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・・・魔法と夢の世界・魔導界。

そこでは魔法民と邪竜族と呼ばれる存在が、互いにしのぎを削って戦っていた歴史がある。

邪竜族最大の切り札である暗黒第龍神は長きにわたり魔導界を制圧した。

もはや滅亡は目と鼻の先、と思われたその時、一人の女神が救世主として現れた。

彼女の名は、ディーテ。



魔導戦士の、始祖である。



第一章 第2話「選ばれし魔導師と贖罪の剣士の邂逅」



彼女が魔法に目覚めたのは、5歳のころ。

まだ邪竜族の進行なんて夢にも思わなかった平和な魔導界に突如出土した不思議な玉……エクセルスフィアに選ばれた彼女は、大地の力を魔法に変えて戦うことができるようになった。


そこから数年、独学で勉強していた彼女を支えたのが、魔法学校と呼ばれる存在だった。

そこには世界中から選ばれた選りすぐりの魔法使いが集められ、日夜平和のための魔法研究がおこなわれていた。

人族、魔族、獣族、そして雪だるまや恐竜までいる。

ディーテもそこに入学し、腕を磨いてきた。

その時のディーテの先生が、



ディーテ「―――あ、Mヴイ先生!」

Mヴイ「ディーテさん、またあなたですか……。」



「Mヴイ」。

どこかで触れたこともあるが、「M」と呼ばれる称号は世襲制。

つまり、あのMブイばあちゃんは彼女の遠い先祖に当たるわけだ。



ディーテ「先生、魔導力って、一体何なんでしょう。」

Mヴイ「―――これはまた、根本的な質問が来ましたね。」

ディーテ「私がエクセルスフィアに選ばれて、この学校に来たのはいいんですが……。他のみんなのように、魔法の根幹を私はまだ理解していません。」



Mヴイ「愛する心。優しさ。知性。勇気。それらすべて、生きているものが持っている『心』こそが魔導力なのです。魔導力とは、この世界に生きるすべての生き物が持っている不思議な力……とでも言えばよろしいでしょうか。」

ディーテ「……?」



この質問は、いずれ自分が弟子に言う言葉。

彼女も、この頃はまだまだ若いのだ。



Mヴイ「私にだって未だ魔導力のすべてを理解しているわけではありません。ですが、あなたがそれを忘れなければ、魔導力はいつでも共にあります。」

ディーテ「先生も、すべてを知らない……?」

Mヴイ「あなたはきっと、これから辛いことも苦しいことも受け入れなければならない時が来るでしょう。このことだけは、決して忘れないでください。」



ディーテ「―――はい!」



そして、これからしばらくして、ディーテは『とある事件』でその体を巨大に変化させて戦う術を見つけることになる。

Mヴイの消息は、その頃にとたんに途絶えてしまうことになるのだが……それはまた別の話だ。

ちなみに、麗夏たちが着ている法衣は、実はそこの制服だったりするわけで。



ディーテ「先生……私と、あの子たちで……平和を取り戻しました。」



紆余曲折逢って死んで蘇ったディーテは、一人魔導界に暮らす中で墓参りを欠かさなかったという。



・・・だが、そんな平和も長くはもたず。

数多のパラレルワールドで、異変が起こっている。

その異変は、別宇宙のこの世界にまで異変を巻き起こそうとしていた。



Mブイ「ディーテ様、お逃げください!」

ディーテ「し、しかし!」

Mブイ「逃げるんだよ!逃げて……麗花たちにこのことを教えないと!」

ディーテ「……!」



・・・ここは人間界とは違う、魔法と夢の世界・魔導界。

そこは今、謎の巨大オタマジャクシに蹂躙されていた。

ついさっきまで平和だった世界は、再び混沌に包み込まれる。



マックド「ディーテ様、こちらへ!」

Mブイ「ここは私たちに任せてください!」



ここでディーテがやられてしまっては、人間界への影響も計り知れない。

これはまさか、麗花に昔聞いた……未来世界の再現になりかねない。



ディーテ「皆も……無事で!!」



ディーテは、涙をのんでサージの道とは違う緊急避難用転移ゲート・ラウミの道へ飛んだ。

既にサージの道は、



ディーテ「許さない……許さないわサウザン・ドレイク!!!」



オタマジャクシと謎の鎧騎士に、制圧されていた。



『これでいい。これでこの世界の魔導界は掌握した……。』



その鎧騎士に声をかけるのは、



ドクター「ぜー、はー、これでいいのか?サウザンドレイク。」

『ああ。』



なんと、魔物博士ドクターウォール。

トライブたちとの戦いで死んだはずの彼が、魔導界にいた。



ドクター「しかし……にわかには信じがたいのぉ。別世界のワシがそんなコムスメに滅ぼされただなんて。」

『信用するしないは貴様の自由だ。だが、実際に貴様が行こうとしていた世界の十数年後の時間軸ではすでにジャルマーは滅んでいるぞ。』

ドクター「なんじゃと!?大邪神様まで!?」

『奴らは侮ってはいけない相手、というわけだ。』



ドクターと話す謎の鎧。

それが、サウザンドレイクと呼ばれる存在なのだ。

そして彼の目は、



『ネズミが一匹逃げた。始末せねば。』



時空間ゲートを抜けた、ディーテに向かっていた。



・・・ここは、ラウミの道を抜けて飛び出た世界。

人間界だ。



ディーテ「はぁ、ハァ……!」



命かながら逃げて来たディーテだが、なんだかおかしい。

ここは、まさか。



ディーテ「天地町、じゃない……?!」



慌てて電柱を見ると、そこには。



ディーテ「ほ、星海町……?!」



まったく聞いたことのない町名。

ということは、ここは。



ディーテ「麗花たちの住む人間界とは、違う世界へやってきてしまった……?!」



マズい。これはマズい。

このままでは、麗花たちの世界が危ない。

それどころか、自分の存在の証明も難しい。

そう思った彼女の目の前に、



ディーテ「ま、まさか?!」



魔導界を制圧していた、オタマジャクシの怪物が迫る。

しかも今回は、足まで生えて超大型化している。

ハッキリ言って、非常に危険な状況だ。



ディーテ「―――ええい!」



ディーテは意を決して、自身の魔導力を爆発させた。

その体は魔導力を媒介に巨大化し、目の前の怪物と同等になる。

だが、その体を維持できるのも約3分程度。


決着をつけるには、急がなければならない。



ディーテ「魔導力、エナジーボルト!」



先手必勝。

とっとと目の前のカエルを吹っ飛ばして、決着をつけたかった。

が、世の中そうは甘くはない。



ディーテ「な?!」



一匹倒したら、今度はまたオタマジャクシがやってきた。

カエルじゃないだけまだマシだが、



ディーテ「数が……!」



思ったより数が多い。

それに、ディーテも突然膝をつく。



ディーテ「エネルギーが……!」



突然エネルギーが減少し、目もかすむ。

転移疲れか、それとも違う世界へ来てしまったからか。

理由はわからないが、今のディーテのコンディションは最悪だ。



これ幸いとオタマジャクシが一匹突進するが、ディーテは避け切れない。

直撃か……そう思った刹那、



ディーテ「―――?!」



オタマジャクシが、真っ二つに両断された。



「―――どこの誰かは知らないが、あとは任せるです。」

ディーテ「あ、貴方は……?!」



その主は、長い髪をひとまとめにして細く力強い刀を持った、真紅の戦士。



綾音「……リース。周りからは、そう呼ばれている。」



エクセルガールリース、その人だった。

ビビらずに迫るオタマジャクシに、リースはその刀を振りかざす。



綾音「しかし、なぜ今オタマンやガルエーンが……!ジャルマーはとっくに滅んだはずだ!」



切った後にいぶかしげな顔をするも、



タウロス『おう、積もる話はあとでだ!』

スコーピオン『まずは奴らを倒すのだ!』

綾音「ああ、とにかくここは!」



まずは敵を殲滅せねば。

どこからか聞こえた声に促され、流れるような動作でリースが巨大な尻尾を装備。



ディーテ「アレは……武装!?」



その尻尾を振り上げ、



綾音「アンタレス・ニードル!」



光の針を連射し、オタマジャクシを葬った。



ディーテ「……。」



敵はいない。

そう判断したディーテは変身を解除する。



リース「……やはりか。」



それを見たリースも変身を解除すると、



ディーテ「・・・え?!」



小っちゃな幼女に変化した。



綾音「気にしないでください。私、こういう体質なので。」

ディーテ「え、ええ……。」

綾音「それで、貴方は一体……。」

ディーテ「信じてもらえるか、わからないですけど……。」



・・・ディーテは、綾音にすべてを話す決意をした。

今信用できるのは、彼女だけだ。



・・・一方。

こちらは今ディーテや綾音がいる世界とは、また別の次元。

いや、綾音たちが今いる世界から、同時間軸上の約12年ほど前の世界。

そこは今、怪獣の展覧会になっていた。



真梨香「な、なにがどーなって……!」

理沙「どうして、こんなにサイバーグが!」

瀬里亜「わー、あっちにも出たー!?」



サイバーグと呼ばれているその存在は、彼女たちの知るサイバーグではない。

それの本当の名は、邪竜歩兵・シェルナイト。

かつて邪竜族の量産型制圧兵器として運用されていたそれが、あそれらが恐ろしいまでに量産され、町を囲んでいた。



『ククク……さぁ、どう出ますか?元祖のエクセルガールさんたち……。』

ドクター「キエエエエエ!ワシの発明を貴様はどうするつもりじゃわい!?」

『黙ってみていなさいドクターディクション。収監されていた貴方を助け出したのは……私なんですから。』

ドクター「ぐ、ぐぬぬ……。」


真梨香「とにかく、止めないと!」

理沙「厳しい戦いになるけど……!」

瀬里亜「厳しい上等っす!」



その現場に居合わせた3人の女子高生たちが応戦しようと構えるが、それを一本の腕が止めた。



希空「待て!」

真梨香「え、なんで!?」

鈴「何か……何か来ます!」

瀬里亜「何かって……なんすか!?」



町を練り歩く無数のサイバーグ軍団。

その一団のど真ん中に、光る何かが刻まれた。



それは、



希空「紋様……?」



何かの紋様のようであり、そして、



『ドーマ・ヨデイ・コメット……汝出でよ星のエクセルガール!!』

希空「今の声は……?!」



星の光が、天を射る。

そこに現れたでっかい「星」が、



真梨香「あ、あ、あ!?」

瀬里亜「星っす……でっかい星っす!!?」



はじけ飛び、人型に変わる。

それはまるで、どこかで見たような戦士だ。



『ちっ、エクセルガールセイバー……時空を超えて姉を探しているというわけか!厄介ですねぇ……。』



その中に誰かが入り込んだ様子も見えたが、詳しくはわからない。

謎の甲冑も声を出すが、それも誰にも聞こえない。



御子「―――姉ちゃんの反応は感じない……。ちっ、この世界もハズレか……!」

ゲンム『うーん、そうかー……。女神さまを探すにはやはり球を7つ集めないとダメカニ?』

御子「そんなマンガみたいな設定はない。諦めろ。」

ゲンム『うーん、それは残念無念ネンネンコロリヨ。』



セイバーの内部に大人な女性と、なんだかもう一人変な奴がいる。



ゲンム『じゃあ、また転移しますか?』

御子「いや、どういうわけかこの世界にシェルナイトがいる。見過ごすわけにはいかない。」

ゲンム『あのダンゴムシみたいな連中かい?』

御子「ああ。あれは我々が本来相手にしていたガラクタだ。とっくに絶版になったと思っていたのだがな。」

ゲンム『なんだって?再販がかかったというわけか?』

御子「おそらく、私同様時間を請てきたのだろう。奴らを放っておくわけにはいかん。」

ゲンム『あい分かった、まずは悪党退治だ!』



そんな声が聞こえた気もするが、星から生まれた女性……エクセルガールセイバーは、



御子「お前たちに恨みはないが、破壊させてもらう!」



シェルナイトの一団に、ツッコんでいった。



理沙「あの人は、私たちの味方……?」

真梨香「あの人も……エクセル、ガール……?!」



時間軸も世界観も、どんどん混沌となっていくこの状況。

事態は、想像以上にややこしくなりそうだ。


つづく。



Comments

青木林

ゲンムってこんな口調だったっけ?ディーテはアクシデント、一方で御子さんはいくつか世界を周っているみたいですね

エノマー

異世界到達ではしゃいでる説(普段から韻を踏んで謎のワードにつなげることはたまにしてましたが