岡部円香の流儀 (Pixiv Fanbox)
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「あら!ゆうきくんのお母様じゃないですか!
今年も出場してくれるなんて聞いてませんよ~!!
嬉しい~!!」
紅組を象徴する、真紅の鉢巻が可愛らしい。
この方は岡部さん。
息子の同級生のママで、同じマンションに住んでらっしゃいます。
平素より親しい良きママ友です。
「うふふ、わざと内緒にしてました。
岡部さんをびっくりさせたくて!」
「早く言ってくれればよかったのに!
私ね、去年のお宅の試合見てたら凄く興奮しちゃって。
今年は絶対出場するって、駄々をこねちゃいました!
息子は「恥ずかしいからやめろ」なんて言うんですけど____」
これから殴り合いするとは思えない。
世間話をするようないつもの調子です。
もちろん、わたくしはいつも通り、お淑やかにお応えするのですが...
内心は穏やかではありません。
岡部さんは人当たりの良い、心優しい方ですが・・・
実は、知る人ぞ知る「ボクシングの名家の令嬢」との噂があるのです。
その実力や戦績を直接お伺いしたことは有りませんが、
並外れた実力の持ち主とのこと。おそらくそれは事実でしょう。
この無駄のない、見事な筋肉をみれば瞭然です。
普段のカジュアルな服装の下に、こんなエレガントなボディを秘めていたなんて・・・
初めてお目にかかりました。垂涎ものです。
そんな彼女が運動会の名物競技「PTA代表紅白ボクシングマッチ」のリングに立つ。
私は去年出場したので、今年は遠慮するつもりでしたけれど・・・
岡部さんが紅組代表で出場されると知って、急いで手をあげました。
あの名門岡部家を打ち倒したとなれば・・・
息子の中学校受験も有利に進められることでしょう。
夏目家の名に箔をつけるのにこれ以上のお相手はいません。
グローブの中で、じっとりと手汗が滲みます。
早く打ち合いたくてたまらない。
去年同様に____いや、去年以上の歓喜を。
この運動会、小学校全生徒の前でぜひ勝鬨をあげたいものです。
__岡部円香の流儀_____
試合中だというのに、ふと、ユウキくんのお母様の美しいお体に見惚れていました。
普段から栄養のある食事、運動、美容を心がけているのでしょう。
素晴らしい健康体です。
思えば、私がまたリングに立ちたくなったきっかけは、去年の貴方の試合がきっかけでした。
力強く相手の顔を打ち跳ばすお姿。
本能のままに拳を振るう貴方を見て、心が震えるのを感じました。
貴方と闘いたい、一緒にボクシングできたらとずっと熱望しておりました。
まさかそれが実現するとは・・・夢にも思っておりませんでした。
普段から交流をし、互いに信頼感を共有している方と、
この大衆に見守られて、リング上で拳をまみあえる喜び。
それはまさに体を1つに重ねるようなエクスタシーに近いでしょう。
こんな私と闘っていただき、本当にありがとうございます。
『『『!!タァン!!』』』
豊満な頬を、肉厚なグローブで打ち抜きました。
校庭に響き渡る、ピストルのような鋭い音。
悪くない音です。
加点を告げるアナウンスが聞こえてきました。
『『紅組代表、有効打につき、さらに3点追加です。
現在、赤26点-白8点。
白組代表、頑張ってください。』』
フックをダッキングで捌いたのち、死角からカウンターフック。
いいパンチが入ったことでとても満足致しました。
これぞまさしくボクシング。素晴らしいです。
健康的で艶のある髪を靡かせながら、ユウキくんのお母様がロープ際に後退します。
数年ぶりの実践の場。
第二子を産んでから全くグローブを嵌めなくなりましたから。
久しぶりにリングを踏み締め、拳を振るって、
良い年なのに学生のように興奮しております。
お恥ずかしい限り。
私のパンチがよく効いていらっしゃるのか、
ユウキくんのお母様はフラフラとおぼつかない足取りです。
それでもなお拳を打つその気概。感服いたします。
と、単純なストレートが飛んできたので、パリングしてしっかり打ち返しました。
グラブ越しにみちり、とユウキくんのお母様の頬肉を感じます。
よく効いたことでしょう。では、さらに打ち込みます。
ガードの隙間を刺すように、ボディとお顔を交互に打ち分けます。
ボチュッ
ボディを打ちしだくと、吹き出た脂汗で湿った音を立てました。
叩けば叩くほど柔らかくなってきます。
お顔の方も、腫れが酷くなってきましたが、命に関わるものではありません。全力で拳を打ち込みます。
もちろん、「手加減」などという大変失礼なことは決して致しません。
それはユウキくんのお母様から、「ボクシングの喜び」を奪う行為になりますから。
ボクシングの対戦相手という特別な関係性。
お互いを殴り合うことにはなりますが、決して喧嘩とは違います。
リング外の痴情のもつれや、怒り、憎しみと言った特別な感情は持ち込んではなりません。
相手の動きをよくみて、予測して、いかに良いパンチを打ち込むのか。
いかに有効打を打つのか。相手を攻略するのか。
言うなれば、それは上質なコミュニケーションなのです。
言葉を超えた、肌と肌を超えた、倫理や文明を超えた・・・
本能と本能、魂と魂が直接濃密に溶け合うような・・・対話なのです。
それが、スポーツとしてのボクシングの楽しさ、素晴らしさなのですから。
きっと今回も。
記憶に刻む、よい戦いになることでしょう。
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いつもご支援ありがとうございます。
更新滞りがちですみません・・・
凝りすぎると完成まで持っていきづらいですね
ということで今回は早く描くことを頑張りました。
シンプルな絵になっちゃいますが、枚数多いと情景が分かりやすくて良いですねー(立ち絵ばっかりですが)
“頑張って時間をかける絵”と“早く描けてシンプルな絵”
この二つを使いこなしていい作品作りたいですねー