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※おもらし注意


星名希空の表の顔は、忘れがちだが占い師である。

そんな彼女の特技は、一応占い。

生きるために鍛えた術である。



が、占とは自身の意志で運勢を変えられるわけではない。



鈴「あれ、どうしましたお姉ちゃん。」

希空「・・・最悪だ。」

鈴「……?」



たまには、こんな日も起きてしまうのだ。



番外編「なんてことあるひどい一日」



・・・それから。



真梨香「あれー?」

源五郎「どうした真梨香。」

真梨香「あ、いやその。」



今や懐かしいじいさんの秘密基地。

そこで真梨香が星名家の家電に連絡を取ろうとしたのだが、一切連絡が来ない。



源五郎「今日は仕事なんじゃないのか?」

真梨香「今日はオフって聞いてたんだけどなー。」



電話じゃどうしようもないなら。

真梨香は最後の手段、ブローチを取った。



真梨香「おーい、希空さーん。」

鈴『あ、真梨香さまですか?』

真梨香「え、鈴ちゃん?」



あれ、なんで希空さんのブローチに鈴ちゃんが出るんだ?

なんて思ってると。



希空『いったあああああい!??』

鈴『わあお姉ちゃん!?』



なんだか、スッゴイ悲鳴が聞こえた。

何だ今の声。



鈴『ま、真梨香さま、今は何も起きてません。何も起きてませんので、お気になさらず?!』

真梨香「いや、今間違いなく希空さんの声が……。」



そう言われると余計気になるよね。

なんて思ってると、



唯「真梨香ちゃーん。」

真梨香「あ、唯。」



ジジイの研究室に、唯さんがこんにちは。



唯「今日は理沙さんの部屋で宿題片付けるって話でしょ?早くいかないとまたうるさいよー?」

真梨香「あー、そうだった……。」

鈴『真梨香さま、それで、何か御用ですか?』



というわけで、



真梨香「あのね、これから理沙さんの家に行くから、寮に行っても誰もいないからって伝えようと思ったんだけど……。」

鈴『あ、はい、ではわたくしからお姉ちゃんに伝えておきますのででは!』



通信、一方的に遮断。

絶対いま何かあったな。



唯「希空さんに何かあったの?」

真梨香「まだ確定じゃあないけど……なんか気になるな。」



と、そこまで行って、



真梨香「そうだ、適任がいる。」



・・・。

ところ変わって、とあるマンションの希空の部屋。



鈴「そ、それでは……少し、買い物に行っていきますから……。」

希空「……行って来い。」



部屋の玄関、希空の声だけが部屋に響く。

どこにいるのやら。



希空「……。」



そんな誰もいなくなった部屋に、希空の溜息が響く。

と、その時。



がちゃりと言う音と共に、ドアがまた開く。



希空「……鈴?」



なんだ忘れ物か、と思った希空が廊下から顔を出すと、



瀬里亜「やっほーっすー。」

希空「!?」



想定外すぎる来客に、希空は飛び上がった。

そして、



希空「―――んが!?」



飛び上がって、天井に頭をぶつけた。



瀬里亜「え、大丈夫っすか?!」



あわてて玄関から中へ入ろうとする瀬里亜だが、



瀬里亜「って、あれ?」

希空「・・・。」



希空が瀬里亜を押し出したのち、急いでドアノブを占めた。



瀬里亜「開けてくださいっスよー。」



戸を押して開けようとする瀬里亜。



希空「いやいや、大丈夫だから。」



戸を引いて明けないようにする希空。

二人の押し問答が、はじまった。



瀬里亜「いやいやいや、大丈夫には見えないっす。たんこぶついてるっスよ。」

希空「いやいやいやいや。」

瀬里亜「いやいやいやいやいや。」

希空「いやいやいやいやいやいや。」

瀬里亜「いやいやいやいやいやいやいや。」



そして、その刹那。



希空「―――んが!!?」



希空の小指が、ドアに挟まった。



瀬里亜「うわああ?!大丈夫っすか!!??」

希空「大丈夫だ、だから部屋には来るな。とりあえず帰れ。と言うか何しに来た。」

瀬里亜「とある情報筋からこの部屋に異変があると聞いて。」

希空「そんな異変はどこにもない、とにかく帰れ。」

瀬里亜「いやー、そんなことないでしょう。」



と言って部屋に入ってくる瀬里亜の足元に、



―――バナナの皮が。



希空「おい、瀬里亜あぶなぶは?!」



それをかばおうとした希空さんが、思いっきりずっこけた。



瀬里亜「え、えー……?」

希空「言っただろう。だから帰れ。」



希空、顔を赤くしながらうつ伏せのままそう言った。

なんというか、いつもの威厳はどこへやらだ。



・・・それから。



瀬里亜「―――占いが最悪な日?」

希空「―――噛み砕いて言うとそんなもんだ。」



瀬里亜にすべてを任せて、紅茶を入れてもらっていた。

「自分でやる」と言った希空がどんがらがっしゃんしたので、ティーパックによる即席紅茶だが。



希空「テレビで他人を占うように、腕がなまらないよう自分でも占っているんだ。」



その秘密は、彼女のある意味での遺品である宇宙水晶と、もともと備わっている千里眼と言うべき能力のおかげ。

だが、それはすべていいことだけが見えるわけではない。



瀬里亜「で、運勢最悪の日はシャレにならないくらい不運続きだから、部屋に引きこもってたってわけっすか。」

希空「そういうことだ。」



希空、見るからにボロボロ。

こんなに人生最悪の日があるのかってくらい。



希空「こういう日が、半年に一回ペースでくるんだ。」

瀬里亜「割と早いスパンっすね。」



年二回かよ。

瀬里亜は心底マジかよと思ったそうな。

そして、心底占いには手を出さない様にしようと誓ったそうな。



瀬里亜「じゃあ、今日はおとなしく家に引きこもっててくださいっス。」

希空「ああ。」

瀬里亜「まぁ、鈴ちゃんもいるしその辺は大丈夫っすよね。」

希空「ああ。」

瀬里亜「あ、もしおしっこ漏れそうになったときは尿瓶でも使ってくださいっス。理沙さんにでも貰って来るっスよー。」

希空「―――それはいらん!!?」



それくらいなら何とかするってばさ。

何て言いたげな希空だったが、



瀬里亜「あとはアレっすね。怪獣とか宇宙人が来ないことを祈って……。」



瀬里亜が言いかけたその時。

どっかーんというか、ちゅどーんというか、むひょひょひょと言うか。

よくわからない声が、町に響いた。



瀬里亜「祈るだけ無駄だった……。」



そして突如、晴れ渡っていた空が曇り空に変わり、



源五郎「おわ、なんじゃこりゃ?!」



いきなりざーざーと、雨を降らした。

そんなことができるのは、だいたい見当がつく。



瀬里亜「な、なんすかあのでっかいクラゲ?!?」



窓を見ると、大きな雨粒の連打とともに、空になんだかでっかい何かが浮かんでるのが見えた。

それは文字通りでっかいクラゲ、

もとい、台風怪獣バリケーンだった。



希空「最悪だな……。あの風と雨……急いで倒さなければ、町がきれいさっぱり吹っ飛ぶぞ。」



最近勢力の強い台風が接近しまくって街を薙ぎ払う、一昔前なら特撮映画だけで見ていた現象がリアルに起こり始めてる。

そんな中でこんな怪獣の追い討ちを食らえば、日本はもっとひどいことになる。



ついでに、外にいる妹も心配だ。



希空「行くぞ瀬里亜、一気にぶは?!」



・・・窓を開けた瞬間、希空のオデコ目がけて空き缶が吹っ飛んできた。

継続中、スっごく不運。



瀬里亜「あーもうあたしが空けますから!」



窓を開けて身を乗り出し、すぐ閉める。

そしてブローチを構えて……。



希空「おあああああ?!ブローチがあああああ!???」



希空のブローチだけ、風で飛んでった。



瀬里亜「・・・エクセルチェンジ。」



瀬里亜さん、それを見なかったことにして、とりあえず自分だけ変身した。



瀬里亜「おーらああああ!」



そして開幕ジャンプ。

上空のバリケーンに飛びついた。

が、



瀬里亜「―――うおわああああああ?!」



瀬里亜が飛びついた傘が高速回転し始め、周囲に今まで以上の暴風を発生させたと思ったら、その回転の勢いに乗っかった瀬里亜本人も吹っ飛ばされる。



瀬里亜「ぐへ!?」



そのまま真っ逆さまに落ちて痛いや。

ビルを巻き込んでぶっ倒れた。



瀬里亜「あー!ビル壊しちゃったー!?」



久しぶりにやっちまったなーと頭を抱えつつも、とりあえず今は。



瀬里亜「とりあえずお前降りてこーい!」



バリケーン特有の空でぷかぷか浮いてるというアドバンテージがムカついたのか、それを指さして降りて来い合図。

が、バリケーンはそれをスルーして口から白い煙を吐いて攻撃。



瀬里亜「ぶへ?!」



特に効果はないが、目くらましと挑発には十分。

そんな攻撃を受け、



瀬里亜「とりあえず降りてこーい!エクセルチャージボルト!!」



胸から電撃をお見舞い。

必殺の電撃は直撃コースだが、



瀬里亜「?!」



バリケーンは、それを吸収した。



瀬里亜「うそぉ!?」



そんなことしているとき。



希空「もう、ちょっと……!」



マンションの屋上の小さい屋根まで吹っ飛んだブローチを取りに言っていた希空が、スッゴイ恰好で屋根にへばりついていた。



希空「と、れ、た!」



取れた。

ブローチは取れたのだが、



希空「・・・あ。」



その分、自分が屋根から落ちた。



希空「え、エクセルチェンジ!!?」



このまま落ちたら死ぬ。

そう思った彼女は本能的にチェンジし、



希空「んにゃ?!」



尻もちを搗きながら、でっかくなった。

とりあえず変身できないなんてことはなかったか、なんて思ってると。



瀬里亜「うおあああ?!」

希空「瀬里亜!」



瀬里亜が触手にグルグル巻きにされて、さらにバリケーンの足が瀬里亜に絡みつき、ビリビリされていた。



希空「瀬里亜、待ってろ今助ける!」



希空が手から光弾を放つが、



瀬里亜「ぎゃ?!」

希空「!?」



何故かバリケーンじゃなく、瀬里亜に当たった。

ここまで運が悪いのかチクショウ。

今までここまで不運だったことはなかったぞなんて考えながらとりあえず接近するが、



希空「わ!?」



地面に降りていた触手の一本につまずいて、転んだ。



瀬里亜「え、え、希空さん!?」

希空「今、助ける!」



希空はエクセルスィクルを発現させるが、何故か触手は切れない。

そんなもたもたしてる彼女をうざいと思ったバリケーンが、



希空「!」



彼女の目くらましの白い煙を発射させて視界をふさぐと、



希空「ぶへ?!」



今度はトラックを踏んずけて、仰向けに転んだ。



希空「――――!!?」



後頭部で作りかけの鉄筋に激突したため、割と痛い。

なんて言ってると、



希空「わ、わ?!」



今度は希空が無数の触手で絡めとられ、そのまま天地逆転で釣りあげられる。



希空「くそっ、離れない!?」



天地逆転されてるからか、うまく抵抗できない。

しかも足で腕を挟まれて、ビリビリ電撃攻撃も来る。



希空「んんんんん!?」

瀬里亜「希空さん!」



あわててそんなバリケーンを脳天から垂直に肘で沈める瀬里亜。

バリケーンは倒れこむが、希空はそのまま触手と共に地面に沈んだ。

解放されなかったようだ。



瀬里亜「あ、ごめんっす。」

希空「いや、いい……。」



とはいうものの、バリケーンは再び夢突風を発生させ、二人を吹っ飛ばそうと攻撃を続ける。



瀬里亜「な、なんとかアイツを倒すすべはないんすか?!」

希空「奴の懐に光線を一撃当てられれば……!」

瀬里亜「でも、アイツ光線吸収するっすよ!?」

希空「私に一つ、考えがある!だが……。」



今の運勢は最悪。

さっきみたいに、怪獣を狙って瀬里亜に当たったら、今度こそシャレにならない。



なんて言ってると、瀬里亜はともかく希空も同時にカラータイマーが鳴る。

エネルギーまで不幸なのか。



瀬里亜「―――あ、そうだ!」



瀬里亜は何か閃いたのか、

バリケーンに一人突っ込んだ。



瀬里亜「そーれ!」



猛突風も何のその。

電撃のごとく素早さでバリケーンの触手や突風をかいくぐり、あえて自分に触手を巻き付け、逃げ出さないようにして。



瀬里亜「希空さん、あたしを狙って撃つっス!!」

希空「な?!」

瀬里亜「怪獣を狙って外れるんなら、あたしを狙って狙いを外すんす!」

希空「だ、だが……!」



それは一理ある。

だが、もしそれで照準が外れなかったら……。



瀬里亜「占いなんて当たるも八卦、当たらぬも八卦っす!結局は、本人の心掛け次第っす!!」

希空「―――!」



そうか、そうか。

それもそうだ。



瀬里亜の声を聴いた途端なんだかすごい清々しい顔のまま、希空はいきなりノアセイバーに変身して。



希空「さぁ、外れろおおおおおお!エクセルムーンスマッシュ!!!」



必殺光線を、撃った。

無論、その狙いは瀬里亜を通り越して、


当たるはずねーだろと思っていたバリケーンに直撃した。



え、なんでやねんと言った顔のバリケーン目がけ、



瀬里亜「このまま空の果てまでぶっ飛べえええ!エクセルボルトスクリュー!!」



瀬里亜が猛電撃をゼロ距離発射。

その圧と勢いで、バリケーンは大気圏外へブッ飛ばされ、そのまま星になった。



希空「・・・。」



ノアセイバーから普通のノルンへ戻った希空の顔は、雲が晴れて澄み渡った、今の夕暮空と同じように晴れやかだった。



・・・それから。



鈴「―――すみませんでした、風で身動きが取れませんで。」

希空「―――いや、あの風じゃあ無理もない。」



夕飯時の星名家。



鈴「しかし、怪獣目がけて発射すればすぐに吸収されるからって、あえて瀬里亜様に光線を撃つなんて。」

瀬里亜「いやー、しかしあの光線が自分に来た時は死ぬかと思ったっスよ。」



何故か瀬里亜も、御相伴。



希空「たまには自分の運の悪さもいいことに使える時があったってことだな。」



と言いつつ、希空さんは自分の冷奴にしょうがを入れて、口の中へ。

なんだか吹っ切れたかな、なんて鈴と瀬里亜は顔を見合わせていた。



いた、のだが。



希空「―――んぐ!?」

瀬里亜「え?」

鈴「おねえちゃん!?」

希空「―――からあああああああああ!!???」

瀬里亜「あ、そのチューブ、しょうがじゃなくて辛子……。」



黄色いチューブ同士、間違えたのだ。

そして辛さに悶絶している希空が、



箪笥の過度に小指をぶつけ。



希空「ヒ―――――――――――!??」



絶叫していた。

なんというか、今日不憫すぎる。



鈴「あ、あらら……。」

瀬里亜「ま、一日はまだまだ、続いてるっすからねぇ……。」



彼女の一日は、まだまだ続く。



おしまい。



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