アルティマレディ・ルクリア 12話「平成戦姫を越えていけ! ステラ編」挿絵増量版 (Pixiv Fanbox)
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挿絵 らすP様
※本作に登場するアルティマレディ・ステラは、創作者であるらすP様によって人間体の設定等が公表されていません。よって、本作に登場するステラの人間体や諸設定はガチピンの二次創作になりますので、ご理解の程、よろしくお願いいたします。
前話までのあらすじ
ゴーデスによって怪獣の怨念から作り出された・タイラントデスボーン。
アルティマレディ・レイを襲い、彼女の持つアルティマメダルを奪うと、その力の持ち主を襲うため、次元を跳躍しマルチヴァースの様々な『地球』に侵攻する。
アルティマレディ・ティオ、アイナが犠牲になり、次なるタイラントの目標とは…
「うーん…あれ?もう朝かぁ…」
早朝の研究室で大きな伸びをする1人のボーイッシュな少女。
彼女の名前は高宮ライム。
見た目はまだあどけない少女のようであるが、国際的な研究所に所属する、れっきとした若き科学者である。
そして彼女にはもう一つの顔があった…
幼少の頃から神童の名を恣にしてきた彼女が、量子加速器の実験中に地球の力に触れたのがもう数年前。
その時に大地の力を授かったライムは、地球生まれの『アルティマレディ・ステラ』として、根元的破滅招来体との戦いに巻き込まれていった。
同じく海の力を授かった天才科学者『藤山ヒロエ』の変身する『アルティマレディ・アクア』と、時にぶつかり、時に協力しながら、難敵を討ち果たして平和を勝ち取ったのである…
研究に熱中するあまり、また徹夜で朝を迎えてしまったことに苦笑するライム。
ゆっくりと窓を開け、朝の空気を吸い込むと共に平和な世の中になったことを実感し、充足感を感じるこの時間がライムのお気に入りであった。
海沿いの研究所に勤務するライムの部屋からは海が見え、遠く水平線上には朝焼けの太陽がうっすらとその光を見せている。
海を眺めるとライムは共にアルティマレディとして戦ったライバル・藤山ヒロエのことを思い出す。
闘いの後、世界を旅するために去っていった彼女は、今どうしているだろうか?
そんな益体もない考えに耽るのも、ライムの気分転換の一つである。
グッと伸びをして背筋を正すと、ライムは視線を部屋の中へ戻す。
「さて、ボクもレポートをまとめて少し寝ようかな…不摂生もほどほどにしないとね!」
すると、自戒するように呟いたライムの独り言を遮るように、けたたましいアラームが部屋中に響き渡る。
発信源が自分のデスクの引き出しであることに気づいたライムは、急いで中を確認した。
そこにはライムがアルティマレディ・ステラに変身するための宝玉『ステラエクステンダー』がしまってあり、アラームのような警戒音はそこから発せられていた。
「ちょっとちょっと…人がせっかく朝の平穏を楽しんでたのに…」
そういいながらステラエクステンダーを手に取るライム。
すると一条の光が宝玉から窓の外へ走り、水平線の方向を指し示す。
「この反応…何か来るっていうの?…もしかして…」
これまでのティオやアイナと同じように、ステラの元にも別次元の光の戦士『アルティマレディ・レイ』が訪れ、協力を求められていた。
地球の力で戦うライムと、宇宙人であるレイ。
同じアルティマレディでありながら、全く違う出自を持つもの同士であったが、同じ正義を愛する戦士としてライムもレイに協力していた。
その時にレイから、再び闘いの時が来ることを予見されていたライム。
平和になった後もステラエクステンダーを肌身離さず持ち続けていたのは、そう言った理由もあったからである。
エクステンダーから伸びた光の先で、禍々しい歪みが発生しているのを、ライムは見逃さなかった。
「あんなに空間を歪ませるほどのエネルギー…難敵とみた!」
相手への学術的な興味が恐怖に勝り、笑顔を浮かべるライム。
「藤山さん…力を借りるね!」
エクステンダーには今、ステラの力と、ヒロエから別れの時に託されたアクアの力が宿っている。
その二つの力を合わせたアルティマレディに変身するため、ライムはエクステンダーを拳に装着し、高く掲げた。
「ステラアアアアア!」
その名を叫び光に包まれるライム。
次の瞬間、一陣の風と共に研究室からライムの姿は消えていた…
ズウウウゥン…
研究所の横に広がる砂浜に、かつてこの星を守り抜いたアルティマレディ・ステラが降り立つ。
その代名詞とも言える砂塵を巻き上げ、大地に立つステラ。
その姿は、自らが基調とする赤と、アクアが基調とする青の意匠が入ったビキニスーツに身を包んだ、アルティマレディステラ・スプリームバージョンであった。
大地と海の守護者として、海上にできた歪みを見つめるステラ。
「さぁて、鬼が出るか、蛇が出るか…」
次の瞬間、歪みを中心とした空間にヒビが入り、次元の壁を破ってタイラントデスボーンが出現する。
自らが内包するアルティマメダルと同じ波動を感じ、ステラに狙いを定めるタイラント。
すでに待ち構えていたステラに対し、腕の鎖付き鉄球を打ち出し攻撃を仕掛けていく。
「デヤァッ!」
しかし、ステラも気合を入れてその鉄球を受け止めると、そのまま根元の鎖を掴んだ。
「せっかく遠路はるばるきたんでしょ!もっと近くにおいでよ!」
そのままタイラントを鎖ごと手繰り寄せるステラ。
海上に出現したため足場のないタイラントは踏ん張りきれず、ステラの方向へと引き寄せられる。
「そーぅれっ!」
近づいたタイラントの巨体をそのまま浜辺に打ちつけるステラ。
その全身から漏れ出すマイナスエネルギーに、一歩下がりながら探りを入れていく。
「ステラ・アイ!」
透視能力でタイラントを分析したステラは、その体が異常な状態にあることに気づく。
タイラントの体内では元々その体を構成していたと思われるマイナスエネルギーと、アルティマメダルを中心とした光のエネルギーが拮抗しており、渦巻いている状態であった。
「下手に手を出したら…大爆発じゃ済まないね…」
どうしたものかと思案するステラの目に、もう一つ気になるものが飛び込んでくる。
莫大なエネルギーを抱えるタイラントは、骨組みの様な堅牢なボディでそれを維持していたが、その腹部からエネルギーが漏れ出ていたのだ。
それはレイのスラッガー・ティオのキック・アイナのガルネイトバスターで僅かにできた綻びであった。
「前に戦った誰かからのバトンってとこかな?ならボクも!」
そのまま打ち込んでもタイラントの皮膚にはダメージは通りそうにない。
その判断が、ステラの狙いをタイラントの腹部の傷に定めさせた。
「まずはこいつから!」
こぶしにエネルギーを集中させ炎をまとわせると、傷跡をめがけて殴り込んでいく。
「スプリームパンチ!」
鈍い音と共にパンチがめり込むも、傷跡には特に変化がない。
「まだまだぁ!」
次の手として膝にエネルギーをため、そのまま蹴り上げる。
「グアアッッ!」
少しふらつきをみせるものの、タイラントはひるまずステラに向かってくる。
いくつもの難敵を屠ってきたキックやパンチを耐えられ、ステラにも焦りの色が見え始めていた。
「はぁ…はぁ…生半可な技じゃ手ごたえ無いね…それなら消耗しきる前に最大の技で!」
ムーンサルトの要領でタイラントの顎を蹴り上げ、距離を取るステラ。
そのまま胸の前で掌を併せ、体の中のエネルギーを集中させる。
「内包するエネルギーの容量がオーバーすれば、傷跡から自壊するはず…くらえ!フォトンストリーム!!」
ステラがあわせた掌を上下にずらすと、集中していたエネルギーが光線として射出される。
一回の変身で一度しか使用できない技であったが、ステラの渾身の一撃がタイラントに襲い掛かった。
「ガァアアッッ!」
フォトンストリームが命中しようかという瞬間、タイラントは手の鎌を横なぎに振り払う。
すると次元の裂け目が生まれ、その中にフォトンストリームは吸い込まれてしまった。
「なっ?…図体に見合わない器用な真似しちゃって…」
まさかの手段で必殺の光線を避けられてしまったステラは、力が抜けたように膝をつく。
ピコンピコンピコン…
胸のライフゲージが点滅をはじめ、ステラのエネルギーの枯渇を警告し始めていた。
「はぁ…はぁ…でも、君の弱点…読めたよ…」
不敵に笑いながら立ち上がるステラに危機感を覚えたのか、タイラントは距離を置いて鎌から発する冷凍ガスをステラに浴びせかける。
「うわあああっ…」
急激な冷凍攻撃に体の自由を奪われるステラ。
「くそっ…残念だけど、君を倒す役目は次のアルティマレディさんに任せるしかないか…でもせめて!」
何とか動く手をタイラントに向け、光の針を飛ばすステラ。
針はタイラントの肩口に刺さったが、当のタイラントは気づいてもいない様子で冷凍ガスを浴びせ続ける。
「よし…あとは…たのんだよ…」
レイたちがタイラントに反撃の狼煙を刻んでくれたように、次の戦士に希望をつなぐステラ。
しかし、残酷にもタイラントのガスはステラの体を蝕んでいく。
「もう…限界かな…」
ピコピコピコ…
高速で点滅し続けたライフゲージが、オーバーヒートしたかのように煙を上げていく。。
それと同時にステラの体が一瞬光ると、その姿がステラ本来のV2フォームへと変わっていった。
「くぅ…ここまで…か…」
次の瞬間、一気にステラの体は凍結し、その瞳とライフゲージからは光が失われた。
タイラントは沈黙したターゲットに満足したのか、再び次元の裂け目へと消えていく。
後には物言わぬ氷像と化した、ステラの亡骸が放置されていた…
そのころ、ルクリアの守る地球では、アンナがタケシの前で俯いていた。
頼みの浄化でもタケシを殺してしまう…
彼を救いたいという気持ちに変わりはなかったが、その方法が思い当たらず当惑してしまうアンナ。
しかしタケシも、そんなアンナに考える暇を与えさせまいと、周りの男たちを操りその身を拘束する。
「…?!放しなさい!」
捕まれた手を振り払おうと力を入れるアンナに、タケシは嗤いながら告げる。
「今野先生、やめてくださいよ…下手に浄化なんてされたら、僕死んじゃうんですよ。」
光の衣に身を包むアンナが力を行使すれば、意図していなくてもゴーデス細胞の浄化が始まってしまうかもしれない…
そこまで力のコントロールができていないのに、光の衣の力に慢心していた自分をアンナは恥じた。
「何をしようというの…」
両手を拘束された状態でおびえた表情を浮かべるアンナに、嗜虐心を刺激されるタケシ。
「いい表情ですねぇ…もう少し目の保養をさせてもらいましょうか…やれ!」
タケシの号令に周りの男たちは光の衣をまさぐり始める。
浄化の力で守られていた衣も、マイナスエネルギーに塗れた手に触り続けられ、その効力を失っていく。
「あぁ…やめて…おねがい、タケシ君…はぁ…やめさっ…せてぇ…」
的確に胸やお尻を責められ、吐息を漏らすアンナ。
硬くなった乳首を突き出し顔を背けるアンナに、タケシは挑発的に声をかける。
「そんなストリップショーをしに来たわけじゃないでしょうに…このままじゃ手籠めにされてしまいますよ、先生。」
アンナは説得できると信じた自分の甘さに唇を嚙んだが、命を盾にされてしまったら手が出せない。
いっそこのまま好きにさせてあげるのが、彼の苦しみに気づけなかった償いなのか…
そんな諦観に打ちのめされていたアンナ。
しかし次の瞬間…
「……アンナさん!今助けます!」
部屋の屋根を突き破り、一人の女性が飛び込んできた。
純白のビキニスーツに身を包んだその戦士は、着地の衝撃でアンナの周りの男たちを壁際まで弾き飛ばす。
「加減しましたから、死なないでくださいね!」
アンナの前にはアルティマレディ・メリムが降り立ち、吹き飛ばした男たちに微笑みかける。
「緊急事態です…状況は判りませんがここは引いてください…」
アンナが胸を隠しながらうなずくと、メリムもウィンクで答える。
「それでは参りましょう!」
そのままメリムはアンナをお姫様抱っこすると、自ら開けた穴から飛び出していった。
それを眺めていたタケシは、軽くため息をついて肩をすくめる。
「まぁ、今日のところはこんなところですかね…おっと、こちらもボスのお戻りだ…」
タケシの体内に注入されたゴーデス細胞が、その主人の帰還を感知していた…
続く