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挿絵 Jam様


※思った以上に長編になってしまい、分割した結果「上」にはヒロピンが全く入りませんでした…つなぎのお話としてお楽しみください。ヒロピン成分は別の更新で補います…


前回までのあらすじ

ミレーヌ・エリナの体を張った献身もあり、なんとか記憶を取り戻したソフィ。

ガルデン大王に対抗する策を練るため、ソフィはミレーヌに過去の戦いについて語るのであった。


現代から数万年前…

光の星はガルデン大王率いる軍勢に攻め入られる。

力を付けつつあった銀河連邦の中心である光の星を滅ぼすことで、戦局を一変させようとする悪の勢力の攻勢であった。

当時、銀河守備隊のチームαに所属していたソフィも、否応なくその戦いに巻き込まれていくのであった…


ソフィ(以下ソ)「その患者さんはこちらへ!応急処置の終わった方はすぐにホールへ移動させてください!」

前線基地に併設された医療センターはまさに野戦病院といった忙しさに見舞われていた。

その中で医官として走り回るソフィであったが、いつチームαのメンバーが運び込まれてくるかという焦燥の中で治療に当たっていた。

シオンとの惑星テラナでの任務中に一報を受けて飛び帰ることとなった故郷。

しかし、ガルデン大王に強襲された母星はあちこちから煙が上がり、まさに戦場の様相を呈していた。

特に王都『スパークルシティ』には大軍勢が迫り、チームαは総出でその防衛戦に参加していた。

三方を山に囲まれたスパークルシティは、唯一平野に面した南方に防衛ラインを敷き、ガルデン大王軍に対抗する。

攻められる場所は限られるものの、一極集中するために互いの消耗も大きくなる。

次から次へと送り込まれるガルデン大王軍に対し、増援の見込めない銀河守備隊は、次第に戦線を下げざるを得ない状況にあった。

適材適所ということもあり、後方での医療任務にあたるソフィであったが、入ってくるのは大量の負傷者と戦線を突破されたという情報ばかり。

前線に立てないことの不甲斐なさを噛み締めるソフィの耳に、珍しく歓声が聞こえたのはその時であった。

ソ「どうしたのかしら…」

戦場を見渡せるテラスに出たソフィの目に、平野の中心に鎮座した光のドームが目に入った。

ソ「あれは一体…」

つい口に出したソフィの問いに答えるように、背後から快活な声が響く。

?「説明しよう!」

聞き慣れて飽き飽きした声も、現状のソフィには福音となって響いた。

ソ「ライオ!」

声の主はアルティマライオ。

チームαの頭脳担当で、天才と言っていい科学者である。

激戦の中で安否もわからなくなっていた仲間の登場に、ソフィは喜びと安堵の表情を浮かべていた。

ライオ(以下ラ)「なんだい、ソフィ。そんなに僕が恋しかったのかい?そんなんじゃケインにあったら気を失っちゃうんじゃ…」

ニヤニヤするライオに、一瞬でも隙を見せた自分の脇の甘さを呪い、ソフィは咳き込んだ。

ソ「コホン…説明を待ってるんですけど!」

照れ隠しに顔を逸らすソフィに、ライオは得意満面に語り出した。

ラ「あれはスパークルシティを守るために貼っていたバリアの出力と指向性を調整して、奴等の軍勢をドーム内に閉じ込めたのさ。あのバリアを貫通する威力を出さなければ、中からの脱出は不可能ってわけ…それで…」

知りたい情報は手に入ったため、あとは聞き流すソフィ。

ライオはペラペラと仕組みに関して語っていたが、ソフィはキリの良さそうところで割って入った。

ソ「それで…あなたは無傷なようですけど、なんでここに?」

ソフィのつれない態度も慣れたものといった様子で、ライオも本題を切り出す。

ラ「偉そうに言ったけど、あれはせいぜい時間稼ぎにしかならないんだ。ケインがチームαに集合をかけている。僕はそのお迎えだよ。」

一転、ドームを見ながら悔しそうな表情をするライオに、ソフィは黙って頷き、ケインの元へと向かうのであった…


ソ「ケイン!ガント!」

前線基地の司令室に入ると、ソフィは何やら話し込んでいる2人の戦士へと近づいていく。

この2人こそ、チームαの隊長・アルティマケインと、その右腕・アルティマガントであった。

ケイン(以下ケ)「ソフィ!忙しい中すまない…後方での任務ご苦労だったね。見事な仕切りだったと聞いているよ。」

開口一番で労いと褒め言葉をかけるケイン様子に、横に立つガントが笑う。

ガント(以下ガ)「こっちもお前の世話にならずに済んでよかったぜ。いつも以上に荒っぽくされそうだもんな!」

体のあちこちに細かい傷をつけているガントを睨みつけながら、ソフィは2人の前に立った。

ソ「ガント!ご希望ならその傷、治してあげるわよ…」

手をポキポキならしながら、ソフィはガントに向かっていく。

ガ「お〜、こわいこわい…」

冗談めかして後ずさるガントに近づくと、やさしく治癒の光を当てるソフィ。

ソ「冗談よ…全く。ちょっとでも治しておいた方がいいでしょ。大人しくしてなさい…隊長、このまま話を聞いても?」

いつものやりとりに安堵したのか、ケインも笑いながら頷く。

ケ「もちろん!…あとはシオンか。ライオ、彼女との通信はどうなっている?」

ケインがライオを振り向くと同時に司令室の扉が開き、アルティマシオンがその顔を見せる。

シオン(以下シ)「ボス!戻ったよ!…ってあれ、ソフィもいるじゃない!」

明らかに外で暴れてきた、と言った様子のシオンも、ガントと同じく細かい傷が多く、ソフィはため息をついて誘導する。

ソ「隊長、こっちも治療しながらでいいですよね…まったく…シオン、こっちにきなさい!」

呼ばれたシオンは肩をすくめて言う通りに従った。

シ「ひえ…ご機嫌斜めだこと…」

ガントとシオンを並べて座らせ、両腕を使って器用に治療を進めるソフィ。

ケインは大人しく治療を受ける武闘派2人の様子に緩みかけた頬を、キッと引き締めるながら話を始めた。

ケ「とりあえず現状は膠着状態だが、バリアのおかげで今少しの猶予ができた。この間に作戦を立て直したい。君たちの意見を聞きたいんだがいいか?」

ケインの言葉に頷きながら、シオンが声を発する。

シ「とはいえ、私は外で暴れてただけなのよね…状況を簡単に教えてもらえると助かるんだけど。」

するとケインの横にいたライオが、端末でホログラムを起動しながら応じる。

ラ「そういうことなら説明は僕が…隊長、いいですね?」

ケインは頷き、ライオは簡潔に説明を始めた…


ガルデン大王軍はいくつかの部隊を分けて光の星を急襲。

地方都市にも怪獣を中心とした戦力を送り込み、王都を孤立させることに成功する。

自らを中心とした軍団で王都に迫るガルデン大王に対し、銀河守備隊は王都を守るバリアシステムを応用したドームに閉じ込めることで、一旦膠着状態を作り出した。

増援のあてはなく、今の戦力でことに当たらなければならないこと、そしてもう一つの大きな問題が、ケインたちに突きつけられていた…


ソ「その問題っていうのは?」

ガントとシオンの治療を終えたソフィが、ケインへと向き直る。

ケインはライオに目線を送り、それに応えるようにライオは一枚の写真を、ホログラムからピックアップした。

ラ「これは奴らの本陣を写した画像なんだけど…これをみて欲しい。」

クローズアップされた写真の一部に、巨大な砲台のようなものが写り、その周りにはいくつもの機械が繋がれていた。

ケ「ライオの分析では、この砲台はイオン粒子を凝縮して放つキャノン砲と思われる。問題は発射口の中に、『ブルーリフレクション』が埋め込まれていることなんだ…」

少し前にその名を聞いた覚えが…

そう考えたソフィとガントの口から、同じ星の名前が溢れる。

「「バランディの!」」

以前、チームαは惑星バランディの近くで商売をしていた武器商人の船を臨検したことがあった。

そこで押収した鉱石…ブルーリフレクションをめぐり、ソフィには苦い経験の記憶があった。

※エピソード「バランディの蒼い石」参照

ブルーリフレクションは、ぱっと見は美しい宝石のような見た目だが、エネルギーを仲介することで、その力を何倍にも引き上げる効力を持つ。

その宝石を通じてキャノン砲が発射されようものなら、おそらく王都は跡形もなく破壊されるだろう。

そのことに思い当たったソフィの顔は青ざめていた。

ケ「あの時の臨検で取り逃した本命はこれだったようだ…逃した魚は大きかったな。」

冗談めかして話すケインの目も、全く笑ってはいなかった。

ガ「過ぎたことを言っていてもしょうがないぜ!要はコイツをなんとかしなきゃならねぇんだろ?」

空気が重くなりそうな気配を察したガントが発破をかける。

ライオは頷いて説明を続けた。

ラ「これが発射されれば、バリアドームは破られ、文字通り王都に風穴が空くだろう。被害は…あまり考えたくはないね。」

喋りたがりのライオが口をつぐむという事実が、被害想定の大きさをチームαに実感させる。

暗くなったムードに耐えかねたのか、シオンが口を開いた。

シ「でもなんとかしなくちゃでしょ!みんなでアイデア出してこう!」

それに鼓舞されるように、チームαの面々はプランを出していく。

一か八か、バリアドームを解除しての総攻撃…地中を掘削して砲身の足元を崩す…様々なアイデアが出ては、ライオに否定されていった。

特に問題なのは時間的な制約で、砲身に繋がれたエネルギーパックの形状から推測されるチャージまでの時間は、あと半日程度とのことであった。

王都の避難や作戦の実行…どちらにしても時間が足りなすぎる…

この難題には、さしものライオも妙案を出せずにため息をつく。

そんな中、ソフィだけは何かを思案し続けていた。

その様子に気づいたシオンがソフィの頬を人差し指でつつく。

シ「そんな仏頂面してたら可愛い顔が台無しよ。どしたの?」

もうっ…とその手を払ったソフィの目には、決意の光が宿っていた。

そして意を決したようにソフィは一歩踏み出し、ケインに申し出る。

シ「隊長…少し二人でお話したいのですが、いいでしょうか?」

ソフィの申し出にうなずきながら、ケインは後ろの三人に視線を飛ばす。

ガ「なんだよ…俺たちはのけ者か?」

文句を言いたげなガントの肩を叩いていさめたのは、以外にもシオンであった。

シ「ソフィが二人で話したいって言ってるんだから、私たちは外しましょ。」

男二人を連れて扉から出ていくシオンに感謝の視線を送るソフィ。

指令室の中にはソフィとケインだけが残されるのであった…


指令室をでたシオンは、少し距離を置くとすかさずライオに食って掛かった。

シ「ちょっとライオ!あんたなら中の音声拾うくらい楽勝でしょ!早く早く!」

肩をつかまれ揺さぶられながら、ライオは手元の端末を操作する。

ラ「ずいぶん素直に部屋を出たと思ったらそういう魂胆だとはね…まぁこんなこともあろうかと…」

ライオの話では緊急用に、ケインの端末には直接自らの端末を接続できるようにしているとのことだった。

ラ「こんなデバガメ用に作ったツールじゃないんだけどな…」

早速接続し、音声を引き出すライオ。

ガントも興味津々に聞き耳を立て、二人の様子を見守る(?)のだった…


ソ「すみません、まずは隊長にだけ聞いていただきたくて…」

ソフィは珍しく視線を合わせることなく顔を赤らめてソワソワとしている。

ケインは話しやすい空気を作ろうと、ソフィの前に移動した。

ケ「落ち着いて話してくれればいいぞ。今更じたばたしても始まらないからな!」

緊張を和らげてくれようとするケインに、ソフィは深呼吸を繰り返して気を落ち着かせる。

ケ「…(愛の告白でもしそうな空気だな…)」

ふっと頭をよぎった印象に笑いそうになり、少し余裕が出てきたのを感じたケインはそれだけでもソフィに感謝していた。

一方でソフィはケインに赤面した表情を向け、それでも懸命にケインの目を見つめながら意を決して切り出した。


ソ「隊長……私と結婚していただけますか?」

ケ「―――――へ?」

冗談で想像していたより、はるかに進んだ申し出にあっけにとられてしまうケイン。

はたしてソフィの真意はどこにあるのか、ケイン(と外で聞き耳を立てていた3人)には想像もできない状況であった…


過去編 下 に続く…


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