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ある日、ある王国の王宮に、戦慄の報せが舞い込んできた。 護衛をつけて散歩に出ていた王国の姫が、敵対している蛮族国家の部隊に攫われたと。 その報せを聞いた国王は即座に王都周辺の兵たちを集めて救出部隊を組織し、それを出撃させた。 「国王、救出部隊が出発致しました。これによってここの護りは少々手薄になりますが……」 「構わぬ。今は姫の救出こそが最優先だ。それに……」 「戦争の情勢はこちらの圧倒的有利。苦し紛れに姫を攫うような蛮族どもなど恐るるに足りぬよ」 「左様でございますな。下手に時間をかければそれこそ、姫をより護りの厚い土地に監禁されてしまうやもしれませんし」 大陸にて最大の版図を誇るセントランド王国。その領地を統べる王の判断は、多少のリスクは承知で姫の奪還に全力を傾けること。それも迅速に。 そうでなければ姫はより遠くの敵国中枢に囚われてしまう可能性があり、そうなると姫の救出は少し難しくなってしまう。 今はまだ捕らえて間もなくの移送中で、牢獄にいるのだとしてもその牢獄の規模はたかが知れているし、なにより敵の居場所を把握しやすい。 敵がどこに逃げたかはわからずとも、姫がいたところはわかるためどこで捕まったかは特定できる。あとはそこから馬で移動できる範囲を割り出せばある程度候補を割り出すことができるのだ。 もちろんこれをしらみ潰しに捜すには多くの兵力が要るが、その点は既にクリアしている。あとは敵に移動されるより早くこれを突き止めるだけである。 「だが、王都の護りを疎かにしてばかりもいられん。代わりの戦力はどうなっている?」 「は、周辺貴族に便りを送りましたので夕方までには……」 「ふむ……よもやと思うがこの隙に宮殿が襲われぬとも限らん。手配は迅速にな」 「心得ております。それでは……」 姫が攫われてから2時間。王と大臣との会話は終わり、救出作戦が始まった。 _________ 王と大臣との話し合いが終わる頃、セントランド領内にある蛮族の隠れ拠点に1台の馬車がやってきた。 この隠れ拠点は王国内に入り込んだ敵国のスパイが寄り集まり、王都に近いところで監視をするために納屋を改造して造られたものである。 隠れ家である事を悟られないように外見はただの廃墟を装い、地下を掘り進んで造られた拠点には簡素な生活空間と牢屋が存在する。 その牢屋の中に、およそこの空間とは似つかわしくない高貴なドレスを纏う少女が入れられていた。 彼女こそ攫われた王国の姫、ティアナである。 「悪いな姫さん、うちの大臣らが来るまでここで大人しくしててくれや」 「……わたくしを、どうなさるおつもりですか」 「どうもしやしない。ただ話し合いのネタにするだけさ。国と国同士のな」 「講和をするつもりですのね。わたくしを人質にして……」 「小難しいこたぁ俺は知らねぇ。だが国と国のゴタゴタは、上のもん同士で話つけなきゃな」 「あなたがたはわたくしの国を理解していません。わたくしを攫った者に、お父様がどうするか……悪いことは申しません、早く解放しなさい」 蛮族は知らない。自分が相手している国の強大さと、自分がしでかした事の大きさを。 大国の王女を捕らえたなら、その全軍に追いかけ回されることになる。どう考えても逃げ切れるはずはなく、王女誘拐に関わった者すべての首が飛ぶのは間違いない。 しかしそれもやむを得ないことではある。王政を布いていない国の者にとって、王の血縁者なるものがどれだけその国にとって大きいかなどわからないのだ。 国内で最も強い者が権力を得る。極めて単純な構造によって成り立つ蛮族国家の歪みが、ここに現れていた。 「ご忠告痛み入ります……なんてな。まあ確かにあんたの国は強え。普通にしてたら俺らは勝てねぇやな。だからこうして引き分けに持ち込もうってのさ」 「そのようなことが本当にできるとお思いですか?」 「さあな、俺らはただの前線部隊だ。考えるのは上の連中のするこった。まあ……上の連中も考え事はそんな得意じゃねえだろうがな」 「あなたがたは無謀です。なぜこの程度の兵力で我が国に……」 「わかんねぇだろうさ。荒れた土地に生まれて、農耕もできねぇで奪うことでしか生きれねえ連中の事ぁ……」 「勝つか負けるかじゃねえ。やるしかねえのさ、俺たちは。まあ……負けたがな」 「…………そう、ですか…………」 敵国の、敵国なりの事情を垣間見た姫は、それ以上何も言うことができなかった。 彼らなりに覚悟を決めたのなら、もうこれ以上何を言っても意味はないから。 たとえその結果、追撃軍によって彼らが皆殺しになるのだとしても。もう誰にも止めることはできないのだ。 (解放されるのなら、それに越したことはなかったのですが……あとは早く助けが来れば……) ぼろぼろの布団と木製のバケツだけがある簡素な牢獄で、姫はひたすら助けを待つのだった。 _________ 姫が牢に入れられてから3時間が経過した頃、それまで静かに佇むだけだった姫の様子に変化が現れた。 きょろきょろと辺りを見回し、格子の向こうで見張っている看守の様子を伺うような素振りを見せ始めたのだ。 「どうした姫さん?落ち着かねえようだが」 「……このような所に長くいれば、退屈を紛らわすものが欲しくもなります」 「そりゃ違いない。あんたが大事な人質でさえなきゃ何かしらくれてやってたかもな」 看守との会話を終えると姫は、また以前のように不動の姿勢を取り直した。 その奥に秘めた微かな衝動を、決して相手に気取られぬよう。 しかしそれも助けのないまま2時間、3時間とさらに時を刻んでいくと綻びが見え始めてきた。 相手から見えないよう背後でそっと、ドレスの裾を握りしめる。 今までは微かでしかなかったその衝動は、時間と共に大きくなってきていた。 (これは、よろしくありませんわ……) (最後に済ませたのはいつでしたか……確か、散歩に行く前にはしていましたけど、その後は……) 姫を悩ませているもの。それは散歩に行く前を最後にそれからずっと行けていない、人間として当然の欲求の高まりであり、それこそが彼女の捕まった原因であるのだ。 姫が捕らわれる前、姫が散歩に出かけたのは朝方のこと。そしてそれから昼頃まで半ばピクニックに近い散歩をずっと続けていた。 花々を愛で、小鳥と戯れ、家臣らとお茶を囲って、およそ4時間ほどもそうして過ごしていた。 美味しいお茶を楽しめば当然、生理現象としてそれを催してしまうのは王族も町娘も同様である。違うのはその処理の仕方だ。 その辺りの町娘と違い王族は、例え遠出をしていても決められた場所以外でしてはいけないものなのだ。 自然に満ちた美しい森で、周囲に済ませられるところが何もなくても。王宮まで戻るのに早馬を飛ばしても一時間少々かかり、それよりは近隣の村で借りた方が早いのだとしても、王女に借りるという選択肢は許されていない。なぜなら国民にそのような姿を見られることなどあってはならないから。 そのため王侯貴族は「お花を摘む」のだ。騒ぎを起こさず、秘密裏に済ませることがある種のマナーとして成り立っていて、彼女もそれに則って「お花を摘もう」とした。それが捕まるきっかけとなった。 いかに護衛の数が多くとも、姫自身がそれから離れれば護りきれたものではない。そして蛮族らはそれをずっと待ち構えていたのだ。誰にも気づかれないように。 そしてそこから捕らえられ8時間。朝方に済ませてから今はすっかり夕食時である。 じくじくと下腹部を苛む「出したい」欲求に悩まされるのも致し方ないことであった。 (こうしたことには慣れていますし、今はまだ問題ありませんが、このまま助けがなければ……かといってこのような仕切りも何も無いところで、男性の目がある中でするなんて……) 仮に彼女が高まる欲求を看守に伝えたとして、看守が優しい対応をしてくれるかと言えば、それは絶対にありえない。 彼女の国の兵士でも、捕まえた捕虜を理由なく解放することなど無いのだから。 捕虜が手洗いを済ませたいと言ったなら、恐らく看守が見張っている中でさせるだろう。男女の区別なく、目の前で。そうでないと脱走される危険があるから。 しかし彼女も一国の姫。その佇まいに、所作に、人の目につくあらゆる部分を気にかけるよう躾られてきた存在である。 そんな彼女が、人として最大級に恥ずかしい行為を見られるなど許せるはずもない。 (お願いします。どうか……どうか早く助けに……!) 切なる願いを胸に、王女はひたすら助けを待つのだった。 _________ それから1時間ほど経ち、すっかり夜も暮れた頃。 看守に気取られないよう微かに脚をもじつかせる王女の牢に蛮族の1人がやって来た。 その新しく来た蛮族に、看守が話しかける。 「なんだ?交代はまだのはずだが」 「それどころじゃねえ。今すぐ姫さんを移送するぞ」 「おいおい、まだうちらの大臣やらが来てな…………まさか」 「ああそうさ。奴ら王都の近くをしらみっ潰しに探し回って、とうとうここを嗅ぎつけやがった」 蛮族が告げたのは、王国の軍がここを突き止めたということ。助けが間もなく来るということだった。 王国が王女奪還のために行った総当り作戦の成果が、とうとう現れたのだ。 もちろんこれには大軍を割かねばならず、普通は戦争状態の軍がやることはまずない。だからか蛮族たちも王国がこのような手段に出ることは予想外のことだった。 「いつか来るとは思ってたが……早すぎるな。まあうちらのお大臣方が遅せぇってことでもあるが……」 「ともかく今は姫さんだ。せっかく捕まえたのを逃がすわけにはいかねえ」 「隠し通路の先に馬を用意してある。それで姫さんと一緒になんとか逃げ切ってくれ」 蛮族たちの話を聞きながら、王女もまた思案を巡らせていた。 もし彼らの言うことが本当なら、時間さえ稼げばじきに助けが来る。 おとなしく彼らに従うのではなく、多少暴れてでも時間を稼いだ方がいいのではないかと。 「まあそういうことだ姫さん。悪いが一緒に来てもらうぜ」 「そのような事情を聞いて、わたくしが素直に従うとお思いですか?」 「だが素直に聞いてもらわなきゃ困るんでね。無理やり連れてくぜ」 「嫌です!離しなさ……んんっ!」 ぶじゅ…… 無理に連れ出そうとしてきた看守を跳ね除けようと力を込めた瞬間、下着の中で温かな感触が弾けた。 高まった尿意を堪えるために姫が縮こまった隙をついて、看守が姫を抱えあげる。 もはや抵抗も叶わないほど高まった尿意を抱え、姫は看守と共に脱出用の馬へと乗せられた。 「ちっ、いくら軽いとはいえ2人乗りじゃ速度が出ねえな……」 「い、嫌……!嫌です、離して……!」 「離せと言われて離すわきゃねえわな。いいから大人しくしてろって。別に殺しゃしねえからさ」 夜の闇の中、姫を乗せた馬は勢いよく大地を蹴って駆けていく。 1歩ごとに小さくない振動を姫の身体に与え波立たせながら、2人を乗せた軍馬が駆ける。 そしてそれを追う、王国の騎馬部隊。重い鎧で武装している王国軍と軽装とはいえ2人乗りの馬と、速度は拮抗していた。 目視でお互いを確認できる距離にはいるものの、王国軍はこの馬に手を出すことができずにいた。 矢も鉄砲も用意はしているが、馬に乗りながら放ったそれが万一にも姫に当たってしまうことがあれば一大事であるし、高速で走る馬を殺したら姫が地面に叩きつけられることになってしまう。 なんとか追いついて蛮族だけを仕留め、姫だけを救出しなくてはならないが重装備が災いして追いつけない。 結果、この「追いかけっこ」は数十分にも及んだ。 追いつくにも追いつけずにいた王国軍が装備を脱ぎ捨てるという判断をするまで、それだけかかったのだ。 軍にしてみれば高価なうえ、民間人や敵国スパイには万一にも与えたくない代物のため無理もないことではある。しかしそれがため、姫の救出には数十分もの時間を要した。 そしてこの数十分の間、姫の事情は予断を許さないところにまで来ていた。 蛮族の手によって移動させられた影響で、馬を飛ばせば王都まで1時間の拠点からさらに遠のいてしまった。それが何を意味するか。 王女が放尿を許される場所まで、単純に考えて2時間以上もかかるということを意味していた。 (お、お腹が……張って……!ど、どこかで済ませないと、このままでは……) 散歩に出る前の朝に済ませて、散歩とお茶会を数時間行って、催した時に攫われて、それから7時間以上も解放を許されなかった王女の恥辱の液体は、いよいよもって我慢の堤防を越えようとしてきていた。 さらに状況の悪いことに、逃げ出した蛮族を追いかけるため飛ばしたせいか馬の消耗が激しく、また馬術のできない姫が移動するには馬車が必須となる。 結果、簡易的な馬車を組み上げて、それを引く馬の体力を得るまでにも時間を要することとなってしまった。 野営を敷き馬の体力回復と馬車の組み立てを行うのに小一時間かかり、その間も姫は大勢の護衛のもとで半ば軟禁状態にあった。 姫を守るため致し方ないことではあるが、護衛のいるところから1歩も離れさせてもらえなかった姫は当然、お花摘みもできないまま出立の時を迎えた。 (ど、どう……しましょう……!こ、このままでは……) 長手袋に手汗を滲ませながら、表面上は静かに佇む姫。 しかしその内実、吹きこぼれそうな尿意を必死の思いで堪えていた。 そばに居る近衛隊長に気取られないよう、見えないところに力を込めて。 「カリウス、ここから王宮まではどのくらいですか?」 「順調に行けば4時間ほどですが、馬や兵の疲労を考えると途中で1、2回の休憩を挟むべきでしょう。5時間ほどと思っていただければ」 「5時間……そうですか。わかりました」 近衛隊長のカリウスに、あくまでも姫としての装いを崩さぬまま問いかけるが、その答えはあまりにも絶望的なものだった。 馬を全速で飛ばせば2時間程度ではあるものの、馬のスタミナはそこまで続かない。後先考えずに飛ばしてもせいぜい数十分がやっとで、そんなに長時間全速を維持させたら最後、怪我や転倒のリスクが跳ね上がる。 そこまで速度を出さなければ長時間の移動は可能だが、やはりその分時間がかかる。 蛮族が最後のあがきで姫を連れて逃げ出したことが、この状況を生み出した。転倒のリスクを度外視で長時間全速力で逃げ回ったことが。 (ご、5時間なんてとても……!休憩の時になんとか抜け出せれば……) 途中に挟むという休憩に一縷の望みをかけて、姫はじっと馬車の中で耐え忍ぶことを選んだ。 その望みが叶わないことも、知らないままに。 _________ およそ1時間半の後、姫を護送する1団は馬を止めて三十分ほどの小休憩に入った。 それを近衛隊長から聞いた姫は心躍らせながら、隊長に話しかける。 心の昂りを悟られないよう、姫らしさを失わないよう、つとめて冷静に、優雅に。 「カリウス、少し……夜風に当たってきても構いませんか?」 心の中で早くしたいとがなる欲求を押し殺しながら、あくまで姫らしい物言いを崩さずに通した彼女に告げられたのは、あまりに過酷な現実だった。 「なりませぬ。王女殿下が此度、蛮族に捕らわれた理由をお忘れではありますまい。王の元に戻られるまでどうか、ご自重ください」 「……………………!」 (そんな……!も、もう私、お小水がぁ……!) 心の中で「ティアナ」が悲鳴を挙げる。 もう限界だと。助けてほしい、手洗いに行かせてほしいと。 しかし姫として、それを口にすることは叶わない。王族として、常に誇り高く優雅でなくてはならないから。 「そう……ですね。わかりました」 心にもない姫らしい言葉を口にしながら、心の中で涙を零すのだった。 _________ それからの時間は、姫にとってまさに地獄そのものだった。 普通にしているだけで下腹がズキズキとした痛みを訴えてくるのに、そこに馬車であるゆえの振動までも加われば拷問に等しい痛苦となる。 目の前に誰かがいなければ泣き叫んでいたかもしれない苦しみの中で、姫の心身は憔悴しきっていた。 それでも耐えていたのは王族としての教育によって植え付けられた誇りと、婦女子として元から持ち合わせている誇り。これらが失禁という結末を決して許さなかったからだ。 女としての、王族としての、この2つの誇りが重なっていたからこそ、姫の水門は限界を超えた力を発揮できたのだ。 最初の休憩から4時間。姫が捕まった時から数えて17時間。そして姫が最後に手洗いを済ませた時から数えれば実に21時間を過ぎた今、姫の膀胱には常人の数倍に及ぶ大量の尿水が詰まっていた。 それでもなお姫として、尿意を表に出さず優雅な振舞いを崩してはいなかった。全霊の力を水門に込めてはいても、他の部分は表情から指先に至るまで一切が「いつも通り」のままであった。 そんな涙ぐましいまでの頑張りにも、とうとう終止符の打たれる時がやってきた。 「王女殿下、長旅お疲れ様でした。王宮に着いてございます」 「………………え」 「あ、ええ……ご苦労さまでした。急ぎお父様の元へ向かいましょう」 憔悴の激しさから話し声さえ認識できずにいたものの取り直し、馬車を降りようと踏み出した。 段差を降りて5時間ぶりの大地に脚を着いたその時、恥骨から脳天までを稲妻のような衝撃が貫いた。 「んぐうぅ……っ!」 限界を遥か凌駕する尿を溜め込み、大きくお腹をせり出させる膀胱が、段差を降りた衝撃でたぽんと大きく波立ったのだ。 出口に殺到するのをヒクつく水門でなんとか押しとどめるも、ドレスの下で下着を湿らせてしまうのは避けられなかった。 「殿下、どうかなさいましたか?」 「……いえ、なんでもありません。少し……疲れただけですから」 「無理もありませんな。あれだけの思いをされれば」 本当は疲れなどではないけれど、本当のことを言えるはずもなく…… 揺れる膀胱を抱えたまま、姫は王の元へと向かっていった。 _________ 「よく戻った、ティアナ。さっそくだがお前にやってもらいたいことがある」 「…………え」 その言葉を聞いた時、一瞬だけ姫から優雅が消え失せた。 無事の報告をしたらすぐトイレに行けると思っていたのに、この期に及んで何かさせられるようなら…… 年齢相応の、10代半ばの少女のような不安を纏った瞳で、父親たる王を見やる。 「お前の奪還のため軍を集めたゆえ、お前の不在は王都周辺の民すべての知るところとなった。そのため民はお前の不在を心配に思っている……戻ってきたのなら、その無事を民に知らしめねばならん」 「お前の帰還に合わせてセレモニーの支度をしておいた。民たちも王宮前広場に集めてある。お前の無事を知らせてやりなさい」 王の言うことは至って正しく、民の不安は一刻も早く取り除かねばならない。 だがそれでも、そのセレモニーの前に少し、ほんの少しだけでも時間が……トイレに行く時間が欲しい。 (おトイレ……!お手洗い、お小水……したい、出したい……!) トイレに行きたい、ずっとできなかったものを、全て出したい。 声にならないティアナの偽らざる思いが胸中でぐるぐると渦を巻き、姫の仮面をふたたび纏うのに幾ばくかの時間を要した。 それでも姫の仮面を纏った今、返す返事は1つである。 「わかりました。それではすぐに向かいましょう」 ティアナという1人の女性ではなく一国の姫として、彼女はセレモニーの会場へと入っていった。 「皆さまこんばんわ。セントランド王国第一王女、ティアナローゼです。この度はわたくしの不始末で皆さまを不安にさせてしまい、たいへん申し訳なく思います」 (お願いしますっ!はやくっ、はやくおトイレにぃぃぃ!!でちゃうっ、でちゃうでちゃうでちゃいますぅぅぅ!!) 心の中で暴れ狂う「ティアナ」を押し殺して、姫は国民に対して無事をアピールする。 「王国中から集まってくださった兵士たちの尽力により、わたくしは敵国の手から逃れることができました。兵たちと、それを応援してくださった皆さま方には感謝してもしきれません」 (もうっ、もういやですぅぅぅ!くるしいっ!いたいっ!がまん、もういやですぅぅ!!) もはや分裂した人格となった、「姫」としての部分と1人の「ティアナ」としての部分。 いついかなる時も姫らしくあるべきとした彼女が表に立ち、少女らしく取り乱しもする部分を奥に押し込んでいた。 しかしその押し込められた部分こそ、「姫」というある種の作り上げられた偶像ではない、本当の彼女なのかもしれない。 「このような夜更けにお集まりいただいて、誠に申し訳なく思いますけれど……ティアナはこの通り、無事に戻って参りました。今後も皆さま方と共に、この国を支えて参りたく思いますわ」 (もれるっ……!もれる、でちゃうっ……!オシッコ、オシッコでちゃいますぅぅ!はやくっ、おトイレっ、オシッコさせてくださいぃぃぃ!!) 最後まで、表向きは姫らしく。 姫のスピーチは手短ながら、その健在をはっきりアピールして終わった。 そして内心で下品な言葉を発して尿意を喚くティアナの望みがようやく叶おうとしていた。 スピーチをしたバルコニーを離れ、トイレへと向かっていく。 「ティアナ」はすぐにでも駆け込みたがっていたが、姫としてそれは許されず、しずしずとした歩みで。 (オシッコ……!オシッコ、オシッコオシッコオシッコぉ……!はやく、オシッコぉぉ……!!) 逸る気持ちを「姫」が抑えながら、ティアナは先走りで下着を濡らしながら念願のトイレへと辿り着いた。 そこは王宮においても数少ない、王侯貴族のみが使える水洗の専用トイレである。 扉を開いて1段登ったところに腰掛けるための木製の便座があり、その穴は水路に直結している。 汲み取る必要がなく衛生的で、王族はもちろん貴族でもここ以外で用を足せない人間は少なくない。 そんなセントランド王族御用達トイレは、今のティアナにはまるで楽園に等しく思えた。 「オシッコ、オシッコ……!ああ、やっとぉ……!」 この中に入って扉を閉めてしまえば、もう姫である必要もない。 はしたなく股間を握りしめ、腰をもじもじとくねらせたとしても、誰も何も言わないのだ。 恥じらいを捨ててスカートをがば、と捲りあげ、濡れた下着を横にずらし…… びたん!と美尻を便座に叩きつけて、ティアナはようやくつらい我慢から解き放たれたのだ。 「あ………………」 ぶっっっっっしゃあぁぁぁあああーーーーーーーーーーーーー!!!! びしゅうぅぅぅっっっっしぃぃぃぃぃーーーーーーーー!!!! 高貴。優雅。気高く、美しく。 そんなものとはかけ離れた、乙女のけたたましい爆尿音がトイレに響き渡る。 朝に用を足してから4時間。その間にお茶を飲み、催した時に捕まって、それから10時間後に解放され、王宮に着いたのがそれから7時間後。 そして王宮に着いてから10分ほどは王との謁見に費やし、スピーチを済ませて…… すべて合わせれば22時間にも及ぶ長時間溜め込まれた王女の聖水は、取り繕う余裕もなく便器にぶちまけられる。 長く辛い我慢から解き放たれた開放感、徐々に軽くなる膀胱、過敏になった尿道を駆け抜ける極太尿の感覚…… それらが綯い交ぜとなり、色を知らない少女の身体にぞくぞくとした感覚を齎してくる。 それは無意識のうちにティアナの背筋を反らし、体勢を変化させた。そして…… びゅじぃぃぃぃぃーーーー!!!びぢぢぢぢっ、じゅばばばばばーーーーー!!! 快感で視界が白むティアナの知らぬ間に、極太尿の照準は便器から外れてしまっていた。 一切のタガが外れた爆尿の勢いはそのまま、入ってきた扉に向かって叩きつけられ、床に薄黄色の水たまりを広げていく。 「え!?あ、と、止め……!」 扉に放尿していることに気づいたティアナは慌てて止めようとするが、一度始まった放尿を止められるはずはなく…… 一切止まることなく続くオシッコの勢いに、最後の理性も押し流されていった。 「あは、ああぁ…………♡」 (もう、いいや……) 諦めて放尿の快楽に浸るティアナの顔は、見る影もなく緩みきっていた。 圧力のまま勢いよく、1分ほども爆尿を迸らせた後は膀胱内の残尿をちょろちょろと細く長く垂れ流し続け、合わせてたっぷり3分以上もティアナはオシッコを出し続けた。 最後のひとしずくを絞り出し、無毛の割れ目からぽたぽたと垂れる雫を拭き取って、ティアナの放尿は終わった。そして…… (こ、これをなんとかしなくては……!) 残るは悲惨な状態となったトイレの清掃を残すのみ。 他の王族やメイドたちが来る前に片付けなければならない。そう思ってティアナが立ち上がった瞬間、トイレのドアがノックされた。 「どなたか入っておいでですか?」 「え?あ、ええと、わ、わたくしです。ティアナです。その、すみません、少し転んでしまって、もうしばらくしたら出ますから少し待っ」 「姫さま!?たいへん!今お助けします!」 「え?!ちがっ、まって!ダメです!ダメっ……」 声の主は王宮のメイド長。恐らく掃除をしに来たのだろうが、余りにも間が悪すぎた。 ティアナは急な事態に頭が真っ白になり、しどろもどろな対応をした結果、余計に心配されることとなり…… 鍵を持つメイド長の手により、ティアナのオシッコまみれのトイレの扉が開け放たれた。 そしてその後、姫の仮面が完全に剥がれたティアナの横でメイド長が後始末をすることとなるのだった。

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