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「いやぁ!もう、ひゃめてぇ!!」



夕暮れの山に囲まれた誰もいない空間。

そこに、一人の女性の悲痛な声が響いた。



「もう、もう、胸は……ひゃめなんだってばぁぁぁぁ!!!」



その声の主は。

青き戦乙女、エクセルガールリサだった。



「大きいのも困りもの」



・・・事の発端は、今から30分前にさかのぼる。

いつものように授業を受け、いつものように生徒会の活動を追え。

帰路につこうとしていた真梨香や唯だったが。


「・・・はぁ。」



理沙は一人、今日だけで47回目の溜息をついていた。



「どうしたんですか?」

「珍しいですね、理沙さんが溜息なんて。」

「ええ、ちょっとね……。」



ちょっとうつむき加減な先輩を見た後輩二人は、ちょっと首をかしげて。



「何かあったなら、言ってください。」

「そうですよ。私たち、仲間じゃないですか。」

「で、でも……。」

「もう!」



渋る理沙の手に、真梨香の手が重なり。

そのか細い手をがしっと握った。



「え、ちょ、真梨香!」

「お悩み相談終わるまで、この手は離しませんからね!」

「・・・。」



道のど真ん中でそれは恥ずかしいよ、と言いたかった理沙だが、真梨香の言葉に遮られ、その言霊はおなかの方へ引っ込んだ。




「え、えっと、ね。」



観念したのか、理沙は周りをきょろきょろしつつ言った。



「・・・最近、誰かに見られてる気がするの。」

「え、誰かに?」

「最近って、いつごろから?」

「高校入学頃かしら……。」

「・・・結構昔ですね。」


唯はちょっとこけた。

それ最近って言わない。



「でも、最近は特に強く感じるの。特に人通りの多いところでよく……。」



そう言いつつも、理沙はあたりを見てみる。

しかし。



「それって。」



唯には、その原因の一つに心当たりがあった。



「え、唯さん、わかるの?」

「其れだけが原因とは言えませんが、間違いなくそのうちの一つだという理由に心当たりがあります。」

「すっげー、さすが唯。」


おい、気づかないんかい。

唯はお隣でお気楽な幼なじみを見てそう持っていた。

意図せず「お」が三つ韻になっていた。



「じゃ、じゃあ、その原因の一つがなくなれば、この不安も無くなるのかしら?」

「いや、それはきっと無理です。」

「どうして!?」



理沙の淡い期待を、唯が自分のメガネの光と突き出された右手で打ち砕いた。

その唯のいつもより厳しいお言葉に、ガラスハートの理沙さんはちょっと涙目になってすね始めた。

真梨香は何もわかってないようで、慌てて理沙をなだめ始める。



唯はこの時、こう思っていた。



言い過ぎたかな。

でも、無理なものは無理だ。

目の前でうなだれているときも、歩いただけでも目に留まるものを、彼女は持っている。

そりゃああれなら誰だって見るよ。

それ、そのでっかすぎるおっぱいをみんなが見てるってことなんだから。





・・・。



「まぁ、悪意のあるものじゃないと思うので、気にしないことですね。」

「え、ええ、ありがとう……。」



とりあえず悩みの解決法は分かった。

だが、それでも。



「最近肩こりもひどくて……。」

「闘い詰めであまり休めてないんじゃないですか?」

「そうかもしれないわね。」

「それも『アレ』のせいなんじゃないのかなぁ。」

「あれ?」

「いいえ、なんでもないです。」



無自覚で大きいおっぱいを持つというのも大変そうだな。

唯は自分の適度な胸を見つつ思っていた。

でかすぎるのも、大変だと。



・・・そんなこんなで、真梨香と唯と別れ、自宅へと戻ろうとした理沙。

そんな時。



「・・・?」



理沙の目に、何か光るものが見えた。

空から、何かが降ってくる。



「何かしら・・・。」



言い知れぬ不安を胸に、理沙はその方向へと足を進めていた。


その謎の光は、町から離れた山の方へと着弾。

誰もいないその空間では、発見者などもいなかった。



「はぁ、はぁ……。」



そこへと走ってきた理沙は、息も絶え絶えにその主を見て驚く。



「怪獣……?!」



それは。

タマゴ上の物体から姿を現したのは、


黄色い体に黒いストライプ。

それはまるで、ハチのような昆虫怪獣だった。

理沙は慌ててその身を機の陰に隠し、様子をうかがう。



その怪獣はその赤い目で周囲を見渡し、手近にあった大きな木を見つけると。

そのストローのような口から針を出し、樹液を吸い始めた。



「・・・!」



息を殺し、その様子をうかがう理沙。

だが、彼女の目の前で。

その木が、瞬時に朽ち果てるさまを見た。

それと反比例するように、怪獣の体はたくましさを増していく。



「まさか、この怪獣……!」



その怪獣については、以前、マリアやクリス、ルミナやユリアから聞いたことがあった。

あらゆるエネルギーを吸収して成長する、あらゆる宇宙ではびこっている邪悪な怪獣の存在を。



「このままだと、この地球も!」



この地球も、ありとあらゆるエネルギーを吸い尽くされてしまう。

そうは、させない。



「エクセルチェンジ!!」



おそらくこいつは第一陣。

これ以上この怪獣を、この地球で増やさせはしない。


理沙はエクセルブローチを構え、全身にエクセルスーツを定着さえる。

地球を守る戦士・エクセルガールへと変身した!



「待ちなさい!」



そして大地に着地、怪獣と対峙する。

怪獣は赤い目をぎょろりと理沙の方へ向けた。

・・・目の前の彼女は気づいていないが、怪獣のパノラマ状の視界には、構える彼女の一部分だけが何重にも映り込んでいた。



「きゃっ!」



「その一部分」に突っ込んできた怪獣を、理沙は寸でのところでかわす。

だが、怪獣のあまりの速さに驚き尻もちを搗いてしまう。

それを見逃さなかった怪獣は、理沙をそのまま組み伏せ押し倒そうと迫る。


「は、はなれな、さいっ!」



それに負けじと理沙は、怪獣の蜂の尻に当たる突起部分を思いっきり蹴り上げ、怪獣をそのまま背負い投げ。

山肌に怪獣を叩きつける。



「アイススラッシュ!」



そして続けざまに、右手ブルースポイルから小さな氷の刃を4本ほど発生させ、怪獣目がけて連続発射。

怪獣の体に小さな爆発が起こり、ずるずると怪獣の体が山から地面へと降りてくる。

格闘戦や接近戦は苦手だが、このおゆに光線技や攻撃の連携の面では彼女が群を抜いている。

このままなら、一人でも行ける。

そう思った理沙は、このまま決めようと再びブルースポイルと胸のブローチにエネルギーを込める。



・・・だが。

怪獣の口から、何かが発射された。



「!?」



その何かは、理沙の胸に数本突き刺さり。


「―――はぁぁぁん!?」



数刻のち、理沙の体がビクンと跳ね、その場にあおむけに倒れこんでしまった。



「な、なに、これ……。胸が、胸が……溶けちゃうくらいに熱い!」



仰向けのまま、自分の胸をさするように自分の手で覆う理沙。

胸だけではない。

明らかに、顔色が悪く。



「体も、痺れて……ま、まさか!」



そう。

これは毒針。

思うように体を動かせなくなってしまった理沙は、腕は胸を覆っているので、ただ仰向けで足を曲げたりのばしたりするくらいしかできなかった。



「ま、まだ……まだ、負けない……!」



理沙はそれでも、何とか立ち上がろうと体を起こす。



「ぐっ?!」



しかし体の痺れからかうまく動けず、そのままうつ伏せに倒れこむ。



「ひゃあ?!む、胸が、つぶされて……!」



自分の体と地面に押しはさまれた自分の胸からの衝撃が、いつもの数倍になって理沙に襲い掛かる。

何とか立ち上がろうとしても、その都度立ち上がるまでに力が途切れて地面に伏す。

その無駄ともいえる行動の積み重ねは皮肉にも端から見たら、自分から胸を地面に押しつぶして快感を得ているようにしか見えない。



「はぁん!ひゃあ!い、いやぁ!」



怪獣はそんな理沙を、あざ笑うかのように傍観していた。



「あぐ、う、うう……!」



何とか横向きに体をずらし、胸からのダメージは回避できたものの。

体中に回った毒、そして体の痺れと胸の違和感。

それらが重なり、彼女の胸の宝玉が点滅を始める。


「ぐ、うぅ……もう、エネルギーが……!」


その音を聞いて、彼女にはもう抵抗する力が残っていないと知っているかのごとく。

怪獣が、動いた。



「な、何をするの!やめて!!」



怪獣は理沙の体をあお向けにしてから体を掴んで無理やり立ち上がらせ。

その口から、



「んんん~~~!!」



紫色の毒ガスをまき散らした。

無論、彼女の抵抗を完全に遮断するためである。



だが、今の彼女はすでに独に侵されている。

その上に、さらに毒が蓄積され。



「あ、あぁあぁあ!?ダメ、ダメ、やめて!胸が……体がぁぁぁ!!」



その体をめぐる毒の循環速度が上がり、彼女の口から悲鳴が起きる。

その豊満な胸は毒によってハリに張って、エクセルスーツを突き破らんとしている。

持ち上げられている腕はだらんと下に伸び、足も地面から離されているため、ジタバタと動くことしかできない。

そんな彼女目がけて、怪獣は、ついに。



「ひゃああああ!!?」



ついに、怪獣の狙っていたある部分。

その無駄に張りつめた胸に、自身の口針を突き刺した!



「ひゃああ?!ひゃめて!吸っちゃダメぇえぇ!!」



ごくり、ごくりと音を立てて吸い取られていく理沙のエネルギー。

人間の体をいったん戦士としての体に作り替えている今の理沙の体。

さらに言えば、エクセルブローチに一番近い乳房の部分には、ある程度の変身維持のエネルギーが詰まっている。

それが今、怪獣に吸われているのだ。


毒によって無駄に熱く、敏感にさせられた彼女にとってその感触は、快感にも感じられる悪寒だった。



「ダメ、ダメ、やめて!こ、こんなの、こんなのってぇぇ!!!」



顔をいやいやと左右に振り、腕に力を入れて抵抗しようとするも、しびれは未だ取れていない。

おまけに「エネルギーを吸われる」という未知の感触に、彼女の明晰な頭脳は毒も合わさって、完全にマヒしてしまっていた。



「ど、どうして!?痛いのに……痛いのに、気持ちよくなっていっちゃう……!!!」



さらに。

その毒牙、「痛み」を「快感」に変えていく。

彼女の頭脳が、どんどんと地に落ちていく。

彼女の顔も、苦悩から何とも言えない顔へと変わって行っていることに、本人は気づいていなかった。




「す、吸われひぇる……!私の胸が、心が、吸われひゃう!!」

「ひゃめてぇ!これいじょうは……おかしくなっひゃう!!」

「あああああ、らめらめ、らめ、らめええええ!!」



もはや呂律すら回らない彼女は、ただ叫び声を上げつつエネルギーを吸われるだけとなってしまう。

エネルギーをどんどん吸われていくうちに、彼女のカラータイマーの点滅もどんどん早くなる。




「ひゃあっ、ひゃあああああああ!!??」



それから数刻。

ぎゅぽん、という音と共に、理沙の胸から怪獣の口が離れる。

吸い尽くした、とでも言いたげな怪獣は、吸う前よりも幾分体が大きく、頑丈になっていた。



そして理沙は、傷だらけになりつつも力なくその場に倒れこんだ。



「あ、ひっ、あぁ……。」



息も絶え絶えにそれでも立ち上がろうとするのは、彼女に残った戦士としてのプライドだろうか。

だが、そんな彼女の体に。

最後の毒針が一本、突き刺さった。



「まりか……せりあさん……わたし、もう……。」



うつろな顔でそうつぶやいた理沙は、静かに瞳を閉じ。

胸の輝きも、消えかけていた・・・。




・・・しかし。

その彼女に、どこからともなく桃色の光が照らされ。



「・・・え・・・?」



少しばかり、意識が回復する。

その、見えた視界の端には、



「紫、色……?」



『まるで自分と同じくらいの大きさの』、紫色の脚が見えた。



「宇宙昆虫か。いくらエネルギーを吸ったとはいえ所詮は虫。私にとっては……。」



そして、その足が二歩前へ歩いていき。



ものすごい斬撃音と、


「ムシケラだ。」


紫色の、大きな鎌が見えて。

怪獣の体が、真っ二つに切り裂かれ。



「す、ごい……。」



理沙の意識は、そこで止まった。




・。



「あ、気が付いたっス!」

「理沙さん、大丈夫!?」



……気が付くと、私は真っ白な、それでも見慣れた空間にいた。

ここは、真梨香と唯さんの部屋だ。

私、真梨香のベッドに寝かされてる。

……どうして?




「心配したんすよー!あたしがここに遊びに来たら、外で理沙さん倒れてるんすから!」

「それに全然目を覚まさないし、ホント、心臓止まるかと思いましたよ!」



真梨香も瀬里亜さんも唯さんも、目に涙をためている。

そっか、私……。



「生きてるんだ……。」

「ああ、無理して起きない方がいいですよ。胸のあたりに、ひどいやけどしてるんですから。」

「胸、に?」



見ると。

自分の体、胸のあたりに、何かに刺されたような痣と、火傷のような跡が見える。

そうか……。あの傷、か。



「そうだ!宇宙から、怪獣が!」

「ああ、それなら大丈夫っす。」

「え?」



地球にやってくる奴は絶対あれだけじゃない。

急がないと、無数の昆虫怪獣が。

そう思た矢先に。



「じいちゃんから連絡を受けてね。理沙さんが寝てる間に、あいつらの団体さんは宇宙で排除してきました。」

「そう……。」

「理沙さんも、爺さんから話を聞いたんすか?」

「え、ええ。それで……。」

「やられちゃった、と。」



唯さんの言葉に、私は反論もできない。

事実、そうだったから。

それに、唯さんにはもっとまずい姿を見られてる。

何というか、この子にはかなわない。




あれ、でも。



「先輩、どうしました?」

「いえ……。」



あの時、怪獣を倒したのは。

あれは、一体……。



そう考えていると、まだ疲労が抜けてないのか。

私はまた、意識が遠のいていった。



・。

それから数日。



「・・・。」



学校に復帰はしたものの。



「・・・。」



私は以前より、また強い視線を感じていた。



「そりゃそうでしょうねぇ……。」

「え、なんで?」

「傷に障るからって、ノーブラはマズいっすよ先輩……。」



後輩のつぶやきも耳に届かないくらい、私は周りからの視線が気になっていた。



……この大きい胸も、いいことばかりではない。

私はそう思った。


おわり。


Comments

551

リサの胸は、他の2人以上に弱点なんですね。それとこの段階では、まだノルンの存在に気づいていなんですね。

青木林

伝説の作品にして、貴方にとって不本意だった一本ですね。理沙さん以降でガチのヒロピン担当となると波音や麗奈になりますね