34.「海生VS武虎」地下格闘技編前編(34. "Kaisei VS Taketora" Underground Martial Arts Part 1) (Pixiv Fanbox)
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ジム生徒の皆さん、こんにちは。
久しぶりのSSバトルイラストです!
海生と武虎が地下格闘技場で闘います。
地下格闘技場なので、負けたら、めちゃくちゃひどい目に合うお約束もご用意する予定です。
今回は前編、熱いバトルを繰り広げる二人の勇姿をさっそくご覧ください!
1.「海生VS武虎」地下格闘技編前編(34. "Kaisei VS Taketora" Underground Martial Arts Part 1)
「おっしゃ、いっちょかましてやるぜ!」
グローブを胸元でパンパンと叩き合わせながらリングの上で闘志を見せる武虎。
地下格闘技場の挑戦者として入場した武虎はすでにウォーミングアップを終えて、体にはうっすらと汗が浮かんでいる。
そんな武虎の入場に、観客は声援を送る。
しかし「あいつ、オレのもろタイプの顔だぜ、ヤンキーが負けて犯されてひーひー言ってんの、見てえなあ」という類の声も、声援の中にちらほら交じっていた。
「はっ、オレが負けるわけねえじゃん」
武虎は、観客の自分に対する暴言も全く気にせず、対戦相手の登場する自分とは反対側のリングサイドに目を向けた。
勝てば賞金がたんまりともらえると聞いて参加した地下格闘技場。
しかし、負ければリングの上で相手に好き放題にいたぶられるという過酷なルールも同時に聞かされていた。
とはいえ武虎は、自分が勝つことしか想像をしていなかったため、すでに勝利した時の観客の拍手喝采と、賞金のことで頭がいっぱいになっていた。
「どんな奴が相手でも、オレが余裕でぶっ潰してやるぜ!」
そして、突然リング脇に巨大なスクリーンに画像が映し出されると、そこには武虎の対戦相手が表示されていた。
「はぁ!?なんであいつが、こんなところに!?」
武虎がスクリーンに目を奪われている最中に、対戦相手はリングに上がっていた。
「まさか次の対戦相手がお前だとはな、武虎」
声のする方を見ると、そこには同じ所属ジムの海生が、武虎を見据えながら静かに立っていた。
「マジかよ」と言い、驚く武虎。
地下格闘技場のルールは、基本的にキックボクシングのルールと似通っており、グローブをはめての殴り合い、そして蹴りも膝もありとなっている。
しかし、裏の格闘技らしいルールもあり、ダウン中は攻撃できないが、どちらかの選手が立ち上がれなくなるまで試合は続行されるという、かなり過激なルールにもなっている。
そして、立ち上がれなくなった選手は、そのまま勝者の選手に好き放題にいたぶられるのだ。いたぶり方は、勝者が決められ、敗者に拒否権は与えられない。
「つーかよー、同じ所属ジムのボクサー同士で試合を組むなんて、主催者側も悪趣味だよな」と小さくつぶやく海生。「けどよ武虎、悪いが、手を抜くつもりはないぜ」と言って、鋭い眼光を武虎に向けてきた。
「ははっ、いいぜ、せっかくだから本気で闘ってやるよ、海生」と武虎もひるむことなく、鋭いまなざしで海生を睨み返す。
「おまえ、オレを呼び捨てにすんなっていつも言っているだろう。それに、お前に勝ち目はねぜ、武虎」
「なんでだよ」
「だってお前、ジムでオレに勝てたことなんてねえだろう」
「ジムじゃ本気でなぐり合えねえじゃん。ここではオレ、気合でお前をぶっ殺すつもりだから、覚悟しろよな」
武虎の言葉を聞いて、あきれる海生。
「気合でどうにかなるもんじゃねえだろう。てかどうせお前さ、『勝ったら大金もらえるぞ』とか、スーツ着た怪しげなおっさんに言われて、疑うことなくノコノコとついてきたんだろう?」
それに対して、武虎は黙る。
「やっぱりそうなんだな。まあ、考えたらわかることだ。高校生と大学生で闘ったら、どうなるか想像つくだろうが。さしずめ、イキったヤンキーがリングの上でボコボコにされて、負けた後全身ひん剥かれて犯されるところまで想定して、声かけられてるんだよ、お前。危機感ねえよな。てかお前さ、負けたら対戦相手の言いなりってルール、わかってここに立ってんのか?」
「知ってるよ、そんなの。あと、負けたら賞金なしってことも聞いてる」
「だから、まんまとはめられたんだよお前。お前は負けて、犯されるだけの生贄に選ばれたってことだ。でも安心しろよ。お前が負けた後は、そうだな。猫みたいにニャーニャー鳴きながら、オレの足でもなめてもらおうかな。そんなところで許してやっても…」
そう、海生が言いかけているところで「ふざけんな!」と武虎が太い声で遮った。
「さっきからおとなしく聞いてりゃ、ふざけたこと言いやがって!海生、お前、年が上ってだけで、いつも偉そうにしてんじゃねえよ!いいか、言っとくが、オレが勝ったら、お前のことめちゃくちゃに犯してやるぜ。観客の前で、お前の尻の穴ずぶずぶにして、あんあん言わせてやるからな!」
「は?お前、オレに勝てるって…それ、マジで思ってんのか?」と海生は失笑する。
「ああ、すぐにでもお前のことぶっ倒してーって、うずうずしているところだぜ」といって、武虎はリング中央まで歩み寄り、拳を海生に突きつける。
すると、海生の表情から笑みが消える。
「わかった。じゃあ、容赦しねえよ。お前のこと、オレがぶち犯してやるぜ」といって、海生もリング中央に歩み寄り、武虎に顔を近づける。
「いいぜ、オレも遠慮なくぶっ潰していいってことだよな、海生」と言い、武虎は海生に顔を寄せると、海生も武虎に顔を近づけて、お互い鼻息が当たるほど近くでメンチを切りあう。
その時、会場のブザーがなった。
そして少しした後で、続けて試合開始のゴングが鳴り響いた。
その瞬間、開始と同時に二人は距離を詰めまま、激しいパンチの打ち合いが始まった。
ドスッ!
ドゴッ!
ガッ!
ドガッ、ゴッ!
ドゴッ!
ドゴッ…!
距離を確認することもなく、二人ともフルスロットルで目をぎらつかせながら殴り合う。
身体を打ち合う激しい音が、会場内に鳴り響く。
ガードよりも相手を殴る事優先の二人の激突に、開始直後から会場全体が大熱狂の歓声が沸き起こる。
「ぐっ!」
「うっ!」
「ぐあっ!」
「うおっ!」
「がっ!」
「ううっ!」
武虎と海生は共に強烈なパンチを喰らうごとに声を上げた。体は打撃の痣が広がり、顔面からは激しい汗と血が流れ、打ち合うことで飛び散っていく。
出だしの時点ですでにどちらかがダウンしていてもおかしくはない状態だが、打ち合いは止むことがなかった。
しかし「どちらが勝つかわからない」そう思っていた観客たちだったが、気が付くと試合は一方的なものへと変化していた。
海生のパンチばかりが武虎を打ち抜き、武虎の攻撃は全く海生に当てることができなくなっていたのだ。
ドッ、ドガッ、ドガッ!
「うっ、うっ、ううっ!」
ボディへ連打を浴びた武虎、思わず後退し、距離を取る。
「はあ、はあ…。なんでだよ、くそっ」
武虎は、荒い息を吐きながら海生を睨みつける。
片目が腫れ上がっていることが、目の開きづらい感覚で分かった。
武虎の中で焦りの感覚がうねり始める。
「クソ、舐めやがって…」武虎は苛立った。
それは、武虎は今、自分のピンチに思わず後退したにもかかわらず、海生はなにも追撃をしてこなかったからだった。
明らかな攻撃のチャンスを見逃し、今も余裕の表情で自分を見下す海生。
そして、お互い激しく打ち合っていたと思っていたのに、よく見ると海生の顔はきれいなままで、ほとんど打撃が当たっていなかった。
「マジかよ…」
闘志が途切れそうになる武虎。
だめだオレ、ここで気持ちを切らしたら、確実に負けちまう。
「オオオオオオオォォォ!!」
腹の底から叫び声をあげ、ダッシュと同時にストレートをぶち込もうとする武虎。
そんな武虎のパンチを海生はステップで下がり、次の瞬間、ステップと同時に武虎の顎に強烈なフックがぶち込んだ。
ボゴッ!
「ぐおっ、ォォォ…」
足がぐらつき、静かにリングの上に倒れる武虎。
おおおおおおおおおおおおおおおおおお!
会場内からは大歓声が巻き起こる。
すでに武虎の負けを確信した観客は、イキッたヤンキー高校生がリングの上で犯されるシーンを想像して、胸を高鳴らせ始めていた。
「バカ野郎。策もなく突っ込んできやがって。そもそも単純な力のぶつかり合いで、お前がオレに勝てるわけがねだろう、武虎」と海生はつぶやいた。
「ふざけんな、もう勝った気になってんじゃねえぞ、海生」
ゆっくりと立ち上がり、ファイティングポーズをとる武虎。
「次にダウンするのは、てめえだぜ!海生」
そういって、片手を海生に突きつける。
「これ以上やったら、お前壊れるぞ」
静かな口調でつぶやく海生。
だが、武虎は闘う意思を曲げず、試合再開となる。
「オオオオオオオ!」叫び声をあげ、勢いで海生に向かっていく武虎だが、怒りと興奮で体に余計な力の入っているせいで、動きは固くぎこちなかった。
「お前、弱いよ」
そう呟き、海生は強烈なミドルハイの蹴りを、武虎の側頭部にぶち込む。
ドガッ!
「ぐあああっ!!!」
武虎は再びダウン。
そして、ふらつく足で再び起き上がるが、足が震えており、片目も半開きになっていた。
この地下格闘技場は通常の格闘技のルールと違い、どちらかが負けを認めるか、立ち上がることができなくなるまで試合は終わらない。
武虎が立ち上がり続ける限り、試合は続行となる。
「調子に乗るなよ、海生!今ぶっ倒してやるぜ!」
そう言いながら武虎はステップを踏み、唐突にストレートパンチを打ちこんだ。
焦りのせいか、動きも単調になっている武虎。
海生は軽く体をそらした後、武虎のパンチをパーリングで叩き落とす。
しかしそこから武虎は、無理な姿勢からハイキックを放つ。
海生は姿勢を下げて武虎のハイキックをかわした後、素早くボディアッパーで武虎の腹を打ち抜く。
「うっ!」
姿勢を崩している武虎に、海生はボディ、ボディ、ボディ!と腹に連打を決める。
ドッ、ドガッ、ドボッ!
「うっ、うっ、うおっ!!」
武虎は口から唾液を散らし、一瞬焦点が定まらないままリングサイドにつかまる。そうして、なんとかダウンを逃れる。
はあ、はあ、はあ…。
武虎の激しい呼吸に、すでに限界にきていることが、海生には手に取るようにわかった。
「行けー!ぶっ殺せ!」
「いいぞ!やっちまえ!」
「オラオラ、兄ちゃん、生意気なヤンキーにたっぷりお仕置きしてやれよな!」
観客席からは、武虎にとどめをさすことを期待する罵声が沸き起こる。
「まったく、口ばかり達者な客ばかりでうんざりするぜ」
観客の罵声に、闘う意欲を削がれる海生。
「自分より格下をいたぶって、何が楽しいっていうんだ」と海生はつぶやいた。
だが、ルールはルールだ。
どちらかが完全にKOするまで、試合を終えることができない。
「終わりにしよう、武虎」そうつぶやいた海生は、リングサイドに寄りかかり、頭をふらつかせる武虎に向かってダッシュ、そして、顔面狙ってストレートパンチを放ち、とどめを刺しに行く。
ドゴッ!!!
「がっ…!?」
客席が、一瞬静まり返る。
海生のパンチをかわした武虎が、反対に海生の顎へ強烈なフックを打ち込んでいた。
ダッシュで向かった海生の勢いと、武虎の渾身のフックの力が合わさり、強烈な威力が海生の顎を揺らす。
「くっ…、うあっ…」
海生は口から唾を散らし、視界がスローモーションのようにゆっくり流れ、天井のライトが目に刺さった。
脳は揺れ、視界がぐらつく。
海生の定まらない焦点の先には、ニヤつく武虎がしっかりとした足取りでファイティングポーズをとっている。
は?
なんだよこいつ、ダウン寸前でふらついていたんじゃなかったのか!?
油断していたところに、しっかりとフックの決まった顎の痛みはかなりのもので、ふらついた足で口から流れる血を腕で拭いながら「くそっ、効いたぜ…」と海生は言った。
「今がチャンスだぜ!」と言い、武虎がダッシュで海生へ向かっていく。
「くっ」
海生はふらつきながらも、姿勢を下げ、しっかりとガードの構えで武虎を迎える。
「うおおおおおおおお!」
武虎の叫び声と同時に、激しいラッシュが海生を襲う。
ドゴッ!ガスッ!ガガッ、ドス、ガガガ!
「うっ、うおっ、ぐおっ、ぐあああっ、うあっ!」
脳が揺れたまままともにガードのできない海生は、腹や顔を激しく殴りつけられ、次々と連打を浴びてしまう。
ドゴッ、ガゴッ、ドッ、ドゴッ、ドガッ!!
「うおっ、うっ、ぐああっ、ううっ、ぐあああっ…!」
攻撃が決まるごとに打撃の速度と威力が上がっていく武虎。
すでに失神しそうな海生に、武虎は容赦がなかった。
攻撃をもろに喰らう海生は、まったくガードが取れないまま殴られ続けられ、意識が途切れそうになる。
「オラオラオラ!ぶっ殺してやるぜ、海生!!」
ドッ、ドゴッ、ゴリッ、ガッ、ゴゴッ、ドゴッ!!!
「ぐっ、うおっ、があっ、うっ、うおっ、ぐおっ!!!!」
先ほどまでダメージを受けていなかった海生の顔面も、激しい連打であざがにじみ、焦点の定まらない目や、激しい呼吸でよだれの流れる口、そして、こめかみからは血が痛々しくにじみ出していた。
観客も激しい武虎のラッシュに、歓喜の声を上げる。
「すげええええ!逆転かよ!!!」
「うあああああああああああああああああ!」
「やれやれ!もっと殴れ!!ぶっ倒せ!!!」
ついに、ダウンしかけて、よろめく海生。
必死でダウンを避けるが、もうガードも下がりきっており、完全にサンドバックと化していた。
「てめえの負けだぜ、海生!!」
生気のない顔で力なくよろめく海生に向かって、武虎は思い切り腕を引いて力を込め、そして全力で振りかぶったボディブローで、海生の腹を突き上げる。
ドッゴオォォォォォ!!!!!
「ぐうあああああああああああああああああぁぁぁぁぁ!」
悲鳴を上げながら、海生の体はリングサイドのロープまで吹っ飛ばされ、そして、ロープにはじかれて海生の逞しい体は、激しい音を立ててリングの上に崩れ落ちた。
「ぐっ…、あっ…」
眼球が上転したまま、立ち上がれない海生。
その様子を静かに見守る武虎。
静まり返ったリングの上とは裏腹に、興奮した観客は大熱狂の歓声を上げる。
海生は必至で立ち上がろうとするが、両手に力が入らなかった。
そもそも、天井の位地が把握できず、ふらつく頭を持ち上げる方向が分からず、頭を起こすことすらできなかった。
な、何が、起こってるんだ?
なんでオレが、ダウンしてんだ?
意味が分かんねえよ、そんなことあるわけねえじゃん。
途切れそうな意識のなかで、海生はなんとか立ち上がろうとするが、体に力が入らない。
そんな、馬鹿な…!
カウントは進み、10カウントを数え上げられたところで、カンカンカーン!と、終了のゴングが打ち鳴らされる。
「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!オレの、勝ちだぜえええええええええ!!!」
リングの端までダッシュしてから、リングサイドを勢いよく駆け上ると、両手を持ち上げて叫び声をあげる武虎。
「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!」
武虎の叫び声に応答するかのように、客席からの歓声が、地下格闘技場内に鳴り響く。
次第に意識を取り戻してきた海生。
ぼうぜんとしながらも、ゆっくりと膝をついて体を起こそうとする。
意識が戻り、状況を把握する海生。
オレが、負けた。
まさかオレが、武虎ごときに負けるなんて…。
2.あとがき
圧倒的実力差を前に、海生の敗北がきまりました!
さて次回は、武虎によって海生がめちゃくちゃにされてしまいます。
プライドの高い海生が、武虎に弄ばれる展開、頑張って描いてみます!
後編完成しました!
こちらをクリックしてご覧ください。
最後までご覧いただきありがとうございます。
ぜひまた次回もシーサイドジムでお会いしましょう!