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たまにはこんな記事を載せてみるのも面白いかなと思いまして…。

漫画好きの方であればだいたいご存知だと思いますが、一般的なモノクロ漫画で色味などを表現するのに使うもののことを【トーン】といいます。

小さい点々が規則的に並んでいるアレです。

元々は透明な用紙に点々が印刷されたシールのようなもので、アナログ時代は紙に書いた絵の上にいちいちカッターで切り抜いて貼り付けていたのですが、あまりにも大変な作業なのでイマドキはほとんどの人がデジタル化してるんじゃないでしょうか。

私も15,6年前に初めて同人誌を作ったときはアナログでした。狂気の沙汰です。

漫画にはトーンを使うのが当たり前…ということになっているのですが、このトーン、デジタル表示との相性がすこぶる悪い。適切に処理しないと画像を縮小した際に格子模様のようなものが発生し、大変汚く見えてしまうのです。

(この模様のことを【モアレ】といいます。)

みなさんもWEB漫画を読んでいて経験したことがあるんじゃないでしょうか。

ある程度綺麗にすることは出来るようなのですが、やはりトーンは紙に最適化されたものなので、どうしてもデジタルには向いていないのです。時代ですね。

私の場合、最終的に紙で発表することを想定しているので実際の原稿はトーンを使って制作しているのすが、上記の理由からWEB公開版とDL版は基本的にトーン部分をグレーに変換して発表しています。これだけ聞くとなんだか大変そうですが、定番の漫画制作ソフト「CLIP STUDIO」ではトーン部分をグレーに変換して出力する機能がありまして…ありがたや!

というわけで、「お兄ちゃんはおしまい!」の場合ですと、紙の同人誌版はトーン、WEB公開版とDL版はグレーで表現されているのです。(商業版は紙もDLもトーンです。)

ここ、意外と気付いていなかった人も居るんじゃないでしょうか。…居ますよね?

さて、実はここからが本題です。

トーンとグレスケだと、前者のほうが圧倒的に表現力が高いのです!


こちらは先日twitter(@nekotou)でチラ見せした次回42話のワンシーンです。

ご覧の通り、左がグレー版、右がトーン版。

一見グレー部分がざっくり網点に変わっただけのように見えますが…よく見てください。みはりの髪留めの高さの、薄めのグレー部分…トーン版だと縦線になっています!

実はこれ【万線】というトーンの一種です。漫画版のドラえもんの肌もこのタイプですよね。(あれは手書きですが。)

この部分、一律グレーだとイマイチよくわからないですが、縦線になることで、垂直の壁…段差の影に見えてきませんか?(見えないかも…。かなり細かい絵なので雑なんです!!)

悲しいことに、CLIP STUDIOでグレー出力するとこういうのも一律グレーになってしまうわけですね。

(42話は今週末先行公開!)


万線は主に(方向性のある)背景の影などに使うことが多いのですが、手前に来るキャラの影にもたまに使っています。ちょっと雑な感じのほうが雰囲気が出るので、手書きにすることも多いです。


ポップな感じを出したいときは、点が荒いトーンを使います。服の部分と背景のグラデーション部分を見比べてみてください。

ものすごく手前にあるモノには荒いトーンを、遠くのモノには細かいトーンを用いることで遠近感が強調されるそうですよ。


これはレアケースですが、椅子の背の部分。これも網点トーンの一種です!

この椅子の背はメッシュなんです。横着してメッシュ模様の代わりに使ったんですが、グレー化するとこのとおり。情報の欠落です。悲しいですね。

――というわけで、実は紙版のほうが(中でも原寸サイズのB5同人誌版が)万全の状態でお楽しみいただけるのです!

いや、別に同人誌版の販促じゃなくて、紙もDL版も、同人版も商業版も、お好きなものを買っていただくのが一番で、どれも等しく嬉しいです。これは本当!

既に紙版をお持ちの方は、こういう視点で改めて読んでもらえると新しい発見がある…かも?というお話でした。

ちなみに…今月末には商業版4巻、8月にはおにまい14巻とミニドラマCD付き特別編3巻が出ますので乞うご期待!(結局販促!)

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Comments

麦ノ芽

私はグラフィックデザイン業界でアナログ時代から仕事していますが、網点の話、身につまされます。狂気の沙汰ですが、こちらの場合は墨罫線で囲ってCMYKのパーセント指示を入れる形なので漫画家さんよりは楽だったかな? (今は全部自分でCMYK数値入力です) でも、やはりモノクロや単色の物だとスクリーントーンの表現力が羨ましく、一時イラストを描くのに使いましたが、面倒なのと、印刷物だと逆に表現過多になるのでやめました。(値段も高かったですしね) 8月またまた楽しみですね‼︎ 今度は誰が出演するんだろう?

Anonymous

これは非常に興味深い教訓でした。

grinp

その道の方にはあたりまえな内容の記事で恐縮です。アナログデザイン工程には全く明るくないのですが、想像するだけでも恐ろしいですね。

grinp

プロフェッショナルの上手いトーンワークは大変美麗なものなので、是非いろんな漫画で注目してみてください!

麦ノ芽

漫画の世界と似てる所もあって面白いですよ。 アナログレイヤー処理の話とか… 写植の話とか… 無理でしょうが、ねことうふ先生と飲みながら延々と語りたいな〜♪

倉田美樹

自分が漫画を描いていた約40年前は当然の如くスクリーントーンですから、部屋中にトーンのかすが散らばってえらい事になりましたね。 最近の事情は良く解りませんが・・ねことうふ先生のトーンワークは本当に素晴らしいと思って読ませて頂いております。 もう漫画を描く事は一生無いと思いますが・・良い勉強になりました。

grinp

これは恐縮です…トーンカスはもとより、消しゴムカスやらなんやらでアナログは大変でしたね。イマドキは最初からフルデジタルの人ばかりだと思いますが、ギリギリ体験できててよかったなと思います。

かすみなぎ

なるほど、おっしゃる通り、トーン版は奥行きが感じられる上、色味に渋さがありますね。 対してグレー版はのっぺりとしていて表現力が劣るように感じます。 私はただなんとなく紙の同人誌版が好きだったのですが、なんとなくの正体はきっとこれでしょう。良い勉強になりました。 ところでドラえもんの例の縦線ですが、あれは良い効果が出てますよね。トーンを貼るだけで済ませてもよさそうなものですが、縦線の効果でより存在感が増して見えます。 二十余年に渡ってコツコツ手作業で製作されていたことに想いを馳せると、より愛おしく思えて本を抱き締めます。

みこと

前にモノクロ漫画描いた事あるんですが、薄い本にした時何か違和感あったのが今回のお話でなんとなく分かった気がしました。 ありがたや 今月末と来月楽しみにしてますね!

空猫

知り合いに無理やり手伝わされて、トーンを扱ったことがあります。ひたすら面倒でした。 いつの間にか肌のどこかにトーンカスが付いていたらしく、お風呂に浸かったときにトーンがいくつも浮いていて笑えました。 でも確かに言われるとおり、トーンの方がポップさや遠近感、質感が伝わりやすい感じがしました。 読み返してみようと思います。

grinp

手書きの縦線は味がありますよね。トーン無しで表現できるならそれが一番クールかもしれません。

grinp

やっぱり印刷されると見栄えが良いんですよね。トーン。

grinp

トーンカスあるあるですね。糊がついてるので一層たちが悪いのです。

hiros390

興味深いお話ありがとうございます😊。私は、専門的なことは、詳しくないのですが、おにまいのweb版では、トーンではなく、グレーで表現されている事には全然気づきませんでした😅。 確かに電子書籍でマンガを見ると、サイトにも依るかもしれませんが、トーン部分にモアレが発生してるのを見たことがあります。最大に拡大すれば消えるかなって思って拡大してみても消えなかったりしますね😢。結構見ていて気になってしまいます😜。 これからは、グレーなのかトーンなのか確認しながら見るのも一興かもしれませんね😆。

grinp

商業作品の電子書籍は基本的に紙の本版のデータをそのまま使うのでどうしてもモアレが出てしまうんですよね。今後電子書籍中心の時代になると漫画の作り方も変えないといけないのかもしれません。

Qさん!

両方買わせて頂きます! 細かいこだわりがあって、とても届くのが楽しみです!

きんたろ

すごく勉強になりました。確かにカートのコマは段差があるように見えますね。DL派に切り替えちゃったけどこれからも楽しませていただきますー

grinp

DL版便利ですもんね。かくいう私も買う時はDL中心です(˘ᴗ˘ )

倉田美樹

改めて37話の同人版を良く読むと、4ページ目の3コマ目にもうっすらリップトーンが有りますね! DL版では残念ながら再現されていませんでした💦 これはまだまだ読み比べて見る必要が有りそうですね♪

grinp

いただいたコメントで気付いた作画ミスの修正などを盛り込みながら、先行版→WEB公開版→同人版→商業版と、実は少しずつバージョンアップしていたりもします!

倉田美樹

なんとぉ~! その様な事が、より細かく読ませて頂かなとバチが、当たりますね! これは一話から見比べる必要が有りますね! 先生ありがとうございましたm(__)m