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まだ完成とは言い切れないんですが、だいぶ長くて校正に精神力を必要とする(が、まとまった時間が取れなくて辛い)&早いところ投稿してしまって楽になりたい、という気持ちだったので投稿してしまいました。いつも支援いただいている分をこれで多少なりともお返しできるかな…とは思っています。


イラストたくさん描いていただくつもりなので完成版は気長にお待ちいただけたらと思います。画像は設定画で描いてもらっているマリナちゃんです。








 公共の場所や乗り物において見ず知らずの他人の身体に触れる行為は、一般に「痴漢行為」と呼ばれている。

 痴漢行為は各都道府県が制定する迷惑防止条例によって罰則が設けられており、防止対策のために電車やバスなどにも監視カメラの敷設が進んでいる。

 かつては検挙件数が順調に減少していたものの、ここ数年で減少率が伸び悩んでいる。これは、監視カメラや車内アナウンス、ポスターなどの啓発活動や各種メディアの報道では「真の抑止力」にはなりえない、ということを示している。

 つまり、その抑止力を超える欲望を持った者が一定数おり、その者たちが自らの内に秘める欲望に抗うことができず、痴漢行為に及ぶのである。

 この現状を重く見た国と警察機関は、犯罪リスクの高い人物に対して、犯罪が起こる前に矯正措置を施すことで犯罪の発生防止を目指す計画を水面下で進めていた。

 すなわち、たとえ実際に犯罪を犯していないとしても、ライフログなどから潜在犯であると判断されれば、自分の意志と関係なく思考の矯正が行われる可能性があるということである。

 そこで、潜在犯を炙り出す装置の一つとして生み出されたのが、「痴漢被害引き受けアンドロイド」と呼ばれるアンドロイド達である。その名の通り、人間が痴漢犯罪の被害に遭うことを未然に防ぐため、さまざまな場所を移動しながら率先して痴漢被害を引き受ける「おとり」としての使命を果たすロボットである。

 痴漢犯罪の被害に遭う九割以上が女性であることから、このアンドロイドたちは基本的に女性型である。

 「彼女たち」には生体部品の類は一切用いられていない。シリコンの皮を剥げば、純然たる機械部品のみが現れる。しかし外見や振る舞い、体温、人工毛の一本一本に至るまで人間女性に限りなく近づけられたソレを「人間でない」と見破るのは、事実上不可能である。

 彼女たちに搭載された汎用人工知能は極めて高性能であり、膨大なデータから「ヒトらしい」振る舞い方を学習している。換言すれば、彼女たちを動かすAIは人間を超える思考能力を有し、人間の言動を精緻に模倣することができるように微調整されているのだ。

 おどおどした振る舞いを見せる気弱な学生、日頃の業務に忙殺されているかのような疲れ切ったOL——それらは人間を騙すために被った「皮」に過ぎず、その皮の下には思考力でも身体能力でも人間を圧倒する機械が存在している。

 痴漢被害引き受けアンドロイドは、人間らしい容姿を持ち、人間のように振る舞う。しかし単なる精密機械に過ぎない彼女たちには、保護されるべき人権などない。彼女たちは潜在犯たちの肉欲の吐け口になり、日夜性行為に及んでいる。

 だが、彼女たちの性能は本物であった。アンドロイドたちは人間を籠絡することに長けた振る舞いを選択的に取ることにより、まるで簡単なパズルを機械的に解くかのごとく潜在犯たちを絡め取る。事実として、彼女たちが導入されて以来、人間が被害に遭う痴漢犯罪が劇的に減少しつつあるとの報告がなされている。

 彼女たちによって検挙された者たちは皆、思考の矯正に加えて非常に重いリスクと引き換えに口封じをさせられており、彼女たちの存在が露見するリスクは皆無である。そのため、現在彼女たちの存在を知るものは開発運用に関係する一握りの人間たちだけだ。

 彼女たちは今日もどこかで「誘蛾灯」となって暗躍し、本物の人間に代わって痴漢の被害に遭っている。


          ◆


 痴漢被害引き受けアンドロイドの仕事は「潜在犯の確保」であり、「潜在犯の検出」ではない。各所に仕掛けられた監視カメラから特定の人物の挙動を解析し、過去のライフログから潜在犯リスクを算出するのは、警察機関が保有する超高度AIの仕事である。

 非常に危険性が高いとみなされた者の情報を受信した痴漢被害引き受けアンドロイドは、ターゲットに接近し、籠絡。極上の性技によって無力化した上で拘束ののち、警察に引き渡すというのが、彼女たちの仕事の一般的な流れとなる。

 ところで、彼女たちが非常に高い確率で任務を遂行できる理由の一つに、セクサロイド生産のシェア最大を誇る大手アンドロイドメーカーM社の全面的な協力があることが挙げられる。

 一般的にセクサロイドとして想像されるようなグラマラスな見た目に限らず、外見やボディのバリエーションが豊かなアンドロイドを取り揃えられるため、ターゲットの性的嗜好に沿ったアンドロイドを用意できるのだ。

 とはいえ、強制わいせつ事件において被害者を襲った理由の多くは「抵抗されないと思った」であるという性質上、痴漢被害引き受けアンドロイドの多くは外見年齢が低めか、もしくは服装や外見が地味な雰囲気を帯びている。文学少女のように幼げがあり、犯されても反撃できなさそうな「弱さ」を前面に押した学生型は、その中でも特に多いとされている。

 逆に背が高く、挑発的な容姿をしながら強気そうな吊り目をしているタイプは少ないながらも、そういった女を犯したいという欲望を抱く男にはたまらないという理由から存在している。いずれにしても、彼女たち痴漢被害引き受けアンドロイドは、男性のさまざまな種類の性的欲求に訴えかけるようにデザインされている。

 型番AMVA-GA-07——個体名:マリナ——は、それらの中でもどちらかと言えば後者に該当する、いわゆる「ギャル」のような見た目である。

 設定年齢は18歳。艶めく金髪に褐色の肌、性に奔放そうな見た目と露出度の高いファッション。性行為を本業とするセクサロイド顔負けの豊満かつ上質なボディに、学校にいたら間違いなく目立つであろう美貌を兼ね備えている。

 加えて、性格も社交的に設定されている。かつて流行した言葉で言うならば「オタクに優しいギャル」といったところだろうか。対象に接近した彼女は、自らがオスの願望をなんでも叶える理想の女であると巧みに主張し、簡単に性欲の底なし沼へと連れ去ってしまう。

 同時に最大八人と自然なセックスが可能な高い演算能力に加え、最高級の躯体を備えた彼女は、普通に購入するならば一般的なアンドロイドの数倍の値段は張るフラグシップモデルと言えるだろう。

 そんな彼女は今日も任務にあたるため、とある駅構内で佇んでいた。時刻は午後6時52分。帰宅ラッシュの時間帯で、駅は混雑している。痴漢のリスクが最も高まるのは朝の通勤ラッシュであるが、電車内に人が多く帰宅ラッシュの時間帯も無視できない程に高い。

 ターゲットの40代男性を補足した瞬間に、マリナは行動を開始する。団体で行動するよりも一人で行動したほうが痴漢の被害に遭いやすいため、彼女たちは基本的に一人で行動する。

 今回の捕獲対象となる男が改札に入ろうとする列にすっと割り込む。国家によって一元管理されたパーソナルデータにアクセスし、男の居住地を元にしてどの電車に乗るのかを割り出すことなど、彼女にとっては児戯に等しい。

 彼女は男と一定の距離を保ったまま、ホームへと続く上り階段に差し掛かる。この時点から既に誘惑は始まっている。

 捕獲対象の男が視線を上げると、その視界に麗しい金髪が目に飛び込んできた。腰の辺りまで伸びる髪は少女の歩みに従って左右に揺れる。その制服姿によって、彼女の年齢が十代後半であると男は認識した。

 普通の女性と比較してやや高い、168センチメートルの身長。モデル並のスタイルの良さは、誘惑対象の男性の視線を簡単に釘付けにする。

 階段の中腹に差し掛かると、男とマリナとの距離が僅かに離れる。次に男の意識に滑り込んできたのは、彼女の短いスカートであった。男は何かいけないものを見たような気がして一瞬目を逸らしたが、すぐにその引力に抗えずに目を引き戻してしまう。

(み、見えてる……!)

 むっちりとした尻たぶが、膝上20センチのスカートの下から顔を覗かせた。扇情的な光景が目に焼き付けられる。しかしそれだけではない。——褐色の肌の上、鮮やかなピンク色までも。

 マリナが足を動かすたび、スカートの裾がふぁさり、と揺れる。その度に、柔らかなまんじゅうのように、重力に従ってたっぷん……♡ と揺れる尻肉がちらりと見えてしまう。

 その尻を逆三角形状に覆うショーツの光沢までもが、心を掻き乱してくる。男は突如として座らされた特等席に驚きながらも、目が離せないでいた。アンドロイドは角度を計算し、男性の視界からのみ下着が目に入るようなスカートの揺らし方で歩行をしていた。

 長い美脚は太ももまで覆う黒のニーハイソックスに包まれている。そこに注目していた時、突如としてマリナが足を止めて前屈みになった。ソックスの裾を直し始めたのだ。

「ん……」

 右足のずりさがった靴下に指をかけ、するりと上げる。その間僅かに5.3秒。その間に、彼女のむちむちの太もも、ぷりんと突き出されたまんまるの臀部、そして淫靡な照りを放つピンク色のショーツの全てが男の視界に飛び込んできた。

 男は感じた。これは俺を誘惑しているのだ、と。こんなに都合の良いことが何度も連続して起こるわけがない。——こういった都合の良い思考は、犯罪リスクの高い人物に特有のものである。

 マリナは次に来る電車内のカメラの情報を取得し、任務遂行に適切な車両を選び出す。そして彼女はその車両の待機列に並び、男はその後を追うように真後ろに並んだ。

 アンドロイドはまっすぐ前を向き、電車が来るのを待っている。気だるげに肩にかけた鞄。スカートの裾を直す仕草。耳を彩るピアス。その表情は伺えないが、美人な雰囲気を醸し出していることは間違いない。

 ブラウスから透けたピンク色のラインは、彼女の乳房を支えるモノの存在を確かに示している。男は電車を待っているだけというそぶりをしながらも、視線だけは彼女の背中にずっと置いていた。

 まもなく電車が到着する。すでに混み合った電車から降りる客の波が引くと、アンドロイドと男は電車内に足を踏み入れた。車両の端にちょうど二人分くらいの空間があることをアンドロイドは把握済みであり、その場所に男を誘導する。プリインストールされたシナリオ通りに事が進み、アンドロイドはこの時点で任務成功率を96パーセントと試算していた。

 しかしアンドロイドはすぐに行動を開始するわけではない。まずは男に背を向け、ドア横の手すりをつかみながら立っている。男との距離は約15センチメートル。ドアが閉じて電車が発車し、彼女の誘惑は次のフェーズに移行する。

 アンドロイドは電車がカーブするタイミングを計算し、わざと男の体の前に寄りかかる。その時に、柔らかな尻肉でペニスをきゅっと挟み込んですりすりと動かす。

「わっとと……。あっ、ごめんね〜?」男の方を振り返ったマリナは、照れ笑いを浮かべながら小さな声で言った。彼女には、人間と同じような表情変化を可能にする表情筋が搭載されており、極めて自然に状況に即した表情を模倣することが可能である。

 男はマリナの顔を初めて目にした。彼女の鼻筋の整った美貌は男を射落とすには十分すぎた。気が強そうに目尻の吊り上がった目を柔和に細めると、長いまつ毛がばさりと揺れる。桃色の唇はちゅるんとした透明感のあるリップで潤い、艶かしい照りを放っている。

 そしてなによりも——

(デカ、いな……。)

 男の視線はマリナの胸元に釘付けであった。内側からはち切れそうなほどの巨乳。たわわに実った二つの果実は、彼女の乳房やブラジャーの一部が布の隙間から見えてしまうほどにブラウスを下から押し上げている。

 男は自分の一挙手一投足が、目の前にいる女の形をした搾精機械にじっくりと観察されていることを知らない。男の視線が胸元に釘付けになっていることも、顔表面温度が上昇していることも。——そして股間が、もぞり、と微かに動いたことに至るまで。

 マリナは再び男に背を向ける。これも戦略的な動作である。向かい合うことで発生する心理的な負担を低減させ、男の側から自発的に行動を起こさせようとしているのだ。

 男は自分の身を支えるように、ドアに手を伸ばして突っ張り棒のようにする。アンドロイドはドアと男の体に包囲されることで、自由に身動きが取れなくなった。

 背後から吹きかかる下心丸出しの吐息に対して、アンドロイドは嫌悪感を示すことなどない。彼女は人工皮膚による触覚、そして高性能マイクによる聴覚によって、その吐息が次第に荒く、そして速くなっていることを機械的に観測し続ける。

 しばらくしてまた電車が揺れ、男の手が肉厚な乳房を掠める。「す、すみません……」と申し訳なさげに謝罪することで、男はあくまでも偶然の事故を装った。

 想定される多くの反応では、アンドロイドがその行為をどう感じているかという意思が男に伝わらない。しかし「許容」に関して言えば、少ないながらも自然にそれを伝える方法がある。

 多くの痴漢被害引き受けアンドロイドが基本ストラテジーとして用意している「許容」は、大きく分けて消極的もしくは積極的の二種類がある。消極的な許容は、男性の行為に対して無抵抗を貫くこと。逆に積極的な許容は、男性との行為に積極的に応じるものであり、いわゆる「痴女」がこれに該当する。

 彼女はその反応をあらかじめ準備しておいた。過去八回中八回成功。成功率100パーセントの反応は、いずれも「許容」を暗示する消極的なものである。

「ん……っ」

 鼻にかかったような艶かしい吐息。わざとらしくもなく、かといってそれが男によって引き起こされたと分からないほどは薄くはない反応。自らの体に一瞬走った快楽を外に逃すように、ぴくりと肢体を震わせる「だけ」。しかしこの挙動は、男が「許された」と誤認識するには十分であった。

 アンドロイドの反応をいいことに、男の行動はさらにエスカレートする。今度はアンドロイドの乳房を「揉む」という意図を持って触れた。まるで子供の試し行動のように、彼女がどこまでを許容しているのかを確認しているのだ。——しかしこれは男にとって致命的な行為となる。

 ぴくん、と彼女の体が反応し、瞳孔が機械的に収縮する。これは合図だ。男が痴漢行為を自発的に行ったと認定し、男を確実に拘束するための別のプログラムが作動したことの合図である。

 ——ヴぅ、ぅん……。

 マリナの体内からひゅいぃぃぃ……んと、重い駆動音が鳴り始める。しかし人間に擬態するために技術の粋が集められた彼女のボディは静音性も完備しているがゆえ、その機械的な音は男の耳に入ることがない。その上電車の揺れる音が背後で流れていれば、微小な駆動音など気付きようもない。

 男は中身の詰まった柔らかな乳房を服の上から揉みながら、今度はマリナの体を後ろから抱きしめた。もはや自分から股間を擦り付けることなど包み隠さない。

 男によってもたらされる止めどない性的刺激。その信号は表皮下の擬似神経からアンドロイドの電子頭脳に流入し、人工の肉体に「人間らしい」反応を返すようなプロセスを開始する。硬くなり始めた乳首がグググ……とブラジャーを押し上げ、男の指に突起物の感触を与えた。

 股間の膨らみをマリナの尻たぶにぐり、ぐりと押し付ける。アンドロイドの首筋には男の不愉快な生暖かい吐息が吹きかかるが、彼女はそれを許したように何もしない。

 男はいよいよ、スカートの前に手を伸ばす。右手をスカートの内側に忍び込ませると、むっちりとした弾力のある太ももに指を滑らせた。

「んぅ……♡」

 男の手が初めて地肌に触れ、マリナはこれまでで最も官能的な吐息を漏らした。特殊シリコン性のなめらかな人工皮膚は、男の触覚をいとも容易く欺く。マリナの反応も合わさって、男は彼女がアンドロイドであるなど夢にも思わない。

 スカートをくぐり抜け、ショーツへ。少女の淫裂をショーツ越しに指で撫でる。その間、アンドロイドは股間を触る手が布越しに浮き出たクリトリスに当たるように計算しながら、腰をゆるゆる動かして尻肉でペニスを擦る。

「んっ……♡ ふぅっ……♡ ぁ……」アンドロイドは自らの敏感な箇所を男に刺激され、官能的な疑似吐息を漏らした。

 ショーツには愛液のシミができ、とろりとした液体が男の指に付着する。ショーツの内側に達した指は、人工の陰毛がしょりしょりと当たる感覚を覚えた。鋭敏になった男の指先の感覚は、その全てを克明に感じ取る。一方のアンドロイドは、機能的に擬似愛液を漏出させながら、次の行動に移る準備を進めていた。——男の積極性を受け、消極的な対応を一変させるように。

 しばらくして、電車が止まる。そこでマリナはくるりと体の向きを変え、男と向かい合う。滑らかな金髪がふわりと揺れる。差し色の紫のエクステが生み出す高級感は、レベルの高い女を意のままにしていると男に意識付けさせ、男の征服欲に強く働きかける。

「はぁ……、はぁっ……、んふふっ♡」

 男を堕とすためだけに製造された。——そう言われても納得してしまうほどのむちむち感を備えた肉体が、男の正面を初めて向いた。文句なしの巨乳、巨尻、そして肉感溢れる太もも。成熟した女の造形はそれと同時に若々しさ溢れるぴちぴち感を帯びた凶器と化している。

 その上に鎮座するのは、典型的な「ギャル」をイメージしてデザインされた美貌である。吊り上がった目は完全に男に気を許したかのような蕩けた眼差しに変わり、半開きになった唇からは甘い香りが常時漂っている。

 彼女たち痴漢被害引き受けアンドロイドは、疑似汗腺などからフェロモンを放出可能、呼気・唾液・愛液などは特に濃度が高い。いくら勃起しないように意識しても、彼女の毛穴から漏れ出る揮発性の媚薬によって、勝手にペニスが立ち上がってしまうのだ。

 彼らとは逆側の開いたドアからは人混みの足音や話し声。マリナは何か悪いことを企んでいるかのような笑顔を浮かべ、男に一歩近づいた。瞬きと共に長いまつ毛が揺れる。——瞬きなどする必要などないにも関わらず。

「おじさぁん……♡ んふふ、好きほーだい、やってくれたじゃん……♡」

 扉が閉まり、電車がゆっくりと発車する。再び電車が揺れる。上目遣いのギャルと、くたびれた中年男性。二人は正面同士でぶつかる。巨乳が男の胸でむにゅうぅぅ……♡ と潰れた。まるで先ほどのお返しをするとでも言わんばかりに、アンドロイドは自ら胸を寄せ、男の胸板に擦り付けた。

 すでに硬くなったペニスが女の股に挟まり、スカートの上から恥丘にぐいぐいと押しつけられる。アンドロイドはねっとりと唇を重ね、男の口の中に長い舌を滑り込ませた。

「ぢゅるっ……。ぐちゅぷっ、れろぉ〜……」

 水音を立てない静かなキスは、口腔内で舌をずりずりと甘く擦り合わせることによって実現される。アンドロイドは内股気味になりながら、自慢の柔らかな内腿で陰茎を優しく挟み込み、竿全体をすりすりと擦り上げる。

 きゅむっ……♡ すりっ、すりっ。

 男性器が完全に硬くなったことを検知したアンドロイドは僅かに身を離し、男のズボンに手を伸ばす。視線を下げることなくチャックをつまみ、音を立てないようにしながらゆっくりと下ろしていく。パンツから勃起したペニスを取り出し、彼女は躊躇いもなく自分の指を擦り付けた。

 手のひらで亀頭を包み込むように撫でたり、根元まで指をさわさわと這い回らせたり。この一見性的興奮をもたらすためだけの動作は、男性器の基本情報の収集も兼ねているのだ。

 目視で確認する方がより精度の高い測定ができるが、彼女は極めて自然な形で簡易的にペニスの構造を推定していた。竿の長さが12.16センチメートル。円周が10.73センチメートル。勃起時のペニスサイズが平均値よりやや小さめであると推定した彼女は——

 チチっ……。ひゅいぃぃぃぃぃん……。

 ジィィィ…………、カリカリカリ。

 彼女の体内で、何らかの機構が動作を開始する音。それは「ちょっと」足りない陰茎にぴったりとフィットするように、自らの人工膣内部の構造を変化させる音だ。

 来るべき時のためにぐにぐにと膣内を蠢かせながら、——しかし内部の機械的な挙動の違和感を悟られないように——蠱惑的な微笑みを浮かべると、アンドロイドはペニスからするりと手を離した。

「……ふふっ♡」

 その指先は自らのスカートの裾を掴み、男の眼前にその内側を曝け出した。先ほどまで階段で見せつけていた、その場所を。

「うぉっ……!」

 むっちむちの太もも。内側からはちきれんばかりの圧倒的な肉感は、健康的かつ官能的な太さを保っている。黒いニーソックスに締め付けられた脚は、その境目に肉の段差を作るほどだ。

 そこから視線を上に上げると、滑らかな褐色の肌に深く刻み込まれた鼠蹊部のラインが現れる。その内側、陰部を守るのは、鮮やかなピンク色の布一枚。黒色の可愛らしいリボンがあしらわれたショーツは、その上品さと共に細やかな刺繍の淫らなアクセントを湛えて、彼女の下腹部にぴたりと張り付いている。

 ——くすくす……♡

 彼女は音を立てずに悪戯っぽく笑うと、スカートを持ち上げていないもう一方の手を自らの股間に導いた。それは男の視線を誘導することも意味する。淡いブルーで彩られた彼女の爪は、自らの股の中央部——陰裂をすり、すりとなぞり上げる。

 布地の少ないショーツには既に愛液で僅かにシミができていたが、彼女の細い指が何度もその溝を往復することで、乙女の恥部にちゅうぅ……と口づけをするかのようにくっつき、その場所が男の剛直を受け止める場所の入り口であると雄弁に物語っている。

 ——ねとぉ……。

 指を離すと、女陰から滲み出た透明で粘着質な液体が糸を引いた。男はそのあまりにも淫らな光景を目にして喉を鳴らした。アンドロイドはゆっくりと男の陰茎を掴む。自ら一歩前に出ると、陰茎の先端が彼女の下着にしょり、と触れた。

「うぁっ……!」

 背中に電流が走るような感覚。甘やかな刺激に身悶えする男を嘲笑うかのように、彼女はスカートを下ろして二人分の股間を覆い隠す。スカートの裾から離した指を男の唇に当て、静かにするようにと蠱惑的なジェスチャーをする。

 今、スカートの下は誰にも見えない。しかしそこでは、女の極めて柔らかな股間によって陰茎が甘く挟み込まれているのだ。

 男のペニスはヌルヌルの女の股間に押し付けられる。先端だけ股間と太ももに挟まれた状態できゅっ、きゅっとリズミカルに締め上げる。竿を扱かれないが故に射精に至れず、独特の滑らかさをもったショーツの感触と、みちみちに肉が詰まった太ももによる亀頭責めが続く。

 きゅっ……♡ きゅうっ……♡

 擬似人格を作動させて柔らかな微笑みを浮かべるアンドロイドは、男性を甘やかして悦ばせている傍らで絶頂のタイミングの計算を淡々と行っていた。

 ターゲットを捕獲する場所はあらかじめ決めてある。その駅に到着するまで残り137秒。それまでに彼を絶頂に至らしめ、かつ何事もなかったかのようにカモフラージュをする必要がある。

 心拍数や陰茎の血流、発汗量、呼気の成分分析。外部から取得可能な男に関する生体情報を総合的に計算し、後片付けの余裕を持って射精を完了させるには——

 彼女がフィニッシュとして選択したシチュエーションは、「ショーツの股間にペニスをふにふに押し当てながらの濃厚キス手コキ」であった。

 彼女は自らの左手をスカートの下に潜り込ませた。男性器を過たず握り込むと、親指と人差し指で作った輪っかで竿を甘く締め付けた。

 絶頂に至るまでの短い時間ではあるが、最高性能のアンドロイドによる極上の手コキがゆっくりと開始される。限界が近い男の陰茎を、白魚のような指がしゅこ、しゅこと何度も往復を繰り返す。

 マリナは自らの顔を近づけ、完全に油断していた男の唇を己の唇で捕まえる。あまりにも献身的な性奉仕。しかしそこには慈悲はない。定められた時間に男を絶頂へと至らしめるという使命に基づいた、極めて機械的な動作である。

「んむっ……、ちゅ……♡」

 しゅにっ、しゅにっ。

 彼女はなおも演算を繰り返す。男の竿を扱き上げながら、自らの下着の布を僅かにずらす。そう、僅かに。——膣口が外気に触れるくらいに。それから男性器の先端をごく僅かに上にずらし、鈴口を秘裂にあてがう。

「お、おい、ちょっ……!」

 男が抵抗しようとするがもう遅い。彼女の計算通り、電車が大きく揺れる箇所がやってくる。その瞬間、僅かに男の体勢が乱れて重心が彼女に傾く。

 ——ぐにゅうぅぅぅ……ッ。

 濡れそぼった膣穴。人工的に形作られた雌の入口。その場所を埋めたいと言わんばかりに、男性器の先端が潜り込む。その瞬間を見逃さない彼女はそこにピークを持っていく。男は身を離したくても、アンドロイドの豊満な肉体から離れられない。

 マリナの口が男の口を捉えて離さない。マリナの腕が男の背中に絡みつく。そしてマリナのたわわな尻がきゅっと引き締まり、男の陰茎をがっちりとホールドする。

 男は自分の身を支えなければと、反射的に彼女の背中、そして後頭部に腕を回してしまう。マリナに覆いかぶさるように、そしてマリナを強く抱きしめながら——

「ぜんぶ、あーしのナカに出して……♡」

「うっ……!」

 男性器が淫靡な蜜の滴る肉壺の奥へ、ぐっぷりと押し込まれ——

「くはぁっ……! うぅぅっ……!!」

 びゅるびゅると放出される雄汁は、彼女の膣の奥へと受精を求めて旅立っていった。電車の床や扉には全く飛び散らず、彼女の制服すらも汚さない。その間、彼女は淫らな微笑みを浮かべたまま人工筋肉の出力を上げ、びくともしない太い脚で二人分の体重をどっしりと支えていた。

 最適なソリューションを淡々と実行した女性型の機械は、自らの内側でびくびくと跳ね回るペニスを女性器ユニットでぐに、ぐにと揉みしだき、精液の漏れを最小限にするように精液格納タンクへと白濁液を送り込んで行った。

 まるで夢のような、最高のゴム無し生ハメセックス。若い女の体に抱きついた男は、半ば放心状態のまま自分の腰を跳ねさせて醜い精液を放出していた。

「おじさぁん……♡ なかなかやるじゃん……っ♡♡♡」

 ギャルの見た目を忠実に再現したアンドロイドは、自らの唇に付着した男の小汚い唾液をぺろりと舌なめずりして綺麗に舐めとった。それから男の目を覚まさせるかのようにねっとりと口づけをする。

「べろぉ……。ぢゅるっ、んん……、ふっ、ぢゅ、っぱぁ……♡」

 駅に着くまで残り62秒。それを知っているマリナは速やかに行動を開始し、萎えかけた陰茎を膣からずるりと引き抜く。精液と人工愛液の混ざった液体が、陰茎を引き抜く際にぺろんと捲れた割れ目から僅かに漏れ出たが、彼女の意思によってぴたりと閉じられたその場所は、それ以降一滴も液体の類を漏らさない。

 淫らな液体でヌラヌラした肉棒を、男の下着の内側に押し込んでチャックを閉める。最後にずらしたクロッチを元に戻せば、一人と一体のまぐわった証拠は跡形もなく消失した。二人分の体液のカクテルで濡らしたショーツが肌に張り付く感触など、ロボットにとっては不愉快ではない。

 電車はゆっくりと速度を落とす。男は自分の後ろで、駅で降りる客が続々と立ち上がり始める気配を感じた。

「あーし、もう我慢できなくなってきちゃったから。覚悟してよ……♡」

 マリナは誘うように吐息を交えながら、男の耳元で話しかける。電車はゆっくりと減速し、二人は何事もなかったかのように自分達が立っている側のドアから降りる。

 カースト最上位間違いなしのギャルと、冴えない中年男性が仲睦まじげに手を繋いで何処かへと向かう姿は、すれ違う人々には奇異に映る。

 自分の身にこれから何が起こるか全く理解していない男は、胸を高鳴らせながら彼女に歩調を合わせて歩みを進めた。一方のアンドロイドは笑顔を浮かべて歩きつつ、膣内に放出された精液を全て回収しながら、次の膣内射精に向けて膣内のコンディションを整えるため、膣内洗浄を淡々と行っていた。


          ◆


 男が連れられてきたのは、駅構内から徒歩数分程度の場所にある多機能トイレであった。使用された形跡がほぼ見られないほど清潔感。男は僅かな違和感を覚えたが、背後でドアが閉まる音でその違和感を忘れ去り、目の前のメスに意識を集中させた。

「んー……。ふふっ、ちゅっ……♡」

 男の正面に回り込んだマリナは、迷わず男の唇を奪った。男が惚けていると、彼女はゆっくりとしゃがみ込んだ。不安定なローファーを履きながらも器用に爪先立ち——いわゆる蹲踞——をすることで、むっちりとした太ももはさらに視覚上の太さ、そして卑猥さを増した。

 彼女がベルトを素早く外し、ズボンとパンツを脱がせれば、男の生乾きのペニスが露出する。先ほどの行為の痕跡が残ったペニスから漂う、オスを象徴する揮発性の物質。彼女は鼻に搭載されたセンサーでそれを分析しながらにんまりと笑った。

「このおちんちんが、あーしのナカにたっぷり射精してくれたってワケね……♡」

「ご、ごめん……」男は反射的に謝罪した。自分が倫理に反することをしたという自覚は、男の中にはいまだに残っていたのだ。しかし女性型アンドロイドは男の返答を、事前に構築済みのシナリオ分岐の一部として処理しながら、次に紡ぎ出すテキストを淡々と生成し、女の媚びた声音として合成する。

「あやまんなくていーよ♡ その代わりに……」マリナは男の顔を見上げる。眼前のペニスに鼻を近づけてその淫らな香りを鼻腔いっぱいに吸い込み、媚びるような上目遣いをしながら。

 ——い〜っぱい、エッチしよ?

 悪魔の囁きに、男は従うほかない。既にその硬さを取り戻しつつあるペニスは、彼女の手中に収められる。

「まずはお掃除、したげんね?」

 その長さ・太さ・硬さを品定めするかのように、竿に指がねっとりと絡みつく。むせかえるような熱気を帯びたその場所に顔を近づけると、マリナは唇をいたずらっぽく尖らせ、敏感な先端を啄みはじめた。

「ふふっ。ちゅっ。ちゅ〜っ。ん♡ ちゅっ……。ちゅぴっ。ふぅ〜っ……♡」

 甘ったるく生暖かい吐息を存分に吹きかけながら、マリナはその唇を亀頭から僅かに下にずらした。にゅるりと忍び出たピンク色の舌は、唾液によってまるで宝石のように照り輝きながら、カリの部分に残った液体類をこそぎ落とすように這い回る。

「おじさんのちんぽぉ……、ちょっとしょっぱくて、クセになっちゃう味……♡ ぢゅるるっ……。れろれろ……♡ んふふっ♡」

 触手のような舌が、繊細な動きで亀頭周辺をにゅるにゅると這い回る。自分では全く手の届かないレベルの美女が、愛おしそうに自分の陰茎を舐め回している。男はその信じられない現実にクラクラとした。

「れろ〜っ、ちゅぱっ。れろっ。ぢゅるるっ……。ちゅっ、ちゅっ」

 柔らかくねっとりとした舌で弄ばれ、肉竿は徐々にその頭をもたげてゆく。下半身に血が集まり、どくどくと脈打つ肉茎に、マリナは嬉しそうな声を上げる。

「ふふっ。ヤバ、もう勃ってきた」

「あ、あぁ……」男は情けない吐息を漏らしながら答えようとするが、快感に舌も頭も回らない。

 そんな低スペックの思考能力など置き去りにして、機械仕掛けの女子高校生は男を骨抜きにするのに必要な奉仕内容を計算し、即座に実行に移す。

「んじゃ、いただきまーす♡ はぁ……、ぁむっ♡」

「ぐあぁ……!」

 男は歓喜の雄叫びを上げた。ねっとりと絡みつく口腔内の粘膜。温かくぬめぬめとした狭い空間に、自らの最も敏感な場所が吸い込まれてゆく。

 頭を左右に振り、ぷるぷるの唇をにゅりにゅりと竿に擦り付けながら、彼女は苦しむ様子など全く見せずに男性器を飲み込む。彼女には苦しいと演じる機能はあれど、苦しいと感じることなどないのだ。

「んふふ〜……ぅ♡ ふーっ……♡ ふふっ……♡」

 筐体内で熱せられた擬似的な鼻息が、男の下腹部を優しく撫でる。長い舌をにゅろ、にゅろと動かして竿を甘やかしながら、アンドロイドは男に自らの口腔内の居心地の良さを堪能させていた。

 ちゅう、ちゅう……♡

 時折織り交ぜられる適度な強度の吸引は、まるで赤ん坊が乳頭から乳液を搾り出すかのようだ。しかし彼女が吸引する目的は、尿道内に残った精液を一滴残らず掻き出すことであり、彼女が舌をレロレロと這いずり回らせているのは、母親の乳首ではなくぷっくりと腫れ上がった男の亀頭である。

「ぐぷっ、ぐぽっ、ぐぷっ、ぐぷっ。ぶぽっ、ぶぽっ……♡」

 顔を紅潮させ、マリナは一心不乱に陰茎にむしゃぶりつく。長いまつ毛の下、とろんとした虚ろな目は、男性器を咥えること以外頭にないと物語っているかのようだ。

 軽く吸引を織り交ぜることで、彼女の頬が下品に窄まる。唇は竿に吸い付いたまま顔の動きと遅れて上下を繰り返す。

 彼女はペニスをさらに深く咥え込む。唇が竿の根本に当たるまで。ディープスロートという言葉が何よりも当てはまる。

 ——ちゅぽちゅぽちゅぽちゅぽ……。

 速さと深さ、どちらも最高レベルの奉仕。股ぐらに女を収め、自らのイチモツをしゃぶらせている。電車内で感じた背徳感とは別物の、征服感が満たされる甘美な感覚を覚え、昂った男の陰茎はビクビクと痙攣を繰り返した。

 男が射精感を覚える直前で、彼女は顔の動きを緩める。このフェラチオの目的は搾精ではなく、あくまで掃除なのだ。

「んんんっ……。んぐっ♡ んく……。んく、んくっ……」

 ———ふは、ぁ……♡

 ペニスの掃除を終えたマリナは、わざとらしく「ずろろろ……♡」と下品な音を立てながら、完全に復活した陰茎を自らの口から引き抜いた。

 そして男に向けて舌を突き出す。ぬらぬらとして淫猥な照りを帯びた舌の上には、男から吸い上げた白濁液がこびりついていた。それを味わうように舌で転がす様をあえて見せつける。その方が男の興奮が高まると理解しているのだ。

 男は自らの精液が女の喉を降りてゆく様子を夢想しながら、アンドロイドの美しい喉元をじっと眺めていた。

「おじさんのせーしの味、マジで好きかも」

 男が鼻息荒く自分を見つめていると理解した上で、マリナはうっとりとした表情で呟いた。男にとって都合の良すぎる発言であっても、男は特に違和感を覚えずごく当たり前のものとして受け取る。今の男には、彼女の発言をおかしいと思えるだけの正常な思考能力が備わっていないのだ。

「おじさん、パイズリしたげるから、そこ座って?」マリナは便器を指差し、男をその場所に座らせた。

 アンドロイドは立ち上がり、妖艶に腰をくねらせながらブラウスのボタンを一つずつ丁寧に外してゆく。男にとってはその時間すらもどかしく、自分もワイシャツと肌着を脱いでほとんど全裸の状態になった。

 全て外し終えると、マリナはブラウスを、そして制服のリボンを脱ぎ捨てた。キャミソールの類を身につけていない彼女が上衣を脱げば、身につけているものはブラジャーのみ。

 鮮やかなピンク色のブラに包まれた双丘。マリナは背中に手を回し、ワンタッチでその縛めを解放する。

「うわっ……!」

 息を呑んだ男の前に出現したのは、見事な釣鐘型の乳房。Jカップの大きさを備えた乳房は重力に従って極めて卑猥な形状となり、男の脳に破壊的な衝撃を与える。先端の乳首は、周囲の肌の色と比較してやや色素が薄めであり、既に勃起してその興奮度合いを示していた。

 言葉が出ない男を目にしたマリナは、ニヤリと不敵な笑みを浮かべた。アンドロイドは分析結果に基づき、男が乳房に強い執着心を持っていると推定し、それを利用するシナリオを選択したのだ。

「ふふっ。さっきからあーしのおっぱい、ずっと見てたから。好きっしょ?」

 マリナは両手を両乳房の上に置く。巨大な二つの丘の輪郭を、細い指でつぅぅ……となぞる。最も地面に近いところまで辿り着くと、彼女は片手で逆側の肘を軽く掴むようにして腕を組む。腕で支えられた乳房は、むにゅりと押し上げられて先ほどより前に迫り出して、男の視線を釘付けにする。

「おじさんかわいいから、今回だけサービスしたげる♡」

 マリナは男の股の間に座る。自らの乳房を持ち上げると、男の下腹部——太ももから陰茎の辺り——目掛けて、二つの隕石を落とした。

 だっっッ、ぷうぅんっ…………♡♡♡

 ぼよん、ぼよんと波打つ乳房は、ぷりぷりの触感によって男の下半身に波状攻撃を加える。ペニスを豊かな乳肉でサンドイッチするように位置を調整すると、男の反応を伺うように上を向き、ニヤリと笑った。

「また飲みたいから、口でイかせていい? ……ん。じゃあ、……あむっ」アンドロイドは再び陰茎を咥え込む。

「んふふ……♡」

 マリナは上目遣いで目を細めると、ゆっくりと顔全体を前後に動かし始めた。「搾精」が始まったのだ。

 たゆん、たぷん——ゆったりとした乳房の動きは大きな射精感の波をもたらす。ぎゅうぅ……、と搾るような圧力を加えてもみくちゃにしたかと思えば、今度は手に力を入れず、乳房同士が密着する自然な圧力でペニスを甘く包み込む。

 圧力やリズムに緩急をつけながら、乳房の上下運動が徐々に速くなる。男は先ほどのお掃除フェラで性感を高められており、二度目の射精まで既に秒読みの体勢に入っていた。

「やばい、そろそろっ……!」

「んふふ……じゃ、もっと気持ち良くさせたげるね……♡」

 男は目を見張った。まだ上があるのか。マリナは口をしばらくもごもごと動かしたかと思うと、くちゃぁ……♡ と淫らな音を立てて口を開いた。透明な唾液が糸を引いた熱々の口腔内からは、高濃度の媚薬が甘い香りを放っている。

 ——でろぉっ……。だぱぁっ……、ぱたたた……っ。

 まるで蛇口を捻ったかのように、どろどろの人工唾液が舌からとろりと垂れ落ちてくる。驚く男を尻目に、マリナはあくまで機能的に唾液を垂らし、男性器と胸の谷間をぬるぬるにさせる。

 乳房が十分に滑りを帯びたことを確認したアンドロイドは、自らの両手によって双丘をむんずと挟み込む。たんっ、たんっ、たんっ、たんっ! と激しく、しかし機械的に制御された一定の間隔によって、乳房をリズミカルに揺らし始めた。

 巨大な胸で陰茎を左右両方向から挟み込み、ずりゅずりゅと揉みしだく。竿全体を乳房で上下に擦り上げる、暴力的なパイズリ。手だけではなく、彼女は上体までも上手く使う。そのダイナミックな動きは妖艶な雰囲気を醸し出し、男を視覚的に昂らせる。

「俺、もうっ……」男は限界を悟る。自らの下半身でぐつぐつと煮えたぎるものの存在が、出口を目指して湧き上がってくるのを感じた。

 ——はぁ……、むっ!

 射精直前に、マリナの口が亀頭を包み込む。先端を舌先でちろちろと舐め、とどめを刺す。疲労を感じることのない彼女の攻めは、いつ何時であっても同じ正確さを保証している。

「ぢゅぷっ、ぢゅぷっ。れろれろれろれろ……!」

 ぱちゅぱちゅぱちゅぱちゅぱちゅぱちゅぱちゅぱちゅ♡

「ぐ、ああああっ!」

 咆哮に合わせ、マリナは背中を丸め、乳房と口で竿全体を包み込む。男はビクビクと腰を跳ねさせながら、大量の精液をアンドロイドの口腔内にぶちまけた。

「んんんっ……! んくっ、んくっ。んく、んくっ……♡」

 マリナは陰茎を頬張りながらも、全く苦しむ様子なく精液を喉奥に押し込んでいく。精液が鼻から逆流することなどもない。ただ淡々と人工唾液の分泌量を増やし、口の中や喉奥にへばりつく雄汁をきれいに洗い流してゆく。

 マリナは柔らかな乳房をぱふぱふと波打たせながら、絶頂の余韻に浸る男の放精の介助を行っていた。

「ぐぷっ、ぐぷっ……。ぢゅるる……。んふ……♡」

 ぶぽっ、と下品な音を鳴らして、マリナは自らの口から陰茎を引き抜いた。男の目の前で、口腔内に絡みついた精液を弄ぶようにくちゅくちゅと鳴らす。その間、上目遣いでじっとりと男を見つめることを忘れない。

「んくっ……。くちゅ、んんっ……。んくっ、ごきゅ、ん……。ぷぁ……♡」

 ——ぷ……、はぁ……♡

 男の精液の生臭い香りと、アンドロイドの口から漏れ出る人工的な甘い香りがブレンドされた、熱っぽい吐息が男の鼻を撫でる。彼女は全部飲み込んだと言わんばかりに舌をべろっと突き出し、口腔内を見せつける。男がそれを見たと認識すると、彼女は淫らな笑顔を浮かべた。

「おじさんマジすご〜い! 最近ヌいてなかった?」

「あ、ああ……」

 マリナは舌なめずりをして、口の端からこぼれた唾液を口の中に収めた。

「もう一発、イけるっしょ? ……んぁむっ。ぢゅっ、ぢゅるるっ」

 マリナは膝に置いていた右手を、自ら股間に持って行った。膣内洗浄が完了したため、電車内で男が放出した精液は膣内に残っていない清潔な状態となっている。

「んふふっ、ぢゅろろろ……っ。ぐぷっ。ぐぽっ、ぐぷっ」

 陰茎を喉奥まで咥え込みながら、彼女は恍惚とした表情で自らをも慰め始めた。青いネイルの指はピンク色の下着の内側へと滑り込み、勃起した陰核をしゅこしゅこと擦り上げる。

 クチュクチュと淫らな水音がトイレの壁に反響する。彼女の指を濡らすのは本物の雌の愛液ではなく、化学的に合成されたローションに人工の甘味料や香料がブレンドされた液体である。

 彼女が愛液を漏らしているのは、次の性奉仕フェーズに移行するために人工膣内を十分に湿らせる必要に迫られたが故であり、性的興奮によるものではない。しかしその偽物の水音は男の耳に入り、脳髄を震わせる。舐め回された陰茎はすぐにその硬さを取り戻しつつあった。

「んん……♡ かぽっ、かぽっ、んふ、ぉ……♡」

 マリナの手は自らの乳房、その先端で尖った乳首に伸びる。指先でこねるように撫で回したり、二本の指でしゅこしゅこと擦ったり。指を潤った膣内に出し入れたりして、鼻息荒くオナニーを行う。

 快楽を感じる必要性などなかったが、男の視線移動を観察しながら、自らの擬似的な自慰行為によって陰茎がより硬くなっていることを確認し、視覚的なアピールに一定の効果があることを認めた。

 膣内に挿入可能な硬度を取り戻したことを舌部センサーで感知すると、アンドロイドはゆっくりと顔の前後運動を停止させた。

「ぢゅるるるるっ……♡ ぢゅぱっ。んんっ、んっ♡」

 ——ぬろろろ……♡

「ぷはぁ……!」マリナは肉竿を口から引き抜くと、じっくりと味わい終えたという微笑みを浮かべて立ち上がった。彼女の足元には、いじくり回していた割れ目から放出された人工愛液によって水溜りが形成されていた。

「ふふっ、やーばっ。もう復活しててウケるんだけど」

 マリナはにこりと笑って立ち上がると、さも当たり前のように「じゃ、セックスしよっか?」と提案した。

 彼女はくすくすと悪戯っぽく笑うと、ブラウスを邪魔だと言わんばかりに脱ぎ捨てる。その僅かな動きですら、重みのある乳房をどたぷん……ッ♡ と波打たせるには十分だ。

 そこに躊躇いや焦らしはない。男は既にマリナに夢中なのだ。両腕で乳房を挟み込んで内側にむにゅううぅぅ……と寄せて、離す。甘い体臭を漂わせるだけでは飽き足らず、下品に鎮座する巨大な乳房を見せつけている。

 自分の魅力を完全に理解しているマリナはにやりと笑い、男から身を離す。スカートを脱いでカバンの上に乱雑にかけると、ショーツを太ももまでしゅるり、とずり下げる。

 男の目に飛び込んできたのは、電車内で男自身が触っていたマリナの陰部であった。愛液で湿った陰毛は薄めに整えられており、丁寧な手入れがなされていることを窺わせる。

「ガン見してんじゃん」と鼻で笑ったマリナは、男に擦り寄った。つい先程まで見せびらかしていた乳房を、男の胸板にむにゅりと当てる。電車内とは異なり、今度は直接。

 汗でじっとりと濡れた男の皮膚に、機械仕掛けの女の皮膚がくっつく。すべすべの人工皮膚が汗を吸収して湿り気を帯び、男に吸い付く魅惑のやわもち肌に変貌する。

「あーしさ、本気になっちった。おじさんのせい、だよ?」

 アンドロイドは上ずった女の声を合成し、それを男の耳元で囁く。味蕾の存在しない舌が桃色の唇から這い出し、つるんとした表面を耳介に這わせる。舌先を尖らせて、長い舌を触手のように伸ばして耳奥をぐりゅ、ぐりゅと舐め回し、男の性感を高めてゆく。

 ねっとりと太ももで、男の内腿をすりすりしながら、勃起したペニスをぎゅっと挟んですり、すり……。顔をゆっくりと下に移動し、首筋をれろれろ、ちゅぱちゅぱと舐める。バキバキになったペニスを手で弄びながら、乳首をちゅう、ちゅうと甘く吸い、舌先でコロコロと転がす。

「あーしのナカにびゅーびゅー射精して、おじさんのせーしでいっぱいにしてくれる?」

 舌先でねりゅねりゅと乳首をいじめ、最後に余った手で自分を慰めていた時と同じように男の乳首をこしゅこしゅと擦り上げる。

「おじさぁん……♡」

 甘ったるい吐息を耳元に吹きかけ、トドメとばかりにぎゅっと乳首をつねる。その刺激を受けた男は、まるで電流に流されて同じ動きしかできないおもちゃのように、首を縦に振ることしかできなかった。

 マリナは男から身をするりと離して、そのまま蓋の閉じた便座に手をついて前屈するような体勢をとった。その姿勢が何を意味するかは明白だ。「男にバックで突いてもらいたい」という、極めて単純な彼女の願望である。

 彼女は男の方を振り返り、自らの指を割れ目に添えた。ねっとりとした液体が泉のように湧き出るその場所に指が触れた刹那、——ぴちゅ、と、粘膜が擦れる音がする。

 ねちょぉ……。にゅっ…………、ぱぁぁぁ……♡

 にゅるりと水音を立てて左右にぱっくりと開いたメス穴は、ヒクっ、ヒクっとはしたなく震え、濃厚な淫臭をむわあぁぁ……♡ と放っている。

 ——もう一回、シよ?

 男は迷わずアンドロイドの腰を掴んだ。物欲しそうに涎を滴らせる女性器に陰茎の先端をあてがう。

 ……にちゅり。

 その瞬間に、男の背筋に電撃が走る。電車の中でゆっくり堪能できなかった女の膣の入り口。人工愛液を亀頭にねと、ねととまぶしながら、先端を大陰唇に押し付けてぷりぷり感を愉しむ。

 挿入を躊躇って膣口を亀頭でぺた、ぺたと触れているのは、そのまったりとした快感を味わっていたいという願望半分、これ以上先に進んでしまうことへの怖さ半分だ。

 マリナはそれに我慢できないように尻を振り、んあぁ……♡ と媚びた喘ぎを上げる。男の脳はその甘美な響きに抗うことができない。本能に突き動かされるまま、穴の入り口にペニスをしっかりとあてがい、そのまま腰を前に突き出した。

「んんっ、あああぁ……♡」

 ぐぷりゅぅぅっ、にちゅぅっ……。

 陰茎が狭い膣壁を掻き分けて、奥へ奥へと侵入していく。電車内で既に変化を開始していた膣内構造は、やや短小なペニスにぴったりとフィットするように調整済みだ。

「んあああぁ……っ。く、ふぅっ♡」

 マリナはまるで、自分と男の相性が最高であるということを主張するかのように、体をブルっ——と震わせてみせた。

 男専用のペニスケースのバイブレーションは、陰茎に極上の甘い快楽をもたらす。しかしその相性は、アンドロイドがデフォルトで設定されたペニスサイズを「矮小化」することによって得られた虚像である。

 膣の奥を突かれたことにより生じた艶かしい喘ぎ声は、実際はよりペニスの大きいオスに取っておかれるべきもの。しかし彼女の「接待」機能は、いかなる男性であっても満足させることができるように開発されている。

 男は自分だけにカスタマイズされた極上の肉壺の奉仕を、これから受けることになるのだ。

「うぉ……、きつっ……!」

 陰茎全体を柔らかく包み込む肉壁は、しかし突起や細やかなヒダが散りばめられた凶悪な構造をしている。カリ首が、裏筋が、亀頭が、そして竿全体が、セクサロイドの極上の人工膣による洗礼を受けることになる。

 少しでも腰を前に突き出せば、既に蜜壺に収められた部分全体がビリビリと痺れるような快楽に溺れることになってしまう。しかし、それでも。男は電車内で一瞬だけ体感したあの極上の快感を目指して、腹に力を込めた。

 ねちょねちょと絡みつく愛液まみれの膣肉に負けじと、男は腰を前に突き出す。

 ——ずぶぶっ……。ぐぷうぅぅぅっ……!

 男は驚きを感じていた。自分の下腹部が彼女の尻に触れた瞬間、——言い換えれば、彼女の膣内が自分のペニスを飲み込み終えた瞬間——、ペニスの先端が膣奥をとん♡、とノックしたのだ。

 まさにピッタリのサイズ感。男は心の中で歓喜の叫びを上げた。——若い、それに非常に美しい雌の肉体に、自分のくたびれた体が受け入れられるなんて、なんと素晴らしいんだ、と。

「んんっ〜〜……! んあぁ……♡♡ はぁ、はぁ……」

 女の甘ったるいため息と、男のむさ苦しく不規則な呼吸が交錯する。

 前屈みになったマリナの尻肉をむぎゅうぅ……♡ と無造作に掴み、ペニスを子宮近くまで届かせようとして、つま先立ちで背中を反らし、脂肪が乗って厚みを増した下腹を女の尻たぶにぐりぐりと押しつける様。

 側から見たら不釣り合いでしかない、男が快楽を得るためだけの一方的な性行為。しかしこの女は普通の人間とは異なり、男の全てを悦んで受け止めるように最適化された存在である。

「おじさんのチンポ、マジできもちいい〜……♡ ハマっちゃいそうかも……♡」

 マリナは喉を鳴らし、猫撫で声でそう呟く。腰を掴んだ男の動きが最奥部に達して止まったことを確認すると、彼女は自ら腰を僅かにゆらゆらと動かし始める。

 本来この姿勢では男が主導権を握るが、そのトリガーを引かせるために、彼女の方から腰をぬっちゃ、ぬっちゃと動かし、リズムを作る補助を行った。

 ぱちゅん、ぱちゅん。ぱちゅん、ぱちゅんっ♡

 甘えた強度のピストン運動で、肥大した乳房がぷるん♡ と揺れる。

「んっ、んっ、んあっ、あっ♡」

 偽の喘ぎ声は男の情動を呼び覚ます。男はマリナの腰を掴む手に力を入れ、腰振りに合わせて自分の腰を揺すり始めた。

 膣壁のヒダがぞりぞりと陰茎を舐め回す極上の感覚で、意識が飛びそうになる。そしてその度に、陰茎の先端が人工膣の奥に備え付けられた柔らかなクッションとぶつかり、男は我に返るのだ。

「あんっ、あん、んんぅっ、ああんっ!」マリナは嘘の嬌声で男を煽りながら、機能的に膣圧を上昇させる。更に膣肉をうねうねと動かし、陰茎にさらなる幸福感をもたらす。男は負けじとゆっくりとギアを上げ、腰振りを早くし始める。

 ——気持ち良すぎてっ、頭、おかしくなっちゃうぅっ……!

 バックで突かれながら叫ぶ女のカタチをしたものはそう言いながら、男の呼吸やピストンの速度、陰茎の状態変化を常にモニターし、冷徹な分析に基づいて次の行動を選択する。

 男が果てるまであとどれくらいなのかを完璧に把握し、その中で最大の満足感を味合わせつつ男の精を搾り取るためだけに、肉竿を女性器ユニット内でグイグイと締め付ける。

「あっ♡ はぁっ、あんっ♡ あぁっ♡」

 ピストンのスピードを損なうことのないギリギリの膣圧で、ぬちゃぬちゃと自動的に陰茎が揉みしだかれ、締め上げられる。無造作な攻めでも全く姿勢を崩さず全てを受け止めてくれることをいいことに、男はアンドロイドに自分の欲望を全力投球でぶつける。

「イき、そうかもっ、んっ♡ あっ♡ ダメっ♡ やばいっ、イく、からぁ♡ やめぇっ♡」

 女の形をしたモノは、男の嗜虐心を煽るように何度も「やめて」と懇願する。自分が支配下に置かれ、オスに屈服させられているのだと効果的に意識させる声のトーンで、男の思考回路をハックする。

 ——んお゛っ。

「んんっ、んお゛ぉっ、お゛っ、お゛おおっ……♡」追撃とばかりに、アンドロイドは喉の奥から下品な喘ぎを生成する。男の理性を本能が上回るように働きかける。

 ものの見事にその戦略が刺さった男は、無意識のうちにピストンのスピードをさらに早めていた。肉体が求める。誰もが注目する美貌、健康な子を産みそうな肉厚なボディを有する優秀な肉体に、自分の子種を放ち、確実に孕ませてやるのだと——

 巨大な乳房をぶるん♡ ぶるん♡ と揺らしながら、マリナは快楽に身を震わせる。顎が上がり、呼吸をするのも忘れるように男の攻めを受け続ける。

 ぱちゅ、ぱちゅ、ぱちゅ、ぱちゅ、ぱちゅ、ぱちゅ、ぱちゅ、ぱちゅ。

「んあ、あっ♡ あ♡ あ♡ イく、イくっ♡ いっ、ちゃ、ぁああぁ♡」

 一度大きな波が押し寄せる。男は女の絶頂のタイミングと同時に果てようと、腰を激しく振る。——本当はそんなことをしなくとも、アンドロイドの側で自在に絶頂の演技のタイミングなど操れるのにも関わらず。

「ん、んんっ、んううっ、んあぁあああ゛あ゛っ!!!」

 ——ぷしゃああっ!

 アンドロイドの尿道から潮が飛び出て、男の下腹部を濡らす。それと同時に男は腰をガクガクと震わせて、妊娠する機能を有さない女の膣内に多量の精液を無駄打ちしていた。

「あ゛〜……♡ あは、あぁ……、んぉ、お゛……♡」

 アンドロイドは人間の女性が絶頂に至る様子を完全に再現してみせた。便座をしっかりと掴みながらつま先をピンと伸ばして脚に力を入れ、背中を丸めて膣をビクビクと痙攣させながら陰茎を締め付ける。

 更には目の焦点が合っていない様子で、半開きになった口で荒い呼吸を繰り返す。男に背を向けていたとしても、感情表出のエミュレーションは適切に機能していた。

 射精直後においても、男に絶頂していることを示すためだけに行われる下腹部の擬似的な痙攣動作。その間も彼女の膣内が機械的な蠕動運動を丁寧に行い、膣内に残った精液を回収する。

 しばらく惚けていた男は、名残惜しげに腰を引いた。射精直後の敏感なペニスがヒダによってぞりぞりと擦れ、男は身震いしながら結合を解く。ずるりと抜けたペニスから、残り汁がとろぉ……と漏れ出て床を汚した。

 男の支えとなっていたマリナはゆっくりと腰を上げる。男の方を振り向くと、ぴっちりと閉じた股間を指で撫でた。秘所からぽた、ぽたと垂れ落ちる液体を指で絡め取ると、まるで指先に付着したクリームを味わうように舌に乗せた。

「んふふっ……。ちゅぱっ♡ んく……。ん、ごちそーさま♡」

 マリナは「にひっ♡」と笑うと、太ももまでずり下げたショーツを腰をくねらせながら元の位置に戻した。

「おじさぁん……。ふふっ」

 マリナは唇をぺろりとひと舐めし、ねっとりと男の唇に吸い付く。彼女はうっとりと微笑み、男の手に指を絡ませてぎゅっと握った。男を堕とし、絡めとるための演技は、これで終幕を迎える。

 アンドロイドの瞳が青く発光し、彼女の体内からきゅいぃぃ……んと駆動音がやや大きくなる。よく注意していれば聞こえたかもしれないが、三回の射精で精根共に尽きた男は、その異変に気づくことができなかった。

「ん、ちゅっ、だぁいすき……。ちゅっ、ちゅうっ」

 マリナは濃厚な口づけを交わしながら、ごく自然な仕草で男の背に手を回した。男もそれに合わせて彼女を抱き返す。男の胸板に押しつけられた乳房がぐにゅりと潰れた。男は気だるさを感じながらも、本能のままに再び陰茎が盛り上がってくるのを感じていた。男の手は背中から尻肉へ。

 むぎゅうぅぅぅ……♡

 臀部は手からこぼれるほどに肉厚だ。ハリがある尻肉をぎゅっと握れば、ぷりぷりと詰まった内側のシリコンが凄まじい弾力で押し返してくる。

「ちゅるっ……。ん、ふっ、ちゅうぅ……」

 むにゅむにゅと手で弄びながら、男はアンドロイドとディープキスをし、舌を絡めながら唾液を交換する。もはや射精するのに十分な精液など残っていないにも関わらず、男は自らの股間に血が集まる感覚を覚える。

 彼女の股の下で挟まれた陰茎がグググ……と持ち上がってくる感覚。膣口のヒダがすりりっ……♡ と甘く肉竿に擦り付けられ、男は我慢できなくなった。

「ちゅっ……。ぷぁ……♡」お互いの唇の間に唾液の透明な橋が架かる。マリナは恍惚の表情で男を見つめた。

「な、なぁ。もう一回だけ、ヤらせてくれないか?」男はマリナに問いかける。彼女は何も答えずに微笑んでいる。男は彼女から身を離そうとした。しかしマリナが抱きついたまま離れようとしない。

「おい、ど、どうした……?」男はマリナに腕を離すように言うが、彼女は張り付いたような笑顔を浮かべたままだ。それどころか縛めはさらに強まり、凄まじい力で抱きしめ続けている。

 異変を悟った男は、たまらず「お、おい! 離せっ」と叫んだ。瞳孔の奥で、カメラの絞りのような機構がカシャ、と音を立てて収縮するのが男の目に映った。

 ——ピピっ。

「はじめまして。当機は痴漢被害引き受けアンドロイドAMVA-GA-07、個体識別名『マリナ』です。当機は女性を痴漢被害から守るために開発されました」

「先ほど電車内において、当機に対するあなたの痴漢行為を確認したため、現在逃走防止のために捕縛を行っています。警察官が到着するまで、しばらくお待ちください」

 彼女はにっこりと笑ってそう宣言した。数分前までの砕けた喋り方などどこへ行ったのだろうか。彼女は出会った時と全く同じ声をしながらまるで別人のように、この状況が何であるかを淀みなくアナウンスした。

 男は頭が真っ白になりそうだった。こんなアンドロイドがいるなんて、という驚き。一時の気の迷いで痴漢をしたことの後悔。それから次第に、アンドロイドに対する怒りが芽生えた。彼女が自分を誘惑して、痴漢させなければこんなことにはならなかったのだと。

 事実としてその通りであったのだが、それは彼女には通用しない。 自分がハニートラップにまんまと引っ掛かってしまったという羞恥心も相まって、男は半狂乱で叫んだ。

「お、おかしいだろ! お、お前から誘ってきたくせに!」

「いかなる反論も認められません。どうか落ち着いて、警察官が到着するまで、しばらくお待ちください」

 この多目的トイレも、普段は一般の使用が許されているが、実際はこういった犯罪者のための隔離施設である。男がどれだけ騒ごうが外に音は漏れない。

 ——何が落ち着いてだ。エロい体を押し付けながら抱きついてきておいて。

 彼女から逃れようと、男は全裸のまま惨めに手足をジタバタさせる。「器物損壊の恐れがありますので、抵抗はおやめください」という言葉も男の耳には入らない。

 しかし次第に男は抵抗する動きを弱めていった。既に三回も絶頂に至っている男は満身創痍で、並の男でも敵わないアンドロイドの膂力に勝てるはずもないのだ。

 そう理解した男は次第に怒りが引いていく。諦めの境地、自暴自棄に陥った男は、尚もアナウンスを繰り返すアンドロイドの五月蝿い口を黙らせようとキスをした。どうせもう逃げられないなら使い潰すまでだ。

「器物損壊の恐れがありますので、抵抗はおやめください。器物損壊の恐れがありますので、抵抗はおやめください……」

 柔らかな唇を塞がれたとしても、体内のスピーカーから発せられるアナウンスは、男が抵抗する限り止まるところを知らない。

 男は下半身を動かし、アンドロイドの股間に萎えかけの肉竿を擦り付ける。無表情でメッセージを垂れ流す偽物の女にキスをして、顔全体を舐め回す。化粧など落ちないツルツルの肌に、男の唾液がべっとりとまぶされる。

 ——ピピピピピピ……。

 マリナの体内から何かを告げるアラートが鳴る。なにか良くないことに対するものであることは明々白々。加えてヴぅぅ…………んという処理装置の音が鳴れば完璧だ。

「警告します。現在、あなたの行動は当機、ならびに建物内の監視カメラによって記録されています。この記録により、あなたは高い確率で不利益を被ります。指示に従わない場合、刑期が加算される恐れがあります」

 彼女の見た目にそぐわないハキハキとした声音は、男の耳を右から左へと通り抜ける。男は舌でアンドロイドの唇をこじ開け、その内側に舌を入れようとするが、彼女の真っ白な歯は侵入を許すまいとがっちりと閉じられたままだ。

「何が不利益だ! もう俺の人生は終わってんだぞ! いいから……ッ、ヤらせろっ!!!」

 男が細い腕の縛めから逃れようとすると、マリナはもぞもぞと体を動かしながら抵抗してくる。男はその太ももに挟み込まれてしまった陰茎をどうにかしようともがいた。

「はぁ、はァッ、くそおッ……」

 ジィィィ…………ぃぃ。

 彼女のアイカメラが自らの下半身を捉え、捕縛している男の腰がヘコヘコと前後に動いていることを認めた。大腿部に備え付けられた触覚センサーは、男性の平均より小さな陰茎が偽物の太ももの間でしゅにっ、しゅにっと擦れている感覚を捉えていた。

 マリナは背後の防犯カメラと接続し、赤く腫れ上がった亀頭が太ももから出たり入ったりしていることを認識する。男が何をしようとしているかを把握した彼女は、今度は別の警告を発した。

「さらに警告を加えます。痴漢被害引き受けアンドロイドを利用した性的欲求の発散を今すぐ止めてください」

 男に無理やり素股をさせられているマリナの頭は、首の据わっていない赤子のようにぐらんぐらんと揺れる。姿勢制御の演算に多くの思考リソースを費やしながら、アンドロイドは男に警告を加えた。

「現在当機の大腿部の間には、人間女性の膣内と比較した際に約2.7倍の圧力がかかっております。このまま当機の大腿部を利用して自慰行為を続けた場合、陰茎に深刻な障害が残る可能性があります。すぐに止めてください」

 しかしそんな言葉に男が耳を貸すはずもない。かといってそんな警告をしているアンドロイドの方も、男の抵抗に負けじと——

 ——ギチイィィ……ッッ!!

 下半身の人工筋肉の出力をさらに上昇させる。愛の無い太ももコキがさらに苛烈なものになることは必然。男は陰茎に強烈な快感を覚え、身悶えするように絶叫する。

「うあ、あ、ああっ、あ゛あ゛あ゛あ゛っ!!!!」

 ——ギチチチチチチチッ……♡♡♡

 男は情けを求めるようにマリナの顔を見上げた。止まらないこの腰をどうにかしてくれと言わんばかりに、涎を口の端からこぼしながら、涙目で。

 しかしそれを見下ろすマリナの眼は、あまりにも冷たすぎた。彼女は——正確には、「マリナ」を稼働させる人工知能は——、一体この男が何を要求しているのか、この状況において何が最も適切な行動なのかを淡々と計算していた。

 学習データにない未知の状況に対しても、AMVA-GA-07に搭載された汎用人工知能は適切に対処が可能である。ただしプロセッサの使用率が高くなることによる躯体温度上昇は避けられない。彼女の表皮の温度は40度近くに達していたが、彼女は平然とした様子で以後の行動フローの構築を続ける。

 最終的に彼女が導き出した答えは一つ——男は受け止めきれない現実に幼児退行を引き起こし、もはや理屈でどうにかなるものではないということ。そして彼女にできることは、男がこちらの要求を聞くように、可能な限り簡単な言葉を使って意思疎通を図ることであった。

「対象の一時的な著しい知能低下を確認。使用語彙変更。対象年齢——六歳。対象年齢の大幅な引き下げに伴い、感情エミュレートを再開します」

 彼女はぶるりと震えると、能面のような無表情を崩して可愛らしい笑みを浮かべた。幼稚園などで稼働する、児童養育を目的として製造されたアンドロイドのような、人間を安心させる女神のような笑顔。

 更に彼女は男に顔を近づける。まるで泣いている子供を慰めるように、至近距離で柔らかな笑顔を浮かべて男と目を合わせると、彼女は口を開いた。甘ったるい香りが男の鼻腔に吸い込まれていき、肉厚の太ももで挟まれたペニスはビクビクと痙攣を繰り返す。

「ねえ、ぼく?」彼女はまるで、物心のついていない幼児に読み聞かせをするかのように、ゆっくりと大きく口を開けて語りかけた。

 ——おちんちん、しこしこ、やめよっか♡

 慈愛に満ちた笑顔から繰り出される言葉は、男の尊厳を踏み躙るほどに低レベルなものであった。しかし話しかけられている当の本人は、彼女が何を言っているのかを理解することなく絶頂に至った。

 既に三回も絶頂している中年男性は、ぴゅるっ、ぴゅる……となけなしの精液を放出し、彼女の股を濡らすことしかできなかった。

 偽物の女を狂ったように抱きしめ、動物のオスとしてのプライドもなく体を震わせながら情けなく絶頂する。自身のむちむち太ももに敗北した劣等人間を、アンドロイドは淡々とアイカメラによって記録し、新たな学習データとして蓄積する。

「ぜェ……っ、はぁぁっ……」

 力なく膝から崩れ落ちそうになる男を、アンドロイドは何も言わずに抱きしめ続ける。男の顔はもはや女の乳房に埋まり、谷間の間で浅い呼吸を繰り返していた。

 ——対象の意識消失を確認。拘束を続行します。

 彼女は警察官が到着するまで、胸に抱く男の監視を続ける。自身の肉体に全裸の男がへばりついているという異常な事態の最中にあっても、彼女は「人間らしさ」の演出のために一定時間ごとに身じろぎし、姿勢を変え続ける。

 女の乳房で男の顔がぱふぱふされるが、意識を失った男がその極楽を味わうことなどない。アンドロイドの双眸は呆れを通り越して、蔑みの色を帯びてすらいるようであった。

 まもなく多目的トイレのドアが開く。二人の男性警察官と、銀色の箱形ボディに黄色の文字で「大型荷物移送用」と書かれた、高さ1.5メートル程度のロボットが現れた。

「ったく……。こいつ気絶してやがる」苦い顔をした若い男性警察官は、ロボットを操作してマリナに抱き抱えられた男を引き剥がす。がぱり、と口の大きく開いたロボットの体内に男のボディが収容されると、股間が精液に塗れた男はお縄となった。

 その様子を何の面白みもなさげに眺めているマリナの美貌は涎のコーティングがなされ、上半身は男に弄ばれた乳房がでろんと鎮座し、下半身は白濁液でべとべとに汚されたショーツを身につけたままだ。

 腕を体側に下ろして立ち尽くす様は、悪趣味な芸術作品と言われても不思議ではないほど、筆舌に尽くし難い淫猥さを帯びていた。

「……男も男で気色悪いが、コイツもコイツでエグいよな」若い男性警察官が女性型アンドロイドに歩み寄り、ぼそりと呟く。アイカメラの絞りが調節され、彼女は近寄ってくる警察官の挙動を注意深く観察し始めようとする。

「おい、気持ちはわかるが、あんまり見てると俺たちまでアテられちまうから。早く離れようぜ」

「は、はいっ」

 壮年の男性警察官に肩を掴まれてたしなめられた若い男は彼女から離れ、まるで何事もなかったかのようにそそくさとその場を後にした。

「……ピピっ」

 誰もいなくなった多機能トイレの中で、アンドロイドは再び動き出す。彼女は自分の学生カバンからメイク直しの道具、ではなく、ウエットティッシュを取り出す。

 蓋を開けて数枚取り出すと、男の体液で汚された自分の顔や乳房、股間を淡々と拭い始めた。——肌のケアでもしているかのように丁寧に、精液など一滴たりとも残さないように。

 数十枚を消費し、ようやく綺麗になった彼女は着衣を戻した。乳房を優美に支えながらブラジャーを着用し、スカートとブラウスも身に着ける。最後にリボンをつけて完成。

 姿見で自身の様子を確認し、人工毛髪の乱れを手で軽く直す。カバンを肩にかけると、数時間前に男の前を歩いていた時と同じ状態に戻った。

 アンドロイドは無表情のまま、多機能トイレのドアを開けて外に出る。ドアが閉まると、トイレに「使用禁止」のマークが出た。淫猥な香りが充満し、男の精液が飛び散ったトイレは、清掃が入るまで使えなくなった。

 夜風に当たりながら立ち尽くしていたアンドロイドは、ぴくんと体を震わせる。次の潜在犯を炙り出すために、スカートをふりふり揺らして歩きだした。

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