とにかく不幸な少女のお話 (Pixiv Fanbox)
Published:
2021-04-29 08:49:24
Imported:
2022-06
Content
〜まえがき〜
4月の報告でもお伝えしました通り、いま書いているお話の進み具合がよろしくなく、今月中の更新が難しいため、ごくごく短い短編を支援者様向けに公開いたします。
来月こそはちゃんとした更新ができるよう頑張ります……
〜まえがき終わり〜
夕陽に照らされる小さな街を、どこか覚束ない早足で少女が駆けていく。
早足でいながらところどころで歩を弛め、下腹部をさする仕草を見せる少女が目指すもの。それは……
(と、トイレ……っ!おしっこぉ……!)
募り募った尿意を解き放つことのできる、安息の地だった。
高校の制服に身を包む少女が、なぜわざわざ街中でトイレを捜すのか。その理由は、彼女を襲う数々の不運にあった。
不幸の始まりは今朝の登校前、自宅のトイレを急な下痢に見舞われた父に占拠されたことを皮切りに、学校トイレの水道管工事、工事終了後の大行列と、立て続けの不幸に見舞われていたのだ。
そうして迎えた放課後。昨晩からの尿意の解放に思いを馳せる少女を待っていたのはおしゃべりな友達だった。
おしゃべり好きの友達は、水道管工事という絶好の話題を得てフル稼働し、少女に「トイレに行きたい」の一言を言わせる間もなくまくし立てた。
かくして少女は昨晩から1度もトイレに行けないまま、帰路に着く羽目になったのである。
下着に染みを作ってしまいながらも、やっとの思いで友達と別れることができた。あとはトイレに向かうだけである。
(家まではとても我慢できない……!こ、コンビニで……っ)
普段はバスで通っている少女の家まで歩けば1時間は優にかかってしまうし、今の状況でバスに乗るのはリスクが大きい。
コンビニに向かうという少女の決断は、とても正しいものだった。
だがその正しさも、迫り来る不幸の前には無力だった。
「う……そ……」
店内に入って真っ先にトイレへと駆けていった少女を出迎えたのは、故障中と書かれた一枚の張り紙。
その3文字がもたらした絶望は深い。もう少女が使えるトイレはないのだと、明確に突きつけられてしまったのだ。
もう他に採りうる手段はなく、少女は最後の賭けに出るしかなかった。
ふらふらとした足取りで少女はバス停に向かい、やって来たバスに乗り込んで行った。
バスに乗る時間およそ20分。それまで我慢し続けられることを祈りながら。
_________
「はぁっ、はあっ……!」
バスに乗ってから20分。少女はなんとかバスを水浸しにすることなく、家の近くにたどり着いていた。
道中何度も挫けそうになりながら、バスが揺れる度に痛む膀胱を庇いながら、少女は満杯の尿意を堪えきった。
あとは無事、家のトイレにたどり着くだけである。
「ぉしっこ……!あとちょっと、おしっこぉ……!」
恥ずかしい言葉を漏らしながら、やっとの思いで少女は家の前に到達した。
見慣れたはずの玄関が輝いて見えるほど歓喜する少女だが、ここで最後の不幸が襲いかかる。
「……え?あれっ、あれ!?うそっ……!」
玄関を開けようとカギを探すが、見当たらないのだ。
体操着や教科書に紛れているかもと漁るが、それでも見当たらない。
そしてこの事態を、尿意が見逃してくれるはずもなく……
ぶじゅうぅっ、じゅぅ、じゅいっ!
「んんんんんっ!?」
カギを探すために両手がカバンに向かっている隙を突き、先走りが少女の下着を貫いた。
これまでの我慢ですっかり湿った下着はそれを吸収できず、吹き出た勢いのまま地面に叩きつけられる。
「だ、め……!おしっ……でちゃ、だめ……!」
両手で出口を押さえつけ、なんとか押しとどめることに成功したが状況は予断を許さない。
両手が塞がったままではカギを探すことができないが、両手でなければこの勢いを抑えきれない。
八方塞がりの状況を打破するため、少女は片手で出口を押さえ、もう片方の手でカバンを漁る。
ふりふりと左右に腰を振り、水滴を撒き散らしながらカバンを漁る姿は見ようによって滑稽にも映るが、本人はもうなりふり構っていられる状態ではなかった。
(おしっこ、でないで……!もうちょっと、かぎ、どこぉ……っ!)
刻一刻と迫るタイムリミットに追い立てられながら必死にカバンを漁るが、目当てのものは一向に見つからない。
その間も出口を責め立てる水勢は緩みなく、カギを探す少女の集中をかき乱す。
そうやって玄関前で攻防を繰り広げること約5分。終わりは唐突に訪れた。
(だ、め……でちゃ……う……おしっこ……ぜんぶ……でちゃ……)
カギが見つからず混乱しきった少女は、開かないドアのノブにすがりついて、もう片手ではどうにもならなくなった水門を必死に押さえつけていた。
そんな尿意で頭がいっぱいになった少女の身体を、少し冷たい風がさわりとなで上げる。
それが極限状態にあった少女のダムに、致命的な亀裂を入れてしまった。
ぶるりと身体を震わせる少女。それを合図とするかのようにぞくぞくとした感覚が下半身を中心に湧き上がり、気づけば両脚を温かいものが伝っていた。
「あ……あぁ…………!」
それに気づいて必死に押さえつけるも既に遅く、疲弊しきった水門は全開となり玄関先におしっこを撒き散らし始めた。
ばちゃばちゃと盛大な音を立てながら、少女の10数時間にも渡って熟成されたおしっこが巨大な水溜まりを作り上げていく。
「あ……あ〜〜〜〜………………」
どうにもならないほどの勢いは少女に我慢を諦めさせ、代わりに一時的な解放感と快感をもたらした。
尿道を駆け抜ける極太水流の感触と、どんどん軽くなっていく下腹部の感触を味わいながら、少女は少しお腹に力を入れておしっこを絞り出す。
少女はノブにもたれた体勢のまま、蕩けた顔でおもらしの快楽を味わっていた。
だがそんな気持ちのいい時間は長く続かず、膀胱の中身がなくなっていくにつれて快感も弱まっていき……いつしか自己嫌悪が胸を焦がしていた。
「もう……最悪……っ!」
膀胱に残った最後のおしっこを絞り出しながら、少女はぽろぽろと涙を零すのだった。
なお、見つからなかったカギは少女が洗濯をする寸前に、制服のポケットから現れた。
それは少女がバスの中で、降りた時に備えてカバンからポケットに移動させていたのだが……それを忘れていた自分の迂闊さを少女は大いに悔やんだ。
そして二度とこのようなことがないよう、後日キーケースを買いに行くのだった。