パンチドランカーズ (Pixiv Fanbox)

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「人間の女さん。

ここのルールは知ってるか？」

仲間にグローブをはめてもらっているところに、ぶっきらぼうに声をかける。

キョトンと目を丸くした女の様子に舌打ちが漏れる。

人間・・それも女か。

ふとこの酒場に立ち寄った冒険者の一行。

客から面白そうだと乗せられたのが始まりだったな。

こっちも、ファイトマネーで稼いでいる身だ。

振られた喧嘩話を買わないなんてことはあってはならないが。。

相手の体をじっくり観察する。

剣士か。普段の鍛錬でそこそこに体は作り込んでいるが、、それでもあまり気乗りしない。

人間は脆い。女なら尚更だ。

「基本、どっちかが立てなくなるまでの殴り合いだ。

まぁ、ダウンしたら立つまで待ってやるよ。

簡単に終わらせたくないしな。」

「ふーん。

わかった！それで大丈夫だよー」

・・・

ちょっと脅しが足りなかったな。

「あんた。あんま分かってねーな。

観光気分のようだけどな、こっちは遊びで体張ってるわけじゃねーの。

大抵野郎と戦うんだけどさ、大体みんなひどい状態でリングを降ろされるよ。

あんたは女だから、後遺症が残らないくらいには手加減してやるけど・・

歯の4,5本くらいは覚悟しとけよ。」

声にドスを効かす。

これで試合を降りるならそれでもいい。こっちだって無駄に体を使いたくない。

「・・・いや、いーよ！手加減しなくて。

こっちだって本気でやりたいし。

なにより、、アリューシャちゃんだっけ？

みんなから聞いたよ。すごく強いんでしょ！

わくわくするな〜」

「・・・」

こいつ・・

あまりのあっけらかんとした態度に呆然とする。

相当のバカなのだろう。

「・・・ははっ

あっそ。手加減しないことにしたわ。

そのかわり、試合後にもその体で冒険が続けられると思うなよ」

舐めやがって。

マジに相手してやるよ。

「わーい！

久々にこんな強い子とやれるんだ。ワクワクするね。

早く打ち合いたいなー！」

そんな声を無視して、アップを始める。

こういうやつは一回死んだほうがいい。

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『ダウーン！』

『うおおおおおおっ！！』

『すげーなネェちゃん！これで5回目だぜ！』

『こいつがぶっ倒されんの初めて見た・・』

『どうだい、アリューシャ！人間のパンチの味はよ？

ぜひ感想を教えてくれ！』

「はぁ・・っ、はぁ・・・・」

外野の喧騒が、いやに耳に響く。

強い酒を食らったように朦朧として、ひどい気分だ。

声を発そうとも、言葉にならず口からもれるのはうめき声のような音だけ。

「うぁ・・あ・・っ」

「やったーーーー！！！」

人間の女が腕を掲げて喜んでいるのが見えた。

次第に試合の記憶が蘇ってくる。

鈍器のように重いパンチだった。

あんなパンチを受け続けて、何度も立ち上がれたのは奇跡だろう。

そしてなにより、最後のパンチ。

全く見えなかった。

まだグローブの感触が鼻先に残っているような、じんじんとした痛み。

・・・

ちくしょう。

裸一貫の生身の拳闘で負けたことなんてない。

それを、こんな人間の女に。打ち合いで負けるなんて。

この屈辱を表現する余裕さえ、今はない。

「はは、、アリューシャちゃん大丈夫？？

さすがにもう立てないでしょー。

最後の必殺パンチ、完璧に決まったからね。」

一通り客にファンサービスを終えた女が私の顔を覗き込む。

「アリューシャちゃんのパンチ、、本当に痛かったよ。

お嫁に行けない顔になっちゃうかと思った笑

でもそれ以上に・・すごく気持ちいい殴り合いだったよ。

・・ありがとう！」

散々殴ってやって、パンパンに腫れた酷い顔。

逆光で薄暗いが、私を覗き込むその顔は、

太陽のように眩しい笑顔だった。

・・・

全く。

なんなんだこいつはよ。

まぁ、それでも、

なんだか悪くないな。

そんなふうに強がる私の声は、

「うぁ・・・あ・・」

「わ、相当頭にダメージきてるね」

やはり言葉にならなかった。

差分置き場

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いつもご支援ありがとうございます。

以前描いて放置してたやつです

2枚目グローブ無いと萌えなかったなーと後悔しています