アルティマレディ・ルクリア 14話 「未知なる来訪者」挿絵増量版 (Pixiv Fanbox)
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挿絵 らすP様
タイラントの襲来から数日後…
月面近くで発生した巨大な衝撃波の影響で、幾つもの人工衛星で不具合が発生し、人々の生活にも多少の不便が発生していた。
そんな中、ルクリアとアンナはゴーデスの意図について、意見を交わしていた。
「うーん…人工衛星の混乱で多少の不便はあるけど…こんな嫌がらせが目的じゃないわよねぇ…」
思案するアンナに、ルクリアも同調する。
「はい…私は彼に襲われた怪獣墓地にも行きましたが、あれは相当なマイナスエネルギーを注ぎ込んで行われた作戦のはずです。地上でタイラントを自爆させて全てを吹き飛ばす…というのも、今までの作戦と主旨が合わない気がします。」
アンナの告白により、ゴーデスの協力者である新堂タケシのことは、ルクリアとの間で共有されていた。
「タケシ君という協力者もいるわけですし…何か他の意図があったと考えるべきでしょう。」
極悪非道なゴーデスなら、タケシもろとも地上を…ということも考えられたが、それならこんな手間をかけずになんとでもなったはず…
その考えは2人とも共通するところであった。
「とりあえずは例の爆発跡の調査待ちってところかしら。えっと、今回来てくれたのはメリムさんのお師匠さんなんだっけ?」
既に光の国から今回の調査とメリムとの引き継ぎ役として、新たなアルティマレディが送りこまれていた。
「アルティマレディ・ティアナ教官…アルティマ姉妹最強と名高い方です。私も警備隊学校の訓練でお会いして以来ですが…」
ティアナは気が早いのか、直接現場を見てから地球へ向かうとアルティマサインを寄越し、まだ顔を見せていなかった。
「早くいらっしゃるといいのですが…」
アンナの視線はルクリアの言葉につられるように、夜空に浮かぶ月を追っていた…
「えーっと…この辺でいいはずだよね…」
アンナとルクリアの心配をよそに、アルティマレディ・ティアナは月の裏側で調査をはじめていた。
真紅のビキニスーツに大きな2本の角をつけたヘッドギアで武装したその姿は、アルティマ姉妹最強も納得の威風堂々ぶりであった。
しかし本人は戦うことは得意でも、調べごとなどの頭脳労働は苦手としており、ここでも機械を手に四苦八苦していた。
「姉さんたちもこういうのは自分でやってほしいよね…ボクがこういうの苦手なの知ってるくせに…お、ついた!」
なんとか装置を起動し、空間の数値の測定を始めるティアナ。
しかし次の瞬間、闇の中から電撃が走り、一体の怪獣が飛び出してきた。
「うわぁっ!?何事?」
ティアナに組み付いた怪獣は、電撃を放ちながらティアナを連れて一緒に月面へと落ちていく。
「こいつ…確かソーキンモンスターの…ガルバラード!なんで外宇宙の怪獣がこんなところに…」
即座に形状から相手を看破するティアナ。
しかしそれはこの宇宙には存在しないはずの怪獣であった。
そしてティアナと組み合うガルバラードの横を、もう一体の影がすり抜けていく。
「…しまった…地球に向かってる!」
焦るティアナであったが、ガルバラードはその隙につけ込んで拘束を強めていく。
地球のすぐそばで、事態は急転直下を迎えていた…
「おお…来たようじゃの…」
ため込んでいたほぼ全てのマイナスエネルギーを、タイラントの一件で使い果たしていたゴーデスが、のんびりと口を開く。
「その様子だと、『真の目的』ってのがうまくいったのかい?」
自室で調べ物をしていたタケシが顔を上げて反応した。
「うむ…それもいい方に転んだようじゃぞ…」
いい加減勿体ぶるゴーデスに呆れ始めていたタケシは、投げやりにゴーデスの話に相槌を打った。
「ふーん…それで?」
臍を曲げたらしいタケシの様子に、ゴーデスも笑いながら答える。
「ファファファ…そう拗ねるでない…お主にもそろそろ話してやるかのう。」
そういうとゴーデスはホログラムのような物を室内に投影する。
地球と月の形が映し出され、月の側に3つの光点が明滅していたが、そのうちのひとつが地球の方向へと動き出していた。
「今写っている3つの光点があるじゃろう。月に残っているのがアルティマレディと“来訪者”じゃ。来訪者は2体で、そのひとつは地球へ向かっておる。」
ゴーデスの説明を聞きながら、光点の動きを目で追うタケシ。
「来訪者なんて言い回しをするってことは、エロフェッサーやドロボンみたいなお仲間じゃないってことか?」
タケシの問いにゴーデスは目を細める。
「お主は察しが良くて助かるわい…その通り、あの光点が光る付近でタイラントは爆発しておる。ここまで言えば何が起きているか、想像がつくじゃろう。」
ゴーデスに促されたタケシは、推論を組み立て口にした。
「試されてるみたいで面白くないけど…タイラントの爆発で、次元の切れ目のような物ができている、とかじゃないか?タイラントにブルトン仕込んで、次元跳躍させてたって言ってたし…」
相方の読みが良いところをついていることに喜んだゴーデスは、上機嫌で解説を始める。
「おお!ほぼ正解じゃぞ…本当は成層圏内に切れ目を作りたかったんじゃが。ほれ、お主の見ていたやつにもあったじゃろ。空がパリンって…」
予想が当たったことは素直に嬉しかったものの、話の荒唐無稽さに呆れるタケシ。
「バキシムじゃないんだから…っていうことはその切れ目から、別次元の怪獣が出てくるのか?」
「うむ…それだけではないんだがな…今はその認識でいいじゃろう。そしていま、その記念すべき一体目がこの星に到着というわけじゃ。」
ゴーデスの言葉通り、光点の一つが地球へと到達しようとしていた…
一気に成層圏に突入したソーキンモンスターは、春野市近くの山間部に落着する。
そのまま森林の植物から地球への適応能力を獲得し、グリーンショックスへと変貌した。
そのまま大きなエネルギーに惹かれたグリーンショックスは、春野市へ向かって侵攻を始めるのであった…
その頃、ルクリアたちもティアナからのアルティマサインを受けとっていた。
「宇宙怪獣…これまでのゴーデス関連の敵とは違うのかしら…」
始めての相手に緊張を隠せないアンナを、ルクリアは激励する。
「アンナ…私たちのすることは同じです。浄化の力でどこまでできるかわかりませんが…街を守りましょう!」
街の危機を前にアンナも決意を固める。
「ええ!…ルクリア!」
スマホを構えてパートナーの名前を呼ぶと、アンナの体が眩い光に包まれ飛翔する。
街に迫るグリーンショックス…未知の怪獣にルクリアはどう挑むのであろうか…
山間部を進むグリーンショックスの元へルクリアが到着する。
「人目につく前でよかった…アルティマフィールド!」
ルクリアはすぐにフィールドを展開し、グリーンショックスと一対一の状況を作る。
グリーンショックスは目の前に現れた巨大なエネルギーの反応に、反射で触手を伸ばし始めた。
「くっ…問答無用ってわけかしら?」
触手を避けながら距離を詰めようとするルクリア。
グリーンショックスは生物としての本能でルクリアのエネルギーを求めているに過ぎず、交渉の余地はなかった。
それを察したルクリアも、すぐに浄化する方針に切り替える。
「大人しくしなさい!…フルムーンレクト!」
ルクリアの掌から発せられた癒しの光が、淡くグリーンショックスを包む。
浄化の力の前にグリーンショックスの動きが鈍り、ルクリアは手応えを感じていた。
「このまま無害になってくれれば…」
しかし、それはグリーンショックスの罠であった。
地中に触手を這わせたグリーンショックスは、ルクリアの背後から奇襲をかける。
浄化に集中していたルクリアは、触手に絡め取られてしまった。
「ああっ…」
強力な締め付けと共に、ルクリアのエネルギーを吸収していくグリーンショックス。
ピコピコピコ…
カラータイマーも点滅を早め、ルクリアはピンチに陥ってしまった。
ゴーデスの搦手とは違う攻め手で迫る新しい敵に、ルクリアにも危機が迫る。
しかし次の瞬間、フィールド内に上空からティアナが舞い降りた。
「てやぁあああ!」
そのままキックで触手を蹴散らし、ルクリアを解放するティアナ。
急激なエナジードレインで弱っていたルクリアは、膝をついてしまう。
「ごめんね!もう一体を倒すのに手間取っちゃって…」
既にガルバラードを倒し、地表まで高速で到達したティアナのカラータイマーも赤く点滅し、激戦があったことを表していた。
「申し訳ないけど、一気に決めるよ!」
ティアナは手を上に掲げると、必殺の光線の構えに移行する。
「スティリウム光線!」
掛け声とともに、T字に組んだ腕から発射された破壊光線がグリーンショックスを焼いていく。
ズドォォン…
本体のエネルギーに引火したのか、大爆発を起こすグリーンショックス。
「ふぅ…一件落着かな…大丈夫?ルクリ…」
爆発に背を向けてルクリアに手を差し伸べるティアナ。
しかし次の瞬間、グリーンショックスの触手がティアナの身体を拘束する。
グリーンショックスは細胞の一片でも残っていれば復活が可能なのであった。
「わぁっ!?まだ生きてるの…し、しつこい…」
「ティアナさん…今助けます!…うぅっ…」
ルクリアが立ちあがろうとするものの、まだそこまでの力が戻っていなかった。
「ううん、大丈夫!決着をつけるから、ルクリアはフィールドを外から維持してくれる?」
自分がいても足手まといになってしまう…
そう理解したルクリアはなんとか立ち上がり、フィールドから退出する。
「よし…1人ならあれが使える…覚悟してね、グリーンショックス!」
ティアナが気合を入れると、体全体が発火し拘束していた触手を焼き落としていく。
「細胞の一片も残さない!アルティマダイナマイトッ!」
瞬間、ティアナの身体が炎に包まれ、フィールド内の全てを焼き尽くしていった…
フィールド内で凄まじい熱量が渦巻き、ルクリアはなんとかフィールドの維持に努めていた。
「すごい…これがティアナさんの実力…」
ルクリアは感心しきりであったが、そうしている間にも内部の温度は落ち着きつつあった。
ルクリアがフィールドを解くと、ティアナが地面にへたり込んで笑いかける。
「たはは…流石に力を使い過ぎたかな…なかなか骨のある敵だったね。」
ティアナに肩を貸し、ルクリア達は帰路に着くのであった…
「ふむ…流石にティアナの相手は荷が勝ち過ぎていたかの…」
2体の戦いぶりにある程度の満足度を得た様子のゴーデス。
「今後はあの切れ目から怪獣達を呼ぶのか?」
自分のコレクションの出番は終わりかな…と少し残念そうなタケシに、ゴーデスは意味深な言葉をかける。
「うむ…しかしこれまで以上のカオスを作っていけるのは間違いないじゃろう。それにこの状況なら、アルティマレディ達にも動きがあるはずじゃぞ…ファファ…楽しくなってきたわい。」
まだゴーデスの企みの全貌が見えないこと…そしてゴーデスのある発言への違和感を感じたタケシは、状況を素直に喜んではいられなかった。
「まったく…人の惑星だと思って気楽なことで…」
呆れ顔でタケシは、ことの発端となった月を見上げていた…
実際にこの状況を経て、事態は大きく動いていくことになる。
アンナとルクリアの戦いはさらなる展開を迎えようとしていた…
続く