アルティマミレーヌ「ガルデン大王の復讐 ソフィ編」 (Pixiv Fanbox)
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挿絵 いずみ様
銀河連邦が設立されてからはや数万年…
かつては悪の影に恐れながら日々を過ごしていた数多の星々も、銀河連邦の庇護の下、平和と秩序に守られた歴史を刻んでいた。
しかしここ数年、そんな星々の間でよからぬ噂が流れていた。
「あのガルデン大王が生きていたらしい…」
「巨大な軍団を率いて宇宙の覇権を狙っているのでは…」
実害は確認できず、噂話に過ぎない内容ではあったが、『ガルデン大王』の名前は光の星の住人には一種のトラウマになっていた。
かつて、唯一光の星まで直接攻め込んできた大悪党…それこそ『ガルデン大王』だったのである。
ガルデン大王復活か…その噂が光の星に届いた時、アルティマソフィは聖十字隊本部からの呼び出しを受けるのだった…
「ソフィ様!」
自らを呼ぶ聞き慣れた声に笑顔で振り向くソフィ。
その視線の先には、愛する義理の娘にして一番弟子・アルティマリオナの姿があった。
「リオナ!…元気そうで何よりだわ。」
任務で宇宙を飛び回るリオナとは、ソフィも久方ぶりの再会であった。
お互いの変わらない様子を喜び合う師弟であったが、すぐにリオナが頭を下げる。
「申し訳ありません。ソフィ様にこんな任務を依頼してしまって…」
ソフィが聖十字隊から依頼されたのは、ガルデン大王の勢力がいたと噂される星域に向かい、事の真偽を確かめることであった。
リオナは資料をソフィに渡しながら、申し訳なさそうに項垂れる。
「でも…どんな危険があるか…」
そんな愛弟子の姿に、ソフィは苦笑しながらフォローを入れた。
「あら、いいのよ。ミレーヌも独り立ちしてしまって、おうちにいても退屈だし…ガルデン大王と直接まみえたことがある中で、まだ生きているのは私かガントくらいでしょうしね。こんなロートルで良ければいつでも声をかけてちょうだい!」
ソフィは若干冗談めかしていたが、ことが事だけに噂が本当なら一大事である。
かつての戦乱の時代を知るソフィにとって、あの苦難の日々を今の世代に強いることは、絶対にあってはならない事であった。
「(噂で終わってくれればいいのだけれど…)」
リオナを気遣いつつ、心の中で気合を入れるソフィ。
「はい…くれぐれもお気をつけて…」
不安そうにしていたリオナも、最後は笑顔でソフィを送り出すのだった…
リオナから渡された資料をもとに、痕跡を探る任務をこなしていくソフィ。
いくつかの候補に絞って捜査するものの、空振りが続いていた。
「うーん…いまいちピンとこないわねぇ…まぁ、杞憂で済めばそれが一番なんだけど…」
そう考えながらも、長年の経験から慎重に任務を進めるソフィ。
次に彼女が探索に選んだのは、無人の惑星であった。
一昔前の悪の組織が隠れ家にするのに適した惑星であったが、最近の航行記録を見ても、近くを船舶が通った形跡はなかった。
長期で潜伏するにはもってこいかしら…
ソフィは警戒しながら星図と睨めっこをしていた。
「ここも見ておかなくちゃね…」
覚悟を決めて地表へと降りていくソフィ。
探査用のドローンを放ち、自らも飛行しながら調査に入っていくのであった…
「レーダーに感あり!侵入してきた対象は…アルティマソフィです!」
暗い船内に兵士の声が響く。
対象の名前に船内がどよめく。
その中で一番高い位置に鎮座する男は、豪胆な笑い声をあげた。
「グハハハ!まさか本命にご登場願えるとは!適当な噂も流してみるもんだのう!」
すぐに部下の一人が駆け寄り、声の主に伺いを立てる。
「いかがいたしますか…大王様?」
声の主…『ガルデン大王』は身の丈ほどもある青龍刀を床に突き立て立ち上がった。
「無論好機を逃すつもりはない…作戦通り捕縛するのだ!」
主人の号令に、周りの部下…『ガナガナ星人』達が即座に反応する。
「ハハァー!」
次の瞬間、地下深くに隠されたガルデン大王の母艦から、謎のカプセルが地上へと射出されるのであった…
ゴゴゴゴ…
低い地鳴りが響き渡り、ソフィのすぐそばで地面が隆起する。
「?!…なに?」
地面からはソフィの身の丈ほどはあろうかという円筒状のカプセルが現れ、地表に顔を出して止まったかと思うと、次の瞬間には蓋が開放された。
ドロォ…
中からは緑色の液体が溢れ、ゲル状に地面を広がっていく。
「生物…にしても自然のものじゃないわね…これは、正解を引いちゃったかしら…」
体を空中に浮かせ、距離を取るソフィ。
彼女の経験が、嫌な予感として対応を慎重な物にさせていた。
ヒュンッ!
次の瞬間、ゲル状の液だまりから何本もの触手が伸び、ソフィの腕と脚を縛る。
「やっぱり敵だと思った方が良さそうね…ハァッ!」
即座に手足にエネルギーを纏い、触手を蹴散らすソフィ。
しかし、触手は複数体を一本に束ねて強靭にすると、再度ソフィを狙った。
「くぅ…キリがないわね!これでも喰らいなさい!」
回避行動を取りながら右手を前にのばし、エネルギーを集中するソフィ。
「ソフィ破壊光線!!」
娘・ミレーヌのミレニウム光線にも引けをとらない威力の光線がゲル状の本体へ炸裂する。
ゴクンッ…
しかし、爆発四散すると思われた生物は、エネルギーを体に取り込むと、眩く光り出した。
「く…目が…ああっ!!」
その輝きから一瞬目を逸らしてしまったソフィの背後に大量の触手が迫る。
次の瞬間、ソフィの体はゲル状生物に手足を取られた姿で拘束されてしまうのであった…
ついに力尽きてしまったソフィ…
しかしこれはガルデン大王の復讐における、序曲にしか過ぎなかったのである…
続く…