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挿絵  C-PULSE様 CO様


前回までのあらすじ


かつて宇宙を恐怖に陥れた『ガルデン大王』が復活したという噂が、銀河連邦内で実しやかに囁かれていた。

大悪党の帰還かと星々はざわめきたつ。

流言の流布を避けたい銀河守備隊は、聖十字隊を通じて、ガルデン大王と戦ったことのある『アルティマソフィ』に噂の調査を依頼する。

快諾したソフィは怪しい星を中心に捜索をかけるが、その中の一つの惑星でスライム型の怪獣に襲われ、囚われてしまう。

ソフィを捕らえた謎の集団…そのボスは部下から『ガルデン大王』の名で呼ばれているのだった…


ソフィが行方をくらませてから少し後、そのことを知らないソフィの娘・『アルティマミレーヌ』は、今日も地球の防衛に当たっていた。

そんな時、地球の近くで二つの光が確認される。

小さな光を大きな光が追い回すような様子を見せ、地球では宇宙人同士のトラブルも想定し、防衛隊がレーダーを監視していた。

最終的に二つの光はもつれるように、地球へと落着する。

状況確認のため、墜落地点の調査にはミレーヌの人間体である、卯月メイ隊員が向かっていた…


ジャイロヘリを駆り、先に大きな光が落ちた箇所を捜索に来たメイ。

しかし、現場の森林には墜落の痕跡もなく、至って静かな空気が流れていた。

各種スキャンにも反応がないことを確認したメイは、続いて小さな光が落ちた地点へと向かう。

「こっちには何か手がかりがあればいいんだけど…ん?」

ミレーヌの力を利用し、視覚を強化して捜索していたメイの視界に、川辺に倒れている女性が目に入った。

「現場にて負傷者を確認。救助に向かいます!」

報告を入れると、ヘリを現場近くに着陸させて救助に向かうメイ。

「大丈夫ですか!?…え?」

川辺に倒れている女性に駆け寄り、介抱しようしたメイは、一瞬固まってしまう。

あまり見慣れない薄布で作られた装束を纏い、倒れている美しい女性。

その頭から出血がみられたものの、テレビでよく見る人気女優『北条ソフィ』の若い頃によく似た顔立ちをしていることが目に取れた。

しかしメイが驚いたのはそこではなく、その女性の放つエネルギーの反応であった。

「お…お母様?」

自らの母、ソフィと同じエネルギーを感じ、メイは困惑するのであった…


メイによって救助され、防衛隊に保護された女性。

すぐに意識を取り戻したものの、頭に負った傷の影響で記憶を失っていることが判明し、防衛隊の保養所での療養が決定される。

救助された状況から異星人の可能性も排除できないこともあり、メイ隊員が医官として同行することとなった。

この決定が防衛隊の長官補佐を務める白鐘リオナによって決められたことを聞き、メイは女性の正体がやはり自らの母『アルティマソフィ』である可能性が高いと考えていた。

白鐘リオナは義姉である『アルティマリオナ』が地球で活動するときの名前であり、その介入には何かしらの意図があることが想像できた。

メイは様々な可能性を考慮しながら、ある程度の回復を見せた女性を迎えに医療棟に向かうのであった…


「こんにちは!」

元気に挨拶をしながら病室に入るメイ。

ベッドで寝ていた女性は少しおびえた目をしながら、メイに頭を下げる。

自分の母はこんな演技派ではないな…そんな苦笑を浮かべながら、女性の脇に座るメイ。

「もう頭の怪我はいいみたいですね。これから場所を移動して療養してもらうことになります…」

これからのことを説明するメイに、女性は黙ってうなずく。

日本語を理解していることを確認し、メイは微笑みながら続ける。

「えっと…一時的にあなたを呼ぶ名前を決めたいのですけど…何か希望はありますか?」

そう聞いたメイに、女性は小さな声で答える。

「いえ…特に。」

メイは少し思案するふりをしながら、女性に候補を告げる。

「それじゃあ…ソフィさんなんてどうですか?実は私の母の名前なんですけど、何か初めて会った時から他人の様な気がしなくて…」

名前を聞いて何か反応かあるか探るつもりのメイであったが、女性の反応は淡白なものだった。

「はい…特に異存はありません。」

これは長期戦かな…そう思いながら、メイは女性のために用意した着替えを取り出す。

「じゃあ、ソフィさん…まずはこれに着替えてもらって…そのあと私と移動になります。」

まずは二人っきりになるところから…そう切り替えたメイであった…


防衛隊の基地内を、二人の女性が歩いていく。

その姿に男性隊員や基地職員は振り返って視線を送り続けていた。

一人は防衛隊に咲く紅一点・卯月メイ隊員。

日頃は隊員服やお固い制服に身を包んでいるが、今日は年相応の私服に身を包み、もともとの愛らしさが強調されていた。

もう一人はテレビのドラマから抜け出てきたかのような美しい女性で、ある意味対照的な二人に、男性陣は完全に目を奪われていた。


「包帯とれてよかったですね!私の私服もサイズが合ってよかったです!」

通常の人間ではありえない速度で回復したソフィ。

2人は予定通り、防衛隊の保養所へと出発する。

そこは保養所の名前を冠していたが、捕虜とした宇宙人を隔離できるように作られた施設であった。

二人きりで保養所に入り、施設の状況をチェックするメイ。

インフラが機能していることを確認すると、二人は居住区のリビングへ進んでいく。

そこには一人の女性が待ち構えていた。

黒髪をなびかせた眉目秀麗なその女性を見た瞬間、メイの瞳が輝く。

「エリナ先輩!」

名前を呼ばれた女性は一瞬微笑んだものの、すぐにメイとソフィへ真剣な表情を向ける。

「久しぶりね、ミレーヌ。それに…ソフィ様。」

ソフィにとっては自分につけられた仮称を呼ばれたにすぎなかったが、メイはエリナがそう呼んだことで疑念が確信へと変わっていった。

「やはり…お母さまなのですか?」

その疑問にエリナはゆっくりとうなずく。

「ええ…あなたには伏せられていたけど、ソフィ様は少し前に調査任務に出たまま行方不明になっていたの。おそらくその時に囚われた場所から逃げ出して、逃走中にけがを負って記憶を無くされたのだと思うわ。」

ソフィはぽかんとした表情で聞いていたが、メイは目の前の女性が母であることを実感していた。

「どうすれば記憶が戻るのですか?」

メイの問いにエリナは一つの提案をする。

「まずは変身して私たちの本来の姿を見てもらいましょう。それで記憶が戻らない場合は、私が治療を行うわ。」

メイもその提案を受け入れると、二人は意識を集中する。

淡い光が二人を包むと、そこには地球を守る正義の戦士・アルティマミレーヌと、その先輩にあたる『アルティマエリナ』が並び立っていた。

「ソフィ様…これが私たち本来の姿です。覚えはございませんか?」

二人の姿が変わったことに驚いた様子を見せていたソフィだったが、その問いには首を横に振った。

するとエリナはゆっくりとソフィに歩み寄る。

「それではこれから、私が治療を行います。ミレーヌ、一度治療に入ったら私は身動きが取れなくなってしまうわ。その間の守りは任せるわね。」

エリナは治療のスペシャリストである聖十字隊所属ではない。

それでも治療術には長けているのだが、その代わり莫大なエネルギーの消費と集中が必要であった。

「わかりました!やはり異星人も地球に侵入しているのですね…」

エリナがわざわざ来たということは、よほどの事情があるのだろう。

ミレーヌのそんな考えを察したのか、エリナはガルデン大王の噂とそれによって銀河に引き起こされた混乱について説明した。

本来ならソフィの治療にも聖十字隊を回したいところであったが、リオナたちも現在対応に追われているとのことであった。

「だからリオナにかわって私が来たの。地球はもともと担当だったからなじみもあるしね。」

悪の宇宙人から長年狙われてきた地球には、何人ものアルティマの戦士たちが守りについてきた。

かくいうエリナもその一人だったのである。

「ソフィ様、こちらへどうぞ。」

エリナの導きによってソファに横たわるソフィ。

その頭に手を当て、エリナは治療を施していく。

集中するエリナの邪魔にならないように、一歩引いた位置でそれを見守るミレーヌ。

ズゥウン…

順調に治療が進んでいたかと思われたその時、外で大きな地響きがなり建物が振動する。

「あれは!」

外を確認したミレーヌの目には、巨大化したガルデン大王の配下『ガナガナ星人』が施設へ向かってくる様子が見て取れた。

「今ここを襲われるわけにはいかないわ…エリナ先輩、お母さまをお願いします!」

治療に集中するエリナに声をかけると、ミレーヌは施設の外へと飛び出していくのだった…


「テヤァッ!」

ガナガナ星人の前に、ミレーヌが巨大化して現れる。

「ガナガナッ!」

ミレーヌの登場に驚く様子もなく、ガナガナ星人は武器である槍を構えて威嚇する。

「ここから先にはいかせません!ティアラッガー!」

ミレーヌが頭に手をかざすと、ティアラが宙を舞うカッターとなりガナガナ星人を襲う。

「ガナァッ!」

槍を振り回して対抗するガナガナ星人。

しかし、ティアラッガーはガナガナ星人に隙を作るための囮であった。

「トォッ!」

ミレーヌの体が美しく宙を舞うと、そのまま急降下してスワローキックを放っていく。

ドガッ!

ティアラッガーに気を取られていたガナガナ星人はまともに食らってしまい、頭に手痛い一撃に悶絶する。

「このままけりをつけるわ!」

ミレーヌは腕を十字に組み、必殺のミレニウム光線の発射態勢に入る。

「ガナガナッ!」

立ち上がったガナガナ星人は、苦し紛れに槍をミレーヌへ投げつける。

「…っ!!いけない!」

背後に施設があることを思い出したミレーヌは、とっさに光線の構えを解き、槍をチョップで弾き飛ばした。

すると、不意に上空からガナガナ星人に謎の声が飛ぶ。

「ふはは!どうやらその建物には何か大事なものがあるらしいな!ガナガナ星人よ、その建物を狙うのだ!」

するとガナガナ星人は腰に巻き付けていた電磁鞭を取り出し、おもむろに地面を打ち付けだす。

ビシィ!

そのまま施設に向かって鞭を振るうガナガナ星人。

「だめぇ!ああっ!」

施設に覆いかぶさったミレーヌに向かって、電磁鞭が襲い掛かる。

まともに背中で鞭を受けてしまったミレーヌは、電撃のショックと痛みで苦悶の声を上げた。

「いいぞいいぞ!そ奴はにっくきケインとソフィの娘だ!存分に甚振ってやるのだ!」

上空から上機嫌な声が響き、ガナガナ星人は気をよくして鞭を打ち据える。

ビシィ…バチッ…

「ああんっ…いやぁ…はぁっ…あんっ…」

ミレーヌは全身を痙攣させ、それでも施設には直撃させないように体を張り続ける。


ピコンピコンピコン…

エナジータイマーもあまりのダメージに点滅をはじめ、ミレーヌに危機を告げていた。

「フハハ!もういいだろう…手を止めよ!」

鞭の雨を降らせていたガナガナ星人も、上空からの声に一歩引いて距離を取る。

「はぁ…はぁ…ん…」

ミレーヌの体はゆっくりと倒れ、電撃による痙攣を続けていた。

施設はまだ無事だったが、このままでは破壊されてしまう。

ミレーヌは何とか力を振り絞り、ガナガナ星人の脚にしがみつこうとした。

「忌まわしい小娘め…ガナガナ星人、そやつを振りほどくのだ!」

謎の声に従うように、ガナガナ星人のストンピングがミレーヌを襲う。

「グハァッ…ヘヤァ…」

強力な踏みつけの前に弱りながらもなんとかガナガナ星人を止めようとするミレーヌ。

ガナガナ星人は近くに落ちていた槍を拾うと、それを使ってミレーヌを痛めつける。

最早意識も朦朧としてきたミレーヌの耳に、エリナのテレパシーが飛んだのはそんな時であった。

「ミレーヌ…待たせてごめんなさい!こちらの治療は終わったわ!今は逃げるのよ!」

施設内からエリナとソフィの反応が消える。

おそらくエリナのテレポートで二人がどこかへ逃げおおせたことを察したミレーヌは、力なく大地に倒れ伏した。

「むぅ…私怨に駆られて、目的の女を逃がしてしまったか…まぁよい。今日のところは貴様を痛めつけたことで良しとしよう…ガナガナ星人よ、戻るのだ!」

その声を聴いたガナガナ星人はスゥっとその場から姿を消していく。

倒れたミレーヌも光の粒子になって消えていき、あとには傷ついたメイが意識を失って倒れているのだった…


続く…

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