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挿絵 炭酸水様


ガルデン大王との決戦から数日…

闘いの中で倒れたアルティマソフィは、傷の治療を終えた後、王都スパークルシティの王宮内に軟禁状態で拘束されていた。

部屋の中から出ることは叶わず、外の状況も不明のまま…

世話をしに来る従者も、ソフィの質問には固く口を閉ざしていた。

チームαの面々や、戦局がどうなったかを考えると気が気ではなかったが、今のソフィにできることは待つだけであった。

しかし、その状況も長くは続かなかった。

突如従者から、女王陛下への謁見が決まったことを知らされるソフィ。

同時に、頭の先から爪先までありとあらゆる手入れを施され、ここ数年では一番の身だしなみとなっていた。

「死装束かしら…」

ソフィが持ち出したアルティメットブレードとイージスは、光の星では国宝に位置する逸品である。

それを無断で借用して破損させたソフィには、相応の罰が下ることは間違いなかった。

最悪極刑も…と覚悟をしていたが、女王陛下直々の裁きを受けるとなると、この状況も納得であった。

美しく整った格好とは裏腹に、暗澹たる気持ちになるソフィ。

しかし、扉を開けて入ってきた人物を見るや、ソフィの顔は年頃の少女のように綻んだ。

「ネグル!無事だったのですね!」

そこには執事としてソフィの家に長年勤めてくれていた、アルティマネグルの姿があった。

「お嬢様こそ、よくぞご無事で…随分おめかしされておられるようですな。謁見の間までのエスコートを仰せ使って参りましたぞ。」

優しい笑顔を向けるネグルに、涙ぐみそうになるのを堪えるソフィ。

「えっと、あの…聞きたいことがいっぱい…」

矢継ぎ早に質問が口をつきそうになるものの、ソフィは整理できずに目を白黒させていた。

「お嬢様、落ち着いてください。何をお聞きなりたいかは想像がつきますが、私もここで情報をお話しすることは禁じられています。何卒、陛下への謁見がお済みになるまではご辛抱を…」

ネグルに優しく諭され、しょぼんとするソフィ。

しかし意を決したように、ネグルへと告げた。

「私はこの通り、どのような処分が降るかわかりません…もし…みんなの元へ戻れないと決まった時は、伝言を頼まれてくれますか?」

真剣な表情のソフィに、ネグルも強い眼差しを返す。

「もしお嬢様に何かある時は、このネグル、命に変えてもお助けいたしますぞ。あまり後ろ向きに考えてはいけません。」

そう言って笑うネグル。

ネグルはソフィに護身術としての格闘術を仕込んだ師でもあり、凄腕の実力者である。

一瞬本気で衛兵を蹴散らして助けにくるネグルを想像し、その頼もしさにソフィはプッと吹き出していた。

「ふふっ…あなたなら本当にやってくれそうね。でも狼藉はダメよ。」

それは残念、と肩を竦めるネグル。

笑ったことで緊張の糸が途切れたソフィは、凛々しい表情でネグルに向き合った。

「どういう御沙汰が降るかはわからないけど、なんとか陛下に弁明してみるわ。必ずもう一度逢いましょう。」

ソフィにいつもの調子が戻り、ネグルも安堵する。

「それではお嬢様、謁見の間へ…お帰りをお待ちしておりますぞ。」

そういうと、二人は部屋を出て運命の面談へと進むのであった…


「ここに入るのもいつぶりかしら…」

女王陛下への謁見の間へと進むソフィ。

入り口の部分でネグルは残り、今は一人で歩を進めていた。

薄布に遮られた玉座の前に立ち、跪いて最敬礼の姿勢を取るソフィ。

人払いがされているのか、謁見の間には誰の姿もなかった。

「女王陛下…皇位第3位・アルティマソフィ、参りました。」

声をかけるも反応がなく、顔を上げるソフィ。

その時、風がテラスから吹き込み、玉座にかかっていた薄布をはためかせる。

しかし、その隙間から垣間見えた玉座は無人であった。

「陛下?どちらに…」

一度立ち上がり、周りを見渡すソフィ。

するとテラスに、一人の少女の姿があった。

少女もソフィに気づいたのか、ゆっくりと向き直る。


「あの、すみません…」

女王の従者の一人かと思い声をかけるソフィ。

しかし、歩み寄ろうとした瞬間、ソフィは再度、最敬礼の姿勢をとっていた。

「陛下…でらっしゃいますか?」

今まで、ソフィが公式の式典等で一緒になる時も、必ず薄布一枚を隔てることで、玉座から直に姿を見ることはできなかった女王。

しかし、目の前の年端の行かない少女の姿からは、それに勝るとも劣らない凄みをソフィは感じ取っていた。

「ふふ…気づかれてしまいましたね…」

少女は悪戯っぽく微笑むと、軽く目を瞑る。

すると淡い光のオーラが少女を包み、次の瞬間には大人の女性へと姿を変えた。

全身を金色の装備に身を包み、圧倒的なエネルギーを放つその女性こそ、光の星を統べる女王『アルティマユウリ』その人であった。


「ごめんなさい…いろいろ事情があって、普段はエネルギーをセーブするためにあのような姿をとっているのです。あなたを試したわけではないのよ。」

そう言ってソフィを見つめるユウリ。

その視線に、ソフィは背筋がピンと張るのを自覚していた。

「顔をあげなさい、ソフィ。」

ソフィはユウリの命に応え、顔を上げる。

するとそのソフィに対し、ユウリは深々と頭を下げた。

「此度の戦い、あなたの勇気ある決断によってこの星は侵略の手から救われました。星の住人を代表し、ここに感謝を…」

目の前で起きた想定外の事態に固まっていたソフィであったが、すぐにユウリへ声をかける。

「陛下、おやめください!このようなところ誰かに見られたら…」

するとユウリはこともなげに微笑んだ。

「あら…そのために人払いをしたのよ。あなたはそれだけのことをしてくれたわ。」

再度頭を下げようとしたところをソフィに止められ、苦笑しながらユウリは話を続ける。

「ただしこれは、わたくし個人…一人のこの星の民としてのお礼です。そしてここからは…」

ユウリの顔から微笑みが消え、真剣な眼差しがソフィを射抜く。

覚悟はできていたとはいえ女王を前にして、ソフィは自分の血が冷え切っていくのを感じていた。

「この星の女王として、あなたの行動への処分を言い渡します。」

ソフィは今しかない、と意を決し、襄王との謁見が決まった時から考えてきたことを実行する。

「恐れながら陛下、今から言い渡される処分、どんな内容でもお受けいたします!ただし今回のことは全て私の独断で行った事…貯蔵庫の管理を行なっていたアルティマネグル、並びにアルティメイトブレードを使用したアルティマケインをはじめとする他のものには寛大なご処置を…」

なんとか処罰は自分だけに…

なりふり構わず訴えるソフィの姿に、ユウリは一瞬呆気に取られたような表情をうかべる。

そしてソフィの唇に人差し指を当て、首を横に振った。

「安心なさい…この星を救った功績を考慮すれば、彼らを罪に問うことなどできません。」

優しい声色で語りかけるユウリに、いきなり食ってかかってしまった事を後悔し、赤面するソフィ。

ソフィが落ち着いたことを確認したユウリは、言葉を続ける。

「でも、あなたには彼らと違い、皇族としての立場があります。それは理解できますね。」

ユウリの言葉に頷くソフィ。

「そこを今回の功績で、全て不問に帰すことはできません。あなたには責任を取ってもらう必要があります。」

その言葉を聞きながら、それでもソフィの顔は晴れやかであった。

自分の起こしたことで、大切な人々が咎められることはない…

それだけで、すでにソフィには十分すぎる成果であった。

「アルティマソフィ…あなたの皇位継承権を剥奪します。皇族の地位を奪うことはありませんが、今まであなたにの家に任せていた公務は、全て私が一時的に預かります。」

極刑を言い渡されることすら覚悟していたソフィにとって、ユウリの口から出た言葉は意外なものであった。

ポカンとするソフィの肩に手を置き、ユウリは続ける。

「あなたのような優秀な子を、今後も皇族の公務で拘束するのは得策ではない、という私の判断と…今回の戦いの功労者たちが口を揃えて、あなたへの恩赦を求めていること。これらを考慮して、一番両得な方法を模索したのだけれど…どうかしら?」

再びやさしい微笑みが戻ったユウリに、ソフィの顔にも安堵の表情が広がる。

「本当によろしいのですか…私にとっては不問のようなものですが…」

放心したようなソフィの頭をユウリは優しく撫でる。

「ええ…こちらにも色々な思惑があるのです。ソフィ…あなたには期待しているのですよ。」

そしてその手をゆっくりとソフィの頭上に輝くアルティマティアラへと伸ばした。

「このティアラも預けておきます。これは私のティアラの複製ですが、あなたのような勇敢な人にこそふさわしいもの…これからも銀河の平和のため、その力を奮いなさい。もし今回の裁定であなたが私に恩義を感じてくれるなら、それこそが最大の報いとなります。」

ユウリの言葉にソフィは身が引き締まる思いであった。

「女王陛下…必ずやそのご期待に応えて見せます!」

一人の戦士としての凛々しい顔を見せるソフィに、満足そうに頷くユウリ。

「今後のあなたの家のことは、ネグルにこちらから指示を出します。私たちの銀河に平和が戻った時には、また皇族として協力を願うこともあるでしょう…あなたはまず、自らの使命に邁進しなさい。」

ユウリの言葉に、チームαの面々を思い出すソフィ。

「はい!…それでは陛下、失礼いたします!」

一礼して退出するソフィの背を、最後まで見送るユウリ。

「ソフィ…銀河の平和を頼みますよ…」

この時のユウリの見立ての通り、ソフィはその仲間たちと銀河に平和をもたらすことになる…

それはまだ、少し未来の話であった…



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Comments

syonnai_hito

女王ことユウリはミレーヌによく似てますね。今後、この女王もやられがあるか楽しみです。

ガチピン@ご支援感謝

syonnai_hito様 いつもご支援・コメントありがとうございます。 ユウリの設定とピンチエピソードも近く公開予定です。 お楽しみに!