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※本作は音声作品の台本として作成しているものを改修したものです。登場人物のモノローグ形式で話が進み、いつもの作品形式と少し違いますが、楽しんでいただければ幸いです。


挿絵 ぬかるみ様 さーばーふぇいず様

素材協力 あるくろぜった様



私たちの知らない世界…

太古の昔より、神々や天使の住む天界と悪魔の住む魔界、この二つの世界は覇権を争い対立関係にありました。

私たち人間が住む人間界から、天界(てんかい)は人々のポジティブな感情が生み出すエネルギー『プラウス』を、魔界(まかい)はネガティブな感情が生み出す『マイナート』を糧(かて)とし、その力を源に争ってきたのです。

互いの力の発生源である人間界には干渉しない事…

それを唯一のルールとし、天界と魔界の戦いは続いていったのでした。

そして今から20年前…

過去最大の規模で両者が激突し、天使数名と悪魔の眷属(けんぞく)を生み出す『イヴィルシード』が人間界へと飛ばされる事件が起きました。

痛み分けとなった天界と魔界は戦いを中断し、わずかながら平穏な時が流れます。

そして現在…人間界を舞台に新たな物語が始まるのです…



はじめまして、私の名前は久瀬灯。

私立春桜(おう)学園に通う、どこにでもいる普通の女の子です。

放課後、いつもの通り図書委員の仕事をしていると、下校時間を告げる放送が流れはじめました。

窓の外は夕暮れのオレンジ色に染まり、校庭を帰宅する生徒たちが三々五々帰っていくのが見えました。

「…あっ、もうこんな時間…そろそろ帰らなくっちゃ。」

テスト前でもなければ、下校時間まで図書室を使う人はそういません。

図書委員に立候補するくらいの本の虫である私は、読書にいそしむばかりに時間の経過を気にしていなかったのです。

「もう誰も残っていないかな?」

一通り見回りをして無人なのを確認した私は、図書室を施錠して帰宅の途につきました。

「結構遅くなっちゃった…門限に間に合うかな…」

私は学園の近くの寮で生活しており、その門限迄あまり時間がありませんでした。

門限を破るとペナルティがある為、私は急ぎ足で寮へ向かいます。

最近、春桜学園のある春野市では行方不明事件が多発しており、学園側も生徒の帰宅時間には神経質になっているようでした。。

「遅れたら反省文だっけ…早く帰らなくっちゃ…そうだ!」

本当ならコンビニによって新作スイーツのチェックでも…と行きたいところでしたが、今日はそんな余裕はなさそうです。

私は学園と寮の間にある公園を抜けて、近道をする事にしました。

夜間はガラの悪い人たちのたまり場になることもあり、この公園を通学で通ることはあまり推奨されていなかったのです。

「まだ真っ暗になる前だし、大丈夫だよね…」

逢魔(おうま)が時…という表現もされる夕暮れに染まる公園は人通りも少なく、不安な気持ちが私をよぎります。

「速足で通り抜けよう…」

意を決して歩き出す私。

そして公園の中心の広場に差し掛かった時、一人の女の子が私の目に留まります。

「あれ…古城さん?」

その少女は寮のお隣さんで同じクラスの古城透子さんでした。

今日は彼女の所属するソフトボール部の活動日だから、同じくらいの帰宅時間になったのでしょうか。

でも、古城さんの様子がいつもと違うことに私は気が付きます。

彼女はうつろな目をしながらふらふらと広場の奥へと歩いていきました。

「どうしたのかな…っていうか、もう帰らないと門限危ないのに…」

私よりも社交的でお友達も多い古城さんは、門限破りの常習犯でした。

確かペナルティあと何回かで退寮させられるはずでは…

「何か様子がおかしいし…一声かけておこうかな。おーい、古城さーん!」

しかしそんな私の声にも反応せず、古城さんは広場の奥へと歩いていきます。

親友、と言うほどの仲ではないにしろ、ふつうのお友達としての付き合いはある彼女が、私を無視することは考えられません。

何かおかしい…そう感じた私は、門限の事も忘れて彼女を追いかけていきました。

「…はぁ、はぁ、古城さん、どうしたの…」

追いついた私は彼女の肩に手をかけて止めようとしますが、古城さんはそのまま真っ直ぐ進んでいきます。

「聞こえてないの?ねぇ…」

もう一度肩に手をかけようとしたその時、私は『それ』に気が付きました。

彼女のうつろな視線の先…そこにはこの世のものとは思えない異形の生物がいたのです。

数メートルはあろうかという巨大なピンクのスライム。


それは何本もの触手を伸ばし、近くに集まっている人々を自らの体内へ取り込んでいきます。

「え…うそ…なにあれ…」

悲鳴を上げそうになるのを何とかこらえ、モンスターを見上げる私。

古城さんは何かに憑りつかれたかのように、スライムへと近づいていきます。

「ねぇ、古城さん…だめだよ!…止まって!」

正面に回って抱き留める(だきとめる)ように彼女を制止しますが、私なんか眼中にないとばかりに古城さんは前へと進みます。

そうしていると、スライムから一本の触手が私の胴に巻き付きました。

「え…いやっ…離して!やだぁ!」

何とか拘束を解こうと触手を掴もうとしますが、ゼリーのようにぐにょぐにょと変化するばかりでまったく手に付きません。

そうこうしている間に別の触手が古城さんを掴み、他の人と同じようにスライムの体内へと取り込んでいきます。

「ああっ古城さん!…だめっ!どうしよう…このままじゃ私も…ぐすっ」

恐怖で涙がほほを伝いますが、どうする事も出来ません。

「助けて…お父さん…お母さん…」

一瞬死を覚悟した私の脳裏に、国際警察で世界を飛び回っているお父さんと、私が生まれてすぐに亡くなってしまったお母さんの顔がよぎります。

二人の事を強く想ったその時、不思議なことが起こりました。

謎の光が私の前に降り注ぎ、体にまとわりついた触手をかき消していきます。

「な、なにが起きているの?」

目の前の現象についていけない私。

そんな私の前に、光の球体が舞い降ります。

「え…なんでこれがここにあるの?」

光の中心にあるもの…それは私のお母さんが形見として遺した指輪だったのです…


「あーあ…あんなに育っちゃったらどうしようもないデビね~」

そういいながらアタイは深いため息をつく。

目の前の公園の広場では、スライム状に成長した『イヴィルシード』の化身、『オウマ』が人間たちを捕食している所であった。

「まぁ、アタイにはどうしようもないデビ…またいつもの通り、ある程度人間を食って『マイナート』を溜めたら、満足して消えてくれるデビね。」

『イヴィルシード』…それは20年前の天界と魔界の戦いの結果、人間界へばらまかれてしまった悪魔の眷属を生み出す種子。

人間たちの負の感情を元にしたエネルギー『マイナート』を溜め込み、発芽することで『オウマ』へと変化する。

『オウマ』として目覚めた後は、さらなる猛威を振るって人間たちから『マイナート』を発生させ、魔界の力を増強させるのが目的の生命体であった。

悪魔自体は人間界への干渉が出来ない為、一定量の『マイナート』を魔界へ送るとオウマは自然消滅する。

マイナートの転送を防ぐため、萌芽する前の『イヴィルシード』を探し出し、処理するのがアタイ…『エンヴィ』の使命であった。

「はぁ~、最近イヴィルシード活発過ぎデビ…世の中気が滅入ることばかりだからデビかねぇ~」

今回も任務失敗…はたしてアタイの『目的』はいつ達成されるのか…

そのことを考えると暗澹(あんたん)たる気持ちになってしまうのだった。

「もうああなったら見ててもしょうがないデビ…さっさと退散するデビね…って、あれぇ?」

諦観して様子を見ていたアタイの目に、信じられない光景が飛び込んできた。

一条の光がオウマに降り注ぎ、取り込まれかけていた一人の少女を救ったのである。

「あの光…まさかデビ…こうしちゃいられないデビ~!」

次の瞬間、アタイはオウマに向けて飛び出していた…


「これ…お母さんの指輪…」

目の前に降り立った光の球体の中心には、お母さんが私に遺した形見の指輪がありました。

その指輪はゆっくりと私の手に収まります。

「なんでこれがここに?家のジュエリーケースにしまってあったはずなのに…」

この指輪は私のお母さんが大事にしていたもので、お父さんから預かったものでした。

寮の部屋のジュエリーケースに大事にしまっておいたはず…

疑問に首をかしげる私を、別の声が現実へと引き戻します。

「今がチャンスデビ!一度逃げるデビ!」

目の前に飛び込んできたなぞの生き物が、私の手を引き叫びました。

「え、あ、でもあの中に友達がいるの!」

わたしは踏ん張りますが、白黒の謎の生き物は一気にまくしたてます。

「そのままじゃキミも食われておしまいデビ!アタイに考えがあるデビ!」

確かに私には今の状況をどうすることもできません。

わたしは生き物のいうことを聞いて、一度怪物と距離を取りました。

近くの茂みに隠れ、私の手を引いた生物と向き合います。

「キミ…アタイをみても驚かないデビね…」

以外なそうな表情をする生物を前に、私は力なく笑います。

「はは…もうあんなの見ちゃったし…」

後ろでうごめくピンク色のスライムを振り返り、ため息をつく私。

「それなら話は早いデビ。アタイの名前はエンヴィ。よろしくデビ!」

白黒の謎の妖精に、私は向きなおります。

「エンヴィ…よろしくね。私は久瀬灯。考えって何?」

「灯ちゃん、よろしくデビ!早速だけど、その手にあるものを見せてほしいデビ。」

わたしは手を開いて形見の指輪を見せます。

「これ?お母さんの形見なんだけど、何か知ってるの?」

それをのぞき込んだエンヴィは瞳を爛々(らんらん)と輝かせました。

「それは『コアジュエル』デビ!天使が自分の力のすべてを注いで作り出す力(ちから)の結晶デビ!」

「コア…ジュエル?天使って…いったいなんのこと?」

目の前で興奮するエンヴィの姿に困惑する私…

「ご、ごめんデビ…灯ちゃん…君のお母さんはきっと天使デビ…アタイは灯ちゃんのお母さんを探していたデビ!」

はっと我に返り、説明するエンヴィ。

しかしその話を聞いて私の表情は曇ります。

「言いづらいんだけど…お母さんは私を生んですぐに亡くなったって聞いてるわ…」

エンヴィは一瞬悲しそうな顔をした後、まっすぐに私の目を見据えました。

「コアジュエルがあるっていうことはそういうことデビね…でも今は悲しんでいる時ではないデビ!」

コアジュエルを握る私の手に自分の手を重ね、エンヴィは本題を切り出しました。

「今あの怪物を倒せるのは灯ちゃんだけデビ。そのコアジュエルの力を引き出すデビ!」

力を引き出す…と言われてもやり方がわからず困惑する私。

「簡単に説明するデビ…灯ちゃんはお母さんの力を継いでるデビ。そのコアジュエルに込められたお母さんの力を引き出せば、あの怪物を倒す『セイヴァーエンジェル』に変身できるデビ!」

いきなり昔見ていたアニメのようなことを言われて、私は固まってしまいます。

「ええ…そんなこと言われても…」

「まずは論より証拠デビ!灯ちゃん、指輪をはめて『理想の自分』を想像するデビ!」

理想の自分…その言葉で私が思い起こしたのは、写真でしか見たことのないお母さんの姿でした。

慈愛に満ちた優しい表情…芯の通った凛々しい目線。

お父さんがお母さんのことを話すときの自慢気な顔を思い出し、緊張していた顔が少し綻びます。

すると、手の中で指輪がさらに明るく輝きました。

「すごい光…きゃああ!」

次の瞬間、私の身体がまばゆい光に包まれます。

一瞬の閃光の後、私の姿は信じられない変化を遂げていました。


「こ…これが私?」

真っ白なコスチュームに身を包み、風になびく髪色はピンク色に変わっていました。

なにより、身体が大人の女性へと変化し、元の私の姿の面影はほとんど見て取れません。

「それが天使としての力を引き出した灯ちゃんの姿デビ。お母さんのコアジュエルを通じて目覚めたデビよ!」

そう言って私を見つめるエンヴィの視線は、何か懐かしいものを見るような眼差しでした。

「でも、その姿ではあの怪物…『オウマ』とは戦えないデビ…天使が悪魔と戦う時に変身する『セイヴァーフォーム』になるデビ!そのコアジュエルと灯ちゃんならできるデビ!」

興奮気味に捲し立てるエンヴィの言葉についていけず、困惑してしまう私…

でも、ここで躊躇しても状況は変わりません。

怖いけど…オウマの中に捕われた古城さんを見て、私の中で覚悟が決まりました。

「まだわからないことだらけだけど…やるしかないのよね。エンヴィ、どうしたらいいか教えて!」

私がその気になったことで、エンヴィの瞳が輝きます。

「その意気デビ!胸のコアジュエルに手を当てて、こう唱えるデビ!」

「わかったわ…ホーリー・ライトアップ!ブライトハート!」

私の身体を包むレオタードが赤く変化し、身体を包んでいたリボンが金色の鎧に変わっていきます。






「これが…セイヴァーフォーム…」

赤を基調としたバトルドレスへと変化を遂げた私のコスチューム。

心なしか、さっきよりも身体が軽くなったように感じます。

「やったデビ!それが天使の戦うための姿…『セイヴァーフォーム』デビよ!」

嬉しそうに飛び回るエンヴィの姿に、私も少しテンションが上がります。

「えへへ…それで、どうやってあの…『オウマ』だっけ…を倒すの?」

エンヴィも真面目な顔に戻り、オウマを指さしました。

「あのオウマは、人間のネガティブな感情エネルギー『マイナート』を吸収して力を得ているデビ。天使には人間のポジティブな感情エネルギー『プラウス』を用いて、それを浄化する力があるデビよ。」

「要は相反する力を使って争っているのね。その浄化はどうやるの?」

エンヴィは頷きながら私の胸のコアジュエルを指さします。

「そのコアジュエルに意識を集中すると、浄化の波動が撃てるデビ!それを当てるにはオウマを弱らせる必要があるデビ…やり方はアタイが指示するデビよ!」

「わかったわ…やってみます!」

いざとなったら身体が勝手に動いてくれる。

そんな予感が私を包み、戦いへの一歩を踏み出させます。

「たあっ!」

まずは身体を半分ほど取り込まれていた透子ちゃんの身体を掴み、オウマから引き剥がします。

先程は暖簾に腕押しだったのが嘘のように、スポッと抜け出てくる透子ちゃん。

「オウマは天使が纏うプラウスが苦手デビ!ハート、腕輪に意識を集中するデビ!」

エンヴィのアドバイスを実行すると、腕輪の周りに光輪が発生しました。

「その輪っかはプラウスの結晶デビ!武器になるデビよ!」

それを聞いた私の脳内に、具体的な使用方法が流れ込んできます。

「そう…わかったわ…いきます!エンジェリングスラッシュ!」

放たれた光輪が弧を描き、オウマから生えた触手を切り落として行きました。

「ハート、上手デビ!」

エンヴィのヨイショに少し気を良くした私は、背後から迫るオウマの魔の手に気づいていませんでした。

「きゃあっ!」

足首に巻き付いた触手によって、地面へと叩きつけられる私。

「つぅ…これ以上受けたら危ないわ…」

さらなる追撃を交わそうとしたその時、背後から少女の声が響きました。

「きゃああっ!助けてぇ!」

戦いが始まったことで一時的に意識が戻ったのか、オウマに操られていた少女が、状況を理解できず後ずさります。

「いけないっ!よけたらあの子に当たっちゃう!」

咄嗟に少女を庇った私に、触手の鞭撃が襲い掛かります。

「ううっ…あぅ…今のうちに…逃げて…」

少女は黙ってうなずくと、一礼して走り去っていきました。

膝をつき、肩で息をする私を休ませまいと、触手の攻撃は続きます。

今度は首を締め上げ、私の力を奪っていきました。

「ぐっ…おかしいわ…かはっ…力がぬけ…ちゃ…う…」

「いけないデビ!あいつ、ハートのプラウスをマイナートで打ち消してるデビ…このままじゃハートの力が奪われちゃうデビ〜」

キィン…キィン…


胸のコアジュエルが明滅を始め、私の力が尽きかけていることを示唆しました。

「どうしよう…このままじゃ…きゃあっ!?」

次の瞬間、触手によってオウマの中へ引き込まれる私…

両手両足を捕捉され、抵抗できない状態にされてしまいます。


「う、動けない…離しなさい!……」

ヌプヌプしたスライムオウマのボディに囚われ、身動きが取れなくなってしまいます。

バチバチッ!

身動きできない私の身体を、マイナートの電撃が貫きました。

「あうっ!…ああっ…いやっ…やめて…」

強力な電撃攻撃に、私はなす術もなく項垂(うなだ)れてしまいます。

「あわわわ…このままじゃハートがやられちゃうデビ…どうしようデビ…」


選択肢

▶「ハート!今助けるデビ…!」

 「ちぇっ…使えないデビね~…」


「ハート!アタイの力を受け取るデビ!」

エンヴィが私のコアジュエルに手をかざすと、半身の白い部分が光を放ちます。

「力が…戻ってる?」

わずかにコアジュエルが輝きを取り戻し、全身に少しだけ力が入ります。

「ぜぇ…ぜぇ…そんなにたくさんのプラウスはあげられないデビ。大技でいくデビよ…」

目を回しながらふらふら飛ぶエンヴィの言葉に私も決意を固めました。

「エンヴィ、ありがとう…やってみます!」

スライムオウマに埋まった腕輪に意識を集中すると、光輪が復活しました。

その部分が焼き切れたことで右手が自由になります。

「ハート、脚と左手でも同じことができるデビ!脱出するデビよ!」

言われた通りに力を込めると、両手両足に光の輪が現れ、スライムオウマの体を浄化しました。

「やった…出られたわ!」

身体の数箇所を浄化され、苦しむスライムオウマ。

「ハート、今こそ必殺技を使うデビ!やり方はコアジュエルが教えてくれるデビ!」

必殺技って…そう思った私の脳内に、あるイメージが浮かび上がります。

「そう…わかったわ!エンジェリング、展開!」


私の掛け声に合わせて、光の輪がコアジュエルの前に一列に並びました。

「コアジュエルに溜めたプラウスを…光輪で増幅…打ち出すイメージで…!サークレッド・ハートウェイブ!」


脳内に浮かんだイメージを具現化した必殺の一撃が、スライムオウマを一気に浄化していきます。

コアジュエルから発せられた光の波動が消えたその時、スライムオウマの姿は目の前から消えていました。

「やった…の?」

プラウスを全て発射したことで、私の力も尽きてしまいます。

「ああっ…はぁ…はぁ…」

淡い発光と共にセイヴァーフォームが解除され、エンジェルフォームへと戻っていきます。

「ハート!大丈夫デビ?ハート!」

私を呼ぶエンヴィの声が遠のき、私の意識は薄れていくのでした…


「ん…ここは…」

私が目を覚ますと、そこは見知らぬベッドの上でした。

「さっきまでのは…夢?だったの…?」

状況が理解できず混乱する私。

しかし、それならそれで…と一息ついた私を、聞き覚えのある声が現実へと引き戻しました。

「あ、灯ちゃん、気がついたデビね!」

目を開けた私の頭上を嬉しそうにエンヴィが飛び回り、私の経験が夢でなかったことを思い出させます。

「灯ちゃんは戦いの後気を失ったデビ。そのまま救い出して意識を失ってた人達と一緒に病院に担ぎ込まれたデビよ。」

集団(しゅうだん)昏倒(こんとう)の被害者として病院に収容されたことを理解した私は、透子ちゃんのことを思い出してエンヴィを問いただします。

「透子ちゃんは…オウマに飲み込まれた人たちはどうなったの?」

「灯ちゃん…ブライトハートの活躍でみんな無事デビ!もちろん、灯ちゃんもデビ!」

エンヴィの言葉にホッとすると同時に、私はさっきまでの戦いが実感を帯びてきました。

「灯ちゃん…これからもオウマが街に現れる可能性が高いデビ…協力してほしいデビよ…」

恐る恐る私の顔を覗き込むエンヴィ。

一瞬戦いの中での窮地を思い出して身震いしてしまいますが、同時にコアジュエルの光と、天使としての使命が私の中をよぎります。

「うん…私でよければ…よろしくね、エンヴィ!」

笑顔を向けた私を見て、エンヴィが嬉しそうに飛び跳ねます。

「やったぁデビ!灯ちゃん、ありがとデビ!」

こうして街に蠢くオウマとの戦いの日々がスタートしたのです。

平和が訪れるその日まで…ブライトハート、私たちの戦いが始まるのでした!



『次回予告』

オウマを探す私たちに、植物園での失踪事件の情報が入ります。千年に一度だけ咲く謎の花の展示会で蠢く謎の影…


次回、セイヴァーエンジェル・ブライトハート!

「植物園は危険がいっぱい?きれいな花にご用心!」

に光臨です!


https://gachipin.fanbox.cc/posts/4529054

に続く… 


勝利編 エンド


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Comments

Addition2

Nice first chapter. This is very interesting. Looking forward to the Bad End part.

Meteora

If initially her color timer is blue it's better

Sakiel

I've bought the pilot version from DLsite and I really like your design and story. I like En Ciel Rena too, so I also like erotic pinch. Keep up the good work! I am looking forward to more of her stories!

syonnai_hito

灯とエンヴィのモノローグで進行する第1話、中々面白いです。これで声優さんの声も追加されればまた違う趣きっを感じられそう。灯の母とエンヴィの過去のエピソードも楽しみになります。