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3年前に線画の練習を始めてから線とは何かをよく考えていたのですが、割とまとまってきました。 当時、線が何か、どういう風に描けばいいか、というを検索したりしたのですが、web上の情報はほとんどが納得いくモノではなかったです。ちなみに覚えているのは…… ・線は陰影。光が当たるところは細く、陰は太い。 ・力が入っているところは太く ・手前は太い、奥は細い ・線はモノと背後の空間の差が大きいほど太くすると良い ・描き続ければわかってくる 言ってることがみんな違うし最後の精神論! それで、さらにいろいろと深く調べていくと、やっぱりカディンスキーに行き当たり、線の正体は上のどれか、ではなくて、どれも正解で、線の性質のごく一部だとわかります。 ■線の見え方 線は、空間の境界であり、陰影であり、質感であり、重さであり、視線の誘導装置であり……と、様々な複合的な要素が詰まったモノで、自然界には無いが、脳にはある、脳が見せる幻のようです。 脳には、直線、曲線といった、線を見いだす専用の機能があるらしく、これを使って狩猟時に獲物を認識したり、距離感を見いだしたり、魅力的な異性を見つけたりしているようです。 推測ですが、 ・直線は空間の把握→水平線や、パースを見いだして距離感をはかるなどする ・点や円→モノの接点(間接や、足と地面の関係性)、個体(ゲームの丸陰)を認識する ・カーブは個体の種別の認識→仲間や獲物の把握や、その特徴を認識する ではないかなと。 幼児はこの能力が弱いので線が太い絵が好まれますし、大人が知性を感じる絵は、線が無い厚塗り系で、自然界と同じように、見る側が線を見いだします。 つまり、線は基本的に幼稚ではあるんですが、同時にモノの認識の手助けをする機能があるということではないでしょうか。 線を描くということは、見る側への、絵をストレスなく楽しんで見てもらうための思いやりなんですよ! ■線が情動を伝える 実際に絵として表れる線は、ペン先のキャンバスの接点の一点から、特定方向に力を加えることで実現されます。線そのものが、描き手の動作を表しているわけです。線の描き方が多彩であるほど、描き手の感情がたくさん乗る性質があります。 実際に、線は、描いたとおりに見る側に認識されます。ここからこちらの方向へ描いた、すばやくさっと引いた、ここに力を入れた、というのがわかってしまうのですよね。アナログであれば特に。 アニメが軽く見えるのは、うまい人ほどさっと描く、にもかかわらず、仕上げでは線の質感が失われ、線を引いたときの強さが認知できないので「さっと簡単に引いた線」と認識されてしまうからなのではないかと思います。 また、直線なのに直線にひけなかったり場合など、意図しない不正確さは、そのまま不正確だと認識されるのがつらいです。かといって定規で引いてしまうと、力が伝わらず味気が無くなってしまいますね。修行して綺麗な線が引けるようにならないと! ■表面の質感 線は、境界を表すものという視点で見ると、質感がもっとも強く表れるような気がしています。ザラザラとした線はザラザラした印象、尖ったやわらかい線は繊細さ、尖った固い線は痛さ、緩やかなカーブはやわらかさを感じます。これは、モノの表面から質感を得る力かなと思います。毛で覆われている丸物体があれば、それは狩りの対象かもしれないですし、木の実かもしれない。素早く認知できれば飢えから脱却できます。本能的な機能ですね。 (※木の実の場合は色がより重要だったりしますが機会があれば別途まとめます) 実際に線を引くときは、肌は素早く綺麗なカーブで、洋服はでこぼこした線で、といった描き分けをします。当たり前と言えば当たり前なんですが、線は形をとるものではなく、表面の質感を表すものという意識は重要な気がしています。 ■空間としての線 モノと背景の距離が遠いとき、焦点があったモノはくっきり見えるので、線を太く描くと空間のメリハリが付き、距離感を再現できます。逆に、距離が近ければ細く、あるいは、線を途切れさせることで、近さを表現できます。 ■陰影としての線 線を引くと、そこが陰のある場所となります。線がたくさん交わる場所は暗い場所になります。人体で線が多く交わる箇所は間接ですね。間接は必然的に暗い場所になります。 本来暗くならない場所に線が多くなると、本来の質感とは違う重さが出てしまいます。古い漫画の身体の凹凸の表現として、///みたいなタッチがある絵柄がありますが、重く感じてしまいますね。こういう場所は線でなく、塗りで表現したほうが今風かなと思います。逆に重くしたい場合、衣服のたるみなどには使っていたりします。 ■視線のコントロールとしての線 陰影とかぶりますが、線が太い場所は、強調したい場所、伝えたい場所になります。特に、間接や、モノが重なり合う場所などは、線が太くなっていると、わかりやすくなります。ここは線が曲がりますよ、ここは線が枝別れしますよ、みたいな場所は強調して線を太くすると、「どうなってんの?」みたいな絵を見るストレスが減ります。逆に、一直線の線は、間を飛ばしてしまった方が、脳内が補間するので、絵への没入度が上がります。 スカートのプリーツや、板壁の板のの隙間などは、意図的に線を途切れさせています。 * * * 以上をふまえて、私が線を描くときに気をつけていることは、以下の通りです。 ・力、速さなど、描き方がそのまま伝わるペンの設定をします。 ・描いたとおりに伝わるので、なめらかなところはなめらかに、重いところは太くしたり質感をだしたりして、視線のスピードをコントロールする。 ・わかりにくいところ(線が交わる箇所や微妙な凹凸のあるところ、カーブがきつかったり鋭角なところ)をしっかり、太く描く。 ・逆に、推測できる線(しわや、直線とわかる場所の線など)は、途切れさせて鑑賞者の脳を使います。 このように線の特性は様々ですが、各項目の優先度の違いが、絵柄の違い、与える印象の違いになります。 途中でアニメに触れましたが、アニメは一枚で考えると軽く見えますが、動画にしたときに、無駄な情報が削られることで、認識が早くなり、アニメーションしているように見えますので、アニメの線が劣っているということを言ってるのではないです。同様に漫画も、線の質感を削って綺麗な線で、さっと認識してもらうほうが、テンポ良く読めます。 私の場合は、一枚絵のイラストですので、できるだけ情報を詰め込んで、長く見てもらいたいので、このような線の使い方をしています。 * * * 長くなってしまいましたが、これも私のいつもの仮説なので、変わる可能性はありますが、今はこのような意識で線を描いています。 アップデートがあればまたまとめます!

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