巨人少女のおトイレ事情~another~ (Pixiv Fanbox)
Published:
2021-08-29 08:19:44
Imported:
2022-06
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「……やっと村に帰ってこれた……工事、終わってるかなぁ……」
夕方に出発して、すっかり日も落ちた時間になってしまった。
身体中に生傷をこしらえた少女の姿は村人たちから心配の的となったが、しかしそれどころではない事情がある。
先ほどの戦いで少女の貯水能力を持ってしても危険域に入った尿意を何とかして解消しなくては、村が水没してしまいかねない。
そのための場所が出来上がっているか見に行くと……そこにはすっかり出来上がった少女専用おトイレの姿があった。
「ちょ、長老さん!これは……!」
「お主が水汲みから戻ってこぬ間も、みんな頑張ってなんとか終わらせたんじゃよ。さ、行っておいで。わしらは耳を塞いでおるから」
ようやく1ヶ月にも及ぶ我慢が終わると胸躍らせながら、少女は木板の打ち付けられた大穴へと向かっていく。
少女の半身をすっぽり覆うほどの大穴にしゃがみ込むと、巨大な少女の姿は周りからすっかり見えなくなった。
もう少女のおトイレを邪魔するものはないと、安堵の息をついたその時だった。
がさがさっ……
「……!?だれっ!」
近くの茂みから、葉の擦れる音が聞こえてきたのだ。
村人がこっちに来てしまったのか、或いは獣か……
膝をもじもじと擦り合わせながら思案する少女の元に、山なりの軌道を描き、紅く光る何かが飛んできた。
それは矢の先端に油を塗り、火をつけた人間の武器……火矢だった。
外周に木板を打ち付けた穴の中に飛び込んできたそれは瞬く間に引火し、炎に巻かれた少女は慌ててその穴の中から飛び出した。
……しかしその結果、少女が足をかけたことで火に燃えた木板はぼろぼろと崩れ去り、穴が崩れないための補強の役割を果たしていたそれがなくなれば、もう大穴もその形を保っていられない。
結局村人が総力を挙げて造ってくれた少女のおトイレは、1度も使われることなく炎と共に大地に還ってしまった。
「ハッハッハァ!ざまぁねえぜ!」
そしてその犯人と思われる男……恐らく逃げ出したはずの盗賊の発した笑い声が、夕暮れの森にこだまする。
山賊団を壊滅に追いやった少女への仕返しのため戻ってきたのだろう彼は、そのまま闇の中へと消えていった。
「ど、どう……しよ……」
燃えかす混じりの土を眺めながら途方に暮れる少女の元へ、騒ぎを聞きつけた村人たちがやってくる。
「ご、ごめんなさい……おトイレ、壊れちゃった……」
「だ、大丈夫かの?なにがあった?」
「水汲みの時山賊と戦ったんだけど……たぶんその生き残りが来て、おトイレに火矢を……」
「なんちゅうことを……ま、まあお主が無事なようでよかったが……」
「でも、その……あたし、まだ……して……なくて……あの、その辺でしてきても……」
「な、ならん!ならんぞ!お主がその辺ですることだけは絶対にならん!」
少女の提案は、即座に却下された。
容量にして1000は確実にあるだろう少女のおしっこをその辺りに出すということは、それだけ巨大な水たまりを作ってしまうということだ。
尿というのは想像より遥かに塩分が多く、それが土に染み込んでしまうとそこの土は耕作に適さない傷んだ土になってしまう。
肥溜めに溜まっているのは発酵させているので栄養分のみ使うことができるが、そうした処置もなしで放尿することは土壌を傷つけ、農作で生計を立てるこの村にとって致命傷となりかねない。
「で、でもあたし、もう……!」
「わかっておるが村のためだ……こらえておくれ」
「うぅ……!でも、もう1回作れるまでは……」
「まあ、一回目と同じくらいかかるじゃろう。どんなに急いでも2週間……」
「む、無理です!そんなのぜったい……!」
しかし我慢しろと言われても生理現象である。どんなに耐えたところでいずれ限界はやってくるし、何なら今すぐそれを迎えてもおかしくない。
そんな状況でもう2週間など耐えられるはずはなく、何らかの方法を考えなくてはならなかった。
「……やむを得んな。ここからお主の足でもどれだけかかるかわからんが、お主の用を足せる場所といえば……もはやあれしかあるまい」
「心当たり、あるんですか!?」
「海じゃよ。海に行くのじゃ」
「…………え?」
_________
川と海は繋がっており、川を降りていけばいずれは海へとたどり着く。
水は低いところに向かって流れていく性質があり、山に降ってきた雨水は川となって海へと下っていくのだ。
そんな大雑把な標を頼りに、少女は海へと向かって歩き始めた。
少女の高い視点を以てしてもまるで姿の見えない海原へ、尿意の解放を求めて。
恐らく人間なら何週間もかかるだろう旅路を、少女は大きな足で歩み出した。
ずしん……ずしん……
「はぁ……あたしがこんなに大きくなかったら、こんなに苦労することもなかったのにな……」
夜が明けるのを待つことなく、少女は暗い森の中を進んでいく。
自然界において最大の巨体を誇る少女には夜の脅威は脅威とならず、旅路を阻むものは特に見受けられなかった。
それが逆に、道のりの長さを突きつけてきて気が滅入る。
1歩で10メートルほども歩ける少女の足を以てして、先はまだまだ遠い。
少女はひたすら夢中で、夜の山を降りていくのだった。
_________
それから少女は、ひたすら歩き続けた。
寝ている時間があったら進み、食べる時間があったら進み、飲むものも飲まずの強行軍。
少女がこちらに現れてからお腹がいっぱいになったことなど1度もないが、今はその中でも1番ひもじい思いをしていた。
(おなか……へった……疲れた……休みたい……でも……)
(おしっこ……海で……しなくちゃ……そのへんでしちゃ……だめ……だから……)
少女が村を出てから丸2日、少女は小川せせらぐ草原を呆然と歩き続けていた。
空腹もある、渇きもある。だが何よりも1番辛いのは、1歩踏み出すごとにずきずきと主張する尿意だった。
早く出したいとがなる身体をなだめながら、少女はいつ終わるとも知れない行軍を続ける。
たったひとつ、この小さな川だけを海への道しるべに。
_________
「う……そ……」
少女が村を出て3日。少女の身に絶望的な事態が降り掛かっていた。
少女がしるべとしていた川が、途切れてしまっていたのだ。
それも当然といえば当然のことで、全ての川は海へと向かっていくが、その全てが海へとたどり着ける訳ではない。
途中で力尽きる川もあり、ちょうどこの川がそれだった。
だがそれでも、この川は少女にとってただ一つの道しるべである。少女に排尿が許される場所への、たったひとつの。
それが消えた今、少女の絶望は大きい。まして疲労困憊の今ならばなおさら。
(かわ……なくなって……うみ、どこかわかんなくて……あたし、おしっこ……できない……の……?)
(あたし……おおきいから……おおきいせいで……どこいっても……できないの……?)
(……そんなの、ひどいよ……!)
少女の貯水能力が持つのは、せいぜいが1ヶ月分くらいだ。そして少女が村を出た時点で、その限界点は超えていた。
今は少女が村を出てから3日。とうに限界を迎えていてもおかしくはない。
それでもこれまで耐えてきたのは、少女なりに人間や動物たちを思いやっていたからだ。
どんなに人里離れたところでも、そこに住む動物たちはいる。どんなに人里離れたところでも、そういったところに好んで住む人間はいる。
だからそんな彼らのためにも、そこを汚してしまわぬようにと、必死に耐え続けてきたのだ。
(もう……しちゃおうかな……だってもう……がまん、できないもん……)
そんな少女の心ですらも無惨に叩き折られ、イケない選択肢が頭を過ぎる。
身体を動かす衝動のまま少女は地面に向かってしゃがみこみ、あとは布地をずらすだけ……
「わー!おねぇちゃん、おっきいー!」
「ひゃひぃぃぃ!?」
そんな時、少女の背後から幼く高い声が聞こえてきた。
きゅ、と慌てて水門に力を込めながら振り向くと、そこには小さな人間の子どもがいた。
(だ、だめ……!いまするわけには……!)
ヒクヒクと引き攣る水門に満身の力を込めて、少女はなんとか渦巻く激流をなだめすかした。
「ど、どうしたのキミ、こんなところで……」
「ここね、私の秘密の場所なの!お花がきれいでだいすきなんだー!」
そう言ってその子供は原っぱを駆け回る。
少女がおしっこで水びたしにしようとした、原っぱを。
(だ、だめ……!できない……よぉ……!)
仮にこの子がいなくなったとして、人目がなくなったとして、ここがこの子の大切な場所であることに変わりはない。
もしこの子が、この場所を水びたしにされたなら、どう思うだろうか。
それを思うと、もうここですることもできなくなった。
ならば少女に残された道はひとつ、何としてでも耐えきり、海へとたどり着くのだ。
「あ、あのね、お姉ちゃん、海に行きたくてね……」
「うみー?それならあっちにあるよ!あそこにある街の向こうっかわだよー!」
「……!あ、ありがと……!」
子供が指さしたのは、すぐそこに見える町の向こう側。
ここで少女は自分の愚かさに気がついた。川を追いかけることに必死で、人に聞くことがすっかり頭から抜け落ちていたのだ。
そのことに気づかせてくれたこの小さな子供に感謝しつつ、少女はふらつく足で町に向かって進み始めた。
(まだ、もうちょっとだから……!)
先ほど「しようとした」ことの余波がまだ残っているのか、少し身じろぎするだけで溢れてしまいそうになる。
ガクガクと震える膝に、力尽きそうな水門に最後の喝を入れて、少女は大きな町へと足を踏み入れた。
_________
「お、おい、なんだアレ……!?」
「きょ、巨人だぁーーー!!!」
「……っ、はぁ……っ、はぁっ……」
少女が町に足を踏み入れると、当然ながら町中が大騒ぎになった。
少女がもう少し冷静だったら町中を突っ切ることは避けていただろうが、もう今の彼女には最短距離を突っ切ることしかできない。
むしろそれさえ、破裂寸前の膀胱を抱えた少女には困難だった。
誰が見ても分かるほどぽっこりと丸く膨らませた少女のお腹には、想像を絶するほど大量のおしっこが詰まっているのだ。
少女が村を出てから3日と半日。限界を超えてから3日に渡るおあずけは、いよいよ少女から歩く力さえも奪い去ろうとしていた。
ズズウウゥ……ン
「……っこ……!ぉし……っこ……!で……ちゃう……!でちゃう……よぉ……!」
町中でうずくまり、ぎゅうぎゅうと股間を押さえつけて必死の我慢を繰り広げる。
巨体ゆえ隠す場所のない少女の必死の我慢姿は町中に披露されているが、それを気にする余裕ももはやなかった。
もしここで少女が「して」しまったら。町中で少女が出してしまうことは壊滅的事態をもたらしてしまうだろう。
だから少女は、耐えねばならない。たとえこれまで1ヶ月以上も我慢してきて、もう限界をとうに超えているのだとしても。何としてでも。
女の子の、本来なら秘密のはずの闘いを満天下に見せつけながら、少女はなめくじのように這い進んでいく。
もう身体を起こす力もなく、熱を持った水門を脂汗の滲む手で必死に押し込みながら。
「だめ、だめ……!おしっこ、でちゃだめ、うみでするの、うみで、ぜんぶ、しゃーって、うみで……うみで……!」
「おしっこ、まだだめ、おしっこ、がまん……!」
何度も何度もうわ言のようにおしっこと呟きながら、前髪を汗で張り付かせての最後の行軍。
普段の彼女なら2分と経たず通り過ぎるであろう小人の町を、ぶるぶるとその場に固まりながら1時間もかけて。
それでもお腹の中のおしっこを、1滴たりと零すことなく、少女は砂浜へとたどり着いた。
「あぁ、あ……!ああ……!!」
もう、踏み潰してしまう人も家もない。少女は砂浜にじょろじょろと先走りを溢れさせながらよろよろと向かっていき、そして……
「あぁっ!」
ぶじょじょじょじょおおおおおおおおお!!!じょごごごごっ、じゅぼぼぼぼぼぼどどどどおおおーーーーー!!!
たどり着いた波打ち際で、下着を横にずらすと同時、まるで滝のような大放尿が姿を表した。
スライディングのように地面に座り込み、惜しげもなく晒した割れ目から飛び出した特大の放物線。
水平線に虹を描いて放たれたそれは少女の背丈すらも超えて、遥か前方の海を温かく染め上げていく。
着水地点で凄まじい轟音を立てながら、びりびり痺れる水門から念願のおしっこを思う存分放っていく。
もしもこの場に漁船が通りかかったなら、一瞬で轟沈するだろう猛烈な水勢。それは着水地点に小さな渦すら形作っていた。
「ああぁ……あ~~~……」
晴れ渡る海に突然現れた特大のおしっこ嵐は、少女の膀胱が空になるまで平和な海を騒がせるのだった。
_________
「おお、おかえり。長かったの」
「ええまあ、大変な目に会いましたよ」
後日少女は村へと帰り、2回目の建築に携わる村人たちを手伝った。
さすがに次は山賊に焼かれてしまうようなことはなく、容量にこそ気をつけていれば少女のおトイレ事情はひとまずの解決を見た。
もちろんこれも、消費に対して少女がしすぎないことを前提に成り立つものだが……
それでも少女は前向きに、この小さな人間たちとの暮らしを続けようと日々頑張っている。
巨人と人間との共同生活は、まだ始まったばかりだ。