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挿絵 らすP様


前編あらすじ

学園内で謎の貼り紙を発見したアンナは、調査のためにアマチュア無線部に向かう。

部長が以前の事件でいなくなり、休部寸前だった無線部では謎の少女が宇宙へ向けて電波を飛ばしていた。

その正体が生徒ではないと気づいたアンナに少女は正体を明かす。

彼女は特異点を通じてこちら側へ来てしまった、別の次元のバルタン星人であった。

アマチュア無線部の設備を利用し、救難信号を送っていた少女であったが、それを先に察知したのは同種ながら悪に堕ちた『ダークバルタン』であった。

アンナはルクリアに変身し戦いを挑むものの、その脅威的な力の前に膝をついてしまう。

もはやこれまでかと思われたその時、特異点を抜けて一筋の光が地球へと駆けつける。

ダークバルタンの腕を切り落とし、ルクリアを救ったその戦姫こそ、別次元のアルティマレディ・マインであった…


「ぐうう…また貴様か!マイン!」

切り落とされた腕など気にもとめていないのか、すぐに振り向くダークバルタン。

その視線の先ではアルティマレディ・マインが悠然とダークバルタンを見下ろしていた。


切り落とされたダークバルタンの腕は液状に変化すると、何事もなかったかのように元に戻る。

「ふん、無駄なことを!せっかく新しい次元に来たのだ…後腐れのないよう、ここで決着をつけるぞ!」

二人の間の因縁を図り知ることはできなかったが、ルクリアも加勢しようと身体を起こす。

「大丈夫です。あなたはそこで安静にしていてください。」

澄んだ声がマインからルクリアに飛び、顔を上げたルクリアにマインは優しく微笑む。

「このダークバルタンから視線を外すとは…いい度胸だ!」

無視されたような格好になったダークバルタンは怒り狂い、マインへと突進する。

しかし次の瞬間、マインとダークバルタンの間に謎の空間の切れ目が割り込み、ダークバルタンはその空間へと吸い込まれてしまった。

「あ、あれ?」

目の前から脅威が姿を消し、ルクリアは気の抜けたようにへたり込む。

「どうやら何者かの仲裁が入ったようですね…まずは無事を喜びましょう。この世界のアルティマレディ。」

にこやかに歩み寄るマインの手をとり、ルクリアは立ち上がる。

自らのアルティマフィールドに干渉出来そうな心当たりはひとつしかなく、ルクリアは頭が痛くなるのを感じていた…


「まずはこんなところかの…手荒に呼び込んですまなんだ、バルタン。」

フィールド内に自らの空間をねじ込み、猪突猛進に突っ込んできたダークバルタンを捕らえたのはゴーデスであった。

自らが知るこの次元のバルタン星人とは違うところもあるが、概ね想定通りの姿のダークバルタンを観察するゴーデス。

「なんだ貴様は!ここから出せ!」

いきなり謎のカプセルへ放り込まれたダークバルタンは、怒りに任せて内部に光線を放つが、カプセルはびくともしなかった。

「まぁ、そう怒るでない。あのまま戦っても勝ち目があるかは五分五分じゃったろう。お主ほどの使い手が敗れては勿体無いからのう。ひとつワシと取引といかんか?」

「むぅ…どういうことだ…」

ゴーデスの申し出に、顔を顰めるダークバルタン。

自らが閉じ込められたカプセルの技術力からも、自分より上手の存在であることを認めたのか、話を聞く姿勢をみせる。

「まぁこの次元のことははこちらの方が詳しいでな。まぁ話だけでも…」

いや、お前も来て数ヶ月だろ…というタケシの呆れた視線をよそに、悪の会談は始まるのだった…


一方その頃、ルクリアたちもアマチュア無線部の部室で顔を合わせていた。

マインも自らの次元で滞在している星での仮の姿『星名ミツキ』となって、バルタンの少女と合流していた。

「まずは救援感謝します、マインさん。」

ルクリアがまず感謝を述べ、マインも笑顔で応える。

「こちらこそ未知の次元で右も左もわかりませんでしたので、ルクリアさんたちに保護していただき助かりました!タイニーもここにいたのね。」

マインに微笑まれ、照れたようにはにかむ少女。

「お名前、タイニーさんっていうのね。」

アンナも笑顔を向けると、タイニーは真面目な顔に戻る。

「もともと私たちの種族には名前の概念がないのだけれど…あいつと区別するために名乗っているだけ。それよりも、この星やあなたに迷惑をかけてしまったわ…ごめんなさい。」

殊勝なタイニーに、アンナたちも恐縮してしまう。

「いやぁ…歯が立ちませんで…マインさんが来てくれなかったらどうなっていたか。でも、過ぎたことを言っていてもしょうがないわ!これからの策を考えましょう!」

明るく切り替えて場を和ませるアンナに、マインの顔にも自然と笑みが溢れる。

「とは言ったものの、少し問題が…この次元では私の力の全力行使が3分ほどしか出来無さそうなのです。さっきはカッコつけておきながらビクビクでした、えへへ。」

マインの屈託なく笑う顔は学園の生徒と変わらず、アンナもつられて笑ってしまう。

「えぇ…まずいじゃないの…あんた以外あいつは止められないのよ!相変わらず緊張感ないんだから!」

タイニーとマインの気心の知れない様子にほっこりしつつも、策を思案するルクリアたち。

「あのダークバルタンって随分粗暴だけど、あれは元からなの?」

何気なしのアンナの質問にタイニーが視線を落とす。

「ううん、元々は私とも仲良くしてた…でも、移民船団の仕事である星の調査に行ってから様子が変わっちゃって…今はあんなことに…」

それを聞いたルクリアは一つの妙案を思いつく。

「もしかして…」

まだ可能性の段階であったが、それを聞いたタイニーの目に喜びの光が灯る。

「それなら私にも作戦があるわ!」

こうして計画を立てた正義の戦士たちは、ダークバルタンの再来に備えるのだった…


その翌日、春野市の上空にゴーデスによって作られたアルティマフィールドが発生する。

それを見上げながら、ゴーデスはため息をついた。

「交渉決裂…じゃったのう。」

その一部始終を見ていたタケシは若干ゴーデスに同情する。

「まぁ、こっちの話を聞く感じじゃなかったからな。」

ゴーデスはこちらの次元の悪の組織に口利きをする代わりに、この星でのアルティマレディ討伐を依頼したのだが、ダークバルタンは自らの次元で宇宙制覇を成し遂げると聞かず、交渉は物別れに終わっていた。

お互いの折り合いの付け所として、ゴーデスがマインとの決着の場所を用意する代わりに、ダークバルタンはルクリアもまとめて始末する、ということになった。

「アレはおそらくワシの細胞に近いものに侵食され、自我を喪失しておる。理性を失った相手では、話も通じんとういうことかの。」

ゴーデスの見解に、タケシは若干呆れて頷く。

「さすがによくご存知で…」

自分の身体がゴーデス細胞によって生かされているのを思い出し、タケシは心の中で戦慄する。

「(僕もああなる可能性があるってことか…くわばらくわばら…)」

状況を見守るタケシの目に、ゴーデスのフィールドに向かう一筋の光が映っていた…


ゴーデスの作り出したフィールド内は薄暗い街になっており、その中心でダークバルタンが獲物を待ち構えていた。

そこへ光の球になったマインが飛び込み、その姿を顕現する。

「ダークバルタン!人様の星で迷惑をかけるのはやめなさい!」

ダークバルタンはまっていましたとばかりに、そのハサミを擦り合わせる。

「お前との因縁もここで断ち切ってくれる!もう一人の女はどうした?一緒でもかまわんのだぞ。」

ルクリアがいないことを不審がるダークバルタン。

「私とあなたの因縁は一対一で…あなたもその方がスッキリするでしょう?」

「ぬかせっ!後悔するなよ!」

挑発的な態度を見せるマインに、頭に血の登ったダークバルタンが襲い掛かる。

「いきます!って、あれ…」

迎え撃とうと構えたマインであったが、身体の自由がきかず、翻弄されてしまう。

「ふん…ゴーデスとやらはいけすかなかったが、このフィールドは優秀だな!」

フィールドには光の力を半減させるデバフがかけられており、マインの力は半分ほどしか出せなかった。

「くっ…正々堂々という気はないのですね!」

「(ルクリアさん、タイニー…あまり長くは持ちません…急いで!)」

暗いフィールドの中で、マインの苦しい戦いが始まろうとしていた…


そのころ、タイニーの所属する移民船団が特異点を抜け出ようとしていた。

「ルクリア!お待たせ!」

一旦船団に戻ったタイニーが胸に自分の体ほどのサイズがある釣鐘型の物体を持って現れる。

「それがあなたの言っていた…」

ルクリアは手のひらにタイニーを乗せ、地球へ舞い戻りながら確認する。

「ええ、私たちは移民船団での航海中、一部のクルーを除いてコールドスリープに入るの。その時に心を鎮めて眠りに入るために、この…あなたたちの文化に合わせるなら楽器と言えばいいのかしら…鐘の音色を聴くのよ。私たちの種族にはそういう効果があるものなの。」

タイニーが軽く鐘を振ると、優しい音色がルクリアの耳にも届いた。

「素敵な音色…これを使ってダークバルタンに正気を取り戻させるのね。」

タイニーは軽く頷き、ルクリアを見上げる。

「そう。多分この鐘の音だけではダークバルタンには届かないわ…そこであなたの協力があれば…」

二人は最後の詰めをしながら、地球へと戻るのだった…


一方ゴーデスの作ったフィールド内では、一方的にマインがダークバルタンに蹂躙されていた。

「くはぁっ!けはっ…は…はなし…な…さい…」


背後を取られ、首をハサミで締められてしまうマイン。

「こうも貴様を蹂躙できるとは…いかがわしいタコかと思えば、なかなかやるやつだったようだな!」

ゴーデスのお膳立てに感心しながら、マインを締め上げていく。

「ぐぅう…他人の力で勝とうなんて…ずいぶん志が低いのね…見損なったわ!」

マインの挑発にもダークバルタンは余裕綽々で責め立てる。

「ふん…負け惜しみを!これでどうだ!」

一気に数十体の分身を生み出し、マインを取り囲むダークバルタン。

そのまま、死角からの多重攻撃でマインを傷つけていく。

「あっ…はぅっ…ああっ…」

ピコンピコンピコン…

すでにカラータイマーは赤く点滅し、マインの危機を告げる。

胸のアーマーも砕かれ、その豊満な胸が露出してしまっていた。


膝をつき荒く息を切らすマインの姿に、ダークバルタンは愉悦を覚えていた。

「さすがのお前もここが年貢の納めどきだな。最後は屈辱に塗れた結末にしてやろう!」

ダークバルタンの身体が淡く光ると、分身が再び一体へと結合する。

そのまま本体が巨大化し、その大きさはマインの十倍ほどの大きさにまで達していた。

「虫ケラのように潰れて死ね!さらばだマイン!」

ダークバルタンは振り上げたその足でマインを踏みつけていく。

ズシャア…

鈍い音を立てて潰されるマイン。

「くくく…おや?」

自らの足が押し返される感覚に、ダークバルタンは顔を顰める。

「ぐうう…まだまだっ…」


足の下では最後の力を振り絞り、マインが踏ん張っていた。

「(とはいえ…もう限界が近い…タイニー、ルクリアさん…急いで!)」

バシュッ…

次の瞬間、フィールドを貫通してルクリアがダークバルタンの背後に飛び込んでくる。

「マインさん、お待たせしました!アルティマフィールド展開!」

ルクリアは内側から新たなフィールドを発生させ、ゴーデスのフィールドを打ち消していく。

「…!これなら動ける!ありがとう、ルクリアさん!」

フィールドのデバフが解けたことで力を発揮できるようになったマインが気合を入れると、その身体をダークバルタンと同じサイズまで巨大化させる。

「ぐぅっ、なんだと!?」

マインに背後から羽交締めにされ、困惑するダークバルタン。

「今です、タイニー!私が抑えているうちに!」

マインから合図が飛び、ルクリアの掌の上で立ち上がるタイニー。

彼女がその手に携えた鐘を構えて優しく揺らすと、フィールド内に優しい音が響く。

「ぐうう…この音色は…や、やめろぉ!」

ダークバルタンは音色に苦しみだし、その身体から黒いオーラが漏れだす。

「やった!効いてるわ…ルクリア、お願い!」

タイニーを掌に乗せたまま、ルクリアは目を瞑り意識を集中する。

「はい!フルムーンレクト!」

鐘の音に波長を合わせ、ルクリアの浄化の光がダークバルタンを包む。

「ぐうう…あ、頭が割れる…がああっ!」

二つの波動が相乗効果を生み、ダークバルタンを浄化していった。

ダークバルタンが纏っていた黒いオーラが身体を離れ、謎の輝きを放ちながら消失していく。

「ぐああ…」

ダークバルタンはサイズを小さくし、ついにはタイニーと同じ人間サイズまで縮んでいった。

そのまま倒れ伏すダークバルタンの脇に降り立つタイニー。

「眠りについたようね…憑き物が落ちたみたいだわ。」

微動だにしないダークバルタンに、安心したような表情を見せる。

「こいつはこのまま船団に連れ帰るわ。協力してくれてありがと!」

頭を下げるタイニーに、ルクリアはホッと一息つく。

「大事にならなくてよかったわ。これからあなたたちはどうするの?」

ルクリアの問いかけにタイニーは少し思案する様子を見せる。

「私たちは入植先を探しているのだけれど…この星はキャパが無さそうだし、特異点を通じて元の次元に戻ることにするわ。まだしばらくは流浪の民ね。」

それを聞いていたマインはルクリアに近づく。

「私が先導しますので安心してください。自分以外にも正義を守る戦士がいることを初めて知れてよかったわ!」

マインが手を差し出し、ルクリアがその手を取る。

「私もです…どうかお元気で!」

その瞬間、マインから力の一部がアンナの装着したアルティマブレスに吸収された。

「私の力がルクリアさんの助けになるなら、今回の御礼がわりに受け取ってください。それではまた!」

そういうと、マインはタイニーを連れて上空へと消えていく。

ルクリアとアンナはその様子を手を振りながら見送るのだった…


翌日、アンナが部活棟を訪れると、宇宙人同好会の貼り紙が剥がされ、アマチュア無線部は元通りに戻ったようであった。

おそらくタイニーが去る際に、自らの存在を記憶も含めて全て関係者から消去していった様であった。

学園はいつもの日常を取り戻し、アンナはまた忙しい業務へと戻っていく。

ルクリアはダークバルタンを汚染していた謎の寄生体に不安を覚えつつも、次の事態に備えるのだった…


続く...


※来月はアルティマレディ・ルクリアをお休みいたします。再来月には更新しますので、お楽しみに!


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Comments

syonnai_hito

ダークバルタンさん、そのまま分身でマインを凌辱するチャンスだったのにちょっと残念。ゴーデスとタケシコンビのやり取りには少しほっこりしました。

ろんど

ダークバルタンの攻撃に耐えるも、間に合わずに踏み潰されてしまうifストーリーもみてみたかったです笑