が大きいことによるメリットのひとつ、リーチの長さ。しかしそれは至近距離においては逆に仇となり得る。 長い腕は体の内側にいる敵に対し攻撃し辛く、また攻撃できたとしても威力は激減する。まして剣を手にしているなら猶更である。 懐に潜り込んだ小柄な敵に対しては、斬ることも突くこともできないのだから。 反対に相手の方はその素早さを活かし、攻撃の時に必要なだけの距離をとって矢継ぎ早の連撃を繰り出してくる。 強靭な胴体は置いておき、非力かつ切れ味のない剣でも効果が見込める頭部への攻撃。五月雨のように連続で繰り出される刺突をなんとか躱すジゼルだが、防ぐ一方の戦いを強いられていた。 (い、意外とやるじゃないか!それなら遠慮はいらないねえ!) だがここでジゼルは、思いもよらぬ反撃を繰り出した。 相手の放つ刺突を躱しざま、攻撃を放ち終えた相手に向けて思い切り拳を握りしめ…… ズガンッッッ!!!! 「ぶげっ!!?」 鎧を纏う腹部に、強烈なボディブローを叩き込んだのだ。 懐にいる敵に対し、剣での対処は難しい。だが逆に素手なら相手よりも短いリーチで強烈な一打を放つことができる。 当然、普通の女騎士ではそんなことをしても無意味に終わるだろう。しかし彼女は187センチ。騎士になる前から兵士をうっかりひねり殺すほどの腕力を誇っている。 (ピク……ピク……) 「だ、大丈夫かい……?ちょーっとやりすぎちまったかねえ」 『し、白目剥いてるぞ……大丈夫かこれ……』 『それより見ろよこれ、甲冑がひしゃげてやがる……いったいどんな力で殴ったらこうなるんだ……?』 そんな彼女が放つ本気のボディブロー。その途轍もない衝撃は着込んだ甲冑の内側にある生身に響き、対戦相手を一撃で失神せしめていた。 当然ながら戦闘続行は不可能。相手は運営進行の男性たちによって運び出され、ジゼルは見事第一試合を勝ち抜くのだった。 _______________ 試合終了後、ジゼルは自分の控室にて渡されたグラスに口をつけていた。 それは一般的なワイングラスに注がれた、ほんのり甘い飲み口の水。 軍事国家であるこの国ではより効率の高い水分補給も研究されており、発汗によって失われる成分を補完すべく飲み物にも一つの工夫が凝らしてあった。 その成果として挙げられるのがこの塩と砂糖とを混ぜ込み、果実の絞り汁も風味付けとして合わせた特製の飲料水だ。 数百年後に登場するスポーツドリンクの先駆けとも言えるこの飲料は、水分の迅速な補給と吸収を可能としている。 (……で、これを三杯も……ねえ。試合回数に応じてとは言うものの、第一試合からこれかい) さて、そんな水分を効率よく人体に補給してくれるこの飲料水。当然だが利尿作用も相応に高い。 開発目的の通り、激しい運動……すなわち戦闘中の水分補給であればさして気にするほどではなかっただろう。 既に失われた水分を補うだけであり、またそれからすぐ激しい運動で発汗するというのであれば。 しかし今は大会の最中。実際の戦闘ほど激しく動くわけでもなければ、こうして動かないでいる時間も長い。 明らかに過剰に摂取された水分はこの無類の吸収率によってすぐ体内に取り入れられ、そしてすぐさま分解されて尿となることだろう。 (よく考えられてるって言えばそうだけど、ねえ……) いっそ出来すぎているくらい、全てが一つの目的に集約しているように思えてならなかった。 ロクサーヌの発案で始まった、歴史の浅いこの大会。 普通の水と比べて高価な飲料の贅沢な使用。 確かに女性騎士全体のレベルアップは大切なことだろう。しかしやはり、あの時フランソワーズが口にしようとしたように…… あの場は諫めたものの、ジゼルもまた疑念を拭い去ることができずにいた。 「……やめよ。とりあえず身体でも動かすとしようか!」 しかしそれでも彼女は王家直属の騎士団に所属するひとり。その忠誠心はやはり強いものだ。 だからこそ彼女は湧き上がる疑念を振り払うように、トレーニングへ精を出すのだった。 仮に自分やフランソワーズの思うように、女王が私的理由でこの大会を開いたのだとしても、それしきで揺らぐ忠誠ではないと自分に言い聞かせるように。 彼女はそれから二回戦が始まるまで、一時間もトレーニングを続けるのだった。 ジゼル プロフィール 身長 187センチ 体重 秘密だってのがわかんないかねえ メイン武器 特注の大剣(重量60キロ) 豪快な拳により一回戦をみごと勝ち抜いた大柄な女性騎士。 女性どころか男性と比較してもなお頭ひとつ以上大きな彼女に殴られてはやはりひとたまりもなかった。 この国に限らず連合の兵士も帝国の兵士も、いずれも男性騎士の平均身長は170センチ前後。それと比較すれば彼女がいかに規格外かがわかる。 男性用の甲冑ですら入らないので、彼女の装備は基本的に急所をカバーするだけの軽装がほとんどである。 重装でなくとも十分なくらい本人が頑丈とも言え、薄皮一枚を斬ったくらいで止まるほどやわな身体はしていない。 _________________ 【二回戦 フランソワーズ対無口な騎士】 ジゼルが筋力トレーニングに励んでいる間、フランソワーズもまた二回戦への切符を手にしていた。 電光石火の一撃で一瞬にして相手の意識を絶った彼女は、悠々と控室で寛いでいた。 次なる自分の出番が回ってくるまで、精神を研ぎ澄ましておく。精密さを旨とする彼女の剣に、迷いなどあってはならないのだ。 ワアアアアアアアア…………!!! そんな折、会場から聞こえてくる大歓声。距離が離れた控室にまで届くほどの歓声となると、それが沸き起こるような状況というのはある程度限られてくる。 (ジゼル……また派手な勝ち方をしたのでしょうね) 今頃戦っているのだろう同僚の女騎士。その勝利が決まったのだろう。 大柄な彼女の勝ち筋はいつも豪快そのもので、観客にとってあれほどわかりやすい勝利の形もないだろう。 その爽快な勝ち方は技巧派の彼女にとって、少し羨ましいものでもあった。 (しかし私が極めるべきはひとつ……姫様と同じ、技術による勝利です) だがフローラに心酔する彼女にとり、技術こそがすべて。最低限の力さえあれば、あとは剣腕こそがものを言うのだと熱く信じている。 だからこそこの次の試合で見せつけなくてはならない。姫を追う者の剣が、強さが、華やかなるパワーに決して劣るものではないのだと。 拳と共に決意を固め、フランソワーズは試合場へと入っていく。 「おや、貴女は確か……」 「………………」 試合場で対戦相手と向かい合うフランソワーズ。その眼前にいたのは、両目を長い前髪で隠した独特な風貌の女騎士だった。 あまりしゃべることが好きではないのか、ぺこりと一礼するなり距離をとられてしまう。 (彼女は確かやり手の斥候部隊だったはず……手先の器用さは確かなものでしょう) 今回彼女と戦う相手は、斥候部隊のエース的存在。敵国の情報を得るために潜入をしたり、必要とあればちょっとした騒ぎを起こしたりすることもある。 また斥候はその性質上、非常に追われやすい。当然のことではあるが、敵に潜入を気取られてしまった場合、貴重な情報を持っている者を敵は生かして帰すまいとするだろう。 そのため斥候は重要度にもよるがとても危険な任務であり、そのエースともなればある程度荒事にも秀でていると予想される。 油断のならない敵を前に、フランソワーズもまた緊張を隠せずにいた。同じく速さを旨とする同士、先に動いた方がすなわち隙を晒すことになる。 どちらも後の先をとることに長けている以上、先に手を出した方が不利であるのだ。 (……とはいえ、このにらみ合いが続いていては……) だが「後の先をとる」とは何も実際に手を出すということに限った話ではない。 どちらが先に手を出すか、という状況の中で一瞬だけでも気を抜いたり、不用意に前へ出ようとする意識を発したならば。 張り巡らせた緊張の糸はそれを敏感に感じ取り、たちどころにその一瞬の隙を突いてくるだろう。 隙を待つことも立派な戦いのひとつ。二人の戦いは動かずして既に始まっているのだ。 しかしそんな折、対戦相手である目を隠した騎士のほうに奇妙な動きがあった。 びくん、と身体を跳ねさせたかと思えば内股になり、きつく両足を合わせている。 相手の一挙手一投足に気を張っているフランソワーズは当然それを見逃さず、一瞬のうちに相手へ斬りかかる。 ガキィィン!! 「ひぐぅぅっ!!?」 それをなんとか受け止める両目隠れの女性だが、両脚の震えはなおも激しくなり…… ッギィン!!ガギッ、ギィンッ!! 矢継ぎ早に繰り出される連撃を受け止めるうち、ついにそれは訪れてしまう。 びゅじゅううっ!!! 「…………え?」 「……ぁ、ゃ、ぃや……!?」 「ご、ご、ごめ……っ、ごめんなさいぃっ……!」 攻撃を受け止めた女性の下半身。股当ての向こう側から溢れ、きらきらとした雫を散らすもの。 とうとう我慢ならなくなった女性は股当てを剥ぎ取り、その下に着ていた服も脱ぎ去って…… びゅじゅぅっ!!ぶしゅっ、じゅじゅ……ぶしゅいいいいいいいいいぃいぃいいーーーーー…………!!! その場にしゃがみ込み、大勢の前で放尿を始めてしまった。 数千の観客の前で晒される、乙女の恥ずべき急所。毛の一つも生えていない、見事なまでの一本すじが露になる。 そして服を脱ぐ前から始まってしまっていたそれは服を脱ぐなり全開となり、遠くまで一直線に尿線を伸ばしていく。 「あぁ、あ……」 「あふぁああ…………!」 どれだけ我慢していたのだろうか。人前であられもなく放尿を始めた女性の顔は緩み、なびいた髪の向こうから覗く両の目は恍惚に歪んでいた。 両目は隠しても下半身は隠せず、女性の公開放尿はそれからしばらく続くのだった。 フランソワーズ・リュシー・シャントゥール 身長 163センチ 体重 教えないと申したはずですが メイン武器 細剣 第二試合においてほとんど労せず勝ってしまう運びとなった聖騎士団ナンバー2。 本人としては不本意ながら、目隠れ少女の公開放尿ショーは会場をジゼルの試合以上に興奮のるつぼに叩き込んだ。 なお後に明らかとなったことだが、相手の女騎士は斥候部隊としての訓練の一環で尿意を日常的に我慢しており、今日もそうしていたのだという。 だが大会の直前、宿舎にあるトイレの扉が壊れてしまったところから彼女の不幸は始まった。 彼女が最後に用を足したのは昨晩のこと。それから朝の放尿をし損ね、彼女の期待は嫌が応にも大会控室のトイレに注がれるが……そんな彼女を迎えたのは急なルール変更だった。 辛くも一回戦を勝ち抜いた彼女だが、飲まされた飲料水の持つ利尿作用もあって尿意は既に限界状態。そんな状態で相対するのは聖騎士団ナンバー2のフランソワーズ。 降参も脳裏を過ぎったが、その一言がうまく言えないまま試合が始まってしまった。 哀れな目隠れ騎士を最高に恥ずかしい形で下したフランソワーズ。果たして彼女は無事に勝ち抜くことができるのだろうか。 _________________ (……二回戦、勝つには勝ちましたが……) 二回戦を終えた後、フランソワーズは控室をうろうろとしていた。 落ち着きがない理由の一つは先ほどの勝ち方。とても騎士の戦いとは思えない、お互いにみっともない戦いをしてしまった。 もちろん騎士の誇りなどで戦いに勝てるわけではなく、女王の宣誓もまたそうしたものに縛られない実戦的な強さを求めてのものであることは理解できる。 しかしその裏にあるのがほぼ確実な歪んだ欲望を思うと、手放しにそれを受け入れることはできなかった。 そしてもう一つが…… (先ほど飲まされた水の量……想像以上でした。まさか一回戦を勝った時の倍も飲むことになるとは……) 一回戦の時から急激に増加した飲料水の量と、それがもたらす切ない感覚だ。 試合数に応じて変動するグラスの数。それはなんと試合ごとに元の二倍という増加率だったのだ。 元より三杯というなかなかの量を飲まされていた選手たち。それが勝ち抜くたびに倍々になっていくのだ。 それがもたらす負担、尿意は想像に難くない。 (今日はあれもありませんし、あまり長引かせたくは……) 物思いに耽りながら部屋をぐるぐると回っていると、不意に部屋の扉を叩く音が聞こえてきた。 早くも次の試合か、と思って出てみると、そこにいたのは同僚の女性騎士ジゼルだった。 大会の開催以来となる二人の再開で、不意にジゼルが放った言葉は彼女にとって余りにも意外なものだった。 「ごめんよ、フラン……あたし負けたから後よろしくね」 「………………は?」 _______________ 【準決勝第一試合 ジゼル対気弱な女騎士】 フランソワーズのもとをジゼルが訪れる少し前。ジゼルは会場で一人の騎士と相対していた。 その騎士は天馬聖騎士団所属でこそないものの、実戦の場でかなりの戦果を挙げている騎士だった。 「よよよ、よろっ、よろヒ、っく……おぇがい、ひましゅっ……!」 「……あんた、大丈夫かい……?」 しかし戦場での強さとは裏腹、その性格は気弱そのものだった。 体格もかなり小柄であり、ジゼルとの身長差は軽く見て40センチ近くはあっただろう。 それもそのはず。彼女の本懐は薬学にあり、彼女は自分で作った毒を誰よりもうまく使いこなせることにその強さがあった。 全身に暗器を仕込み、気弱さに油断した相手をぶすりと一突き。たちどころに浸透した毒で相手を亡き者に、というのが彼女の戦闘スタイルなのだ。もちろんその毒で味方の支援をするのも仕事ではあるが。 この大会では使用する武器に限りはあるものの毒は別段禁止されていないため、一回戦と二回戦は剣に塗り込んだ麻痺毒で相手を動けなくすることで勝利してきた。 さすがに致死性の猛毒は許されないものの、麻痺させる程度の毒であれば問題はない。そうやって彼女は勝ち進んできたのだが…… しかし三回戦にもなると、戦士として強いわけではないことが裏目に出てきてしまった。 (は、はやく……はやく、勝たないとぉ……!) 大柄なジゼルを前に、ガタガタと全身を震わせる気弱な騎士。その威圧感を前にしては仕方がないことと思うジゼルだが……しかしよく見てみると、そうではないことに気付く。 震えているのは確かだが、その中にも感じられる落ち着きのなさ。人がいる手前、必死に堪えようとはしているようだが、隠し切れない動作。 前かがみになり、突き出されたお尻を左右に小さく振る動作。騎士として優れた洞察力を持つジゼルには、それが何を意味するかはすぐに理解できた。 「ああ、なるほどねえ……」 すべてを悟ったジゼルはずんずんと気弱な騎士の方へ歩いていき…… バァンッ!!! 「ぴぃっ!!!!?」 壁に手を突き、騎士をその身体で覆い隠してしまう。 彼女の圧に押され、壁に縫い付けられてしまう気弱な騎士。誰から見ても明らかな圧倒ぶりに、観客も皆が戦いの勝敗を悟ったが…… (おい、何やってんの。早く毒をあたしに打ち込みなよ) (ふぇ……?) (ぼさっとしない!チャンスはここしかないんだよ!) なんとジゼルは気弱な騎士に、あえて毒を打ち込むように促したのだ。 始めは戸惑っていた騎士も、彼女の圧に負けて剣に仕込んだ毒をその身体に打ち込む。 皮膚からも吸収される毒は瞬く間に広がり、ジゼルの身体をじわりとしたしびれが襲う。 「……ああ、あたしとしたことが迂闊だったねえ。毒使いだってことを忘れて喰らっちまったよ。こりゃあもう戦えないねえ」 「そんなわけだ。あたしは降参するから、あとは頼んだよ。毒使いのお嬢ちゃん」 「え……え?」 降参と口にしてながら自分の脚で歩いて帰るジゼル。当然ながら会場からブーイングが巻き起こるも、彼女は眼力ひとつでそれを制圧。悠々と去っていくのだった。 「……とまあそんなわけでね。あたしは負けたから後はせいぜい頑張るんだよ、フラン」 「ジゼル……貴女という人は、まったく身勝手な……!」 「だってさあ、考えてもごらんよ。本来前線に出ることが少ない暗器使いをさ、あたしがこのガタイでぶん殴ったりしてみなよ。弱い者いじめもいいとこじゃないか」 「確かに貴女がそうした行いを嫌っていることは知っていますが……それにしてもです。女王陛下が開催なさるこの大会を辞退するなど、侮辱ととられてもおかしくはないのですよ」 「あの女王様ならそういう心配はないだろうさ。良くも悪くも王族らしくないあのお方ならね」 「……確かに。まあ姫様も味方してくださるでしょうし問題はないのでしょうね。ところで貴女、仮にも毒を打たれたのでしょう?なぜ平然としていられるのです」 「んー?ああ、そういやそうだったねえ。まああれだ。毒なんかこのジゼル姐さんには通じないってことさね」 「貴女って……一体……」 __________________ 【準決勝第二試合 フランソワーズ対心頭滅却サムライガール】 先ほどの試合の余韻がまだ残る試合場。ジゼルの圧に負けたとはいえ、消化不良のフラストレーションがくすぶる試合場に、金髪ロールの女騎士が足を踏み入れた。 観客の望みはひとつ。血沸き肉躍る戦いにしろ、羞恥極まる乙女の艶姿にしろ、どちらであってもこの場が湧くような見世物が見たい。 そんな熱が渦巻く場に聖騎士団ナンバー2と、その対戦相手である異質な女騎士とが向かい合う。 「……っ、よろしく、お願いしますね」 「…………………………」 「…………ゴザル」 (ゴザル……?) 対戦相手の風貌はなんとも特徴的で、大会側から支給された武具を着けていることはともかくとして、その下に着ている服は少なくともこの国のものでもなければ連合や帝国のものでもなかった。 この国でも貿易は行われており、ある程度他国の文化も知る機会はある。だが彼女の纏う装束はこの付近にあるどの文化圏のものでもなく、恐らく遠い海の向こうにある国のものだと予想された。 しかし最も異質なのは、その異国の異質な文化を他でもないこの国の人間が再現していることだろう。 「やはりイクサの前にはオチャ…………シントーメッキャクにゴザルな」 「あの……いったい何を……?」 「シントーメッキャクにゴザル!」 (わけが……わかりません……!) そして対戦相手のモノノフガールは、なんとその場に座り込んで異国の飲み物を飲み始めたのだ。 なぜよりにもよって戦いの場で、と思うフランソワーズだが、実は彼女は一回戦からずっとこの儀式を行い続けてきている。 曰くこれはイクサに際したブシの嗜みとのことだが、戦いの前にティータイムに励む文化など誰も聞いたことがない。 余りにもおかしすぎる所業に対し、大会主催である女王のとったリアクションは寛大だった。 相手にこれを飲ませるのならともかく、飲んでいるのは他でもない自分自身。一応大会運営陣による成分検査も行い、肉体に作用する何らかの薬品が混じったりしているわけではないことも確認してある。 であるならば、本大会のルール上自滅の恐れもあるこの行動を阻止する理由もなかった。 もぞ……もぞ…… 「シ……シントーメッキャク……シントー……メッキャク……にゴザル……!」 しかしこのような自爆行動を繰り返したうえ、今大会で振舞われる飲料水をも飲んできたのである。当然ながら募る感覚が正座をする少女の腰を切なく揺り動かせる。 もぞもぞと袴を履いた太ももをすり合わせ、額から滝のような汗を溢れさせる。それがお茶の熱さによるものでないのは誰の目にも明らかだった。 どう見ても尿意限界の有様を晒してながら、意地でも正しいのかわからない異国の作法に準じる女サムライ。彼女のお茶会は湯呑二杯のお茶を飲み干すまで続き、そして…… 「さ、ssssssさあかかってくるがいいでゴザル!わがシマヅ・ケンポーのオテマエをごらんにいれェッ!?」 ぶじゅぅっ!! 「ふゃぁっ……!」 ようやく剣を構えた時には、もう手遅れな事態に陥ってしまっていた。 びし、と剣を突きつけると同時、袴が重く変色する。はた目にも明らかな失態の証が溢れ出す中で、サムライ少女はもじつく腰の動きを隠すことができなくなっていた。 「あの、大丈夫ですか……?」 「……はっ、はっ……ひ……!ちょ、ちょっ……と待……!」 とうとうサムライどころではなくなってしまった少女に対し、憐れみに近い感情を抱くフラン。 どう見ても戦いどころではない有様を晒す彼女をなんとかしてあげたいとは思うものの、しかし彼女も彼女で事情を抱えていた。 というのも彼女もまた現時点で合計9杯の飲料水を飲んでいるのだ。元よりさほど我慢強い方ではない彼女にとって、もはや無視できない領域に達しつつある。 このような試合に、あまり時間をかけていられないのだ。 「……ごめんなさい」 せめて羞恥を感じないよう、剣でしたたかに後頭部を打つ。ぷつりと途絶えるサムライ少女の意識。そして…… 我慢する意思の消えた身体から、温かなものが溢れていく。 ばちゃばちゃと盛大な音を立て、地面を黒く染めゆく少女のオモラシ。 フランソワーズはそんな少女を背に試合場を立ち去っていくのだった。 フランソワーズ・リュシー・シャントゥール 身長 163センチ 体重 …………斬りますよ? メイン武器 細剣 もはや最初以外ほとんど戦うことなく勝ち抜いてしまった騎士団ナンバー2 大会の趣旨、建前が音を立てて崩壊していく様を苦々しく思いながらも、それでも彼女は勝ち進まなくてはならない。 明らかなまでに権力を乱用する女王を、きっと我らが姫騎士が叱ってくれると信じて。 大会が進むにつれ、徐々に無視できないほど尿意が募ってきている。特にこの試合が終わった後には、実に12杯もの水を飲まなくてはならないのだ。 普通のワイングラス程度の容れ物に注がれたそれを、一回戦から数えれば20杯以上も飲まされるのだ。その量はおそらく2リットルでは利かないだろう。 たぷたぷとお腹を揺らすそれが膀胱に降りてくるより先に決着をつけたいが……? __________________________ 【決勝直前 控室】 フランソワーズ・リュシー・シャントゥール。 良家の生まれである彼女は、身に纏う装束ひとつとっても特注のものに囲まれていた。 特注の部屋、特注の武具、特注の家具、特注の衣服、そして特注の下着。 現代ほど縫製技術の機械化が為されていないこの時代、下着というのはそもそも着けないか職人の手製を着けるかがほとんどだった。 精々脚ふみ式の裁縫機しかない時代なのだ。身体にフィットするスマートな下着というのはそれそのものが高級な、貴族の証といって差し支えない。 それを身に着ける貴族というのは当然、それを汚さないようにするのが当たり前だった。 (こ、困り……ました……。あの飲み水の力がこれほどのものとは……!) そのことが今、フランソワーズを追い詰めていた。 彼女が着けている一品物の純白レース。それはたった一枚で小さな家くらいは買えるほどの価値があり、とてもではないが汚していいものではない。 故に彼女は戦場に赴く際、常に汚れから守るための布を間に挟んでいたのだ。 吸水性に優れた安布を、彼女の身体と下着との間に挟み込む。現代で言うところの給水シート、あるいは簡易おむつとでも言うべき下着の保護策。 それがあったがため、彼女は戦場においても一回や二回程度なら多少のお漏らしがあっても平気だったのだ。 しかし今は大会の最中。開催前はインターバルも当然に存在するものと思っていたがため、迂闊にも今日の彼女はそれを装備していなかった。 普段の彼女は普通の騎士と異なり、少しくらいなら漏らしても平気。そのため彼女はあまり尿意を我慢するという癖がなく、他の騎士と比較するなら頻尿の気があるといって差し支えない。 そんな彼女が今、特殊ルールの存在する大会に、吸水布なしで挑む。 (なんとか……すぐに勝たなくては……!) できるなら長期戦は避けたい。迅速に勝利するための道筋を頭に描きながら、彼女は試合開始までの短くて長い時間を待つ。 運営から渡された12杯のグラスを飲み、切なげに身体をよじりながら。 ________________ 【決勝戦 フランソワーズ対気弱な女騎士】 闘技場に、割れんばかりの歓声が轟く。 それはこれから起こるだろう出来事への期待がもたらすもの。 大会のため集められた美麗な女騎士たち。国家を守るため修行に励む勇壮な少女たちの、あられもない羞恥姿が見られるということ。 本来は彼女らの武芸を見に来たはずの観客たち。しかし彼らはもう戦いのことなどほとんど考えてはいなかった。 男たちの好奇の視線を浴びながら、この大会で誰より長く尿意に耐えてきた2人が対峙する。 「…………っ」 「あ……ぅ……あぅ……!」 見るからに尿意限界といった有様を晒す、毒使いの少女。 それとは対照的に、一見すると平然とした態度のフランソワーズ。 よく目を凝らしてみると手がきつく握りしめられていて、彼女もまた忍耐の最中にあるのだと知ることができるのだが。 とても試合どころではない状況の中、開始の合図が告げられる。 (一撃で片を付ける……!) 試合が始まるなり、フランソワーズは剣を携えて相手を仕留めにかかる。 尿意を耐えるのに精いっぱいの少女を一撃で倒し、この大会を終わらせるために。 ぶじゅうぅっ! 「ひゃひっ……!?」 だが、それは叶わなかった。一気に距離を詰めようと駆け出した途端、熱いものが溢れてしまったから。 脚を踏み出した刹那、力を込めているそこから感じた温かな感触。明確な水流が溢れ、少女のいる地面に黒い痕跡を残す。 もはや攻撃どころではない。両脚を交差させ、必死に出口を塞ぐべく力を込める。 わ、と会場全体が湧き上がる。一見すると平気そうなフランソワーズが見せたあられもない姿に、観客は興奮していた。 「あ、あ……!!?」 (わた、私……人前でなんて恰好を……!) 歓声を耳にして現実を認識した彼女は、顔から湯気を噴きそうになりながら元の不動の体勢に戻そうとする。 だがその瞬間、我慢の体勢をやめるなりお腹がきゅんと切なく収縮。強烈な尿意はもう彼女を我慢のポーズから解放してくれなかった。 (こ、こんな……屈辱……!) 恥ずかしいと思っているのに、人前なのに、それでも恥ずかしい体勢をやめられない。それが彼女にとって何よりの屈辱だった。 そして明確に弱みを晒してしまったことで、相手にも付け入る隙を与えてしまう。 「い、今……っ!」 いつの間にか近くに来ていた気弱な騎士が、震える手で剣を振りかざす。 尿意に夢中で接近に気付かなかったフランソワーズは、直前になってやっと相手のことを認識して距離をとる。 バックステップで相手との距離を離し、空振る少女の剣。重力に導かれるまま地面をしたたかに打ち付けたその振動は少女の身体を伝播し…… 「ひぐうぅっ!?」 じいん、とぱんぱんの膀胱に響いた。 鎧の中でぽっこりと膨らむ少女の水風船。必死にその噴出を押しとどめる少女の括約筋に、耐えがたい振動が与えられる。 もはや戦闘どころではなく、気弱な少女はその場にうずくまってしまう。 決定的なチャンスが訪れたフランソワーズ。その時の彼女はというと…… 「……っふ……!ふぅーっ……!」 彼女も彼女で、必死に尿意と戦っていた。 距離をとるために行ったバックステップ。普段ならなんということはない動きでも、今の彼女にとっては致命傷となり得る。 着地の衝撃で揺れた膀胱のもたらす尿意が股当ての向こうで弾けてしまいそうで、とても反撃どころではなかった。 ぐいぐいと鎧の上から出口を押さえつけ、荒い呼吸を整えてようやく訪れる小康状態。気弱な騎士が攻撃してきてから二分が経過してようやく反撃の体勢が整った。 「せえええーーーーっ!!!」 今出せる全力で以て訓練用の剣を振り、ふらふらとした剣戟を放つフランソワーズ。 普段と比べれば圧倒的に非力な攻撃であるがしかし、それは見事に相手を捉えた。 「ひぎいいいぃぃっっ!!?!」 鎧の上から弱弱しく叩きつけただけの攻撃だが、その効果は絶大だった。 与えた衝撃は鎧の中で反響し、少女の身体を揺さぶった。 ぶじゅじゅうぅっ!!!!びじゅいぃっ!! びりびりと揺らぐ少女の膀胱。股当ての向こうからあふれ出た水流が地面を打ち付ける。 遠目からでもわかるほど明らかに漏らした哀れな少女は、もはや反撃のことなど考えていられる状態ではなかった。 与えられた衝撃がもたらす致命的な決壊。破滅を眼前にした少女は…… フランソワーズを突き飛ばし、漏らしながら闘技場の隅へと行こうとする。 少しでも見られないようにと必死の思いで歩を進めるも、それは蝸牛が這うようなもので。 人々の視線が突き刺さる中、少女は力尽きた。 じゅいいいいいいぃいぃぃーーーーーーー…………!!! 「あ……あぁ……」 股間に取り付けた、鉄製の股当て。衝撃から身を護るためにある鎧の内側から、熱い水流が迸る。 乙女の排泄孔から溢れたそれは股当ての中をあっという間に満たし、行き場を失くしたオシッコがすき間から流れ出る。 観衆の前、始まってしまった少女のお漏らし。ぱんぱんに張っていたお腹がみるみる萎む解放感と同時、どうしようもない恥辱が少女を襲う。 人前で子どものように、小便を漏らす。年頃の少女にとってこれほどの屈辱はそう無いだろう。 「うぅっ……!ふぐ、うえええええぇん……!」 とうとう泣き出してしまいながら、少女の恥ずかしい時間は続く。 我慢した分だけ長い屈辱の時間。それは膀胱が空になるまで一分半ほども続くのだった。 ________________ 【大会終了後 表彰式】 (お、お……ねがい……!はやく……はやくしてぇぇ……!!) 決勝戦が気弱な少女のお漏らしによって決着した後、フランソワーズは大会で優勝したことを祝す表彰式を行っていた。 そこらじゅうに水溜まりが残る闘技場で、少女たちのアンモニアが香るこの闘技場で、フランソワーズは最後まで耐え抜いたのだ。 そんな栄光の最中、しかし彼女は落ち着かなかった。その理由は極めてシンプルなもので…… (なんっ、で……!おわるまで、させてくれないのぉ……!) 決勝に勝利した後、彼女は控室に半ば監禁されるような形で押し込められていたのだ。何人もの正規装備の近衛に囲まれて、曰く優勝者を警護するとの言い分で。 それから20分。決勝前に飲まされた飲料水もすっかり降りきって、もともとあまり大きくない彼女の膀胱は限界をはるか通り越している。 『フランソワーズ・リュシー・シャントゥール。よく頑張りましたね。大会に勝利した栄光を讃え、貴女にこの優勝杯を授けましょう』 「あっ、ありがとう、ございます……!」 『して、フランソワーズ……貴女さえ望むのならばこの後、騎士として最高の栄誉a』 「もっ、もも申し訳ありません!!申し訳ありませんんんん!!!!」 引き攣った笑顔で優勝杯を受け取るフランソワーズ。だがもう彼女の我慢は限界だった。 女王のいる前でも腰を左右に振るのが止められないほど加速した尿意。一刻の猶予もない尿意が彼女を暴挙へと導いた。 女王の話を遮り、声高に謝罪しながら駆け出すフランソワーズ。そんな彼女のもとに近衛兵が駆け寄り…… 『女王陛下がお話し中でございます。シャントゥール様、表彰台へお戻りください』 「はっ、放して!放してくださいぃ!!!もおっ、もぉ無理なんですうぅ!!!もうでちゃうのぉぉ!!」 兵たちに捕まり、女王のもとへと引き戻されるフランソワーズ。頭をぶんぶんと振り回し、必死に開放を懇願する。 恥も外聞もない。そんなことを気にしていられる余裕はなく、闘技場中に響く声で尿意を叫ぶ。 『あらあら……もう耐えられないというのですね?わかりました……それならばもう耐えずともよろしいですよ。もう試合も終わっているのですから』 「あっ……ありg」 『ですからこの場で致すことを赦しましょう。フランソワーズ・リュシー・シャントゥール』 「えっ」 『股当てを外してあげなさい。このままではできないでしょうから』 そんな彼女に対して女王はとんでもないことを言い放った。 この場で、観客たちのいる前でしろというのだ。 二回戦でジゼルと戦った騎士のように、あるいはそれよりももっと恥ずかしい体勢で。 近衛兵によりフランソワーズの身体は抱え上げられ、まるで親が子供に対してさせるようなポーズをとらされる。 大きく広げられた脚の付け根。股間に取り付けられた股当てが取り外され、その下にある黒いレギンスが露になる。 むわりとした熱気と共に、濃いアンモニアの匂いが立ち込める。何度も繰り返されたおちびりの証明。 だが当然これで終わりではない。兵士たちの手は鎧の下のレギンスと下着にも伸びていく。 「おっ、お願いします……!そこは、そこだけは……!」 懇願も虚しくずり下げられる彼女の衣服。ぷりんとした丸尻が外気に晒され、大股開きの陰部が開帳する。 薄い金色の毛が生えそろう、ピンク色の秘裂。開帳されたそこに観客のボルテージが跳ね上がる。 『恥じることはありません、我が愛しの騎士よ……私が許可をしたのですから、思う存分しても良いのですよ』 「で、ですが……!ですが……!!」 ひく、ひくと陰部を蠢かせ、必死の思いで暴発寸前の尿意を耐えるフランソワーズ。 羞恥で顔を真っ赤に染めながら抗う彼女に女王は優しく語り掛け、最後の抵抗を引き剥がすべく…… 女王は彼女の股ぐらに手を伸ばし、我慢に震える陰部をそっと撫で上げた。その瞬間 「ひあっ……!?」 その一撫でが、ギリギリで耐えていた我慢の堤防に致命的な亀裂を生んだ。 ぴくぴく、大きく割れ目を震わせた後…… 盛大な放尿が始まった。 ぶしゅううううううううぅうううううううーーーーーーー!!!!! 「ああっ……あ~~~……」 実に半日ぶり、朝からずっとできずにいたオシッコ。 利尿作用が強い飲み水も飲まされ増幅された尿意がとうとう解放されたのだ。 やり手水の体勢で放たれるそれは数メートル先の地面を抉り、大きな水溜まりを形作っていく。 観客が総出で見守る中で行われる貴族の大放尿。それは大会を締めくくる盛大なアーチを描いていた。 闘技場のそこかしこに広がる乙女たちの羞恥の跡。彼女の作った跡もまた闘技場の土に残り、大会終了後の人々を楽しませるのだった。

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