妖魔討伐隊 12話 (Pixiv Fanbox)
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陽菜「美奈~っ!美奈ぁ~っ!!」
クウェレ「だめだな、こっちにはいねぇ。」
クウェレ「妖気の残り香も、途中でプッツリ切れてやがる。」
クウェレ「しっかし…ほんとにあのガキンチョに何かあったのか?」
クウェレ「ちょいちょい痕跡が不自然なところはあるが…」
陽菜「美奈の妖力に、違うものが混じるのを感じたの…」
陽菜「美奈に何かあったら、陽菜は…陽菜はっ…!」
クウェレ「阿呆。テメェがテンパってどうする。」
クウェレ「様子を見てる限り、オレの『鼻』よりテメェの『勘』のほうが感度がいい。」
クウェレ「お前が頼りなんだよ。余計なこと考えてねぇで、しっかり探れ。」
陽菜「ぐすっ…うん…っ」
陽菜「…!」
クウェレ「こいつぁ…お前らがつけてるバイザーか?」
陽菜「やっぱり、美奈ここにいたんだ!」
陽菜「美奈ぁっ!どこ!?美奈ぁっ!!」
クウェレ(このバイザー、確か戦闘時につけてたな。となると)
クウェレ(ここで誰かと戦闘し…負けた。)
クウェレ(遺体が無いことを思うと、これは…攫われたか。)
クウェレ「…チッ、めんどくせぇことになってきたな…。」
蒐華「陽菜ちゃん!クウェレ!美奈ちゃんは!?」
陽菜「蒐華!どうしよう!美奈が…美奈がぁっ」
クウェレ「痕跡を見る限り、攫われた可能性が高い。」
蒐華「っ…」
蒐華「…美奈ちゃん探しの助っ人を呼んだの。来るのは明日。」
陽菜「明日!?遅すぎるよ!」
蒐華「今は、一度家に戻ろう。明日のためにしっかり休まないと。」
陽菜「何言ってるの蒐華!?こうしてる間にも、美奈が何かされてるかもしれないんだよ!?」
陽菜「美奈のこと好きだったんじゃなかったの!?」
蒐華「今居場所がわかるなら、すぐにだって飛び込んでる!」
蒐華「私だって…っ!」
クウェレ「おい、ガキに当たり散らすんじゃねぇよ。みっともねぇ。」
クウェレ「おめぇもだクソガキ。テメェが探し出せねぇ憤りを、他人にぶつけんじゃねぇ。」
蒐華「ごめん…」
陽菜「…ごめんなさい。」
クウェレ「ほれ、一度帰るぞ。情報交換が必要だ。」
陽菜「………」
蒐華「おはよう、陽菜ちゃん。」
陽菜「…おはよ…蒐華。」
陽菜「昨日は…ごめんなさい…」
蒐華「あ、えっと…ううん。私もごめんね。」
陽菜「………」
萌「大丈夫。きっと見つかるから。」
陽菜「うん…」
蒐華(…早く美奈ちゃんを探さなきゃ。)
クウェレ「全員揃ってるな。改めて確認するぞ。」
クウェレ「昨日も話したが、美奈は戦闘後に攫われた可能性が高い。」
クウェレ「だが下位妖魔はそもそも攫うようなことはしない。その場で『食事』をするからな。となると…」
萌「上位妖魔。」
クウェレ「ああ、まず間違いないだろう。で、それに関して少し心当たりがある。」
クウェレ「昨日捜索していた時に、僅かに『グーラ』って奴の妖力の匂いがした。」
陽菜「!?で、でも陽菜は美奈の妖力以外何も…」
クウェレ「阿呆、テンパって探すからそういうことになるんだよ。」
クウェレ「だから落ち着けって言ったろうが。」
陽菜「ご、ごめんなさい…」
萌「続けて、クウェレ。」
クウェレ「早計とは思うが、グーラって上位妖魔を叩けば」
クウェレ「何か手掛かりがあるかもしれねぇな。」
蒐華「じゃあ今日の捜索の割り振りだけど」
萌「陽菜と私で美奈の捜索。蒐華とクウェレは残って。」
蒐華「なっ…萌さん!?」
萌「蒐華は今回の捜索に向いてない。」
萌「妖力の痕跡は追えないし、グーラと遭遇しても対応できない。違う?」
蒐華「…わかった。美奈ちゃんをお願い。」
クウェレ「オレが残る理由は…交代要員か。」
萌「そう。陽菜は憔悴してるから今日一日はもたない。」
萌「陽菜を休ませてる間は、あなたが来て。」
クウェレ「あいよ。」
梨花「ちわぁ~っす!ミヤギ屋でぇ~っす!」
萌「!この声は…」
クウェレ「おいなんだ、騒がしいのが来たな。」
蒐華「『助っ人』。ほんとは頼りたくなかったんだけど…仕方ないし。」
梨花「ご注文の『チップ』をお届けに上がりました~っ…って」
梨花「ああ~っ!?この前のクレーマー!」
蒐華「あ~っと…お久しぶり、梨花ちゃん。」
梨花「馴れ馴れしく呼ぶなっ!」
クウェレ「…お前、コイツに何したの?」
蒐華「あはは…」
萌「梨花。」
梨花「えっ…萌様…!?」
萌「久しぶり。…梨花にとっては、そうでもないかもしれないけど。」
梨花「よかった、萌様…ちゃんと逃げきれてたんだ。」
萌「梨花、悪いけど今は一刻を争うの。」
梨花「っ、りょ、りょーかいっ」
梨花「さぁ、取り付ける機材はどれかなっ!」
蒐華「このバイザーによろしく。」
梨花「あいあいさっ」
陽菜「それ、陽菜の?何をつけるの?」
蒐華「特定の妖力を探知するチップ。スカーのところで試作してたの。」
梨花「は~…流石店長。後から拡張しやすいように、丁寧に整理されてる…」
梨花「多分早く済むよ~っ」
萌「それじゃ行ってくる。何かあったら連絡するから。」
蒐華「萌さんに限って何かあるとは思えないけど…気を付けて。」
梨花「それじゃ、ボクはこれで~」
クウェレ「待て。」
クウェレ「梨花つったな。萌のことで知ってることを話せ。」
梨花「うぇぇ~!?なんで?」
クウェレ「知りたいからだ。それ以上の理由がいるか?」
梨花「うっわシンプルぅ…でも、ボクが知ってることはそんなに多くないよ?」
クウェレ「いいから話せよめんどくせぇ。ぶん殴るぞ。」
蒐華「ちょっと、クウェレ…」
梨花「『退魔師』って知ってる?」
クウェレ「ああ?昔の妖魔駆逐集団だろ?」
梨花「うん。政府の防衛隊よりも歴史が古くてね。」
梨花「旧人類時代からず~っと、妖魔の脅威から人間を守ってきたんだ。」
梨花「萌様やボクは、その退魔師の家系なんだよ。」
梨花「とはいっても、ボクは分家だけどね。萌様は本家の血筋。」
梨花「萌様は掟に従って本家党首に。ボクは萌様の側近として仕えることになったんだ。」
梨花「萌様に武術を教えながら、妖魔を狩る日々…きっと充実してたんだと思う。」
クウェレ「『思う』?」
梨花「ボク、死んじゃったんだ。本家の屋敷が妖魔に襲撃されて。」
梨花「萌様を逃がすために囮になって、あっさりやられて…」
梨花「今のボクは新人類。カプセルで生まれた、皆と同じクローンなんだよ。」
梨花「生成の時に、記憶が映像で入れられるんだけど…なんか、モニター越しに見てる感じでね。実感ないんだ。」
梨花「実際、今のボクは全然強くないし。」
クウェレ「ああ…それで納得した。」
クウェレ「『家系』『血筋』…そいつぁ、子を産める存在でないと無い概念。つまり」
梨花「うん。萌様は旧人類の生き残り。最後のね。」
クウェレ「最後?」
梨花「みんな死んじゃったんだ。妖魔の襲撃の時に。」
梨花「生成してからすぐに屋敷に戻ったけど、ダメだった。」
梨花「萌様の遺体だけが見つからなくて…けどまさか生きてたなんて。」
クウェレ「ほ~ん…じゃお前も妖術使えんのか。」
梨花「は?ようじゅつ?何それ??」
クウェレ「あぁ?妖力使って炎出したりするやつだよ。アイツが使えるってことはテメェも使えたんだろうが。」
梨花「無理無理無理!ボク人間だよ!?できるわけないじゃん!」
梨花「ボクは剣術と体術だけ!」
クウェレ「…どういうこった?おい、蒐華。お前使えるよな?妖術。」
クウェレ「萌に教わったって聞いたが。」
蒐華「あ~…うん、そう。」
梨花「うっそ!?妖力無いのにどうやって使うのさ!?」
蒐華「外からもらうんだよ。例えば…妖魔の遺体の一部、とか。」
梨花「はぁ!?」
クウェレ「あ~…なるほどな。」
クウェレ「お前知らんだろうが、妖魔は死後も体組織に妖力が残んだよ。」
クウェレ「徐々に薄れていくがな。」
梨花「グッロ!え?ってことは萌様もグロいの持ってるの?」
蒐華「刀だよ。」
蒐華「沢山の妖魔を切り捨てて、血を吸い続けてるから…」
クウェレ「下手すりゃ上位妖魔並みの妖力になってるかも、ってことか。」
梨花「ずっと一人で戦い続けてたんだ…人間を守るために。」
梨花「うう…ボクが不甲斐ないばっかりに…」
蒐華「…それは、どうだろうね…」
梨花「なんだよクレーマー!萌様にケチつけようっての!?」
クウェレ「オメェはイチイチ突っかかるんじゃねぇよめんどくせぇ。」
クウェレ「とにかく聞きたいことは聞けた。さっさと…」
クウェレ「ーっ!」
蒐華「クウェレ?」
クウェレ「『グーラ』だ!行くぞお前ら!」
蒐華「うんっ!」
梨花「おーっ!」
梨花「…え?ボクも?」
萌「それじゃ、二手に分かれて捜索するけど」
萌「見つけても深追いしないように。いい?」
陽菜「うん…ありがとう、萌。」
陽菜(探査装置によると、このあたりに…)
グーラ「グーラを探してるの?」
陽菜「っ…!」
陽菜(こいつが…『グーラ』…!)
グーラ「それとも、美奈ちゃん?」
陽菜「!」
陽菜「やっぱり…お前が美奈を…!」
陽菜「美奈を…返せぇぇっ!!」
グーラ「…ふふふっ」
陽菜「はぁっ…はぁっ…」
陽菜(妖力、使いすぎちゃった…体が思うように動かない…っ)
グーラ「あっははは!あははぁ!あはぁぁはっ!!」
グーラ「やっぱりすごいねぇ!陽菜ちゃん!」
グーラ「陽菜ちゃんも欲しくなっちゃった!」
陽菜(なんて…強さ…!)
陽菜(でも、でもっ 美奈を助けなきゃっ)
陽菜「っ!?」
美奈「………」
陽菜「美…奈…?」
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ストーリーside1:梨花と萌の過去・前編
・¥500-
完成予定:7/13~7/19
ストーリーside2:梨花と萌の過去・後編
・¥1000-
完成予定:7/15~7/21
ストーリーIF3:グーラに敗北する陽菜
・¥1500-
完成予定:7/17~7/23
次話本編
・¥0-
完成予定:7/20~7/26