アルティマレディ・ルクリア 12話「平成戦姫を超えていけ ルクリア編」挿絵増量版 (Pixiv Fanbox)
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挿絵 らすP様
前回のあらすじ
マルチヴァースのアルティマレディたちのエネルギーを吸収したタイラントが、ついにルクリアの守る地球へと到達する。
ルクリアの留守を守っていたメリムが戦いを挑むものの、あと一歩及ばず敗れ去ってしまった。
果たして残されたルクリアは、この難敵に勝利することができるのだろうか…
メリムによってタケシの元から救われたアンナは自宅に戻り、その無事を祈っていた。
その時、スマホが淡く光ったかと思うと、懐かしい声が脳内に響く。
「アンナ!ただいま戻りました!」
離れたのは数日の間であったが、その懐かしい声に目頭が熱くなるアンナ。
「ルクリア!お帰りなさい!」
相棒の帰還にアンナの声が明るくなる。
しかしルクリアは、すぐに本題を切り出した。
「先程メリムさんからアルティマサインで現状の報告を受けました…戻られていないところを見ると、おそらくメリムさんは敗れてしまったようですね。」
アンナは状況の悪化を察し、ショックを受ける。
「そんな…」
自分を救いに来たせいで、何か不利があったのでは…気に病む様子のアンナをルクリアは気遣う。
「あなたのせいではないわ、アンナ…悔やむよりも今は、あれを何とかしなければ…」
上空のアルティマフィールド内には、地表を吹き飛ばしかねないエネルギーを内包したタイラントが残されていた。
「あのフィールドは、おそらくメリムさんが命を削って維持していると思われます。アンナ…いけますか?」
以前ジェニスから、アルティマ姉妹は寿命を消費して力を発揮するという話を聞いたことを思い出し、アンナは上空のフィールドに目を向ける。
「私たちがやらなくちゃよね…さっきの恩を返さなくちゃ!」
決意の視線を向けるアンナに安堵し、ルクリアはスマホの中で輝きを増していった。
「行きましょう!アンナ!」
ルクリアの声にこたえ、アンナはスマホを高く掲げてパートナーの名を呼ぶ。
「ルクリア!!」
光に包まれたアンナは、そのまま上空へと飛び立つのであった…
春野市の上空にメリムが作ったフィールドはいまだ健在であった。
メリム自身はタイラントの吐き出した瘴気に囚われ意識を失いつつあったが、なんとかタイラントをその中に押しとどめていた。
「…あとどれくらいもつかな…」
薄れゆく意識の中でメリムがつぶやいた瞬間、フィールド内にまばゆい光が降り注ぐ。
その中から現れたのは、すでにフレアモードへと変化したルクリアであった。
「出し惜しみ無しで行きます!」
フィールド内を物色していたタイラントは新たな獲物の登場に目を赤く光らせる。
「ガアアッ!」
いつもなら遠距離の敵に投げつける鎌はメリムに斬り捨てられ、いら立ちを見せるタイラント。
「傷ついたところを狙って…ハンドドラフト!」
矢じり状の光線がいくつも発射され、タイラントに戦士たちがつけた傷へ襲い掛かる。
出血のようにため込んだ光のエネルギーを傷から滴らせ、タイラントは体勢を崩した。
「今なら通るはず!ネイバスター光線!」
ルクリアの手がL時に組まれ、強力な光線がタイラントへと直撃した。
「ギャアアア…」
白煙の中で断末魔の様な雄たけびを上げるタイラント。
「…やったかしら?」
爆発が起きないことで状況が読めず、少しずつ距離を詰めるルクリア。
しかし次の瞬間、白煙を切り裂いて巨大な鉄球がルクリアの腹部に命中した。
「ゲハァッ…カハ…そ、そんな…」
手ごたえを感じ、のっそりと姿を現すタイラント。
そのまま、腕の鉄球を振り回し、ルクリアの体を打ち据えていく。
ドガッ…バギィ…
硬い骨がやわらかい肉にめり込む音がフィールド内に響き、ルクリアの苦悶に満ちた声が色を添えていた。
ドサァ…
タイラントから拘束を解かれ、フィールドの床面に放り出されたルクリアが時折痙攣する。
ピコンピコン…
カラータイマーも悲鳴を上げる中、身体を守るコスチュームも無残に破れ、ルクリアはその胸を露わにしていた。
「つ…強すぎる…」
必殺のネイバスター光線でもタイラントの強固な皮膚を破れず、視界が霞んでいくのを感じるルクリア。
しかしその視線の先に落ちていたあるものが、ルクリアの目に留まった。
「あれは…タイラントの鎌?」
タイラントのそばにはメリムが切り落とした鎌が転がっていた。
それを見たルクリアの脳裏に一つの作戦が思い浮かぶ。
「このままやられるよりは…いちかばちか!」
なんとか体に力を入れて立ち上がるルクリア。
「てやぁっ!」
残された力をかき集め、鎌へ向かってダッシュする。
そのまま鎌を手に取ると、エネルギーをその刃へ走らせた。
「同じ材質ならいけるはずっ!てやぁああああ!」
ゼロ距離で体を回転させ、鎌を振りぬくルクリア。
その刃は抵抗なくタイラントの首を跳ね飛ばした。
「……」
声も発せず直立したまま銅と首が泣き別れたタイラント。
「やったぁ…」
難敵を打ち負かし、膝をつくルクリア。
しかし一瞬の沈黙の後、その体がバチバチと光だす。
「…エネルギーが暴走し始めてる…このままじゃ危険だわ!」
体内の光のエネルギーと闇のエネルギーの均衡が崩れ、タイラントは今にも爆発寸前となってしまう。
「くぅ…重い…」
ルクリアは何とか被害の出ない上空へとタイラントを移動させようとするが、残されたエネルギーではその巨体を持ち上げることも難しかった。
「それでも…なんとかしなくっちゃ…」
ふらつきながらも希望を捨てずに立ち上がるルクリアに、タイラントの背後、フィールドの奥から声が響く。
?「こっちへ思いっきりぶっ飛ばして!」
今の自分にできるのはその声に応えることだけ…
一瞬の判断ですべての力をこぶしに込め、タイラントに向き合うルクリア。
「せやぁああ!シャイニングフィスト!」
強力な正拳突きがタイラントを押し出し、声の方向へと弾き飛ばすことに成功するルクリア。
タイラントの背後には次元を切り裂いた穴が開いており、タイラントの体と首がその中に吸い込まれていく。
ドゴォオオ…
タイラントを吸い込んだ穴が閉じた瞬間に、はるか上空で大きな爆発が起きた。
?「今のエネルギーでは、あそこまでの転送が精いっぱいだったみたいね…」
背後から聞こえた声にルクリアが振り向くと、そこにはアルティマレディ・レイが立っていた。
その体にはアルティメットイージスを装備していたが、すぐに鎧は霧散し膝をついてしまうレイ。
「あいつはさっきの穴で宇宙空間まで移動させたわ。病み上がりで長距離ワープと次元の穴の生成…さすがに無理しちゃったかな…」
たはは、と笑うレイであったが、ルクリアは笑顔で肩を貸した。
「レイさん、ありがとうございました。このままここで爆発させてしまったらどうなっていたか…」
上空…おそらく成層圏を超えたあたりでは、いまだ空間にプラズマが走り、爆発の規模が凄まじかったことを知らせていた。
「へへっ、私もやられっ放しは性にあわないからね!すこしでも黒幕の狙いをくじけたならいいんだけど…」
そういいながら二人は瘴気に囚われたメリムを救い出し、地表へと帰っていくのだった…
春野市のタケシの家では、戻ってきたゴーデスとタケシが顔を突き合わせていた。
「地表で爆発してたら僕もお陀仏だったんでは…どういうことなんだい?」
タケシは少し憤慨した様子でゴーデスを問いただす。
「ファファファ…もとより地表で爆発させるつもりなぞなかったわい…本当はルクリアのエネルギーも吸ったうえで、正と負のエネルギーをスパークさせる予定じゃったんだがの。」
悪びれもせず話すゴーデスに、タケシの興味もその目的の方へ移っていた。
「結果どうなる予定だったんだ?それに爆発の位置も宇宙に行っちゃったみたいだけど…」
タケシの問いにゴーデスは嬉しそうな笑い声をあげる。
「ファファ…安心せい、当初の目的は達しておる。少しすれば面白いことになるぞ…楽しみにしておくんじゃな。」
相変わらず核心を話さないゴーデスに、タケシももう慣れたもの、と肩をすくめる。
ゴーデスの企みはどこにあるのか…
そう遠くない時期に、その答えにルクリアたちは直面することになるのであった…
終