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挿絵 らすP様


エロフェッサーの一件の後、地球はしばしの平穏な日々を享受していた。

アンナも本業のスクールカウンセラーの業務に追われ、忙しい日々を過ごしていく。

そんなある日、一枚のビラがアンナの目に止まった。

「ようこそ地球へ! 宇宙人同好会?」

文章を黙読し、首を傾げるアンナ。

「どういう趣旨の同好会なのかしら?…ええと、活動日は…今日の放課後もやっているのね…」

掲示板の隅っこに貼られた誰も見ないようなビラであったが、何か引っかかるものを感じたアンナは、心の片隅にそのことを留め置くのだった…


その日の放課後、アンナはビラに書かれていた部室棟の一角へと向かう。

その部屋の前まで辿り着いたアンナは、ふと足を止めた。

「この部室は確か…アマチュア無線部?」

以前ゴーデスたちが電波怪獣ビーコンを利用した計画を実行に移した際、洗脳されていた部長が退部し、今は休部状態と聞いていたが、その扉には昼間見たビラが貼られていた。

「ここで間違いはなさそうだけれど…失礼します!」

ノックをし、扉を開くアンナ。

「ようこそ!宇宙人同好会へ…って今野先生かぁ…」

出迎えた少年…新田ツトムは残念そうにうなだれる。

「…なんだとはずいぶんな言いようじゃない…」

流石にムッとしたのかアンナも作り笑顔でツトムを睨みつける。

「あ、いや、別にガッカリというわけでは…」

まずいと思ったのか、多弁になり取り繕おうとするツトム。

ため息をついて部室内を見遣ったアンナは強烈な違和感に襲われた。

「全く…えっ?…あなたは…」

室内からアンナを射抜く鋭い視線。

その視線の主は一人の女生徒。

しかし、アンナにはその少女の見覚えがなかった。

アンナはスクールカウンセラーの仕事上、全校生徒の名前と顔を一致させることができるくらい、一人一人のことを認識していた。

当然長期の怪我や病気による休みや、転出・転入なども把握しており、担当以外の学年などにも精通している。

それはアンナにとっても、仕事をしていくうえで一つの自信になっていた。

そんなアンナが見たこともないと感じる少女。

身構えるアンナの様子を見た少女は、軽くため息をつきながら立ち上がると、その指をパチンと弾いた。

次の瞬間、一瞬で周りの時間が止まる。

「えっ…」

驚くアンナであったが、自分の動きに違和感はない。

正確には、少女とアンナ以外の時間が極端に遅くなっているようであった。

「ど、どういうこと…?」

目の前ではツトムの口からゆっくりと飛沫が飛び、この瞬間も彼が一生懸命アンナに弁明しようとしていることがわかる。

戸惑うアンナに、少女が近づきながら話しかけた。

「あなたたちのアルティマフィールドのようなものよ。私のそれは、時間に干渉して任意の対象以外の動きを遅らせるの。こういう技術は別にあなたたちアルティマの戦士の専売特許ではないわ。」

可憐な少女の口からすらすらと出た言葉に驚愕するアンナ。

固まってしまったアンナに変わり、身につけていたスマホからルクリアが答える。

「アンナ、ここは私が…あなたはこの星の人ではありませんね。」

問いかけられた少女は微笑みながら答える。

「そのとおりよ、アルティマレディ。こちらから接触しようと思っていたから、余計な手間が省けたわ。」

ルクリアは落ち着いて少女を問いただす。

「何のためにこの星に入り込んだのです?ここが我々アルティマの星の庇護下にあることを知って…」

「待って!不味いわ…もう奴がこの星に…」

ルクリアの質問は途中で少女に遮られる。

「奴…とは?」

ルクリアの質問には答えず、少女は天井…正確にはその先の上空を見上げてしばし思案する。

そして意を決したようにアンナに向き直った。

「ちゃんと説明すると長くなるから、端折るけどごめんなさい。私はこの星の付近に開いた特異点を通じて並行世界から飛ばされてきたの。この星の人間に擬態して、仲間に助けを求める通信を送ろうと、この子の持っているこの機械を借りていたというわけ。」

ここまでいいきると、少女は一度言葉を切った。

アンナは続けて、とばかりに少女へ頷く。

「私の技術で電波の指向性と出力を絞って…っていう技術的な話はちょっと飛ばして…特異点の向こうにいる同胞への通信を試みていたところに、今最悪の相手から返信があったわ。同じ種族の中でも、破壊や支配を好む最低の奴がこっちへ向かっている。」

少女の話を聞いたルクリアが、スマホから尋ねる。

「並行世界から来たのなら私の知識にはないかもしれないけど、あなたたちの種族の名前を教えてくれる?」

少女はふぅ…と息を整え、ルクリアにその名を告げる。

「バルタン…私たちの名はバルタン星人よ。」

その名前を聞いたアンナは目をぱちくりとさせた。

「バルタン星人なら私でも知ってるわ…と言ってもアルティママンのキャラクターとしてだけど…」

驚くアンナにルクリアが補足する。

「こちらの次元の本物も、あれと同じような能力を有しているわ。宇宙忍者に恥じない強者よ。確か、女性の個体がシャインさんと因縁があると聞いたことが…」

少女も二人へ頷きかける。

「私の次元のバルタン星人は、この星のアルティママンのものとデザインが近いわ。と言っても、私みたいに擬態してしまえば関係ないけれど…っと、あまりお喋りしている時間は無さそうね。今、特異点をならず者…私たちは『ダークバルタン』と呼ぶ個体が通過したわ。」

天井を睨み、少女が告げる。

「次の戦姫の配属は少し後になると聞いています。今は私たちで食い止めましょう!」

ルクリアの声にアンナが頷く。

「バルタンさん、この術を解いてくれる?」

アンナの要望に少女は首を横に振った。

「今、術を解いたらツトムくんにあなたたちの正体を見られてしまうわ。大丈夫、元々アルティマレディをどうこうできるような結界ではないの。変身の光に紛れて出ていけば問題ないでしょう。」

少女の話ににアンナはスマホを構える。

「それじゃあツトムくんへの言い訳よろしくね!…ルクリアッ!」

眩い光と共に部屋から消えるアンナの姿。

少女がもう一度指を弾くと、周りの時間がもとの速度へと戻る。

「…というわけでして!…ってあれ、今野先生は?」

熱弁虚しく、対象の教師が消えたことに気づいたツトム。

「先生なら、用事で帰られたわよ。全く、熱くなるとすぐ周りを見失うんだから…」

呆れ顔の少女であったが、その目はアンナの消えた先をずっと見据えていた。

「頼みましたよ、アルティマレディ…せめて『彼女』の到着まで…」


「アルティマフィールド!」

春野市の上空にフィールドを発生させ、ダークバルタンを迎え撃つ準備をするルクリア。

程なく大気圏にダークバルタンが侵入し、フィールドへと誘導される。

ダークバルタンに地球へついたと錯覚させるため、フィールド内には春野市の街並みが再現されていた。

「フォッフォッフォッ…ここが信号の発生源か!でてこい!一族の裏切り者め!」

いきなりフィールド内の建物を破壊し始めるダークバルタン。

「そこまでです!私はアルティマレディ・ルクリア!この星…地球はアルティマの星の庇護下にあります。干渉は許可できません!」

すぐさまルクリアも駆けつけ、ダークバルタンと対峙する。

しかし、ダークバルタンはそれを一笑に付した。

「フォッフォッフォッ!お前を倒せば他は未開な現地人のみというわけか!『邪魔者』が入る前に根こそぎ資源だけ奪ってやろう!」

いかにも侵略者然とした振る舞いに少し呆れながらも、ルクリアは戦う準備を進めていく。

「噂に名高いバルタン星人…戦闘力も高いと見るべきね。ルクリア、フレアモードでいきましょう!」

アンナの提案を了承し、フレアモードへと姿を変えるルクリア。

「いきます!」

アルティマフィールド内で交錯するルクリアとダークバルタン。

二体の実力は拮抗し、互角にぶつかり合う。

「フフン…なかなかやるではないか!ではこういうのはどうだ!」

ダークバルタンは手のハサミを前に突き出し、リング状のビームを放つ。

「タァッ!」

素早く側転し、リングを交わすルクリア。

「ならばこっちも!ブレイジングウェーブ!」

エネルギーを熱波に変え、敵にぶつけるフレアモードの必殺技を放つルクリア。

しかし、ダークバルタンの方が一枚上手だった。

「フォッフォッフォッ!」

ダークバルタンの身体が揺らめいたかと思うと、そのまま二体へと分裂する。

ブレイジングウェーブはその隙間をすり抜けてしまった。

「そんな…」

ショックを受けるルクリアにダークバルタンの不敵な声が飛ぶ。

「よそ見をしている余裕はないぞ!それぃ!」

ダークバルタンが先ほど放ったリング光線が軌道を変え、真上からルクリアへと迫る。

「ああっ!」

いくつもの光の輪がルクリアの身体を締め付け、ルクリアはその痛みに悶絶した。

「フォッフォッフォッ…君のそのフォームは能力こそ上がれどエネルギーの消耗が大きいと見た!そのリングに囚われる気分はいかがかな?」

挑発的なバルタンの物言いにキッと見返すルクリアであったが、その言葉の通り、消耗は著しいものであった。

ピコンピコンピコン…

カラータイマーも点滅を始め、ルクリアの危機を告げる。

「くぅ…このままじゃ…」

焦るルクリアを見透かすかのように、リングはその締め付けを強めていくのだった…


「不味いのう…」

一方その頃、ゴーデスとタケシがことの顛末を地上から眺めていた。

その中でゴーデスの苦虫を噛み潰したような独り言に、タケシが反応する。

「なんでさ?ルクリアに負けてもらってあいつが暴れてくれれば、マイナスエネルギーを稼げるんじゃないのか?」

ゴーデスはため息をつきながら、タケシに告げる。

「不味いのは、前に話した特異点のメリット・デメリットのほうじゃの…メリットは今回のように悪の宇宙人が地球に混乱を招いてくれることじゃが…デメリット…逆もまた然り、ということじゃ…」

ゴーデスが言い切ったその時、特異点を観測するモニターは、一際大きなエネルギーの通貨を観測していた…


部室の窓から空を見上げていた少女の目が希望に輝く。

「来てくれた…私たちの次元を護る、『最速・最強』のアルティマ戦姫が!」

彼女が電波を特異点に向けて発射していたもう一つの理由、それが『彼女』に向けたSOSだったのである…


「ううっ…くっ…はああああ!」

力を振り絞り、リングビームの拘束を振り払うルクリア。

ピピピピピ…

その代償にエネルギーを大量に消耗し、カラータイマーは早鐘のように点滅する。

「はぁっ…はぁっ…」

膝をつき息を荒げるルクリアの身体が淡く光を放つ。

「い、いけない…まだダメッ…」

懇願も虚しく、光が収まった後にはルナモードに戻ってしまったルクリアの姿があった。

「フォッフォッフォッ…他愛のない…一思いにその首を刎ねてやろうか!それともタイマーの串刺しが御所望かな?」

勝利を確信したダークバルタンが、その手のハサミをルクリアへと突きつける。


「うう…アルティマレディは最後まで悪には屈しません!」

気丈にダークバルタンを見据えるルクリア。

「ふん…ならば潔く死ねっ!」

シュンッ!

振りかぶられたハサミがタイマーを串刺しにしようとしたその時、ルクリアとダークバルタンの間を閃光が真一文字に走った。

「な、なにっ!」

次の瞬間、バルタンのハサミがごとりと地面へ落ちる。

「このスピード…この切れ味…まさか!?」

バルタンが背後を仰ぎ見ると、背後のビルに一人の戦姫が降り立つ。

まるでスポットライトのように陽光が差し込み、その戦姫の赤と金のビキニアーマーを眩く照らしていた。

「なぜお前がここに?!アルティマレディ・マイン!」

勝利を瞬間を掠め取られ、怒りに震えるバルタン。

金色の女神はそれを黙って見下ろすのであった…


後編へ続く…

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Comments

syonnai_hito

原典通りなら、颯爽と現れたマインもダークバルタンに負ける展開ですが、ここでゴーデスと一時的に共闘とか?マインさんがどんなやられを見せてくれるか楽しみです。