Home Artists Posts Import Register

Content

こんばんは。

今日は最近いくつかいただいたコメントの中から

作品制作時に考えていることや行っていることなど、小ネタとして

解説できそうな内容があったので、そちらをご紹介したいと思います。


その前に

これらに限らず、様々な技術や知識については

ある程度は理論を調べたうえで自分なりに解釈して反映したり、

イラストとしての見栄えと現実性を比べて取捨選択したりと、

考えながら行っているところもありますが、実際にはふわふわした状態で

好みだからやっている、というだけのものも多くあります。

振り返って体系化してみるとこういうことかな…というイメージでまとめている

部分も沢山ありますので、おそらく間違った点も出てくるはずです。

本記事内容ではじめてそれらに触れたという方は、改めてご自身で調査されることをおすすめします。


肌の色や色のチョイスについて

嬉しいことに、

tmtの描く薄暗いテイストの肌の色味が好みと言うコメントをいただきました。

また、どのように色を選択しているのか、塗っているのかというご意見もありましたので、できそうな範囲で解説してみたいと思います。


tmtはそもそも無彩色が好みなためか、昔から薄暗い印象のカラーに寄っていたように思います。

中には部分的に鮮やかな色を入れるなどして遊びを増やすこともありますが、

表現する天気やシチュエーション、色味などは基本的に暗めに統一されています。

そのため、周囲の環境に左右されて肌の色味も同じく無彩色に寄っています。


では一度、大まかに肌の色について分解して考えてみます。

※モニターなどの環境にもよりますが、

 tmtの画面では比較的普通の彩度な肌色に見えています。


ざっくりですがこんなイメージです。

まずはベースの色を置いて、そこから明暗それぞれの色を足しています。

今回は環境に左右されていない状態を表しているので、ひとまず自分が思う

平均的な肌色を取るか、印象がずれる場合は補正をかけるなどして無理やり

色をつくっても問題ないと思います。


では上から要素を見てみます。


 ハイライト・・・最も光が強く当たる箇所。

        物体の反射率によっては光源の色に近い色でディテールが飛ぶ。

 明るい面 ・・・光が当たっている面。

        光の影響を受けているので、その物体その物の色に

        光源の色を加えた明るい色になる。

 固有色  ・・・光の影響をある程度受けている箇所。一番固有色が出る。

        中間の色味という意味でハーフトーンと書いていますが、

        実際の意味合いについて簡単にまとめられなかったので

        こちらの記述については無視してください。

 稜線   ・・・明暗境界線とも。読んで字の如く、明部と暗部の境界線。

        目の錯覚や反射光の有無などもあるので、比較的暗くなる。

 反射光  ・・・陰面を省いていましたが陰面。その中であらゆる光源からの光が

        周囲に反射して跳ね返って少し明るくなる箇所。

        リムライトは後述。


分かりやすくわけるとこのように分解できるかと思います。

物体が光の影響を受けて、そこから反射した光が人の網膜を通すことで様々な要素を認識しています。

更に物体にはそれぞれ質感として、粗さや透明度といった要素があり

それらによって光の影響が更に変化していくわけです。


こちらは先ほどよりもより強い光が上部から当たっている図です。


光が強ければそれだけ陰影も強くなります。

先程は明暗部分がふんわりと変化していましたが、今回は光が強いため

コントラストがはっきりと出ています。

そして明部は全体的に光源の色に近い黄色味を帯び、陰面はオレンジに近くなりました。

なぜこうなるのかについて、SSSという記述とともに解説してみます。


SSS(サブサーフェススキャッタリング)

日本語では表面下散乱とも呼ばれます。

光が半透明な物体を透過して、内部で拡散して出ていくことで

内部の色をより強く認識して見られる状態のことをいいます。(多分)


例として今回は肌を描いていますが、肌というのはそもそもが半透明なため

光を吸収するとその一部が皮下で光が拡散して外に出ていきます。

おそらく人体に流れる血液の色がより濃く見えるようになり、皮膚を通して半透明に

うつるためこのような色になるのではないかなと考えています。


手を広げて後ろから携帯のライトなどを当てると分かりやすいと思います。

外側ほど薄くなるのでより色味が強く出るはずです。

絵で描くとこんなイメージです。


 リムライト・・・回り込みの光。

        主には逆光になる時に曲面に当たって見える光。

 SSS   ・・・外周や末端部など、より影響を受けやすい部分が

        光を内部で拡散して出る事により、内部の色が強く見える。

 陰面   ・・・光が当たっていない箇所。


というのが大まかな理論になるのですが、話を元に戻しますと

肌というのはそれだけ光の影響を強く受けやすいものであり、

そのため光源や周囲の環境、色によって見え方が大きく変わる部分なわけです。


ですので、tmtの描くキャラクターの多くは

周囲の環境が暗い・無彩色であることがほとんどであるため、

実際の肌色から彩度が低い色になっていることが多いです。


色選びの流れについて

ラフ段階ではかなりなんとなくでやっています。

ほとんど手癖であるため、これについては自分のスタイルに対しての慣れ

であることが一番正解に近いと思います。


それでも迷うや清書作業にうつるときには、

まず最初に固有色で塗りつぶします。

その後、周囲の環境(空でも地面でも、絵全体の空気感を表す色)をスポイトで取って、それを上から薄く塗っていきながら馴染ませています。

「その絵の空の色が空気や周囲の物体に反射して、肌に当たって混ざった」

というイメージです。

これは火山にいて、周りには溶岩が流れていて強く発光していたり

空は灰色であらわしていることから、馴染ませるためにこのようにしています。


こちらは自然的な光源がなく、薄暗い室内で部分的に明るい光源があるだけの環境

であることや、周囲の環境も無彩色なイメージで統一されていることで

彩度を抑えて表現しています。

こちらの絵については以前の記事で制作過程を紹介していますので是非そちらもご覧ください。

血掟テキサス 作業工程

こんにちは、tmtです。 今回はアークナイツのファンアート、 「血掟テキサス」のイラスト制作過程について記事にしてみます。 日数的には短く終わったのですが、描きこみなどこだわって制作したので 今回はお仕事でイラストを描く時と同様の過程で経過を残してみました。 使用ソフトはPhotoshop、Blenderです。 1.ラフ制...


ではそもそも周囲の環境ということで、背景の色選びはどうするのかという

話にもなってくると思うのですが、これについては現実的な理論を勉強して

いくほかないかもしれません…。

前回の記事で少し紹介したラフです。


こちらは夕暮れ時くらいをイメージしています。

日が沈んでいき、地平線に近くなるにつれ段々と黄色~赤色に変化していきます。

その影響で空の色もグラデーションを帯びて同様に赤く染まっていくため、

地平線に近いほど暖色で、画面上部にいくほど青に近くしています。

(遠景の山についてはかなり青いですが、仮置きしたまま変更していないだけです)

屋外の場合はこれさえ決めてしまえばあとは合わせて周囲を変化させられます。

画面に統一感が無いと感じる場合には、これらの環境光が考慮されておらず

固有色のままになっている、または適切な変化をしていない、などの理由から

個々のモチーフが浮いてしまっていることがほとんどだと思います。


地面も印象があうように赤土っぽくしつつ、キャラクターも仮置き段階で

かなり茶系にしてシルエットをとっています。

トラックについては汚れ具合などによっても結構かわってきそうなので、

まだどの程度変化させるか決めあぐねている段階です。


勿論資料も沢山見ています。

実際の写真もそうですし、印象の参考に他の作者さんのイラストも見ます。

ただそうするときに、表面だけなぞっていては細かな変化を反映できず

再現性を自分の中に確立できなければ知識としては身に付かないため、

並行して理論を勉強しながらつくっていきます。

また、前回の記事でtmtがやっていることとしてご紹介したような

フィルムスタディ(模写)のようなことも有用だと思います。

見本の色を再現するために色を作る練習にもなるので、似たシチュエーションを

表現する時に、どのように色を選択するのか思い出しながらできると思います。

勿論スポイトしていたら何も身に付かないので厳禁です。

レイヤーについて

tmtの作業レイヤーについての質問もいただいておりました。

ほとんどが通常レイヤーで構成されており、基本的には厚塗り的に描き進めているのか、途中でその他効果レイヤーを使用することもあるのか、といった内容です。


こちらについてはどちらのケースもありますね。

基本的にはパーツ毎に色分けを行い、通常レイヤーのままその中で厚塗り

という流れとして認識していただいて相違ありません。

パキっとした塗りが好きなので、境界線をわざとらしく出したい時などは

一律に変化をかけつつ輪郭を残せる乗算を使用する時もあります。

こんな感じで落ち影を置くときに使うこともあります。


乗算に限らず、その他の効果レイヤーについてもそうなのですが

基本的には理由がない限り使用することを意識的に避けています。


デジタルで絵を描き始めたばかりの一部の方が、「覆い焼き」などの

分かりやすい効果を多用しているのを見かけることがあります。

確かに最初のうちはそれっぽく見えますし、光の表現としては使いやすいものの

それっぽく見えるということから無暗に使用してしまうと、コントラストが極端に

ついてしまい、明暗のバランスが悪い結果を生んでしまうこともあります。

勿論、偶然にできた表現がかみ合ってデジタルだからこその良さが表れることもありますが、やはり稀であることがほとんどなため必要に応じて必要な機能を使うよう

にしています。


まとめ

という感じでした!!!

文章だとうまくまとめるのが難しいですね。


これらの勉強やその成果をあげるにあたってどのくらい時間がかかったのか

という質問がありました。

tmtは以前まで背景が本当に苦手でして、ずっとキャラクターのみを描いていたので

すが、こういった細かな知識については背景の勉強と共に会得していきました。

一応人生の中で少しでも背景要素を描いた経験というのも含めると、まっさらな状態からとは言えないのですが、きちんと背景を描くつもりでやりはじめたのは凡そ1年ほど前からになります。

1か月程度毎日8時間ほど、資料集めや描き方の動画視聴、理論の勉強などのインプットをして実践する、という流れをGoogle便りに行いまして、2か月くらい経った頃にはなんとなくの形はできるようになったかなと感じていたように思います。

とはいえ、フォトバッシュを利用しての表現であったことや、

それまでにキャラクターイラストを描く経験は積んでいたということ、

絵を描いていない期間が長くても絵を見てインプットするということは

長い間行っていたという理由もあり、本当にこれから全てをはじめるという場合は

同じ期間で成果を出すのは難しいと思います。


そこから更に時間が経って丁度1年経過したわけなのですが、

そのくらいでは分からないことの方が多いと感じているので、見る人から見ると

まだまだおかしな部分が沢山あるのだろうと思います。

自分自身も技術や知識がついてきたとしても、それ以上に見る目が肥えていくため

おそらくいつまで経ってもひたすら勉強を積み重ねるしかないですね。

精進します。


求められていた内容を解説できたかいささか不安ではありますが、

今回もここまで見てくださってありがとうございました。


Files

Comments

Anonymous

丁寧な解説ありがとうございます!! 恥ずかしながら今までは自分自身がどこにいるかもわからない、何から手を付けていいか分からない初心者だったんだなと知ることが出来たと同時に、先生の記事を読んでどれに手を出せばいいか、学んでいくべきことの方向性の手がかりになったように思います。 先生がファンボックスで解説される内容は、本当に丁寧で、初心者を突き放さず、かみ砕くように解説してくださるのでモチベを維持できますし、何より励みになります…!!  そして何よりいつも先生の美麗でシックでかっこいい絵に癒されております。これからも先生のご活躍を応援しております!!

tmt

紫さんご感想ありがとうございます。 ご丁寧にコメントいただけて嬉しく思います! 色々と悩みながらかいていましたので、分かり辛い部分なども多くあるかとは思いますが、お役に立てたようでしたら何よりです...! 今後もイラストや解説記事など、様々な投稿を行ってまいりますので楽しみにしてもらえると嬉しいです。