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2大怪獣、ルクリアに迫る! 挿絵らすP様


火山怪鳥 バードン

食葉怪獣 ケムジラ 登場


目の前のジェロニモンから放たれた羽が胸に刺さり、その場所から毒が体内を巡ってゆく。

薄れゆく意識の中で、アンナは逡巡していた。

「また…また私の意識が先に落ちていく…ごめんなさい、ルクリア…どうか無事に…」

アンナの願いとは裏腹に、その意識は深い闇へと落ちていった…


「ルクリア!?」

そう叫んで飛び起きるアンナ。

一瞬の間ののち、我に帰って辺りを見渡すと、そこは見慣れた自宅のベットの上であった。

「家に帰ってきてる?」

アンナはスマホを確認するも、ルクリアはからの回答はなかった。

今までも戦いの最中に意識が途絶え、家まで帰り着いた記憶のない時はあった。

そういった場合は、ルクリアがスマホのメモ等に事の顛末を書き置いてくれていたことをアンナは思い出す。

きっと今回は激戦の末に家まで帰り着き、ルクリアも力尽きたのだろう、そう思ったアンナはスマホのメモに「お疲れ様」と入力する。

そして学園から来ていた安否確認に返信し、スマホを充電台に置いてテレビをつけた。

ちょうど怪獣出現のニュース特番が組まれていたが、出現後10分ほどで消えてしまったことで、集団幻覚やイタズラの可能性などをコメンテーターが騒ぐばかりであった。

学園からは安否確認とともにしばらくの休校措置が通達されており、アンナたちスクールカウンセラーにも自宅待機が命じられていた。

「大ごとになっちゃったなぁ…」

この混乱でどれほどのマイナスエネルギーが生まれ、ゴーデスの物になったのか。

それを考えると暗い気持ちになりそうになるアンナであったが、それこそゴーデスの思う壺!と思い直した。

「シャワー浴びちゃおう!」

リフレッシュすることで気持ちを奮い立たせようと、アンナは部屋を後にした。


アンナがシャワーに立った直後、スマホの中ではルクリアが意識を取り戻していた。

「ここは…アンナの部屋?私は一体…」

その瞬間、ルクリアの脳内にジェロニモンとの戦い、そして敗北の記憶がフラッシュバックする。

「…っ!そうだ、私はゴーデス細胞を注入されて…そのままいい様に嬲られたはず…どうやってここまで…」

そう考えながらも、ルクリアの中で結論は既に出ていた。

「ゴーデスによってここに戻された…」

それはすなわち、既にゴーデス側にアンナの情報を握られ、生殺与奪の権利を奪われていることを意味する。

そのことに気づいたルクリアは、敗北のショック以上に打ちひしがれていた。

「このまま私の協力者を続けていたら、アンナの身に危険が…一体どうすれば…」

しかし、アンナの協力なしにゴーデスと戦う術がないこともまた事実であった。

このまま留まりアンナの協力を請うべきか、全てを話して一度距離を置くべきか…敗北に打ちひしがれたルクリアの中では堂々巡りが続いていた。

そうして時間だけが過ぎていき、部屋のドアが開く。

そこにはシャワーを終え、ラフな格好に着替えたアンナが立っていた。

「あ、アンナ…体は大丈夫ですか…?」

恐る恐るルクリアが尋ねるとアンナは笑顔で返した。

「身体中バッキバキに痛いけど、それ以外は大丈夫よ。ルクリアこそ大丈夫?私また意識を失っちゃって…」

アンナが意外と元気そうなことにルクリアは救われる。

「ううん、アンナは悪くないわ…怖い思いをさせてしまってごめんなさい…」

最後は申し訳なさそうにするアンナの言葉を、ルクリアは遮りながらフォローする。

その様子に少し驚きながらアンナは続けた。

「それで…怪獣の方は大丈夫だった?」

ルクリアは平静を保ちながら言葉を選んで答える。

「ごめんなさい、倒すことはできなかったの。引いてくれたからなんとかなったけど…」

嘘は言っていない。でも明らかに事実を隠した答えしか言えないことに、ルクリアの声のトーンが落ちる。

察するところがあったのか、アンナも細かい詮索はしてこなかった。

「そっか…それじゃあ次もあのレベルの強さで怪獣を操ってくるのかしら…苦しい戦いになりそうね…」

アンナも釣られてトーンダウンしてしまい、部屋の中を重い空気が支配していた。

するとアンナはふん!と気合を入れて立ち上がる。

「私たちがマイナスエネルギーを産んでしまったら元も子もないわ!気分転換でもして元気出しましょう!お料理か、お掃除でも…あ、その前に…」

元気に立ち上がったものの、顔を少し赤らめて照れるアンナ。

ルクリアが呆気に取られていると、恥ずかしそうに切り出した。

「ちょっとお花を摘みに…」

そう言って部屋を出ていくアンナ。

から元気かもしれないが、明るく振る舞ってくれるパートナーに、ルクリアの心は救われていた。

しかし、同時にそのアンナを危機に晒してしまっていることに、ルクリアの心は曇ってゆく。

「私は一体どうすれば…師匠なら答えをくれるのでしょうか…」

遥か遠く、光の国の恩師を思うルクリア。

しかし、時は残酷にも破滅へのカウントダウンを進めていた。


「嘘…ついちゃったな…」

トイレに入ったアンナはそっとつぶやくと、そのまま床にへたり込む。

「はぁ…はぁ…あぅん…胸が…熱い…」

そう言いながら胸をはだけるアンナ。

まるで何時間もねぶられたかの様に硬くなった乳首。

その先端からはポタリ、ポタリと母乳が垂れ続ける。

「一体どうしちゃったの?私の体…」

先程のシャワーを浴びた時からアンナの体は疼き続け、軽い絶頂の様な状態が彼女を苦しめていた。

おそらく先の戦いの後遺症であることは容易に想像できる。

でもルクリアに話してしまったら、アンナを傷つけた事を気に病んで変身を躊躇してしまうかもしれない…

そのことで更なる被害が出ることをアンナは恐れていた。

今回の怪獣騒動で学園の長期休校も現実を帯びてきている。

子供たちの日常を守りたいと願うアンナには、これ以上の事態の悪化を避けたいという気持ちが勝っていた。

「変身さえすれば、ルクリアの力でこれくらいの症状は押さえ込んでくれるはず…今は戦いに備えなくっちゃ!」

自らを奮い立たせ、立ち上がるアンナ。

「ルクリアには疲れが出たことにしておこう…」

そう言いながらアンナはフラフラと部屋へ戻っていった。


それぞれの心に秘密を抱えてしまったアンナとルクリア。

その結果はすぐに大きな代償となって2人へと襲いかかることになる…


アンナが体の不調隠しながら1日が過ぎた頃、市内に新たなエネルギーフィールドが展開される。

同時にアンナのスマホへと非通知のメッセージが届いた。

「ヘンシンシ、シナイノフィールドへコイ。」

単純な一文であったが、ゴーデスからの招待である事を理解した2人は、誘いに乗ることにした。

「おそらく罠でしょうが…ここでゴーデスの企みを阻止しないと埒があきません。アンナ、お願いできますか?」

先日から明るく振る舞っているものの、明らかに体調を崩している様子のアンナをルクリアは気遣っていた。

「ごめんね、気を使わせてしまって…大丈夫!いきましょう!」

そういうとアンナはスマホを構え、ルクリアと一体化する。

「ルクリア!」

エネルギーフィールドに包まれ一心同体となる2人。

そのまま、市外に発生したフィールドへと向かっていく。

ルクリアがフィールドへ進入すると、中には春野市を模した市街地が広がっていた。

上空まで再現されたフィールド内には2体の怪獣が待ち構える。

特撮ドラマ・アルティママンタロウで、主人公とその兄を屠った怪獣・火山怪鳥バードンとその捕食対象である食葉怪獣ケムジラ。

そしてその2体にみなぎるマイナスエネルギーの量に、ルクリアは背筋が凍る思いをしていた。

「これは…この間のジェロニモンよりも間違いなく強力だわ…」

そう言って構えをとるルクリア。

しかしその時になって自らの体の不調にも気付かされることになった。

「体が重い…それに頭が…いけない、集中しなくては!」

しかしそんな思いと裏腹に、体は全く付いてこない。

それどころか変身直後にもかかわらず、すでにアンナの様子がおかしいことにルクリアは戸惑っていた。

「アンナの意識が…アンナ、大丈夫ですか?」

ルクリアの問いかけにもまともに返答できないアンナ。

「ルクリア…ごめんなさい…私、もう…」

途切れそうな意識の中で、アンナは謝罪を繰り返していた。

「こうなったら私1人でも!」

覚悟を決めたルクリアは改めてバードン・ケムジラの2大怪獣と向き合う。

アルティママンタロウでは一方的にバードンが捕食していた関係だったが、ゴーデスの手先として生み出された2体はともにルクリアへにじり寄ってゆく。

「ウエアアアアア!」

飛び立ち上空から様子を伺うバードン。

まずはケムジラから倒すべく、距離を詰めようとするルクリア。

しかし、体が重くいつもの動きができずにケムジラに翻弄されてしまう。

「くぅ…体が言う事を聞かない…」

動きの鈍いルクリアを拘束するため、糸を吐き出すケムジラ。



いつもなら簡単に交わせるような攻撃にも反応できず、簡単に囚われてしまうルクリア。

「ああっ!か、硬い…解けない…」

そのまま糸を手繰り寄せ、力任せに振り回すケムジラ。

踏ん張りの効かない体で態勢を崩されたルクリアは四つん這いに倒され、地に伏してしまう。



ピコンピコンピコン…

いつもより早いタイミングでカラータイマーも悲鳴を上げ始める。

そして満を辞して、上空から恐怖の嘴がルクリアへ襲いかかった。

地に伏したルクリアに急降下し、毒を含んだ一撃を背中に叩き込むバードン。

「!!…ああああああっ!いやああぁあ!」

あまりの衝撃とダメージにのたうち回るルクリア。

背中には注入された毒の痕が広がり、変色していく。

ジェロニモンの時とは比べ物にならない注入量に体を震わせるルクリア。

もはや指先もまともに動かせず、糸に絡められたまま動けなくなってしまう。

ルクリアを嘲笑うかのように周りを旋回するバードンと、糸を手繰るケムジラ。

そしてバードンから謎の声がルクリアへ語りかける。

「情けない姿だな、ルクリア。」

その声はいつも挑発してくるゴーデスの声ではなかった。


時を少し戻し…

フィールド内にルクリアが入ってきた直後、ゴーデスと青年は最後の打ち合わせをしていた。

「おそらく前回打ち込んだわしの細胞で、ルクリアは満足に動けまい。あとは奴に致死量の毒を打ち込むだけじゃが…本当に良いのか?」

ゴーデスは最終確認とばかりに青年に尋ねた。

「今回の毒の量でルクリアを倒してしまえば、おそらく今野アンナは変身解除後に死んでしまうじゃろう。お主は多少あの女に執着があるものと思っておったが…」

青年はため息をつきながら答える。

「まぁそうだね。でも再三命の危機に瀕していながら、引く気はない様だし。君の細胞で助けてくれてもいいんだけどね。」

ゴーデスは青年の提案を一笑に付した。

「ファファファ…それで救ってやっても元の今野アンナにはならんぞ…それにわしの読み通りなら、おそらく光の国の連中が横槍を入れてくるはずじゃ。大物が釣れるといいんじゃがのぅ。」

青年も怪しく笑う。

「前準備としてルクリアの心はここで折っておこう。その役は僕が行うからそっちの備えは頼むよ、ゴーデス。」

そう言うと2人はそれぞれの持ち場へと別れていくのだった。


「情けない姿だな、ルクリア。」

謎の声に、弱りきったルクリアが反応する。

「あなたは誰!?ゴーデスではありませんね?」

ルクリアは一瞬アンナを脅していた理事長かとも思ったが、声のトーンがだいぶ若い様に感じていた。

「お察しの通り、彼の協力者さ。君にとっての今野アンナと同じ様にね。」

ルクリアはなんとか顔を上げバードンを睨みつける。

「あなたとアンナを一緒にしないで!ゴーデスに協力するということは地球を奴に売り渡すことと一緒です!」

青年はバードンの中でせせら笑う。

「そういうセリフは、せめて戦いになるぐらい張り合ってから言ってくれよ…そんなだから、今野アンナは今日死ぬことになるんだぞ。」

その一言でルクリアの表情が一気に曇る。

「アンナが…死ぬ?」

青年はその様子に満足しながら言葉を続けた。

「前回彼女に注入したゴーデス細胞は、体を蝕むには充分な量だったはず…まさか今野アンナの体の異常に気づかなかったのか?」

ルクリアはショックを受けて俯いてしまう。

「そんな…アンナは何も…」

青年はさらにルクリアを追い込む言葉をかける。

「なんだ…随分と信頼している様子だから強い絆で結ばれているのかと思えば…その程度の仲なのか。」

なんとか反論しようとするも、アンナの不調が相手の言葉を裏付けてしまう。

ルクリアは自分がアンナを追い詰めてしまったという事実にショックを受け、戦意を喪失してしまっていた。

「そんな中途半端な関係で戦うから、彼女を死なせる羽目になるのさ。今野アンナも可哀想なことだ。」

ルクリアは哀願する様に手を伸ばしながら、アンナへの謝罪をうわ言のように繰り返す。



「アンナ、ごめんさい…私が巻き込んだばっかりに…」

その様子に、青年は失望したように吐き捨てる。

「結局、この程度か…ゴーデスと僕の敵ではないな。隠された力の一つでも出してくるかと思ったが期待はずれもいいとこだ。…もういい、あとはお前たちで好きにしろ。」

そう言い残し、バードンの中から去っていく青年。

バードンとケムジラは、目の前に残された獲物へと歩みを進めていった。


光の国…

銀十字軍がモニターする戦士たちのバイタル画面の一つでレッドアラートが鳴り響く。

その画面に表示された名前を見た1人の女性がつぶやく。

「ルクリア…」

周りの隊員がその女性・銀十字軍司令官、アルティママザー・マリアに状況を報告する。

「非常に厳しい状況です。ルクリアを救うことができたとしても、一体化している現地の女性の命が…」

報告を聞いたマリアは、副官のアルティマレディ・ジェニスを呼び出した。

駆けつけたジェニスはマリアへ地球行きを志願する。

「マリア様、私に行かせてください!ルクリアにもアンナさんにもドロボンの件で協力してもらいました。今こそ恩義を返す時です!」

逸るジェニスを諌めるように、マリアはゆっくりと告げた。

「落ち着きなさい、ジェニス。地球へは私が行きます。ルクリアは私の弟子ですからね。あなたには留守をお願いしたいのです。」

その言葉に隊員たちがざわつく。

「マリア様は一線を退いた身!危険です!」

ジェニスが他の隊員を代弁するように進言する。

マリアは意に介さず指示を続ける。

「今回はルクリアとアンナさんを救うことが第一です。相手がゴーデスならば、交渉も私の方がいいでしょう。」

目線で隊員に指示を出し準備をしていくマリア。

回復ポッドと共に、テレポートのスタンバイに入る。

座標と共にジェニスから地球の情報をもらい、地球人ベースの姿へと変化を遂げるマリア。

「それでは行ってきます。ジェニス、あとはお願いしますね。」

マリアはそういってテレポートの光の中へ消えていった。


フィールドの中を映す画面上では、ルクリアに対する陵辱が続いている。

心を折られたルクリアはせめてもの抵抗とばかりに変身解除を拒み、暴行を受け入れていた。

「私が変身を解いたら…アンナが死んでしまう…」

なんとか耐えるルクリアであったが、エネルギーも尽きかけの状況では打開策がなかった。

様子を見ながらゴーデスと青年は光の国からの刺客を待っている。

果たしてマリアの到着は状況に変化をもたらすことができるのか…

ルクリアとアンナの運命やいかに…


続く


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