アルティマミレーヌ「過信の果てに…」 (Pixiv Fanbox)
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挿絵 ⓜⓐⓒⓐⓡⓞⓝⓨ様 福玉死瘟様 JAM様
「ここは…」
アルティマミレーヌは不意に目が覚める感覚で現実へと引き戻された。
キングジェイの猛攻の前に屈し、敗れたことまでは覚えている…
その後、謎のカプセルの中で…
しかしその後の記憶は、まるで頭に靄がかかったように判然としなかった。
「お目覚めかね、アルティマミレーヌ…」
背後からの声に、振り返って身構えるミレーヌ。
そこには依然倒したはずの異星人・DD103号に瓜二つの男が立っていた。
「あなたは…」
しかしミレーヌは顔ではなく声でその男を覚えていた。
「あなたは海中で…それに私を捕えた宇宙船の中でもその声を聴いたわ…あなたが今回の黒幕なの?」
ミレーヌの問いかけに、その男・DDXは不敵な笑みで答える。
「まぁまぁ…君にはこれを見てもらおうと思ってね…」
そういってホログラムでモニターを展開するDDX。
その中で起こっている惨劇に、ミレーヌの顔がこわばっていく。
そこでは自分の知らない自分…洗脳されたミレーヌが街を破壊しているところが映っていた。
「う…うそ…そんな…いやああああ!」
膝から崩れ落ち、泣きじゃくるミレーヌに、DDXが近づき頭をつかんでモニターに視線を戻させる。
「恨むんならあそこのお義姉さまを恨むんだな…俺は別に正気のおまえにこんな仕打ちをするつもりはなかったんだ。でも、リオナちゃんはお前なら現実を見せても必ず立ち上がって俺を倒すとかいうからさぁ…ついつい、いじめたくなっちゃったんだよねぇ…」
涙を流しながら力なくうなだれるミレーヌの顔を別の方向へ向き直させるDDX。
その視線の先には、十字架に磔になったリオナとソフィの姿があった。
「ああ…お母さま…お義姉さま…」
自分を助けるために愛する母と義姉が捕まったことは想像に難くない。
ミレーヌは自らの力不足を悔やむことも出来ず、涙を流すしかなかった。
「洗脳中のお前には十分愉しませてもらったからな…今度は無力な正義の女神として俺に犯されるがいい!最後にはあの女どもと一緒に磔にして見世物にしてくれるわ!」
そうして再度モニターの方向へミレーヌを向き直させるDDX。
「ごめんなさい…私のせいで…」
心が折れてしまったのか、ミレーヌはただただ謝罪の言葉を繰り返すのだった…
「ふははは!愛する地球人を守れなかったばかりか、破壊してまわったのはどんな気分だ!」
DDXは背後からミレーヌに覆い被さり、嬉しそうに腰を振り始めた。
胸を刺激されたことで濡れてしまっていたミレーヌはあっさりとDDXのイチモツを受け入れてしまう。
洗脳時に媚薬を盛られていたことがその原因の一つだったが、訳もわからず感じてしまうことにミレーヌは悲嘆に暮れる。
「いやっ…やめてっ…もう酷いことしないで…」
浮き出た乳首を刺激されて、ミレーヌは苦悶の表情で身を捩らせる。
ピコンピコン…
タイマーもピンクに点滅し、彼女から戦う力が失われていくことを暗示していた…
「(ミレーヌ…辛くても挫けてはだめよ…あなたの助けを待っている人はたくさんいるのだから…)」
リオナは眼前で泣き崩れる義妹の姿に、心が張り裂けそうになるのを堪えていた。
彼女が思い描く最後の作戦には、何としてもミレーヌの洗脳を解く必要があったのだ。
そのためにDDXを挑発し、洗脳を解かせることには成功した…
しかし、その代償としてミレーヌは自らが犯した罪を見せつけられ、心が折られようとしている…
そんな作戦しか思いつかなかった自分への怒りと、今すぐに愛する義妹を抱きしめに駆け寄りたい衝動を抑えるため、リオナは唇が切れるほどに歯を食いしばっていた。
「(ミレーヌ、もう少しだけ耐えて…あとは奴がアレを使う瞬間を狙えば…)」
無意識のうちにリオナの体の中に僅かに蓄えていたエネルギーが循環を始める。
しかしミレーヌを貶めることに気を取られているDDXの目には、リオナの変化が映ることは無かった…
ヒュウウッ…
意外な援軍はDDX、そして機を伺っていたリオナにとっても意識の外から訪れた。
ミレーヌを犯し倒して自らも消耗したDDXの隙をついて、近くまで忍び寄っていた防衛隊の攻撃が始まったのである。
「俺たちのミレーヌをいいように甚振りやがって!好き放題させると思うなよ!」
「キングジェイに乗ってないお前ならこっちのもんだ!」
口々にDDXを罵りながら手持ちのレーザーガンやバズーカを打ち込んでいく防衛隊。
自分たちの仲間であるミレーヌを連れ去ったばかりか、洗脳して悪の手先に変えて暴れさせたことで、ついに防衛隊はキレてしまったようであった。
もはや戦闘機などいらぬと言わんばかりに、自ら武装して突っ込んでくる地球人を前に、ミレーヌを犯すことに集中しすぎて体力を使い果たしていたDDXは狼狽する。
「ちょ…まてっ!…ぐぁあっ!…この下等生物どもが!…こうなれば…」
懐に手を回すと、先程モニターの前でリオナに見せつけるように取り廻していた瓶を取り出すDDX。
「ソフィのエネルギーを使うのはもったいないが…雑魚どもになめられるのは我慢がならん!」
しかし、その間も雨あられのように降り注ぐ攻撃が、DDXにエネルギーを吸収する隙を与えなかった。
その瓶を持ち出す瞬間こそ、リオナの待っていた時であった。
「…!地球人の皆さん、ありがとう…やるなら今!チェンジ!リオネスモード!」
リオナが一気に残されたエネルギーを開放し、秘められし姿・リオネスモードへと変化する。
彼女が遠い時空の果てで両親との再開時に使って以来、初めての変身であった。
「この姿ではあまり長くは戦えない…一撃で決めます!全身全霊…ッ!ライオネルフィスト!」
ズドオオッ!
こぶしに集めたオーラを油断したDDXのどてっぱらに打ち込み、ミレーヌから引き離すことに成功するリオナ。
DDXは地面に叩きつけられ、はるか彼方へと土煙を上げて転がっていく。
こぶしを叩き込む瞬間に、オーラがかすったことでソフィのエネルギーをためた瓶は割れてしまっていたが、リオナは器用に空中でその液体を一口分を口に吸い込むことに成功していた。
「(あとはこれを…)」
一瞬ソフィとミレーヌを見やって逡巡したリオナであったが、すぐに近くのミレーヌに駆け寄った。
そのまま躊躇なく、放心状態の義妹の唇を自らの唇で塞ぐと、口の中のエネルギーを受け渡していく。
少量ではあったが、液状のエネルギーがミレーヌの口内に注がれ、ミレーヌの顔にも血色が戻る。
「ぷは…ふふっ、ミルクを飲ませてあげるのなんて、あなたが生まれた時以来ね…」
微笑むリオナであったが、ミレーヌは赤面して困惑していた。
「も、もう!赤ちゃんの時は口移しなんてされた覚え無いです!お義姉さまったら!」
そもそも赤ん坊の時の記憶がないでしょう…と苦笑しかけたリオナの表情が引き締まる。
「冗談はさておき、今すぐ奴を追います。マザーシップに帰られては対処ができなくなってしまうわ。」
地球でミレーヌの公開陵辱を行うにあたり、DDXは小型の宇宙船で地表へと降りてきていた。
その宇宙船は…と視線を上げたリオナの目に映ったのは、もう起動した船の姿であった…
「くうう…踏んだり蹴ったりだ!」
ミレーヌに屈辱を与えるところまでは絶頂の気分だったのが、まさか野蛮な原始人どもに邪魔された上にリオナにまでコテンパンにされるとは…
DDXは恨めしそうな顔で宇宙船に乗り込んでいく。
不幸中の幸いか、吹っ飛ばされた先が宇宙船を止めていた場所のすぐそばであった。
「こうなればマザーシップに戻ってキングジェイやナーガで目にもの見せてやるぞ!」
そういうと緊急帰還スイッチを押し込むDDX。
宇宙船はアイドリングが十分ではなかったのか、ゆっくりと起動し動き出すのだった…
「そういえばお義姉様、その姿は…」
ミレーヌはリオナの姿に驚きを隠せずにいたが、次の瞬間、いつものリオナへと姿が変わる。
「はぁ…はぁ…変身も限界だったみたいね…」
リオナの視線は動き出した宇宙船に向かっていた。
「ミレーヌ、いま彼を逃してしまったら強力な機械獣軍団を連れて戻ってくるわ。追いましょう!」
ミレーヌも機械獣軍団の恐怖を思い出し、その目に気合を入れる。
「わかりました!わたしがなんとかします!」
飛び立とうと身構えるミレーヌ。
「私もすぐに追います。挟み撃ちにしましょう!」
リオナが息を整える間、足止めに徹する。
自らの役割を理解し、ミレーヌは飛び立っていった…
成層圏を抜けたあたりで、ミレーヌはDDXの宇宙船に追いついていた。
備え付きの火器で応戦するDDXであったが、ミレーヌには当てることさえできなかった。
「いい加減に覚悟して投降しなさい!ここから先には行かせません!」
ミレーヌを躱せず、DDXの表情に焦りが浮かぶ。
「くそっ!もう少しで母船へと戻れるのに…!そうだ!ここからでも遠隔でキングジェイを起動できれば…なにっ!マザーシップが…ない!?」
停泊させていた母船の反応が忽然と消え、DDXは焦りを浮かべる。
そして彼にとっての悪いことは重なっていく。
「ミレーヌ、追いついたわ!同時攻撃でいきましょう!」
背後から迫ったリオナがミレーヌと連携し、宇宙船を前後から挟み込んだ。
「ミレニウム光線!」
「フェザーショット!」
姉妹の放つ光線は瞬く間に宇宙船の外壁を破壊し、大きな爆炎が周りを包む。
身に過ぎた野望を抱いたDDXの墓標のように、宇宙船の残骸があたりに浮遊するのだった…
「ふふっ。まぁ、DDX程度の小物ならあんなところでしょうかねぇ、アンチスパークル様。」
モニターで爆散するDDXの宇宙船を見ながら、サキュロス星人は鼻で笑う。
「マザーシップは回収しておきましたわ。あの兵器群も銀河守備隊にくれてやるのは面白くないですし。」
すると念波でアンチスパークルからの応答が返ってくる。
「よい…彼奴等も少しずつ力をつけているのも悪くない…花は綺麗に咲いた時にこそ、手折る楽しみも増えるというものよ…」
余裕たっぷりのアンチスパークルの様子にサキュロス星人も安心する。
「ふふふ…今は勝利を喜びなさいな、ミレーヌちゃん…」
悪の暗躍は未だ、闇に潜んで進むのであった…
「今回はあなたのおかげで助かったわ。ありがとうリオナ。」
事件からしばらく経ったのち、地球では三女神が集合していた。
ソフィは弟子の活躍を喜び、ミレーヌは義姉の勇姿を嬉しそうに語る。
「お義姉様のスーパーパンチでイチコロだったんだから!お母様にも見てもらいたかったわ!」
興奮するミレーヌをリオナは赤面して制する。
「こほん!でも当事者のDDXの死体は見つかっていないし…すっきりしない終わり方だったわ…」
ミレーヌ本人は洗脳で街を破壊したことを気に病んでいたが、防衛隊がミレーヌを洗脳された時に避難作戦を決めうちしていたため、大きな被害は出ていなかったようである。
いい仲間たちに義妹が恵まれたことを喜びながらも、見え隠れする暗躍する存在に、リオナの心は晴れやかとはいえずにいた。
果たしてなぜミレーヌが執拗に狙われるのか…
愛する義妹を守ることを心に誓うリオナ。
まだまだ彼女たちの闘いの日々は続いていくのであった…
エンド