Home Artists Posts Import Register

Content

編集者が「言ったとおりに直してきたらがっかり」というようなツイートが話題になっていましたが、世間的なムードが若干否定的なので、fanboxで、私の体験と受け止め方を書いておきます。


私の感想は「わかる〜」です。


決定権のある編集者の言うとおりにするのは当たり前、みたいな意見を見たんですが、作者がいないと作れない以上、作者が絶対的な権限があります。


編集さんは、なにかイマイチだと思って「経験」や「思いつき」を言ったと思われます。このことは創作ではないので、創作をする作者としては、いうとおりの描写にするんじゃなく、キャラクターやプロットや作者の哲学にもとづいて、表現に落とし込むことが求められると思われます。


たとえば、「日中に告白するシーン」を書いたとすると、編集としては、「夕方のほうが感動しそう」とアドバイスをしたとしても、これはよくある感動の場面を当てはめたものでしかありませんが、確からしさはあります。しかし、ここで作者は、もっと背景に意味を込めて、「全力疾走後に日中に告白する」とか「悩んで悩んでたまたま祭りであった相手に花火を背景に告白する」みたいな表現に落とし込みます。そういう、元の意見を超えてくる、作者ならではの表現を見たいというのが編集さんの意図なのかなと思われます。


もちろん、思いつきだけではなく、編集部の知見で、こうしたほうがいい、という場合もあるでしょう。


表紙のイラストは、色が濃く彩度が高いほうが売れる傾向がある、なら、色を調整したほうが良いかもしれません。それは意図に反するので嫌と返すこともできます。(ネイルちゃんと深爪さん。1巻の、私のイラストと表紙の色の濃さの違いはそういうことです。イラストとしては淡いほうがいいし……(というので表紙のデザインはいつも自由にしてくださいと言ってます))


また、創作においては、問いが足りないということが多々あります。


ゲーム会社に居た頃、私が参加していなかった企画の会議で、「敵を全滅させて時間内にゴールを目指すコンテンツ」を実装することになったときに、敵が見つからない、ゴールまでの距離が遠い、など、「絶対にゴールに間に合わないライン」というのが生まれ、その場合リセットが一番早い、という仕様になっていました。


そこで、私も企画だったので、そういう欠点があるので隠し通路などを用意したほうがいいのでは、と提案しました。


後出しで文句言うなとか、コストがかかるとか、かなり声を荒げるような白熱した議論になりましたが、最終的に、タイムリミット間際、タイムリミットが延長されるアイテムが獲得できる可能性がある仕様の追加、という結果に落ち着きました。(仕様追加の作業をするのは自分だったので自分を苦しめる提案でしたが必要なことでした)

これで普通にプレイしていれば、最後まで諦める必要がないルールにすることができました。


創作において考えるというのは「問い」が必要です。人数が多くても足りないことがあります。「こうしたらいいんじゃないの?」は、「それなにか足りてないんじゃないの?」であり、「もっと自分を超えていけ」です。少なくとも私はそう解釈します。創作において他人は答えは出せませんが、「問う」ことでより良いものを引き出すことができます。


「もっと他に無いんですか?」と問うこともできますが、たぶん、具体的なシーンを挙げて、「ダセー、俺ならこうする!」とか「その案はコストかかるから、これがいい」って思われたほうが、瞬発力が上がります。


というような、経験を踏まえてのツイートだったように、私は感じられました。提案をするとどういう効果があるか、上記のように説明すると良かったんでしょうが、上司と部下みたいな関係で解釈されておかしなことになってましたね。


「問い」とは考えることです。哲学でもありますね。


哲学の入門書や、考えるとはどういうことか、みたいな本を読むとこの問題がスッキリすると思います。

Comments

No comments found for this post.