質問回答:キャラクターデザインのあれこれ (Pixiv Fanbox)
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質問フォームに頂いた内容への回答記事です!
お仕事でお悩みとのことで間に合うか分からないですが、他の方からもキャラデザの流れについてのご質問があってまとめ途中だったので、合体で記事にしてみました。
Q:お仕事お疲れ様です!すでにお答えでしたらすみません…!
つなこ先生が思う良いキャラクターデザインとはなんでしょうか。
キャラデザの勝手がわからず苦戦しております。ジャンルはファンタジーです!
好きなキャラクターやモチーフを突き詰めてみると、有りはするものの共通点がわからず…正解がわからずとも自分の中での不正解はなんとなくわかるというのが現状です。(連想ゲームを無限にしております)
A:🐼うお~~~がんばれ~~~
最初にご質問の「良いキャラクターデザイン」について。中盤に「要素やモチーフの選び方」、後半に「ラフ作業の流れ」「デザイン小技」みたいなものを書いていきます。多分長くなります。
▼デザインの小技っぽいやつだけ見たい方
後半パンダの画像が出てくるあたりからです!
全部の行に「※案件によります」「※絵柄によります」「※個人の考えです」が付くと思ってお読み頂けたら幸いです!お仕事についてのご質問なので、趣味の制作には当てはまらない内容もあると思います。
前置き:キャラデザの役割
キャラデザは、姿が分からない架空人物に姿を与える作業です。
架空だけど、外見が定義されて名前で識別できるようになったら存在してると言ってもいいんじゃないか……?と思ったりします。
「外見は内面の一番外側」という言葉もありますが、第一印象の大半は外見が占めています。入口が魅力的だとプロジェクト成功の可能性も高まりますし、作品の満足度にデザインはずっと影響し続けます。なかなか責任がありますね。
見た目が好きで……という理由でキャラを気に入っていただけたら、デザイナーとしては本当に光栄なことです。
キャラを有名にしたい!というのは目標の1つになるかもしれません。
一方で、既存ファンだけに向けたローカルネタ全開のデザインが必要になるお仕事もあります。個人依頼の場合は、依頼者1人に大満足してもらうことが一番大切です。うっかり100万人にバズっても、依頼者が「ヘキが足りんな……」と思っていたら成功と言えるのか謎なのです。まあ実際のところ100万人にバズったら依頼者もニッコリだとは思うんですけど、極端な例として……。
そのキャラデザで誰に喜んでもらうのかはとても重要です。
キャラデザの良し悪し基準とは
良し悪しの基準は、その仕事のクライアントやターゲット(ユーザー)によって変わります。また、用途によっても「良い」の基準は変わってきます。例として、用途が異なる2種類を挙げてみます。
A:物語の中に存在するキャラ
ストーリーがはっきり存在する案件です。小説、アニメ、RPGなどなど。
物語の中で生きているキャラの魅力を、ビジュアルで表現できていることが「良いキャラデザ」目標の1つになると思います。ジャケットになるキャラが売れそう~というのも商業では重要ですが、どんなにビジュが強くても内容との乖離があると「なんかデザインが合ってないな……」という判定になってしまいマイナスです。
逆にすごく簡素なデザインでも、内容と噛み合って絶大なインパクトを残す場合があります。ほぼマルで出来ているのに怖いキャラ等はいる……!
思いっきり嫌われることでストーリー上の役割を果たすキャラもいるので、その場合は「嫌われるほど良いデザイン」になります。
B:鑑賞用、広報用のキャラ
見てもらうこと自体や、イメージアップがメインになる案件です。イラスト展の作品、イベントや会社のマスコットキャラクター、広告やCM、楽曲イラストでストーリーが明確じゃないタイプなどなど。
大抵は何か伝えるべき大きなテーマが存在しますが、それをデザインや絵1枚、短い映像だけでしっかり伝えるには演出の凝縮が必要です。「ものすごい果実感のあるジュース」の広告キャライラストだったら、果実感・シズル感を誇張するモチーフをたくさん散らしたりとか。
注目を集めると「良いキャラデザ」と判断されやすいですが、悪い注目というのもあります。炎上の可能性があるよりは無難寄りな方が弊社にとっては良い、になることもあるし、ターゲット以外は無視してとがったものを用意する方が良い、になることもあります。
Aで良いとされたものをそのままBに持って行っても、目的が違うので合わないことが多いと思います。ただ、すでに人気を獲得しているキャラは行き来が可能です。ボカロ曲で人気が出たキャラの小説化とか、アニメで人気が出たキャラのCM起用とか。
クライアントの要望を探る方法
要望は設定や発注文に書かれていますが、決まっていない内容が多かったり、よく読み取れなかった場合は追加の質問・確認事項を送ったりして、要望をヒアリングしてみると進行しやすいです。
▼決まってない要素についての質問例
・髪型(長さ、色味など)にもしイメージがございましたらお伺いしたいです。
・身長は決まっているでしょうか?
・武器の種類は決まっているでしょうか?
などなど。
ラフ前に確認しておくことで「お任せと言われたのに没」という虚無のラフチェックも減ります。いざ絵として見てみないと分からないこともあるので、仕方ない場合も多いんですが……!
発注者がキャラの属性や要素に詳しくなく「プロに任せたい!」と思われていることもありますので「特にご指定がなければこちらで案出しを行います」といったニュアンスだと、担当さんも助かると思います。
最終的に「この部分はイラストレーターさんにお任せしたいです」となる箇所もあります。そうなったら頑張る。
自由な仕事って、実は一番責任重大で大変かもしれません。でも好きな要素を入れたり、どうしても苦手なモチーフを絶対回避できるという利点はあります。
続いて、実際にキャラデザを考える時の案出しについてです!
順調に長くなってきた。
決まってない要素の案出し(ファンタジー)
発注内容で決まっている要素は確定で良いのですが、決まっていない箇所は確定部分に合うように案を考えていく必要があります。
例えば、ファンタジーだとこういった要素があります。
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★素体 -どんな服を着ていても、そのキャラに関係がある要素
・種族
・外見年齢、実年齢
・身長、体型
・性格
・目の形状(タレ目、平均、ツリ目、ジト目、など)
・髪型(思いつかない場合は、目指す雰囲気だけでも)
・肌の色味
★服装 -ファンタジー感やキャラの個性を強調する要素
・ジョブ 使う武器・防具のイメージ
・王道or意外性(そのジョブらしい正統派な格好をしているかどうか)
・身分、冒険者ランク(身につける素材の高級度、装備の強そう度)
・服のイメージ。目指す雰囲気だけでも
・副業があれば(歌手や店番と兼業…など。衣装形状に取り入れられるかも)
・その地域の気候 厚着or薄着
・きっちりor気崩す
・意図的におしゃれしてるorしてない
(してないの場合、装飾品は「飾り目的じゃなくても成立する物」をメインに)
+キャラが好きそうなもの
+キャラが嫌いそうなもの
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上記は一例ですが、全部埋める必要はありません。デザインが開始出来そうな要素が少しでも挙がればOK!1つに決めきれない場合は、思いついた複数の候補を全部書いてみましょう。
ファンタジー職であれば、種族や職業に関連するものを優先的に決めていくと早いと思います。
キャラ本人の好き嫌いといった要素も活用しやすいです。魔法が使えるからマジックアイテムを沢山身に着けている→そのアイテムが本人の趣味でやたら可愛いお菓子のような見た目になってる、といった流れでビジュアルの派手さに関連付けていくこともできます。
▼どんな子なのかうまく想像できない時にやってみてね
突然ですが、このキャラはOPアニメに数カット登場することになりました。
どんな動き・表情をしているか想像してみよう!
①キャラがドアを開けてどこかに出かけていきます
②バトルシーンです!敵っぽい何かに気づいて持ち技を発動
何となくでも「かわいい」「かっこいい」「美麗」「チャラい」「常にほぼ寝てる…」など、動きの系統が見えてくるかも。すごく活発なキャラであれば、手足の動きを邪魔しない服が好きかも。慌ててバタバタ動くキャラは、ぶかぶかの服でも布ごとバタついて可愛いかも。などなど。
最初に思いついた動き方が正解とも限りません。何度か脳内再生してみよう!
要素の掘り下げと仕分け
ブレインストーミングといって、連想されるものを繋げてアイディアを出す方法があります。意外な面白要素が出てくることもあります。
ただ、連想の連想の連想……とリンクが遠くに伸びすぎると、元の要素から遠くなって作者以外には経緯が分からない謎モチーフが爆誕する可能性も高いと思っています。
まずは並列の箇条書きから始めて、詳細を掘り下げる時に時々連想も入れてみる……という流れであれば、案の幅が広がるかもしれません。
ある程度案が出たら、発注で確定している内容との相性を見つつ、使うかも・使わないかも・保留 を仕分けしてみましょう。
↑内容は今とっさに考えた、架空のエルフちゃんです。
「保留」で迷っている要素は、実際にラフでパターンを出して比較してみると良い内容です。「使わないかも」からの復活はありですが、クライアントから明確に没が出たものは完全に消します。「没欄」を作るのも記録になるのでいいかも。
▼仕分けてみたベースに対して追加要素を考える
図の「使うかも + 保留」にある要素だけだと、まだ少し物足りない感じがします。主役になるモチーフがあまり決まっていないですね。
ラフ絵の上で飾りを考えていくのも良いですし、テキストでの案出しに戻っても良いと思いますが、何か追加する物を考えたいところ……
A案:
エルフは森自体を信仰対象にしているかも。ファンタジー森にありそうな植物や動物を服の装飾に使ってみる。アクセサリーは指定がなければ、自分が可愛いと思った形状をとりあえずつけてみて、集めた森モチーフの中で合いそうなものに変形させる。
B案:
「宙に浮ける」→「羽根」「雲海(服の刺繍柄)」→「トビウオのひれ」のような衣装パーツをくっつけてみる。エルフと魚は直リンクしづらいですが、空を飛ぶ様子と泳ぐ様子が重なるので、今回はさほど違和感がない組み合わせかも。
▼AとBは両方ラフにしてみよう(Cがあっても良い)
内容があまり決まっていない案件の場合、方向性が異なるラフを同時に送ってチェックしてもらうと、どれがクライアントの要望に近いのかが分かります。
初回で良いと言われたラフがあればその路線で詳細を詰めていけますし、変えたい箇所の回答が戻ってきた場合はそれが正解ルート。もし全滅してもNG要素が沢山判明するので、消去法で他の案を考えやすくなります。
どうしても1案しか出てこなかった〜という場合や、これで行きたいという絶対推し案が出来た場合は、1案だけすぐ出してしまう方がいいかも。あまり延び延びになると後ろの使えるスケジュールが減ります。状況に合わせて決めましょう!
ラフの進め方
最初は短時間でたたき台となるすごく簡単なラフを作ってみることが多いです。何となくの全体のシルエットだけでも、顔回りだけでも。
それを「途中ですが方向性をチェックして欲しいです」に出しても良いですし、大ラフの上から少し細かいラフを描いてみると、白紙に描くよりも描きやすいかも。少しでも取っ掛かりがあると、何かは進みます。
肩から上だけ真っ先にラフチェックに出すこともあります。顔まわりが確定するのは結構強いです!その顔に似合うものを探す流れに移行できるので、迷う要素がちょっと減ります。
位置や色で迷った時は、パターンを並べて比べてみましょう。
1枚ずつ見るよりも「こっちの方がいいかな?」「これは無しかな?」という比較がしやすいです。比較画像からクライアントに選んでもらうこともあります。
▼衣装形状がさっぱり何も思いつかない時はどうする……!?
取っ掛かりが何もなくて、白紙の前で固まってしまうことはありませんか?私はあります。
そんな時は何でもいいので、一般的な形の服を描いてみましょう。セーラー服、スーツ、メイド服、コート、サバゲ―の服、着物……何でもいいです。特徴的すぎるブランド服をそのまま描くと権利面が危険ですが、一般的に共通の形状であれば問題ないはず……。
描いてみた服のパーツを変形させたり、長さを変えてみたり、模様をファンタジー風に改変していく……等でとりあえず手は動きます。描き始めてみたら何か思いつくかも!
どうしたら目立つデザインになる?
本当に内容やキャラ本人によるので、絶対これがいいよ~というものはないんですが、個人的に留意している内容を少し紹介します。
飛び出す / 欠ける
他よりも飛び出している部分・足りない部分があると、目を引く要素になります。沢山ありすぎるとうるさく見えたり、「他よりも…」じゃなく「全部それ」になるので、ポイントを絞った方が効果的です。
アイテム合体
一か所に集めると、バラバラに置くよりもまとまって目立ちます。
結んだ髪に何か付ける、も合体要素です。髪とアクセサリーが両方一緒に目立つ状態になります。
同じものの反復
まったく同じもの、近い形状のものを並べると印象が強くなり、まとまったグループに見えます。部分的に色や材質を変えることで、変化を出すこともできます。
丈バランスだけ変えてみる
同じ衣装要素でも、丈や幅でかなり印象が変わります。アンバランスに偏らせてみるのも可愛いです。
右端の超ロング案だと、素早く走り回ることは難しそうです。「ワープで移動する魔法使い」であれば支障ないですが、「凄腕のシーフ!」はちょっと無理が出そうですね。性格や職業に合わせて、動きに合いそうな形状にしてみるといいかも。
顔回り、上半身に何かしら特徴を入れる
全身だと違うデザインに見えるキャラでも、顔アイコンや立ち絵の範囲で切り抜くとそっくりになってしまうことが……!
色が違えば見分けは付くと思いますが……モノクロ挿絵に登場したら、同一人物や双子状態になってしまいそうです。ゲーム等で脚に特徴があるキャラはアクション画面で映えますが、会話シーンの立ち絵は腰から上だけ……という場合も。上半身にも何かサブ特徴が必要です。
他のキャラが頭に何か付けているなら、1人は何も付けないことでも差異を出すことができます。
他にも色々出てくるとは思うのですが、一旦このぐらいで……!
余談:没について
線画と塗りまで全部完成した後に「この内容では使えないので描き直しです」となったら、ものすごく困ります。ラフ時点での途中チェックは、大幅なやり直しを発生させないためにあります。
初期段階では発注者もデザイナーもイメージが固まりきっていない部分が多く、何かしら没が出るかと思います。
決して制作を邪魔するために没が出されているわけではないです。「この方向じゃないよ」と明確に示してくれるので、とても大きなヒントになります。
別案件で過去の没ネタに近いものが通ることもあり、ネタのストックとしては生きることもあります。どんどん踏み台にしていこう!
すべての案件や作家様に当てはまる内容ではないと思いますので「こういうのもある」程度に読んで頂けましたら幸いです!
応援してます~~🐼🙌