アルティマミレーヌ「恐怖の夫婦怪獣」 (Pixiv Fanbox)
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挿絵 仮面ライナー様
地球からさほど離れていない宙域に、謎の宇宙船の影があった。
ステルス機能を有して潜むその船内では、一人の宇宙人がモニター上のデータと睨めっこを続けていた。
「ふむ…データはだいたい集まったが…特段突出したところもなし…平均的な銀河守備隊員といったところかな。なぜ『あのお方』が執心されるのか…我ら下々のものにはよくわからん話だ…」
モニター上には今回の依頼による調査対象…アルティマミレーヌの姿が映し出される。
「こちらがけしかけた怪獣たちとの対戦成績は五分がいいところ…負けても諦めずに戦う姿はさすが正義の女神といったところか。慈愛の精神に富んでいるが、そこが付け込む隙でもある…と。」
冷静な分析をしながら、アップになったミレーヌの画像に目線を飛ばす宇宙人。
「まぁ…女としての魅力は十分か…あのアルティマソフィの娘だそうだしな。さて、あと数体怪獣をぶつけたところで本番といこうか…せいぜい頑張ってくれよ、ミレーヌくん…」
依頼の終わりも近い…宇宙人は一抹の寂しさを感じながらも新たな刺客を差し向けるのだった…
ヴィーッ…ヴィーッ…
防衛隊本部にけたたましいサイレンの音がこだまする。
「港湾地区に怪獣出現!」
アナウンスが状況を知らせ、アルティマミレーヌの地球での姿・卯月メイ隊員もすぐに緊急出動に備えて装備を整えていた。
「今回の怪獣、海からじゃなくいきなり地上に現れたらしいぞ。」
「気が立っていて、今にも暴れ出しそうだ!各員は出動いそげ!」
メイは怪獣出現の状況に不自然さを感じ、すぐに現地に向かう準備を整える。
「私が先行して偵察します!」
そう言うとメイは外へ飛び出し、建物の影に隠れると大きく手を掲げた。
「ミレーヌ!」
周囲の混乱に乗じ、素早く変身すると、怪獣の下へと飛び立つミレーヌ。
その視線の先にある港湾地区からは、黒い煙が立ち上っていた…
「あそこね!」
ミレーヌが到達すると、そこには一体の怪獣が暴れていた。
4つ足をついて歩行する怪獣の進行方向に降り立つミレーヌ。
「この怪獣は確かマリンモンス…本来はおとなしい性格のはず…なぜこんなに暴れているの?」
怪獣の状況に疑問を持ったミレーヌは、自らの目に神経を集中する。
「アルティマ・アイ!」
ミレーヌの目が怪獣を見通し、その体内に卵の存在を確認する。
「産卵を控えたマリンモンスが、こんなところに来るはずがないわ。おそらく何者かに転送をさせられて、混乱して暴れているのね…落ち着かせなければ…」
マリンモンスは、その気になれば、大きな竜巻を発生させることができる強力な怪獣…
被害が大きくなる前に、なんとかしなければ…
そんなミレーヌの焦りに、さらなる追い打ちをかける状況が発生する。
ミレーヌの耳が、近くの防衛隊の無線を傍受する。
緊急通信では、東京湾にマリンモンスのつがいであるマリンゴラスが出現したとの情報が入ってきていた。
「南の島でおとなしく暮らしているはず…マリンモンスの反応を追ってきたのね…」
卵を身ごもり、凶暴になったマリンモンスが地上にいきなり現れ、つがいを奪われたと逆上したマリンゴラスがそれを追って現れた…
竜巻をおこせるマリンモンスと同じく、マリンゴラスには津波を起こす力があるといわれていることを思い出し、ミレーヌは戦慄する。
夫婦怪獣は普段はおとなしいものの、どちらかに危機が迫った時には天変地異を起こす力をふるうため、彼らの住む南海の孤島は不可侵となっているほどであった。
「誰の仕業かわからないけれど…原因を探る暇はないわ。マリンモンスをおとなしくさせたうえでマリンゴラスのもとへ返す…それが最善のはず!」
あまり得意ではないが沈静化や癒しの技をいくつか心得ているため、まずはマリンモンスへと向き合うことにしたミレーヌ。
しかし、その視線の先に、信じられないものが飛び込んできた。
「うそ…あれは…」
東京湾の中心で怒り狂ったマリンゴラスの力で海水が大きな壁となり、今まさに津波として東京を襲おうとしていたのである。
「いけない!…ごめんね、ちょっとおとなしくしていてね…アルティマバインド!」
ミレーヌの腕から発射されたリング状の光線がマリンモンスに巻き付き、一時的にその動きを封じる。
返す刀で津波に向き直ったミレーヌは、覚悟を決めて体に力を込めた。
「あれほどの質量を押し返すにはアルティマバーリヤを使うしかない…私の体力が持つか、賭けになってしまうけど…やるしかないわ!」
意を決し、体の前で腕を組むと高速でスピンを始めるミレーヌ。
「アルティマバーリヤ!」
津波が港湾地区を襲うその瞬間を狙い、ミレーヌは一気にためたエネルギーを防御壁としてたたきつけた。
次の瞬間、水の壁は巻き戻しをしているような挙動で逆巻き、海へと帰っていく。
津波を発生させていたマリンゴラスも、その質量に押されて湾外へと押し流されていった。
水が引いたところでアルティマバーリヤを解いたミレーヌであったが、あまりの消耗にその場にへたり込んでしまう。
「はぁっ…はぁっ…」
ピコピコピコ…
エナジータイマーはすでに早鐘のような点滅を開始し、大技でミレーヌのエネルギーが尽きかけていることを知らせていた。
「グアアアッ!」
しかしその消耗は、マリンモンスを封じていたバインド光線の消失を招いてしまう。
激高していたところに拘束されたことで、怒りに火に油を注がれた形になっていたマリンモンスは、ミレーヌへ本能のままに突撃する。
「はぁ…はぁ…?きゃあああ!」
倒れこむように姿勢を崩していたところに、カウンターでタックルを食らう形になったミレーヌはそのまま宙へと放りあげられてしまった。
ズゥンン…
「くはっ…ぅあ…」
地面へとたたきつけられて悶絶するミレーヌ。
しかしマリンモンスは怒り冷めやらぬといった様子で、何度もタックルでミレーヌを弾き飛ばした。
「あぅう…」
受け身を取ることもできず体を横たえるミレーヌに、さらなる一撃を加えようとマリンモンスは鼻先に備えたツノにエネルギーを集中する。
バチバチバチィ!
「きゃあああああっ!ぐぁ…うあああっ!」
竜巻を起こすともいわれる強力なエネルギーが股間を直撃し、ミレーヌは目を見開いて体を痙攣させてしまう。
電撃とタックルにさらされたミレーヌの身体は土に塗れて汚され、目からも光が消えていく。
「もう…身体が維持できない…ぁあ…」
ミレーヌは体を起こすこともできないままかき消え、脅威が去ったと感じたのか、マリンモンスは港湾地区の真ん中で産卵の準備を始める。
刺激を与えると災害規模の被害が想定される状況に、防衛隊も手を出せずに途方に暮れるのであった…
次回に続く…