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振り返り話を書いていて、最近の日記と内容が大体同じ!と思ったので、追加で……

特定の案件には触れられないのですが、普段のお仕事の流れなどをざっくり紹介してみます。ヘッダー画像は、仕事部屋感を出すためだけに「オフィス」札を貼っているドアです。

◆仕事中のおとも

BGM:YouTube Music

YouTubeにも広告が入らなくなるので快適!


映像:アマゾンプライムビデオ

対象じゃないアニメも結構あるのでトルネで録画もしますが、作業部屋にはテレビやゲームは置いてないです。


◆スケジュールの決め方

だいたい年末年始ごろに、次の1年のスケジュールをざっくり決めます。

あまりにも先の予定は確約できないので、主要取引先や知人以外からは1年以上先のお仕事は受注しないようにしています。かなり先にぼんやり仕事が存在していることもありますが、時期が近づいてから具体的に調整を行います。

数か月以内はほぼ確定スケジュールとして、〆切に間に合うようにラフや本作画を進行していきます。


アニメやフィギュア等の監修業務、取材やコメント依頼などは「来たらやる」という感じで、いつ来るかも事前には分からないことが多いので、実作業だけでスケジュールを一杯にしてしまうと、監修依頼が多く来た時に全部遅れる危険性が!

そのため、ある程度の余白時間をあらかじめ設けておく必要があります。(よくバッファとも呼ばれる)

元々用意していた余白では足りない時もありますし、あまりにも空くと勿体ないので難しい~。時間が余った時に、なるべく巻きで作業して、無駄が出ないようにはしています。


普段「土日で趣味作業」と書いてはいますが、土日は全休にはしていないことが多いです。大体土日は取引先もお休みでチェック等が止まってしまうため、私も同時に2日休んでしまうと完全に進行が止まってしまって勿体ないことが。そのため、平日チェック待ち中に休みを設定したり、半休を分散させたりします。


◆作業ペース

私個人は、約1ヶ月でラノベ1冊分がギリギリです。

(カラー5~6点、モノクロ8~10点、+追加キャラや衣装等のデザイン)

これ以上は、仮に終わらせることができても品質が下がったり、体調不良で次の作業ができなくなったりするので、避けるようにしています。デザインは何日で終わるか予想できない場合も多い……!


キービジュアルやパッケージなど責任が大きめなイラストは、他の絵も同時進行しながらですが、1ヶ月以上掛かる場合があります。重要なイラストは都度進捗を送ってイメージや目的に合っているかご意見を頂くようにしていて、要望を受けて調整すると作業時間がどんどん延びていったり……。でも重要だからこそ、途中で数日寝かせて目をリセットする期間も挟みます。もちろん無限にのびのびにするわけではなく、〆切はクライアントが決めた時期に合わせます。


◆〆切がやばい時の対処方法

やばいと分かった瞬間すぐ相談します。別の取引先に時期を変更してもらえそうな場合は、可能なうちに作業順の入れ替えを打診したりも。


お仕事によっては、〆切自体が早めに安全設定されていることも多いです。通称「デッド」ではない〆切。間に合わないと分かった瞬間に連絡して、デッド日程を聞きます。

連絡無しに遅刻するのは絶対にだめですが、相談して〆切が伸びたら、〆切を破ったことにはなりません。(重要)


言われた〆切=絶対ではなく、相談してみたら特に問題なく〆切を動かしてもらえることは結構あります。無理なスケジュールを無言のまま遂行すると「普通に可能なもの」と思われてしまいます!だって可能だったから。人によって作業スピードは違うので、やばいかどうかというのも、自己申告しないと分かりません。

時間なくても頑張った方がいい仕事というのは時々あると思うのですが、間に合うといって間に合わなかった時は総崩れになるため、無理めな時は無理と言うしかない……。


また、提出が当日中なら〆切自体は守ったかのように見えますが、大きな修正が発生すると結果的に遅刻になってしまうことがあります。

絵が遅れるほど、その後デザインや入稿を行う方の作業時間が厳しくなりますので、可能な限り1~2日前の提出を目標にスケジュールを立てています。可能な限り…。

◆原稿料の決め方

案件毎に全然条件が違って、具体的な数字は書くことができないので、決め方だけ。


最初にクライアントから必ずご予算を提示して頂き、こちらも最初の見積もりとして過去に自分が関わった平均値をお送りします。

自分がその価格で納得してお受けできるかどうかと、クライアントに私のイラストの作業代として納得して頂けているかどうか、双方きっちり同意の上で金額を決定してからお仕事を開始します。


値上げ交渉時は「フリーランスの日給平均が2万以上だから」といった具体的な数字を出すと納得して頂けることが多いため、下限だけ時給をもとに決めることがあります。完全に時給制だと無限に残業できてしまうので、下限以外の参考にはできないですが……。

私個人は原稿料だけで仕事を選ぶことはないものの、一定収入は確保する必要があり、安く請けて他の作家さんにご迷惑を掛けてもいけないので、お互いの条件が合わないとなったらやり取りは中止です。また、他の作家さんの相場はよく知らない&自分の受注判断の材料にはしません。


日給2万。時給2500円ぐらい。

なんだかちょっぴり高収入風に見えますが、サラリーマンの平均時給がボーナス抜きで同じぐらいのようです。そしてフリーランスの場合は全収入の中から、自分で税金や保険料を払う必要があり、長時間働いても残業代が出ない、ボーナスもない。私は実務歴が10年以上あるということも加味して、この辺りは「下回ってはいけない数字」ということにしています。


例外として、単行本化・商品化など、同じイラストからロイヤリティを得られる場合は、単体の原稿料が下限を割っていてもまったく問題なしです。

今は原作者として版権を持っている作品の印税とかグッズロイヤリティが入ることがありますが(ほんとありがたい)これもいつ途絶えるか予測できないものなので、あくまでも臨時収入と考え、原稿料仕事だけでも生活できる収入をキープするようにしています。

◆お仕事の流れ:イラスト仕事

お仕事で1枚絵を描く時の流れを紹介します。


発注内容を頂きます。何を描くかの指定が書かれています。

簡単な構図ラフをいくつか提出して、クライアントに確認して頂きます。何をメインで見せるのか、キャラの角度や大きさ、ポーズなどなど。

決め打ちの場合は最初から細かいラフを描く場合もありますが、ほんとに簡単な時はこのぐらいの絵。

簡素。新キャラ案件でここまで簡素なラフを送ることは流石にないですが……

既に完成絵が他にあるキャラの場合は、見た目をなんとなく想像できるのと、構図決めだけのために1枚1枚を細かく描きすぎると、没案にかかった作業時間が結構勿体ない。


クライアントの方からラフのパターン数を沢山求められることはあまりなく、自分が迷った時に複数案を提出して、どれがイメージに合っているのか確認するという方が多いです。


構図が決まったらちょっと細かいラフを提出。


服などの色が決まっていない場合は、色付きのラフを送ることも多いです。


クライアントには、「構図、ポーズ、衣装などの大幅な修正は、なるべくラフ段階まで。遅くても線画まで。」と、事前に告知しています。突然内容が変更になって全部描き直しになったりすると、これもまた作業側のロスが大きいためです。

描き直し分の原稿料が出る場合は、スケジュールが大丈夫なら対応可能としていますが……とはいえ通常、発注側もその辺りは把握されていますので、実際に途中でものすごい描き直しが発生したことはないかも。

線画確認のあるお仕事の場合は、線画を提出。

修正要望があった場合は修正対応を行います。

線画がOKになったら着色に入ります。

アシスタントさんに入って頂いている場合は、ベタ塗り作業を依頼して、私は別の仕事を進めます。


▼アシさんへの指示書の例(理恵さんの3月アイコン)

描いた本人以外にはどの線が何なのか分かりにくい箇所もあるので、仮色を入れたりしています。あと、影つけしやすいように別レイヤーに分けておいて欲しい箇所のメモなど。


重要なイラストの場合は、着色途中でもチェックして頂く場合があります。

自分で迷っている箇所などは、こちらからもご意見を聞いてみたり。

完成イラストを納品します。

修正要望があった場合は修正して完了です。


提出したイラストの差し替えは、基本的にはできません。何度もデータが細かく変わると、都度差し替える作業自体も必要になりますし、どれが正しいデータか分かりにくくなって、他のスタッフさんに迷惑がかかってしまいやすいです。最終チェック重要!

しかしOKの後に、誰も気づかなかった不備に気付いてしまった時は、急いで再提出します。画集に収録される時に、昔の作画ミスを直したりとかも……(遠い目)


◆お仕事の流れ:立体物などの監修

半趣味で作ったパンダラバーストラップの3D原型が、フィギュアや3Dモデルと似た監修方法だったので、やり取りに使用した画像をちょっと掲載してみます。

修正してもらいたい箇所があった場合、頂いた写真や3D原型画像に図を入れたり、レタッチしたりして、修正イメージを作成します。


地味に気を付けているのは、ぼんやりした感想ではなく、具体的にどう修正して欲しいかだけ書くこと、自分の指定が逆に見栄えを損ねる場合や、角度による破綻があったりしたら現場の意見を優先してもらうこと、等です。

他の方が作ったものに赤入れするのは、個人的にちょっと抵抗もあるのですが(添削っぽくしたくなくて、青色で書くという悪あがきをしている)見た目の些細なニュアンスは、見た目が分かる資料を送るのが一番確実だと思います。テキストだけで伝わらなくて、何度も往復になってしまうとその方が大変。


▼フィギュアの監修手順

(1)3D原型の画像や原型のお写真を頂く(色がグレーのやつ)

デザイン自体が原作やアニメと異なっている箇所があれば、テキストで指定したり、参考画像を送付。体型や衣装バランスで調整して欲しい箇所がある場合、上のように要望画像を作って返信します。

(2)彩色のお写真を頂く

色味にキャライメージと異なる箇所があった場合は、要望を出します。これもレタッチしたイメージ画像と、元画像とを並べた比較資料を作って提出することが多いです。

フィギュアを飾る場所は大体が蛍光灯の下なので、元になったイラストの背景やエフェクトの色とは切り離して考えます。


彩色まで進んだ段階では、造形部分の修正はもう厳しいという場合が多いです。

ただ、ほんとに重大な問題箇所があった時は相談します。色で明らかになる部分というのもなくはないので……。

(3)顔の最終調整

目のデカールは印刷して貼るものなので、一番最後まで調整が可能だと思います。顔が良いと全体が一回り良く見えるので、細かく見ます!これもレタッチして要望画像を送りますが、要望を出した本人にしか分からない細かすぎるポイントが絶対にあると思うので、どアップの目の画像に番号を振って解説を入れしたりします。


グッズは数が多くて各版元様に完全お任せにしているので、監修を行うのはアニメ設定、フィギュアがメインです。スピンオフや版権の種類によっては私の担当外になるので、見ていないものも時々ありますが、世に出ている担当作商業フィギュアの8割ぐらいは監修しているはず。たぶん。



以上、お仕事内容の紹介でした!

他の作家さんがどういう流れでお仕事や監修をしているのかは全然知る機会がないので、あくまで私の進め方です。

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Comments

杏仁レモンティー

丁寧なご紹介とてもありがたいです!めっちゃ勉強になりましたm(_ _)m

つなこ

ありがとうございます~! あくまで私の環境ではありますが、何かの参考になりましたら幸いです……!

つなこ

ありがとうございます! 中々こういうのは知る機会がないので、他の作家さんがどうやって仕事を進行しているかは本当に気になる…!

げんこ

勉強になりました。O(∩_∩)O