アルティマミレーヌ「夫婦怪獣、恐怖の大竜巻」 (Pixiv Fanbox)
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挿絵 C-PULSE様
※当作には旧作「ミレーヌVSアストロキング」の音声動画に使用した挿絵を、一部併用しています。
以前リクエストで一枚絵としてみたいという希望を頂きましたので、この機会に使用いたしました。
そちらもお楽しみください!
前回までのあらすじ
何者かによっていきなり東京の港湾倉庫地区に転送された、南海の怪獣・マリンモンス。
産卵が迫り気が立って暴れるマリンモンスに加え、つがいを連れ去られたと激高するマリンゴラスが東京湾に現れ、その能力で津波を発生させる。
マリンモンスの被害を食い止めようと変身したアルティマミレーヌは、体力を大きく消耗する大技・「アルティマバーリヤ」で津波を押し返すことに成功した。
しかしながら、エネルギーを失い弱ったところに、マリンモンスの攻撃を受けて撤退を余儀なくされてしまう。
夫婦怪獣問題はその解決を見ないまま、状況は膠着してしまうのだった…
変身を維持できなくなっ他ミレーヌはその場から姿を消し、残されたマリンモンスも、電撃を打ち続けた反動で眠りにつく。
津波を跳ね返されて一度は湾外に押し出されたマリンゴラスも港湾地区に上陸し、マリンモンスを守護するように周りを警戒し始めた。
津波や竜巻を起こす力を有する二大怪獣を前に、防衛隊も手が出せずに事態を見守ることしかできず時間が過ぎていく。
また、彼らが暮らす南洋諸島では両怪獣を神の化身と考える国も多く、政府を通じて手荒な駆除をやめるようにという嘆願も届き始める。
政治的にも難しい判断を迫られ、苦悩する人間たちを尻目に、夫婦怪獣は産卵の準備を進めるのであった…
「うう…」
ミレーヌの地球での姿・防衛隊の卯月メイ隊員は、任務中のけがとして医療センターに運ばれ、治療を受けていた。
外傷はそこまでではなかったものの、不自然なまでの著しい体力の低下に医師たちは首をかしげたが、切迫した状況の前にできることといえば点滴で命をつなぐことくらいであった。
残された力を耳に集中し、周りの無線から状況を聞き取ったメイは状況が予断を許さないことを確認する。
万が一にも港湾地区で産卵されてしまったら、今後どのような被害が出るかわからない…
その前にマリンゴラス・マリンモンスを共に駆除する、というのが防衛隊の決定であった。
「このままでは、東京もただではすまないわ…何とか駆除作戦の前に、怪獣たちを海に返さなければ…」
弱り切った体ではあったものの、何とかしようと悲壮な決意を胸に立ち上がるメイ。
すでに防衛隊から、怪獣たちを攻撃するための第一陣が発進してしまったことを確認し、傷ついた肩を縛っていた包帯を取り払い構えをとる。
「…っつ…ミレーヌ!」
痛みに耐えながら変身を遂げたミレーヌは、医療センターの屋上から光の玉となって港湾地区へと飛ぶのであった…
「グアアアア!」
周りを防衛隊に包囲されつつある状況を察知し、マリンゴラスが威嚇の声を上げる。
マリンゴラス自体は先の津波の発生で力を消耗してしまったのか、戦車にコンテナを投げつけたりと場当たり的な攻撃を繰り返していた。
「やつらも昨日の大暴れで消耗していると見える…この好機に一気に攻めるぞ!」
防衛隊の士気が上がり、一斉攻撃が始まろうとしていたその時、夫婦怪獣の前に光の玉が降り立った。
その球は瞬時に姿を変え、そこには地球を守る女神・アルティマミレーヌの姿があった。
「おおっ!ミレーヌも来てくれたぞ!これで百人力だ!」
防衛隊の一気呵成の攻撃が始まり、ロケット砲やミサイルなどの中距離兵器が火を噴く。
「やったか!?」
攻撃が命中するかと思われたその時、ミレーヌが身を挺して集中砲火から怪獣たちを庇った。
「ぐうぅ…ああっ…」
アルティマバーリヤの消耗から立ち直れていないミレーヌを激しいダメージが襲う。
膝をつき息を切らすミレーヌに、防衛隊も攻撃を一時停止する。
「そんな…怪獣たちを守るというのか…」
罪のない二体を守りたいというミレーヌの気持ちは理解できるものの、東京の平和を守るためにも攻撃をやめるわけにはいかない…
心を鬼にして防衛隊の攻撃が再開されようとした瞬間、ニ大怪獣が連携して動き出す。
ズザアアアッ!
身重とは思えない動きでマリンモンスがミレーヌの横を駆け抜ける。
先の戦いでのタックルを思い出し身構えたミレーヌであったが、怪獣はその横を走り抜けて彼女に向き直った。
「ガアアアアッ!」
相方に呼応するように吠えてミレーヌを威嚇するマリンモンス。
次の瞬間、鼻先のツノが怪しく発光し強力な電撃がミレーヌを襲う。
「くっ…」
なんとか身を逸らし、電撃をいなすミレーヌ。
しかし、それこそが地獄の始まりであった。
「グクァアア!」
それた電撃はマリンゴラスへと向かい、同じく鼻先に生えた立派なツノ受け止められる。
バリバリバリバリ!
二体はツノを通じて電撃を共鳴させ、それに挟まれたミレーヌは雷撃に焼かれて悲鳴を上げる。
「あああああああっ!?がはっ…ぬけ…だせないっ…」
強制的に気をつけの姿勢で固定され、電撃を喰らい続ける。
電撃の竜巻に捕らわれたかのような終わりのない衝撃が身体を貫き、ミレーヌの意識は飛びかけていた。
ピコンピコンピコン…
消耗していたミレーヌのエネルギーも一気に尽きかけ、エナジータイマーが悲鳴を上げる。
「あ…く…ぅあ…」
意識が飛んだような表情でうめく事しかできないミレーヌを前に、状況を見守っていた防衛隊もしびれを切らしたように動き出した。
「上からの指示を待っていてもらちが明かん…怪獣たちには悪いがミレーヌを救うぞ!攻撃を奴らのツノに集中してあの攻撃を止めるんだ!」
現場指揮官の檄が飛び、一気呵成の攻撃を始める防衛隊。
マリンモンスのツノが攻撃の発生源として重点的に狙われ、ついにミサイルの一本がその根元に命中する。
バギィ…
「ギャアアア!」
文字通り鼻っ柱を折られたマリンモンスはのたうち回り、電撃の嵐は消え失せる。
「はぁっ…はぁ…いまなら!」
拘束を解かれ倒れこんだミレーヌであったが、最後の力を振り絞ってその手を十字にクロスさせる。
「ミレニウム光線!」
消耗ゆえにいつもの威力は出せていなかったが、ミレーヌ必殺の光線が最短距離で目標へと疾る。
ズドォッ…
光線の向かった先はマリンゴラスのツノであった。
こちらも命中と共にその自慢のツノを叩き折ることに成功する。
「グゥウウ…」
自らの象徴であると共に、竜巻や津波を生み出す最大の武器であったツノを失った夫婦怪獣は、意気消沈して後ずさる。
「海へ…帰りなさい…」
湾外を指差し、二体へ撤退を促すミレーヌ。
ピピピピピ…
エナジータイマーは赤い点灯かと見紛う高速の点滅を繰り返し、ミレーヌの力がもう残されていないことを告げていた。
今なら、その膂力だけでもミレーヌを倒すことはできたであろう夫婦怪獣…
しかし、先程自らを庇ってダメージを負ったミレーヌの顔を立てたのか、おとなしく海へと帰っていく。
「ハァッ…ハァッ…よかった…」
脅威が去るのを見守ったのち、ミレーヌの姿は夕闇の中へかき消えていった。
「やはり地球の怪獣相手でもこの程度か…念のため今回のデータに合わせて『此奴』の強化を進めていけばいいだろう…」
モニターをみながら、ミレーヌの細かい分析を進めていく異星人…
「最後のテストとして、水中での戦いでも見せてもらうとしよう。まぁここまでのデータから見るに、得意ということもないだろうしな…」
地球でとらえた巨大なタコ怪獣…それに少しの改造を加えながら、異星人の計画はまた一歩達成へと近づくのだった…
終