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プロローグ 何の変哲もない日常の中、ソレらは突如として21世紀初頭の地球の首都や地方都市果ては辺境の地にある農村の空中に現れた。 様々な色の光輪の中から現れた多様な形のソレらは、まさにSF映画に登場する「宇宙船」。通勤中のサラリーマンや戦場にいる兵士、果ては森林奥深くに住まう尼僧に至るまでもが、自分達の見慣れた空に浮かぶ宇宙船団を様々な感情を抱き見つめていた。 「天ノ川大銀河連合」 それが突如として現れた使節船団の正体である。 「文化、テクノロジーの発展と共有」を元に、天の川銀河にある約200億の知的生命体が存在する恒星によって構成された組織である。 文化やテクノロジーなど、連合内で創られた水準に至るであろう知的生命体の存在する恒星を連合設立当時から常に監視しており、水準に到達した恒星へ訪れ文化やテクノロジーを共有し、連合間で発展し続けて来た。地球に訪れた理由もそれが理由である。 地球に訪れた使節団は連合の思想と訪問理由を各国政府に伝えると同時に、連合への加盟を勧め出た。それを受けた各国政府は国連本部ビルに集結、1ヶ月に渡って地球の連合加盟について協議した。 結果、地球は連合への加盟を決議。 その恩恵として、様々な文化やテクノロジーがもたらされたのだが、同時に数百年間に渡り様々な銀河連合や惑星との争いや変動に巻き込まれていったのだった…。 動乱の時代が終わり、十数年後の銀河連合歴925(けっこう)年。世界は復興を遂げつつあった…。 第一節 「レイチェル、そろそろ起きなー!あと数分したら火星に着くよー!」 室内に取り付けられているスピーカー、そこから放たれる活気のある聴き慣れた声。熟睡していた私にとっては耳障りでしかなかった。 不快感を湧かせながら朦朧とする意識のまま暖かなベットを抜け出、時折背伸びしながら着ていたパジャマをベッドへ脱ぎ捨てていく。 未だ霞んだ視界を頼りにふらふらと下着姿で服が納められているタンスへと向かい、火星に行くことを考え冬物の衣服を取り出し着替えていく。 「うぅん…?じゅうわる…。」 どうやら自慢のデカパイが重ね着してバランスが悪くなったらしい。 服の下から手を入れ、ズシっと来る乳の重さと柔らかさを感じながらベストパイポジを探る。 「んっ…ふぁ〜、オッケ〜イ…♪」 しっくり来るパイポジを見つけ試しにぶるぶると左右に揺らしてみる。 問題なさそうだ。 愛用の革ジャンを羽織り、愛銃の入ったホルスターと携帯型マガジン充電器、小物を納めたポーチをベルトに取り付け、最後に跳躍強化ブーツを履き自室を後にする。 いくぶんか広がった視界を頼りに一人暮らしの身には広すぎる食堂へと向かう。 長い廊下を進むにつれ食欲を刺激する匂いが漂って来、早く飯をくれと言わんばかりに腹の虫がグゥグゥ鳴き始めた。 「はーら減った、はーら減ったっと♪」 そんなことを呟きながら、食堂入り口に立つと同時に自動ドアが反応し、私は鼻歌を歌いながら中へ入る。 外まで漂っていた美味しそうな匂いがここでは部屋いっぱいに漂っていた。 「おはよ〜う。」 「おはよう。ほら、もう出来上がるから席着いてな。」 気の抜けた私の挨拶に応えながら、厨房で調理をしてくれる女性型アンドロイドのキョウコ。 豊満なボディをテキパキと動かし、出来上がった料理を皿に盛り付けていく。 そうして私が席に着くのと同じく、出来上がった料理と飲み物を持って私のいる席に近づき、丁寧に机に並べてくれた。 「はい、お待ちどう。」 「ありがと〜。んじゃ、いただきますっと。」 まずは注がれた玄米茶を軽く飲んで喉を潤わせる。 お茶碗に盛られた白米と一緒に鯖の味噌煮にたくあん、豆腐に千切りキャベツを食べていきつつ、四つ切りにされた茄子入りの味噌汁を飲んでいく。 キョウコは私の前に座ると壁に備え付けてあるテレビをつけ、持ち歩いているスマホを取り出して何やら調べ物をしているようだった。 テレビから流れるニュースと微かに聞こえる艦のエンジン音が食堂に響き渡る。 「再確認だけど火星に着きしだい、あたしは艦の点検と買い出し。あんたは賞金首のいるアジトに向かう。で良いのよね?」 「うん。廃工場地帯だし相手に奥の手があるかもしれんから、買い出し前にガルディアンの準備もお願い。」 「了ー解。装備は?」 「うーん…、無しで良いかな?誤射して街に被害出したくないしー。」 「それもそうだね。」 「ーふぅ〜。はい、ごちそうさまでした!」 最後に残った味噌汁を飲み干し、手を合わせて朝食を締める。と、同時に艦内スピーカーから大気圏突入のアナウンスが鳴り始める。 「ほら、艦長さんは早く操舵室に向かいな〜。」 「んえー!?着陸まではやってくれるって言ったじゃない!」 そう言いながら、甘えるようにキョウコの豊満ボディに抱きつく。 「さぁ〜ねっ。ほら早く行かないと、自動操縦切るよ!じゅーう、きゅーう…」 「あっ、タンマタンマ!!」 そう言いながら、足速に操舵室へ向かった。 中央にあるエレベーター横の階段を駆け上がり、操舵室に駆け込むように入り座席に座ると同時に全天球型のモニターが起動。映像が映し出される間に格納されていたコンソールなどが現れる。やがて目的地である火星や宇宙の映像が映し出され、用意されたコンソールで電磁シールドなどの出力を調整する。 しだいに画面が赤々と照らされ始め、艦全体がガタガタと揺れが激しくなり始める。 手元の操舵グリップを握り、足元にあるペダルを踏み艦を突入角度へ移行させる。 画面全体が赤々と照らされ、その熱気が画面越しに伝わってくる。 だんだんと赤々とした熱気が晴れていくと同時に艦の揺れも治っていった。 やがて揺れもなくなっていくと、赤茶色の空とベージュ色の雲が見えて来、港へのガイドビーコンが画面上に現れる。 「たまには大人しく捕まってくれるといいのになぁ…。」 これから捕まえに行く賞金首に対して、甘い希望を呟いてしまう。 そんな自分自身に対し僅かの嫌悪感を抱きつつ、ガイドビーコンを辿り艦を目的地へと向かわせた。 ※ 「さっむ…。」 火星に来る度に思う。 気温と惑星の名がまっったく合ってない。 神話の神さんが由来とか色で決めたんだっけ?命名した奴バカタレじゃないの…? まだ艦の格納庫のハッチは開けてないのに伝わってくるこの寒さ。 テラフォーミング前に比べたら断然マシだけど…と思いながら、格納庫に向かう通路を歩く。 ふと、腕時計に表示されている気温計を見る。 「−2°か〜。」 まさに真冬のホッカイドウやロシアのような気温。 そういえばしばらく日本の蟹料理食べてないなぁ…。そんなことを思いながら扉を開くと、エンジンのかかった愛車のGT500の中でゴソゴソしてるキョウコが目に映る。 「レイチェル〜車あったまったよ!」 「は〜い。」 凍えた声で応え、暖を取るため足速に車へ向かう。 車体に近づくに連れ程よい温もりが伝わってくる。だが、車内の温もりはそれの比ではなく、防弾素材が折り込まれた革の座席に座った瞬間、頬は緩み座席に沈みこむように座ってしまう。 「温もったかい?」 「そりゃもう〜♪頼んだ装備も積みおわったの?」 「もちろん。ほらよ。」 そう言い、キョウコはタブレットを私に放り投げる。 ポスッとキャッチし、内容を確認するとGT500に積んだ装備のリストが表記されており、順々に確認していく。 「BII装備は35式(対戦車砲)にしたのね。…ふむふむ…CⅠ装備は87(軽機関銃)にM9000(ショットガン)、MP17(サブマシ)と446…。あとは各種手榴弾と…弾は…あれ?35式の予備バッテリーは?」 「今積んでるので最後だよ。」 「そっかぁ…そうなるとあんまし無茶できないなぁ…。」 「なぁに言ってんだい。無茶するのはいつものことじゃないか。」 そう言いながら、ぐしゃぐしゃと乱暴にキョウコは私の頭を撫でてくる。 撫でられた反動で頭がぐわんぐわん揺らされクラクラする。 「も〜!それじゃぁ、行って来るけんね。」 「はいよ、行っといで。」 見送る言葉を言い終えたキョウコが車体から離れたのを確認し、フロントドアを閉め、天井に設置してある格納庫ハッチの遠隔開閉ボタンを押す。 轟音を響かせながらゆっくりと目の前のハッチが開かれ始め、ゆっくりとアクセルを踏むこむ。 完全に開かれると同時に軽くアクセルを踏んで格納庫を後にし、そのまま薄暗い夜の港の道路を突き進んで行く。 道すがら、他に停泊している船や遠くに見える高層ビル群らが目に入る。キラキラと輝く電光掲示板や室内灯、飛び交う車両群などによる夜景がとても綺麗で目を奪われる。 やがて管制塔下にある検問所を着き、身分証の確認などを済ませ、港を出てすぐの高速に乗る。 過ぎ去って行くネオンや巨大な鯨系人魚の立体広告を見送りながら、お気に入りの音楽を聴きながら目的地へ向かってアクセルを踏み込む。 そうしているうちに高速を降り、住宅街を抜け、目的地である廃工場地帯に到着した。 大型車両も通れるように作られた広い道路を挟むように左右に四角柱型の工場が3つづつ並び建っていた。 事前に読んだ資料によると、昔は化粧品等を製造していた工場だったらしく、錆ついた看板や柵にかけられている広告もそれを物語っている。 管理していた化粧品会社は20年前に倒産。土地権利なども含めてうやむやになってしまった結果、今回のターゲットである賞金首率いる麻薬製造・密売をしている組織が工場の一つを根城にしたらしい。 「化粧品作るとこから麻薬を作るとこになるとはねぇ…。」 そんなことを考えながら、工場から少し離れた所にある廃墟の裏手に車を停め、隣の座席に載せておいた小型の球体型ドローンを3つと多機能光学サングラスを手に取り車外へ出る。 ひしひしと感じる寒さに身震いしながらも球体型ドローンを空中に放り投げながらトランクへと向かう。 放り投げられたドローンが起動し浮遊した瞬間、ポーチに入れておいたスマホとドローンがリンクしたバイブ音が尻伝いに感じ取れ、スマホを取り出しドローンに工場内のマッピングを指示する。 トランクに到着しロックを解除する。トランクが開かれると中に格納されていたガンラックが展開され、突入の準備を始める。 「さってと…、とりあえずは446とフラッシュバンを3つ、フレシェットは…2つで良いか。あとは…あれ〜?ナノテクのアレどこにやったけ?うーん…お!あったあった!」 HK446Hの予備マグや各種グレネードを着用した防弾ベストに装着し、ナノテク製のヒートナイフをベルトに携え、最後に防弾タイプのスタングローブとHK446Hを装備する。 トランクを閉めると同時に車を警戒モードに切り替えさせる。 ドローンのマッピングも終わったらしく、光学サングラスを暗視モードで起動。マップ情報も表示させ、HK446Hに弾薬を装填する。 「さてと、お仕事開始しましょうかね。」 そうやって自分を鼓舞させ、暗い夜道を音を立てないように疾走していく。 あっという間に工場の柵が目の前に映ると同時に跳躍、軽々と柵を飛び越え着地した瞬間再び工場内に向かって音を殺しながら近づいていく。 ドローンでマッピングした地図を見る限り、侵入可能なとこは3箇所。比較的警備が少ない工場の裏口へ迂回しながら向かう。 やがて、扉の前で呑気にカップ麺を煮ている門番2人が見えて来る。 そっと銃口を向けサイトを覗き込む。 監視カメラやドローンの類が無いことを確認し、トリガーに指をかけ深呼吸…数回引き金を引く。 サイレンサーを通って放たれた弾丸が門番2人の頭に命中。 拡大したドットサイト越しに崩れ落ちる姿を確認し、再び工場に近づいていく。 扉に着くとナノテク製のヒートナイフで鍵を破壊し、そのまま壁伝いに工場内を突き進んでいく。 廊下のあちこちは歪んでいたり、タイルが捲れていたりとまともな整備がされていないのがよく分かった。 やがて、灯りを漏れ出す大きな扉が見えてき、扉の隙間から中を覗き見た。 そこはまさに麻薬を袋詰めしている部屋で、作業員と警備兵が合わせて数十人いるようだった。 しかし、目当ての賞金首はいないようだったのでその場を後にしようとした瞬間。室内で荒々しい物音が鳴り響き、ガラガラ声の男の怒号が室内から聞こえてきた。 「てめぇ!また商品に手ぇつけやがったなぁ!?」 「ご、誤解です!袋に穴が空いていて、それで…」 「うるせぇ!!こ…の俺に…くちgじおh‘んjb!!??」 怒号の主の声はだんだん呂律が回らないまま、許しをこいひれ伏す作業員にキレ散らかす。 しかしよく見れば酷い格好だ。こんだけ寒い火星でガリガリの体から汗をかき、柄パン一丁の姿で怒り狂っている。麻薬の吸いすぎでおかしくなったのだろう、血走った目がそれをよく物語っている。 そんな男の顔を見て、ようやくそいつが目的の賞金首の[エフゲニー]だと気付く。 資料と全然違うじゃない。画像ではかなりまるまるしてたのに…。 ともかくターゲットからこっちに来てくれたんだもの、やる事は一つ。 そう思い扉の隙間からフラッシュバンを投げ込もうとした瞬間。 「誰だてめぇ!!」 後ろから聞こえてきた声に心臓がヒュッと縮まり、体が反射的に動き腰に装備したNAP3を引き抜き、瞬時に声の主に目掛けて数発撃ち放つ。 定まってきた視界で声の主が巡回していた兵士だということと、自分が撃ち放った弾が命中したことを知る。 持っていたライフルの引き金はすでに引かれていたらしく、後ろに崩れ落ちながら天井へと弾は放たれていた。 瞬間、我に帰りエフゲニー達にも聞こえたのではないかと扉の隙間に目をやる。 慌てて反対側の扉に逃げていくエフゲニー、ぶら下げていたサブマシンガンを構えながらこちらに向かってくる警備兵、怯え屈む作業員がスローモーションで私の目に映りこむ。 脳から落雷のように放たれた信号が体中に落ちて来る。 反射的に動き始めた体は目の前にある鉄の扉を蹴破り、そのままの勢いで手に持ったNAP3を警備兵目掛けて撃ち放ちながら走り始める。 麻薬の袋詰めが行われていた作業台を兎のように飛び跳ねて行き、エフゲニーの逃げて行った扉を塞ぐ警備兵目掛けて飛び蹴りをかます。着地と同時にHK446Hに持ち替え、後ろから襲い来る警備兵目掛けて掃射。 撃ち漏らした敵がいないことを確認し、扉を蹴破る。フラフラとした走りで廊下の角を曲がろうとするエフゲニーに対し数発撃ち放つが、弾は一発も当たらず舌打ちを漏らす。 急いでエフゲニーの後を追い始めるが、次々に大勢の警備兵がと現れてくる。 闘争心を掻き立てられた私は「待てやぁぁぁぁぁぁ!!!」と叫び声を上げながら向かって来る警備兵に446やNAP3を乱れ撃ち、弾が切れればスタングローブを装着した拳で殴り飛ばし、打ち倒した敵を盾代わりに荒れた廊下を突き進んで行く。 襲いかかってきた敵の攻撃を乗り切り、廊下を曲がり再びエフゲニーを捉える。 護衛に囲まれ、エレベーターに乗り始めていたため、即座にマガジンを交換し走りながら閉じていくエレベーターの扉目掛けて撃ちまくる。 しかし撃ち放った弾丸は扉を貫通したものの、エフゲニーに当たったかどうかまでは確認できなかった。 ぶつかるようにエレベーターに着き、すぐさま扉に指を捻じ込み無理矢理こじ開ける。 すでにエフゲニー達を乗せた籠は地下へと下降していて、暗い円柱型の昇降路内を反重力装置を点滅させながら降りていくのが見えた。 即座にドローンをダクトから地下へと向かわせ、私自身も昇降路の壁をジグザクに飛び跳ねながら降りていく。 ※ やがて重い着地音を響かせ籠の上に降り立ち、脱出口を蹴り開ける。 血溜まりとなった床には2人の護衛が倒れているだけで、エフゲニーはいなかった。 安全の為、446で2人の頭に向けて2発づつ撃ち込み、籠の中に降りる。 446やNAP3の残弾を確認しつつ、地下に到着したドローンから送られる映像を確認すると、広々とした倉庫に備え付けられたハンガーに佇む5機のEGBM《シェルク》に乗り込むエフゲニーとその護衛達の姿が映っていた。 機体ごとに独特なカスタマイズが施されており、特にエフゲニーの乗る《シェルク》は機体に不釣り合いなサイズの剛腕に換装され、炎を模した塗装が施されており、いかにも隊長機だと言うのがわかるカスタマイズであった。 そんなエフゲニーの乗る《シェルク》が私の乗るエレベーターに向かって走り始めた。 エレベーター諸共殴り潰される!それを直感で理解した私は、すぐさま入ってきた脱出口から昇降路に飛び出、急いで壁をジグザグに飛び跳ねて登っていく。 飛び跳ね始めてまもなく下から轟音が鳴り響いて来る。おそらくエフゲニーの乗る《シェルク》の剛腕がエレベーターに叩き潰されたのだろうが、それを確認する余裕などない。 やがて私がこじ開けた扉が見えてき始め、まだ幾分か距離があるものの、扉に向かって思いっきり跳躍する。 跳躍強化ブーツのおかげもあってなんとか届き、廊下へと転がり込む。 一息つこうとするが、廊下の向こうから敵兵が向かって来る音が聞こえてき、音のする方向に視線を向ける。 廊下の角から現れ、こちらに向かって銃を構える敵兵が見えた瞬間、彼らの床が赤々と光り、盛り上がりったかと思うと光の柱が立ち、彼らを一瞬にして消し去った。 地下にいたエフゲニー達が、私に向かって撃って来たことを理解し、急いで来た道を戻り始める。 背後から迫り来る轟音と僅かな光にさらに必死に廊下を駆けて行く。 やがて入って来た裏口が見え、体当たりで扉を開けて工場から飛び出る。 すぐさまスマホを取り出し【出撃】と表示されたアイコンをタップ。瞬間、工場内から物凄い轟音が鳴り響いたかと思うと、エフゲニー達の乗る《シェルク》がスラスターを吹かしながら現れた。 体勢を変えながら地面へと着地。そのまま機体を私の方に向け、持っている銃器を構えてくる。 まさに絶体絶命…と思った瞬間、眩い光球が目の前に現れる。 そして一瞬にして光球は消え去ると、目の前には巨大な黒い人型の構造物が現れ、エフゲニー達が撃ち放った弾丸やビームがその構造物に…いや、私の愛機《ガルディアンZ》の背に当たる。 コイツにそんじょそこらのビームらが効くものか。そう思いながら膝達で《ガルディアン》に向かって走りだす。 エフゲニー達の射撃を受けつつも、近づく私に呼応するように《ガルディアン》のコックピットが開き、昇降クレーンが降りてくる。 降り切ったクレーンの先に取り付けられた足掛けに飛び乗ると、感圧センサーが反応し、私を乗せた昇降クレーンが巻き上げられていく。 攻撃による振動でユラユラとクレーンが揺れ動くも、どうにかコックピットに到着する。 短い通路を駆け上がり、全天球型のコックピットに入っていく。 コックピットシートに座りシートベルトを締め、即座に手元のコンソールを操作しシステムを起動させる。 コックピットの入り口が閉じると同時に天井側のモニターから床に向かって波のように外界が映し出される。 それを確認しながら操縦桿を握り、機体正面をエフゲニー達の方に向けると、既に護衛の《シェルク》の1機が腰に携えていた斧を振り上げながら近づいてきていた。 即座にフットペダルを踏み込みスラスターを吹かし、距離を詰めて行く。 同時に向かってくる《シェルク》の頭部に照準を合わせ、操縦桿のトリガーを引き、目前にまで《シェルク》が近づいた瞬間、《ガルディアン》の剛腕が《シェルク》の頭部に叩き込む。 攻撃の振動がコックピットまで伝わり、その場に倒れていく《シェルク》を横目に、視線を正面に戻す。 尻込むエフゲニー機を守るように立ち塞がる《シェルク》に照準を合わせ、再びスラスターを吹かし距離を詰める。 一歩手前で機体を止め、慌てた様子で向けようとしたマシンガンの銃口を握り潰し、《シェルク》の顔面に《ガルディアン》の右ストレートを叩きこむ。 当たりどころが良かったらしく、殴られた《シェルク》の頭部が胴体を離れ宙を舞う。 その直後、頭部を失った《シェルク》が画面いっぱいに迫ってくる。 「んにゃっ!?」 咄嗟のことに反応しきれず、ぶつかって来た《シェルク》に押し倒されてしまう。 地面に叩きつけられた衝撃で反射的に苦痛の声を漏らしてしまう。シートベルトをしていなければ即死ものだった。 急いで倒れかかった《シェルク》をどかし立ち上がろうとしてモニターを見ると、組んだ両手を頭上から打ち下ろして来ているエフゲニー機が映し出されていた。 即座にフットペダルを踏み込み、倒れてきた《シェルク》を抱え、エフゲニー機の腹目掛けて飛びかかる。 バランスを崩し《シェルク》諸共倒れていくエフゲニー機を見つつ、飛び上がった機体を着地させ、即座にオーソドックスの構えをとらせる。 倒れたエフゲニー機は暴れるようにボロボロになった《シェルク》を振り落とし、起き上がると同時にこちらに向かって飛びかかって来る。 打ち込まれて来た右ストレートを左手で弾き、頭部目掛けて右ジャブを数発打ち込む。 一瞬フラフラと後ろに引いたエフゲニー機だったが、再び左の剛腕を振り上げ向かって来る。 打ち込まれて来た拳に対して機体を屈ませてかわし、右肘に当たるスラスターを吹かしてエフゲニー機の左腕関節目掛けて打ち込む。 鈍い金属音とともに打ち込まれた関節はひしゃげていき、左前腕を切り離してしまう。 落ちていく左前腕を横目に左ボディーブローをエフゲニー機の脇腹目掛けて打ち込むと、エフゲニーの機体はそのまま轟音を立てながら倒れていった。 すぐさま構えを取って反撃に備えるが、倒れたエフゲニーの機体は数分経ってもピクリとも動かなかった。 倒した《シェルク》達に視線を送るがそちらもピクリとも動かず、各種レーダーを見ても反応はなし。 微かに聞こえて来るパトカーのサイレンにより、徐々に緊張の糸が解けていき、安堵の溜息を漏らしながら座席に沈むように座りこんだ。

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