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〜交代の人が来なかった場合〜 勤務時間の残りが30分を切ると、最後の仕事としてやるべき事が出てくる。 その日一日の警備で異常がなかったことを報告する日報と、次のシフトの人に引き継ぎ事項を伝えるノートの作成だ。 それをすることが一日の締めくくりとなるほどの重要な仕事であるが、今の彼女にペンを取ることは非常に困難な事であった。 (で、ちゃう……!出ちゃう、おしっこ……出ちゃうぅ……!) 両手で出口を押さえつけていなければすぐにでも吹き出してしまいそうなのに、少なくとも片方の手はペンを握っていなければならないのだ。 もうすでに満身の力を込めている水門に、更なる喝を入れなくてはならないのだ。 ぶじゅううぅっ!じょいっ、じゅいいいっ! 「~~~~~~っっっ!!?」 (おしっ……!とめ、とまっ……てぇ……!) 臨界を超えた分が噴き出し、座っている椅子ががたがたと揺れる。 全身に力が籠り、書いている途中の日報がくしゃくしゃになってしまう。 こうなると書き直すしかなく、せっかくの頑張りが水の泡となってしまう。 「お、しっこ……!おしっこ……おしっこ……!!」 けれどもう、彼女にはそんなことを考える余裕すらなくなっていた。視界のほとんどが白くぼやけ、口から無意識に恥ずかしい言葉を口走ってしまうほど、少女の尿意は限界だった。 現在時刻は16:45。残り時間があと15分を切ったところで、少女のスマホに着信があった。 電話をかけてきている番号は、そろそろ出勤してくるはずの人物。次のシフトの人だった。 嫌な予感に襲われながら、少女は着信に応答する。 「も、もしもし……?」 「あ、まもりちゃん?ちょっとお願いがあるんだけど……今そっち向かってるんだけどね、なんだか事故があったみたいで道路が封鎖されちゃって……」 「…………え」 それは、死の宣告に等しいものだった。 交代する人の乗ったバスが遅れているため、到着するまで勤務を継続して欲しいと言ってきたのだ。既に限界の尿意を抱え、僅かな希望をその人の到着に見出していた少女に。 どの程度遅れるのか、電話口で伝えられた時間は2時間ほど。しかしこれも確実なものではない。少女にとって拷問にも等しい「延長戦」の幕が上がろうとしていた。 「ふ、ぅ……ふぅっ……!」 呼吸をする度お腹の容れ物が悲鳴を挙げ、もう限界だと少女に訴えかける。 荒く浅い息を吐き、生乾きのズボンに新鮮な水分を供給しながら少女は限界を超えた戦いを繰り広げていた。 「がまん……!がまん、がまん、がまん……!おしっこなんてしたくない、したくない、全然したくないのぉ……!」 悲鳴を挙げる肉体に対して、せめて心だけでも抗おうと少女は自分に言い聞かせる。 したくないと思い続けて、自分に暗示をかけるように。 けれどそれよりもなお大きく少女の欲求は膨れ上がり、「したくない」と思い込もうとする気持ちに反旗を翻してくる。 びじゅううっ!ぶしゅうっ!しゅうっ 「あっ……は、ぁ……!」 全身から叩きつけられる「おしっこしたい」の大合唱。頑張っても溢れてしまう水流と、放出に伴う身震いするほどの快感が少女に抗いがたい現実を突きつける。 最後のトイレから数えて11時間にも及ぶ長大な尿意の我慢は、少女の身体と心を狂わせていた。 「し、たく……ない……!したくない、したく……ないぃ……!」 徐々に弱々しくなっていく否定の声。もはや自分を誤魔化すことさえもできなくなりつつあった。 ズキズキとした痛みを訴える下腹部は、いつ破裂してもおかしくないように思えるほど膨れ上がっていた。それだけの水量がもたらす圧力を防ぎ続けてきた門も、もう力尽きる寸前……というより、力尽きているのを気力で持ち堪えているようなものだ。そして、その気力も尽きつつある。 (おしっこしたい……だしたい……しゃーって、ぜんぶ……らくに……なりたい……) (でも、だめ……よごしちゃうから……おもらしになっちゃうから……がまんしないとだめなの……がまん、がまん、がまんしなきゃ……) 「が、まん……!ふぅ、ぅ……がまん……!がまん……!!」 机に突っ伏し、全身の力を総動員しての我慢を繰り広げる。 身体を起こしておく力すら惜しんでの、涙ぐましいまでの死闘ぶりだった。 だが、それでもまだ延長戦が始まってから数分と経過していない。地獄すら生ぬるい尿意の煉獄の中で、少女はその心と体を灼かれ続ける。 そして延長戦が始まってから20分。とうとう少女に異変が起きる。 おもむろにふらふらと少女は立ち上がると、そのまま守衛室を出て裏手へと向かっていった。 その思考までをも黄色く煮立たせた少女は、我慢できない尿意を「外でする」ことで解放しようとしていた。 当然ながらこれもクレームとなりうるし、他人の敷地内での小便は軽犯罪法に触れる立派な犯罪である。だがもう、そんなことを考えていられる余地はなく、ただただ楽になりたかったのだ。 「おしっこ……!やっと、おしっこ、できるぅ……!」 歓喜の声をあげて、少女は裏手にある小さな排水口へとたどり着いた。普通ならこんなことを思いもしないだろうが、今の彼女にとってそこは輝かしき「おトイレ」となっていたのだ。 ズボンのベルトに手をかけ、12時間もの間排泄を許されなかったものを解き放とうとしたその時、少女はあるものと目が合った。 それは守衛室の裏手を守護する、監視カメラだった。 「あ、え、ぅ、うそ、見られ……っ!」 それはちょうど排水口を収める角度に設置されていて、彼女がそこにしゃがみ込めば何をしているかは一目瞭然だ。 こんなところにカメラを設置してあるのは、ひとえに警備員そのものの身を守る為であるが、そのことが結果として彼女を苦しめることとなってしまった。 もしもこのカメラの前でしてしまったら、一生消えない恥を残すことになる。カメラの映像はいつでも見られるし、事件が起きた際には警察に見せることもある。もしもそれで、自分の「その瞬間」を誰かに見られてしまったら…… それを想像すると、ベルトに伸ばした手を戻さないわけにいかなかった。理性ではなく、年相応の少女としての恥じらいがそれを止めたのだ。 だがそれは、別の問題をそのまま残しておくことでもある。 お腹でぐつぐつと煮え立つものは、依然としてそのまま残っている。このままではカメラに残らずとも、決定的な恥を晒すことになるのは自明だった。 (どう、しよぉ……!もうがまんできない……おしっこでちゃう、でちゃうよぉ……!) 呼吸するだけでもぎりぎりと少女の容れ物が痛み、一刻も早い排泄を求めてくる。それを無理やり抑えつけるのももう限界だった。 欲望と羞恥、理性とのせめぎ合いの果て、少女が次にとった行動は……とても褒められたものではないが、他にどうしようもないと言える行動だった。 工場の事務所に繋がる内線を手に取った彼女は、受話器に向かってこう言い放った。 「あ、あの、ごめんなさい……!守衛室の富野です……!あの、その……お、おといれ、行ってもいいですか……?わたし、その、ずっと行けてなくて、もう限界で、だから……!」 「だからその……あ、だめっ……!だめ、出ちゃ……!」 しかしその電話の最中も抜け目なく、尿意は彼女の水門目掛けて押し寄せてくる。しかも今は受話器を持つため、片手が塞がっているのでチャンスですらあった。 それは言うまでもなく、少女にとっては望まぬ事態である。 またしても下着とズボンに刻まれた失敗の跡。その焦りはおどおどとした彼女の要求を一変させた。 「あっ、あのごめんなさ、もうほんとにっ……!でるっ、でちゃうん、ですっ……!おしっこ、もう限界でっ、だからっ……!おといれ、おしっこっ、させてくださいぃ!おねがいします!おねがいしますぅぅぅっ……!!」 「え、あ、えっと……ど、どうぞ……?」 電話越しに小さく聞こえたその言葉は、ようやく貰えた許しの言葉だった。 少女の剣幕に押され、深く考えず放たれた言葉であっても、これまでずっと「トイレに行けない」ことばかり突きつけられてきた少女に、ようやく与えられた許しなのだ。 戸締りなどする余力もなく、少女はがくがくと震える脚で工場のトイレに向かって歩き始めた。 彼女のいる守衛室は屋外にあり、従業員の通る正門でありトラックの通る搬入口でもあるところを見張っている。そこからトイレに行くには、工場の中に入らなければならない。 そこまで距離があるわけではなく、普通なら1分すらかからないような距離だ。しかし今の彼女にとっては、それすらも遠いものだった。 産まれたばかりの小鹿のような足腰で、満杯の水瓶を運ぶような、ささやかな振動すら許されない旅路を往かねばならない。 太腿の間にきつく両手を挟み込み、痙攣する出口を指先で押さえ込む。 「ぉ……しっこ……おしっこ……おしっこ……!」 何度も立ち止まってしまいながら、何度も挫けそうになりながら、それでも少女は前に向かって進んでいく。 普通に歩けば1分とかからない場所に、通常の5倍もの時間をかけて、ようやく少女はたどり着いた。 薄いピンクのタイルに彩られたそこは、まるで楽園のようにも思えた。やっとトイレに着いた。という少女の安心が生んだ綻びは、床を叩きつける水流となって表れる。 ぶしうぅっ!!びゅじゅじゅじゅうぅっっ!! 「ぃ……ぎ、ぐうぅぅ……!」 (ま……だ……!まだ、もう……ちょっと……だからぁ……っ!) もはや吸水の役目を一切果たせなくなった下着とズボンを貫く黄色い水流。本来は便器に放たれるべきものが、先走ってトイレの床に放たれる。 今にも力尽きそうな水門に最後の力を込めて、少女はトイレのドアに突撃する。 寄りかかるようにして扉を開き、鍵をかける暇もなくベルトに手をかけたその瞬間、予期せぬ事態が起きた。 工場中に、大きなベルの音が鳴り響いたのだ。 ジリリリリリリリ…… 「ぇ……」 その音を聞いた少女の顔は蒼白となった。この音は警備に携わる者なら誰もが頭に叩き込んでいる音。非常の事態を報せる警報の音。 火災報知器の発する警報の音だった。 それが示す意味は明白だ。この工場のどこかで、火災が起きているのだ。工場という性質上、可燃性の薬品も多く用いられている。迅速な避難と消化を行わなければ、最悪の場合大爆発も起こりうる。 そんな中で警備員がトイレ休憩など、していいはずがない。 「な、んで、どうして、おしっこ、させてくれないの……!」 余りにもひどい仕打ちに、少女は誰が聞くともなく悪態をつく。これまでずっと我慢してきて、ようやくできると思ったのに……と。 『うわあああーー!!!火事だ!!火が出てるぞおーーー!!!』 「…………っ!!」 いっそこのまま、火事など放っておいてしてしまおうか、などと考えていた少女の耳に、逃げ惑う人々の悲鳴が聞こえてきた。それは紛れもなく、警備員が護るべきものの悲鳴である。 それを聞いた時、少女の折れかけた心に活が入った。 ここで自分が頑張らなければ、ここで働く多くの人達の命が危ない。 自分の頑張りで救える命がある。そう考えた時、少女の頭から尿意のことは消え失せた。 まさしく火事場の力とでも言うかのように、さっきまで震えていた両脚で力強く廊下を駆けていく。 まず携帯で消防隊に出動を要請し、次に行うのが避難誘導だ。 頭に叩き込んだ経路を辿り、各フロアごとにいる人々に声を張り上げて避難を呼びかける。 ぱんぱんに張ったお腹にたくさんの空気を取り込み、悲鳴を挙げる人々に負けないくらいの大きな声を張り上げる。 「皆さん落ち着いてください!!落ち着いて、私の指示に従って避難してください!!」 各フロアの人々を非常階段に誘導し、迅速に工場から外に出させる。 炎が上がっているフロアから優先的に避難を進め、炎に近いところから順に避難させる。 適切かつ迅速な対応により、出火から三十分もしないうちに全従業員の避難が完了した。 工場の外の敷地にある避難所に人々を逃がすと、次にするべきは非常車輌の誘導だ。 誘導棒を振り上げ、消火栓のあるところに案内する。 火災対応のプロである消防隊が、少しでも活動しやすいようにするのも警備員の仕事なのだ。 しかし消火活動が始まってなお炎の勢いは強く、下手をすれば爆発の恐れさえあった。 もし薬品類に引火し、工場そのものが吹き飛ぶほどの爆発が起これば、外にあるこの避難所も安全とは言い切れないだろう。 そこで消防隊長から指示を受けた。この工場から少し離れたところにある広場の方に人々を避難させるように、と。 「皆さん、ゆっくりとで構いません!私に着いてきてください!」 人それぞれ歩く速さは異なり、無理に速く歩かせて転んだりしないよう、可能な限りゆっくりと進んでいく。これもまた避難対応のひとつである。 ゆっくり三十分ほどかけて、一同は近くの広場へと避難した。 工場の方を見ると、真っ赤な炎が高く舞い上がっているのが見えた。 だが、これだけ離れれば例え爆発が起きても巻き込まれはしないだろう。 火災が起きてからおよそ2時間。ようやく一息つける状態にすることができた。 それは警備員として、全員を導いた少女も同じことで、深く安堵のため息をついた。 「…………あ」 だがそれが、彼女にかかった魔法を解いてしまった。 これまでは危急の事態に際し、奇跡的な力を発揮した少女の肉体にかかった魔法。 限界を超えたさらに先の世界で頑張り続けた少女に起きた奇跡の魔法が、解けてしまった。 ぶじゅびっ!びしゅぅぶしゅじゅじゅじゅううっ!!ぶじいぃっ、じゅ、じゅじゅっ……! 「いぎっ……!ぃ、うぎ、ぎううぅ……!」 火事が起きる前ですら限界を迎えていたのに、そこからさらに2時間も避難のため駆け回っていた。限界のさらに先の先まで酷使された少女の身体に、もう頑張れるところなどひとつも残っているはずはなくて。 最後に残った少女の意思が、出口にあらん限りの力を込めても、もうそこがぴくぴくと痙攣するだけで言うことを聞いてくれない。 『え、え!?なんだ、どうしたの!』 『あ、あの子、おしっこ漏らしてる!?』 避難のために集まった工場の全従業員がいる前で、言い逃れのしようもなく下半身をずぶ濡れにしている自分に耐えきれなくて、せめて少しでも離れた場所で、と茂みに向かおうとする。 けれど疲れ果てた少女の両脚はもうまともに動いてはくれず、地面に向かって頭から崩れ落ちてしまう。 くい込ませた指の隙間から飛沫を散らすお尻を天に向けた、四つん這いのなり損ないのような体勢。 その転んだ衝撃が最期のとどめとなり、屈辱の極みのような体勢のまま、少女は力尽きた。 ぶじゅじゅびしゅじゅじゅううっっ!!びしゅぅぶじゅばばばばあああぁぁーーー!! 『う、うわあああっ!?』 『ほ、ほんとに漏らしたあ!?』 「ち、が……!これっ、は、その……!」 びちゃびちゃばちゃ!!ぶじゅうっ!びしょぉおぶしゅういいいいぃぃいいーーー!! 全ての従業員が見ている前で、突き上げたお尻から凄まじい勢いの飛沫を噴き上げる。 彼女の近くにいた人々が一斉に遠ざかるが、その離れた位置にすら飛び散るほどの水圧。 抑えた手の隙間から辺りに飛び散るそれは、まるで消火栓を開きでもしたかというほどの凄まじい代物だった。 全開となった少女のバルブから放たれる黄金の消火水は、まだまだ勢いが弱まる様子を見せない。 じゅじゅじゅううっ!!ぶしょおおおぉぉぉーーーー!!! 「は、ぁ……!ふぁはあぁ……!」 そしてその源である少女は、この極限の恥辱の中で、屈辱と恍惚の入り交じる表情を浮かべていた。 人前でおしっこを漏らすという最悪の屈辱の中でも、15時間もの間耐え続けたものを放出できる快感は、確かに少女を満たしていた。 自分を見つめる人々の視線が突き刺さる中で、心が恥辱に塗れていく中で、少女はたとえ僅かな時間だけでも快感に逃避することを選んだのだ。 お腹の容れ物がみるみる萎んでいく感覚、出口を震わす極太水流の感覚、下半身を満たす暖かな感覚、それらに身を委ねて。 そして少女は、出口を押さえつけることを放棄した。邪魔するもののなくなった水流が、ズボンを貫き土の地面を抉っていく。 ぶしょうううぅぅぅうううーーー!!!じゅぼぼぼぼぼ……!! 「あ……!はあぁ……!」 じょぼじょぼと水たまりを大きく広げながら、少女は恍惚に浸る。 例え僅かな時間でも、頑張り続けた自分へのご褒美を少しも逃さないように。 しゅうぅっ、ぷしゅっ、しゅろろろ…… しかし、そんな至福のひとときもいつかは終わりが来る。 膀胱の中身が空になるにつれて勢いと快感は弱まり、完全に出し切る頃に残ったのは、取り返しのつかない失敗の痕跡だった。 この場にいる数十人の人間に対し、尻を上げた無様な体勢で、たっぷり3分にも渡る大失禁を見せつけたのだ。 年頃の少女にとって最悪の屈辱であり、汚いものをみんなに見せつけてしまった罪悪感が少女の心を無惨に焼き尽くす。 「あ……う……あ、の……みなさん……あの……!」 社会人にもなって、子どもでもしないような大失態を、こんな大勢の前で。 もし自分が、目の前でされる側だったらどう思うだろう。きっと汚いと思うだろう。 そんなことを、してしまった。 そんな自己嫌悪が渦を巻き、ぐちゃぐちゃになった少女の心は、とうとう砕けてしまった。 「……ごめん、なさいっ……!ごめんなさい……!ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい……!おしっこ、我慢できなくて、ごめんなさい……!」 人々の視線に耐えきれなくて、自分を嫌悪する気持ちに耐えきれなくて、少女はひたすら謝り続ける。 既にずたずたの心を、さらに自分の手で掻き毟るように。傷ついた心の痛みを、さらに痛めつけて麻痺させようとでもするように、少女は自分をひたすらに卑下する。 そんな少女に向かって、1人の女性が歩み寄ってきた。その女性はとてもいかめしい顔つきをした中年の女性で、きつい性格をイメージさせる外見をしていた その女性が、おしっこを撒き散らした少女の元につかつかと歩み寄る。 「ご、ごめんなさい……!ほんとうに、ごめんなさぃ……!」 「………………」 無言で少女の前に佇む女性。その威圧感に少女が怯み、周りの人間もこの後の事態を想像して密かに恐怖する。 しかしこの女性は、少女の予想も周囲の予想も裏切って、太い腕でぎゅっと少女を抱きしめた。 「……えらいよ。そんなになってまで、よくがんばった」 「……え、あ、え……?」 「警備員さんが頑張ってくれたから、みんなこうして無事でいられるんだ。謝ることなんてないよ」 「で、も……!わたし……その……こんな……!」 「誰だって、そんな時はあるよ。けどあなたは、そんな時でもみんなの為に頑張ったんだ。胸を張っていいんだよ」 その女性は少女を抱きしめて、力強く響く声で励ましてくれたのだ。限界の尿意を抱えながらも、人々の為に我が身を犠牲にしてきた少女の頑張りを認めて。 その名前も知らない女性の優しさが、傷だらけの少女の心に染み渡っていく。 「う、うう……!ひぐっ、うう゛うぅ……!」 「よしよし……よくがんばった。もうなにも、気にしなくていいんだよ」 「う、うあああぁぁああん……!!ひっ……えぐっ……!うわああああああぁぁぁぁん……!」 少女は女性の胸で、ひたすら泣きじゃくった。これまでの疲れも、受けてきた悔しさも悲しみもすべて、このたくましい女性に叩きつけて。 強く優しい、まるで母のような女性に抱かれて、少女は気の済むまで泣き続けた。 後日、少女は会社で表彰されることとなった。それは言うまでもなく、火事での適切かつ勇敢な行動を受けてのことである。 その活躍は地域新聞にも掲載され、何十人もの命を救った少女は小さな英雄として讃えられることとなった。 当然ながら失禁のことは、当事者である従業員達と自分しか知らない。怪我の功名ではあるが、少女の頑張りは正当な評価を受けることができたのだった。

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