バシャーモ♂がオシッコを我慢する小説 (Pixiv Fanbox)
Published:
2020-08-14 14:55:22
Edited:
2020-08-30 08:23:18
Imported:
2023-04
Content
昔に書いたものの再掲です。
本作品をもってfanboxの更新を終了とさせていただきます。
8/31ごろに全ての料金プランを撤廃し、以降すべての作品を一般公開としますので、宜しくお願い致します。
これまでご愛顧いただき、本当にありがとうございました。
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サメハダ岩の牙の隙間から覗く昼下がりの空はどこまでも青く透き通っていて、きっと今日の夕方は素敵な夕焼けが見られるだろう。
もしかしたらクラブ達があわを吐くあの景色も見られるかもしれない。
つやつやの宝石のように輝く大きなあわの中に、ごうごうと赤く燃える夕焼けの海岸線。
大切な友達であるカナンとボクとが探検隊を始めるきっかけになった場所であり、もう会えないと思っていたカナンともう一度会うことが出来たのも、そういえばあの場所だった。
最近は探検活動ばっかりでロクに休みも取れなかったし、たまには気分転換にあの場所に出かけてみるのもいいかもしれない。
勿論、カナンと二人で。
……なんて、ロマンチックな思考にいつまでも浸れていたら最高なんだけど、残念ながらそういう訳にはいかない。今さっきの思考は俗に言う「気を紛らわせている」という奴で、別にボクは本心からサメハダ岩の隙間から覗く空に思いを馳せていたわけでも、あの日の海岸線を思い出していたわけでもない。
むしろ、本心はもっと別のところ――ボクが今寄り掛かっている扉の向こう側。
――トイレに、あった。
「ねえカナン、まだかかりそう?」
扉の奥に籠っている筈の彼女の声は、時折漏れる苦しそうな呻きを除けば一切がなかった。扉の奥に籠ってかれこれ一時間が過ぎようとしているけれど、どうも進展はないらしい。
「出なさそうなら一旦変わってよ」
とんとん、と軽いノックを送る。
女の子をあんまり急かすことはしたくない。けれども、こっちだって余裕があるとはいえない状況なんだ。多分カナンの方もそれを分かっていたのだろう、申し訳なさに満ち満ちた声が扉の奥側から漏れてきた。
「ご、ごめん……。あと少しで出そうだから、もうちょっと……」
さっきもそう言ってたじゃん、って言葉が喉のギリギリまで出かかったけどすんでのところで留める。円満なパートナー関係を築くにあたって、こういう棘のある言葉は厳禁だとペラップに教えて貰ったのを思い出したからだ。
無遠慮なお子様アチャモだったころとはもう違って、ボクはもう立派なバシャーモで立派なオトナなんだから、当然大人っぽい振る舞いをしなきゃならない訳だ。自分だけの都合でカナンに気を遣わせるわけにはいかないのだ。
「ごめんね。……おしっこ大丈夫?」
「だ、大丈夫だよ! オレだってもう子供じゃないんだし、それぐらい我慢できるよ!」
足をソワソワさせながらも、ボクは焦りを気取られないよう努めて明るく返した。確かにオシッコはしたいけれども、別にもう我慢が出来ないってほどじゃない。カナンが出るまでにどれくらいかかるか分からないけれど、まさかこれから一時間も二時間も待たされるわけじゃないだろう。
それに、ボクは男の子だから、最悪お外で立ちションしちゃえばいい。
立派なオトナとしてはそんなはしたないことしたくないけど、お漏らしするよりは幾分かマシなはずだ。階段を上がったところにある崖の上は滅多に人が来ることもないし、最悪の場合そのへんでやっちゃおう。うん、それがいい。
そんな風に最悪なシミュレートを繰り広げていると、不思議な事にオシッコをしたい気分がすうっと消えていった。
……うん、これなら暫くは大丈夫なはずだ。なんだか全て終わったような気になって、ほっと胸を撫で下ろす。
焦っていたためか、単に今日の気温が暑いからか、ボクの身体は随分と汗をかいていた。不意に喉の渇きを覚えて、辺りを見回した。
部屋の隅に置かれている、今日の朝汲んできたばかりの水桶が目に入る。入り込んでくる風に揺れてきらきらと光る水面が、ボクを優しく誘っているように見えた。
「……ちょっとだけなら、平気だよね」
飲めばそれだけオシッコが近くなる事は分かっていた。けれど、かさかさに乾いたボクの喉は、今すぐにでも潤いを求めている。我慢など、出来る筈がなかった。
ゆっくりと嘴を付けて、若干温くなった桶の水をそろりそろりと呑み込んでいく。柔らかくて、優しい味だ。どうしてこうも、暑い日に飲む水は素晴らしいのだろう。なんだか、不思議な魔力があるというか。
そんな魔性の魅力に当てられて、ボクはついに桶の水を空にしてしまった。お腹の中でたぷたぷと揺れる水に当てられて、忘れかけていた筈のオシッコしたい気分がそろりそろりと姿を見せ始める。
「げ、おバカなことしちゃった……」
後先考えずに行動を起こしちゃうのは、どうもボクの悪い癖だ。お腹の下の方をぎゅっと抑えながら、強く反省した。
まあ、オシッコしたい気分がまたやって来たとしても、流石にそろそろカナンも席を空けてくれるだろう。扉の方を見ても相変わらず呻き声が聞こえてくるばかりだけれど、まさか、まさかこれから一時間や二時間も待たされるわけじゃないしね。
(うう……オシッコしたい……)
と、そういう訳で一時間経ったけれど、案の定というかなんというかカナンは扉の向こうで唸っていて、ボクはお腹の下の方でぐるぐると荒れ狂う尿意に耐えようと、必死に足を擦り合わせていた。
「か、カナン……まだぁ……?」
「ゴメン……もうちょっ……と!」
扉に寄り掛かって、半泣きになりながら懇願してもけんもほろろ。カナンが“べんぴ”とやらの病気であることは知っていたけれど、まさかこんなに時間が掛かるなんて思わなかった!
ぎゅっとオチンチンを握ったり、ぴょんぴょん飛び跳ねてみたりして気を紛らわせようとしても、ざぶざぶと押し寄せるオシッコの波は一向に引いてくれやしない。
さっきの最悪の、その先の最悪を想像して、身体をぶるりと震わせる。こんなオトナになってまでお漏らしなんて、絶対に嫌だ!
ここに居てもラチが明かない。そう判断したボクは、膀胱の水が溢れないようにそろりそろりと階段を上り出す。
オトナになってまでお外でオシッコなんて恥ずかしいったらありゃしないけど、もう、仕方ないよね?
「な、なにこれ……?」
サメハダ岩から出たボクを待っていたのは、いつもではありえないほどの人だかりの姿だった。足の踏み場もないほどにレジャーシートを敷いて、お弁当を食べながら皆が皆楽しそうに笑いあっている。ぱっと見お祭りのようだけど、いやいやトレジャータウンのお祭りはまだまだ先のはずだ。
「ヘイヘイ! ニライも白いホエルオーを見に来たのか!」
呆気にとられるボクに向けて、どこかで聞いたような威勢のいい声が飛んでくる。
「へ、ヘイガニ! こ、これってなんなの!?」
「ヘイ? ああ、なんかよ、真っ白なホエルオーがここから見えるーって話らしいぜ」
「なんでこんなに人が!」
「ヘイヘイ! わっかんねーけどよ、普通じゃ見れないらしいからみんな見たいんじゃないか?」
「うっそでしょ……」
辺りを見渡してみても、やっぱりどこもかしこも人だかりに埋め尽くされていた。
当然、隠れてこそっとオシッコが出来そうな場所などある筈もない。
「こ、困ったぞ……」
今から戻るにしても、カナンがトイレを開けている可能性はゼロに近い。かと言って、皆が見ている前でオシッコ出来るほど肝が据わっている訳がない。このまま諦めてお漏らしするしか道はないって事……?
いやいや、それだけは絶対に嫌だ。なんたってボクはもう、オトナなんだから!
「ごめんヘイガニ、ボ……オレ、ちょっと急ぐから!」
「ヘイ!? オイ、どうしたんだ!」
ざわつく人だかりを必死に掻き分けて、向かうはトレジャータウンの方角。でも目当てはトレジャータウンにはない。多分頼めばトイレぐらい貸してくれるだろうけど、世界を救った探検隊の一員であるボクが、オシッコが我慢できずにお店のトイレに駆け込んだなんてそんな恥ずかしい事実が広まるのは嫌だったからだ。
となるともう、行く場所は一つしかない。そう、プクリンのギルドだ。
「おや、ニライさーん! そんなに急いでどうしたんです?」
尿意を堪えて早足でトレジャータウンを駆けるボクの前に、二匹のカクレオンが立ち塞がる。片方は緑、もう片方は紫の身体を持つ彼らは、トレジャータウンきっての商売人、カクレオン兄弟だ。よりによって、一番会いたくない相手に会うとは。
「う、あ、いや、大丈夫だから。ボクちょっと急―-」
当然今の状況で彼らの長話に構っている暇なんてない。足早に二匹の間を抜けようとすると、物凄い力で後ろ髪を掴まれる。
「ほぎゃっ!」
「おや、ちょいと顔色が良くないようですねえ。大丈夫です?」
ぐいん、と擬音が出そうなほどの迫力で顔を寄せてきたのは、(たぶん)兄の方のカクレオンだった。
「体調がよろしくなさそうですねえ。と、そんなニライさんに丁度いいものがあるんですよ~!」
くわっ、と擬音が出そうなほどの眼力でこちらを見つめてくるのは、(きっと)弟の方のカクレオン。ボクの手に、何か硬いコップのようなものを握らせる。
「な、なあに、これ?」
コップに溜まる神秘的な色の液体を眺めて、物凄く嫌な予感を感じながらボクは恐る恐る問いただしてみた。
「よっくぞ聞いて下さいました! これはですねえ原材料はオレンの実なんですけどそこにクラボの果汁だとかモモンの葉っぱだとかヒトカゲの尻尾だとかまあとにかくいろいろ混ぜて飲みやすくしたんですよね何故かというと前々からお客様からオレンの実はまずいから食べにくいというお話を聞いていましてですねええワタクシ達も前々からそれは思っていたんですけど今回ようやく味の改良に完了しまして商品として売り出そうと思うんですけどまずはお客様からの反応を知りたいという事でですね誰がいいかなと思った時にニライさんの顔が浮かびましてですねなんせ貴方は舌バカとしてゆうめ」
「……ええと、えと、つまり?」
「「飲んでください!」」
「だよね! だと思った!」
黒々と渦巻く液体を眺める。只でさえオシッコしたいのに、こんなものを飲んでしまったらより行きたくなるに決まっている。
「あ、あの……ボクちょっと、急いでて」
「急ぎですか? だったらなお丁度いいです! なんせ液体にすることで戦闘中の服用も当然ながら探検中の水分栄養分補給に便利ですし急ぎの場合にもするする喉に入っていくので非常に便利と言いますかなんといいま」
狂ったように捲し立てる弟と、物凄い怪力で逃げることを許してくれない兄の視線に射竦められて、ボクは飲まずに切り抜ける道が無い事を理解した。むしろ、ここで足止めされるぐらいならさっさと飲み干してトイレに向かうべきかもしれない。
「わ、分かった……飲むよ」
観念して、コップに嘴を付ける。鼻を通る酸味の利いた匂いは、液体のどす黒さとは裏腹に悪くない感じだ。
「どうです? どうです?」
「ん……ちょっと待って……」
喉を通る酸味と、しっかりとした果実感のある甘味が入り混じる。ドロドロとしてるけど、舌触りは滑らかだ。
「おいしいね、これ」
「でっしょう! かなり研究を重ねましたからねえ。一つの欠点を除いて、かなり出来のいい自信作で御座います!」
「へ、へえ……そうなんだあ……」
お腹のあたりから急に尿意がこみ上げてきて、内股で身を捩りながらボクは相槌を打った。自信作とか欠点とかどうでもいいから、はやくオシッコにいかせてほしいんだけど!
「……感じます? 欠点の事なんですけども」
「な、なんのこと?」
「いえね、調合材料の兼ね合いで、ちょいとばかし副作用が出ましてですね。利尿効果、あるんですよ」
「り、りにょう……?」
「分かりやすく言うと、オシッコが近くなるって事なんですよ! いや~申し訳ないこればっかりはどうも」
弟のカクレオンがあっけらかんと言ってのけたその直後、膀胱のあたりがズンと重くなるのを感じた。ま、まずい……これ以上は本当にお漏らししちゃうよお! っていうかなんでそんなピンポイントでボクを苛めてくるんだよ!
「ご、ごめ……ボク本当に漏……じゃなくて急ぐから……」
「はい~。今後ともカクレオン商店をぜひご贔屓に~」
はずみで出ちゃわないよう半ば前屈みになりながら、重い足取りでカクレオン達の間を抜ける。
一歩足を進める度に、ボクのお腹の中で大量の水が揺れるのがはっきりと分かる。早く放水してしまえと、内側からぎゅうぎゅうとお腹を押し込んでいる。
「く、くそう……負けないぞ……。絶対お漏らしなんかしないんだからな……」
垂れてくる汗を拭う余裕すらなく、ボクはケンタロスのような足取りでゆっくりと進んでいく。
プクリンのギルドまで行けば、そこでトイレを貸してもらえば、ボクの勝ちだ……!
「はい? オシッコだってえ!?」
「ちょ、ペラップ! ……声がでかいよ!」
ペラップの素っ頓狂な大声に驚いたらしい探検隊たちの視線を背中に受けながら、ボクはペラップをたしなめた。どうしてこうも、この鳥にはデリカシーというものがないのだろうか。
「なんだい、自分とこの便所使えばいいじゃないか」
「まだカナンが入ってるんだもん……。べんぴ? だってさ」
「ああ、便秘ねえ。そうか、年頃の女の子には多いって聞くが、カナンもそうなのかい! わははこりゃ傑作だ!」
どうもこの鳥はデリカシーという概念をタマゴの殻の中に置き忘れてきたらしい。ぎゃあぎゃあと笑い続けるペラップに拳を振り下ろして黙らせる。恨めしそうに睨むけれど、残念ながら卒業した身であるボクに下せる罰なんざなにもないのだ。
「いちち……お前さんも乱暴になったねえ。んで、なんだっけ? 便所貸せって?」
ボクは何度も強く頷いた。
「お願い! もう漏れちゃいそうなの!」
もじもじと身を捩る。パンパンに膨れ上がる膀胱は限界を迎え悲鳴を上げていて、これ以上の我慢は危険だと嫌でも分からせてくる。
「うーむ……貸してやりたいのは山々なんだがな。悪い、無理なんだ」
そんな憔悴に駆られるボクとは対称に、下げた頭の上で両羽根を合わせるようにして、ペラップは淡々と詫びた。
……ちょっと待って、貸せない? 嘘でしょ!?
「む、無理ってどういうこと! おトイレぐらい貸しても良いじゃん!」
もはや他の探検隊に聞かれるとかそんなことはどうでも良くて、ボクは吹き出しそうになるオシッコを手で押さえながら叫んだ。
「お願いだよう……ぐすっ、おトイレ貸してよう……」
きゅうきゅうと痛む膀胱を必死に抑えて、もう漏らしてでもいいから楽になりたいという考えに必死に首を振って、やっとここまで来たというのに。だんだん訳が分からなくなってきて、目頭がじんわりと熱くなる。
「わわっ! 泣くんじゃないよ、仕方ないだろう! 親方様がセカイイチの芯を流して詰まらせちまったんだから!」
「なんなんだよもう! なんでそんなことするんだよ!」
「親方様のやる事に理由なんてある訳ないだろう! 諦めな!」
無茶苦茶な道理だったけど、よくよく考えたらその通りでもあった。
ともあれ、トイレが使えない以上こんな場所に居る意味はない。梯子を上ろうとする度に下半身の筋肉に力が入って漏らしそうになるけど、精神力でどうにか堪えて梯子を上り切る。一段昇る度にちょっと出て股間の毛が湿っているような気がするけれど、もう気にしている余裕なんてない!
ペラップに強引に一蹴されて、ボクは半ば追い出されるようにギルドを飛び出した。バカみたいに長い階段を膀胱を刺激しないようにそろりそろりと降りていく。足を上げる度に、階段に足が付く度に、伝わってくる微妙な振動が膀胱をたぷんたぷんと揺らしている。
「オシッコ……オシッコ、したい……」
既に青空が茜色に染まりつつある。反対にボクの顔色は夕焼け色から暗く青ざめた色になっているだろう。
頭の中はもう真っ白で、何処へ向かっているのかもわからない。いっそもうトイレじゃなくてもいい。はしたなくても、オトナじゃなくてもいいから、一刻も早くオシッコを出してしまいたい。
白いホエルオーを見た帰りなのか、トレジャータウンの方から流れてくる人だかりを避ける内に、いつの間にかボクの足は海岸線に差し掛かっていた。燃えるように赤く輝く海面に、空から飛んでくる白いあわの宝石が溶けては沈んでいく。
トレジャータウンの賑わいが嘘のように、海は静まり返っていた。さざめく波の音が響く度に、水の音に刺激されて尿意が高まってくる。
「くうぅ……で、でちゃだめえ……っ」
股間を抑える手に、じんわりと暖かな液体の感触が広がっていく。
人目がない事を確認して、ボクは砂浜の岩陰に駆け込んだ。やっと、やっとオシッコ出来る……!
ちょろっと漏れちゃったからか、じっとりと湿って固まった股間の毛を掻き分けておちんちんを取り出した。我慢のし過ぎか元気のなくなったおちんちんが冷たい海の風に揺られてぷるぷる震える度に、なんだかこっぱずかしいような、そうでもないような、とにかくへんてこな気分になってしまう。
お行儀よく両手を添えて、お腹の下の方にゆっくりと力を入れていく。
ぴくん、と小さなおちんちんが一瞬揺れて、そして――。
[newpage]
間に合ったバージョンと間に合わなかったバージョン、二つ用意しました。
需要に合わせてお好きなほうをどうぞ。
※間に合ったバージョン
ちょろっ、ちょろろろろろろ――
「あっ、はああああっ……まにあったあ…」
ごつごつとした岩の肌に沿ってオシッコが流れ、足元の砂浜をしっとりと黒く濡らしていく。あれだけ溜まっていた筈なのに、おちんちんの先っちょから出てくるオシッコの流れはとても緩やかで、とても気持ちがいい。
足元の砂が水を吸いきれなくなって、ちょっとずつ水溜りが出来始めてもオシッコはまだまだ止まらない。おちんちんに冷たい風が触れてひやりとする度にちょっとずつ焦りが消えていって、代わりにお外でおちんちんを晒してしまっているという事実の恥ずかしさに気が付いてしまった。
(ううっ……早く終わってよう。誰か来たら見られちゃうよう……)
こんな時間に砂浜に来る物好きなんてそうそういないだろうけど、万が一この状況を見られてしまったらと思うと、ただでさえ熱い顔がなおさら火照って熱くなる。
必死にお腹の下の方に力を込めるけれど、壊れた水差しのようにちょろちょろと水を出し続けるおちんちんは勢いを増すこともなければ流れを止めることもない。まさかオシッコを出したまま、人目につかないところまで動くなんてことも出来るわけがない。
夕陽よりも真っ赤になりながら、だらだらと流れ続けるオシッコを眺めていると、なんだか熱い塊のようなものが膀胱の奥底から湧き上がってくるような感じを覚えた。
(な、なに……これっ……!)
止まらない! 熱くて、大きくて……うわっ……!
じょぼ、じょぼぼぼっ。ぶしゃああああああああああああっ!!!
「あっ!! ひゃ、ひゃあああああああっ!!!」
熱いものがオチンチンの先まで行ったと思った瞬間、物凄い量のオシッコが滝のように噴き出した。
急激に襲ってきた我慢を開放する快感と、今まで味わったことのない開放感に脚がガクガクと震えだす。
「あはっっ……!! やっ、なにっ、これっ……!!!」
気持ちいい。それ以上の言葉が出てこない。
今まで張り詰めていた膀胱が解放された喜びに震え、全身に溜まったオシッコを一滴残らず絞り出す。
「あはあっ……はっ……はああ」
岩に掛かったオシッコが激しく跳ね返って足に掛かるけれど、そんなことはもうどうだって良かった。誰かに見られてたって構わない。今のボクにあるのは、ただ、オシッコが気持ちいいという感情だけ。
いつのまにか大きな水たまりになった足元に、なおも吹き出し続けるオシッコがじょぼじょぼと突き刺さって大きな水音を立てた。もわもわと湯気が立ち上って、体温を奪われた身体がぶるりと震える。
長い長い水しぶきが続いて、ようやく身体が軽くなって、それに伴ってオシッコの勢いは衰えてくる。
長くに渡ったオシッコにも、どうやらそろそろ終わりが来るらしい。
「はぁ……ふう……。きもちよかったあ……」
最後の一滴を絞り出して、ぴしゃっとおちんちんを振って水滴を飛ばす。
「……うわあ、やっちゃった」
焦りからも快感からも抜け出して、ようやく冷静な頭になって、自分のしでかしたことの大きさに気が付いた。
足元に広がるオシッコの池は、海の潮だまりと見間違われたって可笑しくないほど巨大だった。
「こんなに我慢してたんだ、ボク……」
オシッコ溜まりを見つめていると、不思議とおちんちんの辺りがきゅんと疼いた。
もう二度とあんなに我慢はしたくない筈なのに、どうしてか、今のオシッコの気持ち良さが忘れられない。
「気持ち良かった……オシッコ、出すの……」
オシッコを我慢している自分の事を思うと、隠れて立ちションをする自分の事を思うと、出した瞬間の自分の事を思うと、不思議と、胸の内がゾクゾクとする。
「……へんなの」
絶対に見られたくない筈なのに、もしもあの水溜りが誰かに見られたらと思うと、胸がドキドキする。
夕陽の中でポツンと一匹、そっとお腹の下を撫でた。
※間に合わなかったバージョン
「あっ! もしかしてポケダンズのニライさんですか!」
不意に背中の方から聞こえた子どもの声に、出かかっていたオシッコがぴたりと止まる。
後ろを振り向くと、どうやら海岸の洞窟の探検終わりらしいワニノコとヒコザルが立っていた。
「うわあ……! まさか本物に会えるなんて! 握手してください!! 大ファンですっ!」
どうやらノーマルランクの探検隊らしく、胸にバッジを付けたワニノコがキラキラとした眼つきでこちらへ飛び込んでくる。
慌てておちんちんをしまって、胸に飛び込んでくるワニノコを受け止める。
ぐっ。この子、意外に重い……! しかも、ちょうどお腹の辺りが刺激されて、股間の毛の湿り気がますます強くなる。
(ううう……漏れちゃう……)
まさか自分を慕ってくれる後輩の前で、オシッコしたいからやめてだなんて言うことも出来ず、ボクは愛想笑いと脂汗を浮かべながらワニノコを地面に下ろした。
「きゅ、急に飛びついてくるのはやめようか」
「わわっ! ごめんなさい! ワタシつい興奮しちゃって! だってまさかこんなところであの尊敬するニライさんに会えるなんて思わなくて!」
ぺらぺらと熱の入った口調で尊敬を捲し立てるワニノコは、まさか目の前の憧れの人がオシッコを我慢してもだえ苦しんでいるなんて思っちゃいないだろう。悪意がないからこそ、それがなにより一番やっかいだ。
「ええとええと……あ、あの! 強くなる秘訣ってなんですか!」
多分この子は、どれほど冷たくあしらっても納得いくまで齧りついてくるだろう。だったら、不本意極まりないけど、さっさと答えてしまって円満な形で追い返してしまった方が早い。
しかし、強くなる秘訣かあ。なんだろう。カナンやジュプトルに早く追いつきたいとは思ってたけど……うーん。
必死に考えてみようとしても、こみ上げてくる尿意が思考の邪魔をする。気付かれないように足をそわそわさせて凌いでるけど、もう、限界はすぐそこまで来ている。
「……お、オシッコ」
「へ?」
「え、あ、なんでもないよ!」
無意識の内に飛び出してしまった言葉は、波の音に遮られてワニノコには聞こえなかったらしい。危なかった。
「わ、分かんないけど……必死に頑張れば、いいんじゃないかな、うん」
きりきりと痛むお腹を紛らわせながら、ボクは何とか言葉を絞り出す。
自分でも答えになってないのは分かるけど、もうなりふり構ってられる状況じゃない!
「わあ、なるほどお! 有難うございました! で、次なんですけど――」
……ま、まだあるのか。もう、本当に、そろそろ限界なんだけど……っ。
「――という訳で、ニライさんはどう思いますか?」
えっ!? い、今なんて言った!? 我慢することに集中してて、全く聞いてなかった……。
どうしよう、困ったな。とりあえず適当に言っ――
ぷしゃっ。
「あっ」
ぷしゅう。しょわ、しょわわっ。
「やっ」
じょろっ。じょわわっ。じょわああああああああああっ。
「ふあっ」
慌てて股間を抑えても、もう遅い。おちんちんの辺りから暖かいものが広がって、体の力がどんどん抜けていく。
「ま、待ってっ! やだっ!」
懇願するように叫んでも、一度噴き出したオシッコは止まってくれない。全身の力が抜けきって、がくりと膝から崩れ落ちる。
おちんちんを握った手にオシッコが溢れて、足元の砂浜をべっとりと濡らした。目の前のワニノコの視線は、困惑するように、何が起こっているのか分からないといった様相で、じっとボクの股間に注がれている。
「!! ワニノコ、行くよっ」
「え、あ、ちょっと!」
全て察したのか、ヒコザルは強くワニノコの手を引いた。それはボクに対する思いやりなのかもしれないし、単純にワニノコに汚いものを見せたくないという意思の表れなのかもしれない。どっちにしろ、もうどうだっていい。
じょぼじょぼと噴き出し続けるオシッコを茫然と見つめながら、ボクは自分がお漏らしをしてしまったことを理解した。
じんわりと目頭が熱くなる。あんなに頑張って我慢してきたのに、これじゃあまるで、赤ん坊みたいじゃないか。
「う、ううっ……ぐすっ……うわああああああん!!!」
どうしようもなくなって、ボクは子どもみたいに泣き喚いた。頭の中は真っ白で、もうなにがなんだかわけがわからない。
「なんだよ……なんなんだよっ! みんなして! ボクをいじめてっ……!」
漏らしてしまったことに対する苛立ちと、恥ずかしさだけがあった。
「もうやだ……もうやだあ……」
馬鹿みたいに泣いて、泣いて、泣き喚いて。
気が付いたら、空はもう真っ暗になっていた。
「ニライ? そこにいるの?」
真っ暗闇の海岸の向こうから、今一番聞きたくて、一番聞きたくない声が聞こえてきた。
「カナン……」
「ニライ! どうしたの、こんなに遅くまで帰って来ない……なん、て……」
ゆっくりと近寄ってきた声は、ボクの周りに立ち込める臭いに気づいて全てを察したらしい。
エンペルトの冷たい肌が、汚れてしまったボクの身体を強く抱きしめた。
「あ、ああ……ごめんね。ごめんね、私が早く出なかったから、ごめんね……」
涙ぐみながらボクを抱きしめるカナンの姿を見て、自分が今、いかに情けない存在であったかが良く分かる。
あれだけ我慢したのに、結局我慢できずに漏らしてしまう。そんなこと、オトナなら、絶対にしない。
「ごめんね……ごめんね……」
結局ボクは、オトナになんかなれないんだ。