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人の資産と安全を守る。地味ながら非常に重要な職務に就く者たちがいる。 工事現場で、工場で、銀行で、いつ訪れるかわからない不届き者に目を光らせる者たちがいる。 決して目立つことはないが、あらゆる場面で欠かすことのできない存在、警備員。 これはそんな仕事を始めてから1ヶ月にも満たない新人警備員の、秘密の修羅場のお話である。 (ど、どう……しよう……!) 郊外の工場で、出入管理に勤しむ若い少女。富野まもり。 高校を卒業してすぐ仕事を始めた、まだ10代の少女である。 本社での研修を終え、実地研修を始めてから僅か2週間の新人だ。 従業員の安全と財産を守るべき者としてあるまじき不安な表情を浮かべる彼女だが、それにはとある事情があった。 現在この現場にいるのは、まだ業務に慣れていない彼女ひとりなのだ。まだ研修中の身である彼女には、本来なら先任が付いているはずなのだが今日はそれが体調不良で不在なのだ。 しかしそれが、不安な表情をしている理由のすべてというわけではない。業務そのものは比較的単純な部類であり、2週間のうちにある程度は把握していて、後は慣れるだけという段階だからだ。 彼女を不安にさせる理由は、今日に限って起きたある不運と、それに付随する生理現象の限界にあった。 (お、おトイレ……行きたい……!) 彼女が追い詰められているのには、いくつかの理由が絡み合った事情がある。 施設を見張る警備員には詰所のようなものがあり、監視カメラの映像など業務に必要なもののほか、洗面所やトイレなど衛生的に必要なものも備えつけられていた。 しかし今日は、水道管の故障でそれが使えなくなっていたのだ。 必然的に工場内のトイレを使うしかないが、ここで警備員という仕事の性質が壁となる。警備員の職務とは、大雑把に言えば「見張る」ことにある。常に目を光らせていることで、不審者を寄せつけないことが最も重要なことであり、離席するというのは基本的にやってはいけないことなのだ。 もしも離席しなければいけない時があれば、その時は自分の代わりに見張ってくれる人を用意しなければならない。なので警備という仕事は、2人以上で現場に立つことが基本となる。 しかし今日は相方でもある先任が不在のため一人きりであり、離席ができないのだ。 昨今の人手不足により補充もままならず、所謂ワンオペの状態に置かれているのである。 (交代ができなくて、ここのおトイレが壊れてたらどうしようも……!) まだ詰所内のトイレであれば問題はないが、工場のトイレとなると移動に時間がかかるし、混雑などしていればそれだけ戻るのが遅くなり、不審者の侵入リスクも跳ね上がる。生真面目な性格の彼女にとって、絶対に採ることのできない選択肢だった。 (が、我慢しなくちゃ……!) 8時間のシフトのうち、現在消化しているのが3時間ほど。まだまだ先は長く……少女の戦いは続く。 _________ キーンコーンカーンコーン…… (あ、お昼……) 工場中に、学校を模したチャイムの音が響く。昼休みを報せるその音の中でも、彼女に安息は許されない。 というのも、不審者には休憩時間など存在しないためだ。 本来の2人体制であれば順番に休憩が取れるのだが今日はそれができず、有給という形ではあるが彼女の休憩時間は剥奪されていたのだ。 無論食事くらいは許されるが、それもカロリーメイトのように簡単なものに限られる。今日だけということでなければ立派な過重労働である。 しかしそんなことは彼女にとって些細であり、もっと切羽詰まった事情に苛まれていた。 (休憩……!い、いいなぁ……私もおトイレ、行きたい……!) 何度かこの目で見たことのある、休憩時間のトイレ。作業時間の間に募った欲求を思い切り解放するため、多くの人が押し寄せる屈指の人気スポット。 しかしそれは、今の彼女には無縁の場所であった。どれほど心でそれを求めていようとも。 彼女が仕事を始めてから4時間。そろそろお腹の張りが自覚できるほどになり、じんじんと響く尿意も強まり続けていた。 解放の許されない欲求を抱え、先の見えない戦いを続けていく。 _________ 休憩が空けてからおよそ30分。この辺りで警備の仕事に動きが出てくる。 警備の仕事は、見張るということにある。それは詰所から出入り口を見るだけでなく、工場の敷地内を見回ることも含まれる。 当然ながらその間は詰所が無防備となるが、この巡回の間だけは門を閉めることが特例として許されていた。彼女の勤める警備会社と工場との間で交わされた特例事項である。 もちろん暇な時間を選んでの事ではあるが、車も人も全ての通り道である門を閉ざしてしまえばほぼ確実に安全な状態とすることができる。 当然ながら長時間このままというわけにはいかず、巡回に充てられた時間の中で全てを廻りきる必要がある。残された時間はそう多くない。 (い、行こう……!) きゅ、と太ももを擦り合わせて、覚束無い足取りで敷地へと繰り出していった。 たぽたぽと揺れる重しを抱えて、震える脚に力を込めて。 「A地点、問題なし……!つ、つぎは……!」 ふつふつと煮え立つ尿意を抱え、敷地内のチェックポイントを見回っていく。落ち着きなくもぞもぞと下半身を揺らす様子からは、頼もしさといったものは微塵も感じられない。 しかしそれも仕方のないことである。朝起きた後のトイレから1度も用を足していないのだから。 朝食、出勤を経ての勤務開始からすでに6時間が経っているのだ。最後のトイレから換算すれば8時間近くも排泄を許されず溜まり続けた欲求は、そろそろ限界を迎えようとしていた。 「んはあぁっ……!」 (だ、だめ、え……!お、おトイレ行きたい……!行きたいよぉ……!) 高まる尿意に耐えかね、その場に立ち止まって腰を揺らしてしまう。恥ずかしさに顔から火を吹いてしまいそうだが、こうしなければもっと恥ずかしい事態を招きかねない。それほど追い詰められていた。 ここに至ってもなお、彼女に解放は許されない。工場のトイレは、彼女にとって使ってはいけないものだからだ。 工場の従業員にとってみれば、詰所のトイレが壊れたことなど知る由もない。そこで警備員の彼女が工場のトイレを使っていれば、サボりなどとあらぬ噂を立てられかねない。 それでクレームになど発展しようものなら、会社に打撃を与えかねない。それだけは避けたかった。 (も、戻るしか……ないよね……) どんなに望もうと彼女に排泄は許されない。辛い現実を突きつけられながら、詰所へと戻っていくのだった。 次のシフトの人が来て、交代するまであと2時間半。尿意を抱えて震える少女の戦いは佳境に入っていた。 「こ、こんにちは……っ!こ、こちらの用紙にご記入をおねがいしますっ……」 震える手で用紙を差し出し、もう片方の手で見えないように股間を抑える。 カウンターで下半身を隠すという、もしあとちょっとでも足が長かったらできなくなる荒業である。 人前であってもこのような動作を止められなくなるほど、彼女は限界だった。 仕事を始めてから休憩含めて8時間。最後にトイレを済ませてから9時間もの間に溜まった尿意が深刻に少女の理性を蝕んでいく。 (おしっこ……おしっこぉ……!) 「ご、ご記入ありがとうございます……おしっ……お、押田さまですね!アポの確認をしますので、お待ちください!」 危うく違う言葉を口走りそうになるのを堪えて、受話器をとって従業員にアポイントの確認をする。見えないところでタンタンとつま先を叩きつけながら、少女は職務と尿意の板挟みを耐え続ける。 来客が去るなり、慌てて椅子へと座り出口を押さえつける。自分の体重と両手の力を全力で込めて、今にも吹き出しそうな尿意に抵抗する。 (あ、と……どのく……らい……?もう……がまん……できないよぉ……!) 縋るように時計を見ると、時刻は15:30を刺していた。朝の8:00から休憩込で9時間勤務である彼女の残り時間は、あと90分。 もうすでに危険水域に至っている彼女にとって、それは余りにも長すぎる時間だった。 まだ当分、トイレに行けない。もう今すぐにでも漏らしてしまいそうなのに、まだ行けない。 朝から尿意に耐えることおよそ9時間。いつもはどんなに長くとも5時間程度の我慢しか経験したことのない少女にとって、未知の領域の我慢があと90分も続く。その事実が、少女の心をへし折った。 「も……むり……!」 もう無理だ。我慢できない。絶望しきった彼女の導き出した結論は……詰所の中ですることだった。 ついこの間まで高校生だった彼女にこの絶望は余りにも重すぎ、正常な判断力を奪っていた。普通なら考えもしない、詰所の片隅で放尿するという選択肢に至らせるほどに。 ふらふらとした足取りで隅へと向かっていき、放出の快感に思いを馳せる。 ガタタンッ、ドサドサッ…… その時、ふらついた拍子にノートを落としてしまい、落とした時に開かれたページがふと目に入った。そこに書かれていたのは彼女自身が記した、教えられたことを噛み砕いて作った自分なりの心得だった。 持ち場を離れない! 詰所はクライアントさんのもの。絶対に汚さない! それは、混乱の極みにあった彼女の心に光を取り戻させた。これから自分のしようとしていることがどういうことなのかをはっきりと認識したのだ。 (おしっこしたい!おしっこしたいよぉ!!) (もうもれちゃうよ!早くそこでしよ?ね?) 「だ、だめ……だよ……!こんなとこで、しちゃ、だめ……だからっ……!」 ズボンを降ろしてしまう前に踏みとどまった彼女の内面で、欲望と理性とがぶつかり合う。 心の中で喚き立てる自分の欲望。それと彼女は真っ正面から向き合い、そして結論を出した。 それは1番辛いけれど、恐らく1番ベストな選択。 「が、我慢……する……!」 最後のトイレから9時間。少女の最後の闘いが始まった。 動くたびギリギリと軋む水風船を抱えて、ひびだらけの水門を抑えつけて、暴走寸前の排泄欲に抗う少女の身体が危険信号を突きつける。 ぶしゅうぅっ!しょろろろ…… 「ふうぅ……!が、まん……っ!がま、んん……!」 掃除用の雑巾を敷いた椅子の上で、少女は最後の我慢を繰り広げる。 次の人も座る椅子を汚すまいとした涙ぐましい行動であるが、その雑巾も既に壊滅的な被害を被っていた。 下着もズボンも貫通し、雑巾にまで染みを広げる少女の熱水。朝からずっと解放をせがんでいたそれが、お腹の中で暴れ狂う。 (がまん……がまん、がまんがまんがまん、がまんしなきゃ……!ぜったい、よごしちゃだめだからぁっ……!) 詰所を汚してはいけない。警備員として、恥じない行いをしなくてはいけない。その一心で少女は極限の尿意を耐え続ける。 来客がないのをいい事に少女は思い切り出口を押さえつけ、怒涛の如く殺到する激流に抗っていた。 しかし幸運はそう長くは続かなかった。仕事中である以上、いずれは来客がやって来るのだから。 大きなエンジン音と共に、搬入業者のトラックがやって来たのだ。 大きなトラックが詰所の前に止められ、運転手が限界の死闘を繰り広げる少女の元へと近寄ってくる。今のまま、股間を抑えた姿のままではいられない。 「よ、よーし、ごきにゅう、おねがいっ……!し、しますぅ……!」 (でちゃう、でちゃうでちゃうもれちゃうおしっこでちゃうよぉぉ!!) 両手を股間から離し、内心で悲鳴を挙げながら必要な書類を手渡す。 慣れた業者が書類を書く時間など数十秒にも満たないが、それでも今の彼女にとっては地獄の苦しみだった。 カウンターの奥できつくきつく両脚を擦り合わせ、ふりふりと腰を左右に振りたくる。およそ思春期の少女がしてはいけないような動きをしながら、暴発寸前の尿意を押さえつける。 ぷしゅうっ、しゅう、ぶじゅうぅっ (もうだめぇでちゃうっ!でちゃうよもれちゃうよおぉ!おねがいだからはやくいってえええぇ!!) ひくひくひく、きゅうううんっ 「あっ……!」 限界を超えた出口がひくつき、とめどもなく熱水を振りまく。誰が見てもお漏らしと言うであろう悲惨な状態。 この極限状態の中で唯一耐え続けていた心も、身体の限界に伴ってもう折れてしまいそうだった。 「はいよお嬢ちゃん、入場証貰えるかい!」 「はっ、はい!どうぞ!」 そんな時、ドライバーの声が少女を現実へと引き戻した。慌てて入場証を渡し、トラックへと戻っていく運転手の背後で、また再び股間を押さえつけた。 なんとかすんでのところで、決壊だけは免れたのだ。床とズボンに甚大な被害は出したものの、床についてはまだ拭き掃除をすれば間に合うレベルである。 ズボンについては制服のため、帰宅時には違う服を着ればいい。まだなんとかなる望みはあった。 (ほんとにもう……だめかと思った……) 辛うじて決壊を堪えたものの、彼女の勤務時間はまだ60分も残っている。まだまだ先は長い。 _________ 勤務時間の残りが30分を切ると、最後の仕事としてやるべき事が出てくる。 その日一日の警備で異常がなかったことを報告する日報と、次のシフトの人に引き継ぎ事項を伝えるノートの作成だ。 それをすることが一日の締めくくりとなるほどの重要な仕事であるが、今の彼女にペンを取ることは非常に困難な事であった。 (で、ちゃう……!出ちゃう、おしっこ……出ちゃうぅ……!) 両手で出口を押さえつけていなければすぐにでも吹き出してしまいそうなのに、少なくとも片方の手はペンを握っていなければならないのだ。 もうすでに満身の力を込めている水門に、更なる喝を入れなくてはならないのだ。 ぶじゅううぅっ!じょいっ、じゅいいいっ! 「~~~~~~っっっ!!?」 (おしっ……!とめ、とまっ……てぇ……!) 臨界を超えた分が噴き出し、座っている椅子ががたがたと揺れる。 全身に力が籠り、書いている途中の日報がくしゃくしゃになってしまう。 こうなると書き直すしかなく、せっかくの頑張りが水の泡となってしまう。 「お、しっこ……!おしっこ……おしっこ……!!」 けれどもう、彼女にはそんなことを考える余裕すらなくなっていた。視界のほとんどが白くぼやけ、口から無意識に恥ずかしい言葉を口走ってしまうほど、少女の尿意は限界だった。 現在時刻は16:45。残り時間があと15分を切ったところで、彼女にとって救いとなる出来事が起きた。 「おはようございまーす」 次のシフトの人が、15分前出勤でやって来たのだ。 警備の仕事は制服に着替える必要があるため、他の仕事より早く出勤することが多い。それが功を奏したのだ。 詰所に入ってきた中年の男性は、室内の異常な状況に目を丸くしていた。 「って、どしたのこれ!何があったの?」 「あ、あの、わたしもう……!その、あの……!お、おしっこ、してきていいですかっ……!?」 「あっ……う、うん!行っといで!そのまま出てくとまずいから、これ羽織って!」 「ありがと、ございます……!」 椅子に敷かれた雑巾、床の水溜まり、そして少女のズボンの惨状。それらに加えて、異性の前であるにも関わらず止められない前押さえが全てを物語っていた。 少女の口をついて出た「おしっこ」という言葉に増して尿意をありありと伝えるそれらが、男性に素早い判断を促した。 そして詰所を出た少女は、すぐさま近くにあったコンビニへと向かう。 勤務を終えた警備員はただの一般人であり、工場に入ることはここに至っても許されていない。だからこそ、少女は工場のトイレよりもずっと遠いコンビニへと向かわざるを得ないのだ。 両手で出口を押さえつける恥ずかしい姿を晒しながら、少女は命からがらコンビニへとたどり着く。 だがここでも、少女に試練が与えられることとなる。 「あ、あのごめんなさいっ……!お、おといれ貸して、くれませんかっ……!」 「え?あっ……えーと……ここ、お客様へのお手洗いの貸し出しはしていなくて……」 「え…………」 ズボンをぐしょぐしょに濡らし、腰を左右に振りたくる少女に突きつけられる現実。ここのトイレは使えないという、残酷すぎる事実だった。 「そ、そんなっ……!?あのわたし、ほんとにその、も、もれそうで……!た、たすけて、くださいぃ……!」 「そう言われても、従業員用のは……」 「なにもしませんからおねがいします!おみせのおといれっ貸してくださいぃ!も、もう……でちゃうぅ……!」 しかし限界をとうに超えている彼女にはそんな現実を受け容れることなどできようはずもなく、普段なら絶対に言わないであろう、わがままにも近いお願いごとを店員に懇願する。 そして店員もそのただ事でない様子を前に、このままでは危ないことを察知した。そして…… 「わ、わかりました!こっちです!」 震える少女の手を引き、走り出した。 店内にぽたぽたと水滴の痕を残しながら、少女は店のバックヤードへと連れられていく。 「頑張ってください!もう少しですから!」 「あと、ちょっと……!おしっこ……!」 震える脚で一歩ずつ踏み出しながら、理想郷へと近づいていく。 お腹の中で渦巻く水流をなだめながら、一歩、また一歩と。 トイレに入った時のため、予めズボンのベルトを緩めて解放に備える。 そしてトイレの目の前へとたどり着き、店員がその扉を開いてくれた。もう少女を邪魔するものは何も無い。 「あああ、あ……!」 トイレ入った瞬間、少女の心を安心が満たしていく。まだズボンを降ろしても、便座に座ってもいないのに、限界を超えた水門が、緩んでしまった。 ぶじゅうううぅっ!びしゅういいいっっ!! 「あっ!?だっ、でちゃ……!」 暴走を始めた少女の尿意。下着の中で水流が渦を巻く。 あまりの快感に腰が砕けそうになる中、少女は最後の力を両脚に込めて踏み出し、全開になった水門を便座へと叩きつけた。 びしゅううっ!しゅうっ! ぶしゅおおおおおおおおおおおおっっっ!じゅぼぼぼぼぼおおおーーーー!! 「ふぁっ……!?はあ、ああぁ……!」 (ちゃんと、ちゃんとできたぁ……!おしっこ、おといれでぇ……!おしっこできてるぅ……) 座る前から噴き出してしまったそれが床を濡らしてしまうも、なんとか「本流」はトイレの中へと解き放つことができた。 噴水か何かを思わせる爆音を響かせながら、少女は仕事の間ずっと溜め込んだ熱水を解き放つ。 その表情はとても満足感に満ち溢れたものだった。 バタンと、扉の閉まる音がするまでは。 「え、え……?わたし、開けっ放しに……?」 そう、慌てるあまりトイレの扉を閉め忘れていたのだ。 見かねた店員が扉を閉めるまで、少女の限界放尿の音はバックヤードどころか、店中にすら轟き渡っていたのだ。 『今の音どしたの?なんか水の音したけど』 『あ、えーと……水道閉め忘れてまして……』 『にしちゃ音がでかすぎたような……ま、いいや。気をつけてね』 トイレの外で店員の話す声が、恥ずかしい事実を伝えてくる。 (あ、ああぁ……!おと、聞かれたっ……!こんな凄い音……聞かれちゃった……!!そ、そうだ!音消ししなきゃ……!) 今更ながら少女は音消しをしていなかった事に気づき、慌ててトイレのレバーに手をかける。 じゃああああああああぁぁぁーーーー! じゅおおおおおおおお!!!じゅういいいいいぃぃぃぃーーーーーー!! しかし少女の放尿音はトイレの流れる音よりなお大きく、バックヤード中に轟音を響かせていた。 『え、この音マジで大丈夫?どっか水浸しになってない?』 『いや大丈夫です!ほんとなんでもないんで!』 外から聞こえる声が、少女の音を聞かれていることとその音の大きさを物語っていた。少女の顔が、茹で上がったように紅く染まっていく。 (も、もうやだぁ……!!早く終わってよぉ……!) その少女の想いと裏腹に耐え続けてきたおしっこはまるで止まる様子を見せず、トイレの音消しが終わってもなお放出し続けていた。 結局少女の放尿が終わるまで3度の音消しを行い、1分半もかかったのだった。 「あの、ありがとう……ございました……」 「あ、はい……大丈夫でした?」 事が終わると店員が、少女の零した水溜まりの後始末をしてくれていた。 自分の排泄物を他人に掃除されるということに抵抗はあったが、店員が「客に掃除させてるところ見られたら店長に殺される」というので任せざるを得なかったのである。 恥ずかしさと罪悪感に苛まれながら、少女は着替えるため詰所へと戻っていく。その後ろ姿を見ている店員が、熱い視線を注いでいるのに気づかずに。 (あの子、あんな身体にこんな溜めてたんだよな……音凄かったし……) (俺、こんな趣味あったっけかな……) 1人の青年が新たな趣味に目覚める中、少女は同僚の待つ詰所に戻っていた。 「おお、おかえりー!大丈夫だった?」 「は、はい、なんとか……あの、ありがとうございます……!」 「いいって。それより早く着替えておいで。風邪ひいちゃいけないからさ」 いつの間にか詰所の中も綺麗になっており、少女は同僚と店員の男性の優しさに安心しながら普段着へと着替える。 「まもりちゃん、着替えの途中だと思うからそのまま聞いててね。警備の仕事は確かに色々と制約も多いしクレームもあるけど、会社がその分きちっと守ってくれるんだよ」 「だからトイレとかも、気にせずに行っていいからね。それで不審者が入ったとかなっても、それはしょうがないことなんだから」 「……はい、ありがとうございます」 「じゃ、日報とかは俺が書いとくから気にせずに帰っていいよ。お疲れ様ね」 こうして、警備員になって間もない少女の長い一日は終わりを迎えた。以後、彼女はその真面目さをそのままに適度な気の抜き方を覚え、素晴らしい警備員として1人前になっていくのであった。

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