アルティマレディ・ルクリア 22話「三度襲来、エロフェッサー!①」 (Pixiv Fanbox)
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挿絵 らすP様
ルクリアが人々の希望が生み出した『アルティマレディ・ティオ』とクインモネラを撃退する少し前…
月のそばを、高速で飛行するアルティマレディ・ジェニスの姿があった。
「地球に侵略者が…急がなくては!」
少し前に地球へゴーデスが戻ったという情報と、それに合わせて何者かの宇宙船が地球側の特異点を通過したとの連絡が入り、ジェニスは焦っていた。
周辺の銀河各地でゴーデスの手先と見られる宇宙人が一斉に暴れ出し、宇宙警備隊はその対応に追われていたのである。
結果、地球は常駐しているルクリア一人に任される形となっており、今回はその隙をついた攻撃とみられていた。
「くっ…こんな見え透いた陽動にかかってしまうなんて…」
明らかな罠と分かっていても対応に向かわねばならない…
正義の味方としての立ち位置の難しさを理解し、巧妙な計画を仕掛けるゴーデスの後手後手に回されてしまう苛立ちに、いつもは冷静なジェニスも視野が狭くなってしまう。
そしてそんなジェニスの隙を狙う存在もまた…ゴーデスによって配置済みだったのである…
「おっ…いいところだけど、外宇宙からの飛来反応…アルティマレディみたいだけどどうするんだ?」
画面上では今まさにクインモネラによるルクリアの処刑がなされようというタイミングで、闖入者の存在に気付いたタケシ。
横でルクリアの最後を楽しんでいたゴーデスは顔も上げず一笑に付した。
「ファファファ…思ったよりは早い登場じゃが…そこもきちんと対策済みじゃ…アルティマレディを引っ掛けられるとけしかけたら、二つ返事で受けた『やつ』がいるからのう…」
そいつが突破される可能性は考慮しないのか…
「まぁ、今はこっちだな…」
あのゴーデスが絶対の信頼をよせる相手に思いを巡らせつつも、タケシは目の前のルクリアの痴態の方に興味が向くのを抑えられずにいた…
ビィーッ!
地球へ向けて速度を上げようとしたジェニスの背後から、謎の宇宙人の放った光線が襲いかかる。
「…?!きゃあああっ!」
意識が完全に地球へ向いていたジェニスは無防備な背中にその一撃を受けてしまう。
「ぐぅ…卑怯な…何者です!」
なんとか痛みを耐えて向き直ったジェニスの目の前にいたのは、宇宙警備隊の女性戦士なら一度はその顔を拝んだことがある存在だった。
「あなたは…エロフェッサー!」
銀河を股にかけてアルティマレディを追い回し、研究と称した屈辱を与える…
アルティマ姉妹の天敵ともいえる男を前に、ジェニスの表情が陰る。
「『卑怯な!』とは、いつもいつも失礼な人ですねぇ、ジェニスくん!私を前に隙を見せる君がよくないんですよ、全く…」
ビームガンをご自慢のマジックアームでクルクル回しながら再びジェニスに狙いを定めるエロフェッサー。
「あなたの相手をしている暇はありません!アルティマブレスレット!」
こんなところで時間を取られるわけにはいかない…
そんな焦りがジェニスに決め技の早撃ちをさせてしまう。
「君ねぇ…私が一度見た技をそのまま受けると思っているのかい?」
こともな気にブレスレットを躱し、通り過ぎた刃に光線を当てるエロフェッサー。
するとブレスレットはその場にとどまり、ジェニスの呼び戻しに応じなくなっていた。
「…!?ブレスレット、戻りなさい!」
エロフェッサーは焦るジェニスをケタケタと笑う。
「あのねぇ…動かなくなった時点で察しなさいな…もうブレスレットのコントロールはこちらがいただいたよ。でも私は優しいからねぇ…返してあげよう!」
マジックアームをタクトのようにエロフェッサーが振るうと、操られたブレスレットはそのままジェニスの腕へと戻る。
「どういうつもりです!」
相手の行動の真意を読みきれず、困惑するジェニス。
しかし、その答え合わせはすぐにジェニスの身へと襲いかかった。
「…っ!?…んんっ…むぐ…」
腕に収まったと思われたブレスレットが一気にジェニスの身体を駆け上り、その口を塞いでしまう。
マスクをつけられた格好になってしまったジェニスは、なんとか引き剥がそうと手をかけて試みるも、それはびくともしなかった。
「暴れない方が身のためだよ…口は君たちの弱点…エネルギー補給が経口であることは研究済みだからね。今、地球のルクリアくんたちの手助けに入られては困るのだよ。ゴーデスくんからそこそこいいお金ももらってるしね。」
「…!」
目線だけでもわかる怒りをエロフェッサーに向けるジェニス。
「おおこわ…まぁ、しばらく遊んでくれればそれでいいんだ…楽しもうじゃないか、アルティマレディ!」
武器を搭載したアームを展開し、エロフェッサーは罠にかかった獲物へと襲いかかるのだった…
時はすぎ、クインモネラの騒動から数日…
大事件が起きたにも関わらず、宇宙警備隊からの連絡が途絶えたままになっていることに、ルクリアは言い得ぬ不安感を感じていた。
周辺の銀河でいくつもの戦いが起き、宇宙警備隊は手を焼いているとは聞いていたが、さすがにクインモネラ級の侵略を無視するとは思えない。
いちどアンナと分離し、自分だけでも宇宙警備隊とのコンタクトを図るべきか…
しかしその間だけでも地球を空けるリスクを取るわけにもいかない、そんな葛藤がルクリアの中に渦巻いていたその時、事態は一番最悪な方向へ動き出してしまう。
「はーはっはっは!地球の諸君!これを見たまえ!」
突如高らかな笑いと共に、街の上空に巨大なホログラムが展開され、人々は目を奪われる。
そこには謎のアームに拘束されたアルティマレディの姿が映し出されていた。
「…!?ジェニスさん!」
かつて共に窮地を戦い抜いたアルティマレディの姿を確認し、アンナとルクリアは驚愕する。
一難去ってまた一難…
クインモネラとはまた毛色の違う試練が、二人へ迫っていた…
続く